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EX1-3:大沢先生と変わり行く日常
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半ば強引に僕の家に住まう事になったイヴァンナ ・マハノヴァは、保護された者らしくしていたのは最初の3日だけで、直ぐに化けの皮が剥がれた。いや、最初の3日の態度がどうもチグハグで、気に障った僕が「やり易いようにしてください」と言ったのが始まりだろうから、別にそこまで咎めるつもりはないし、そこまで気にもしないけれど。
やれ、風邪をひくから床で寝るなちゃんとしたところで寝ろだとか、カップは昨日食べたから今日はしっかりと野菜を食べろとか。君は日本人なのだろ? どうして麺ばかり食べる? 選択肢に米はないのか? とか。君は僕の何なんだと言いたくなるような日常生活への進言の数々。最後に至っては遠回しに自身の要望を口にしているだけだ。日本人の主食が米だけだと思うな。蕎麦やうどんの存在を忘れないでくれ。全く。
僕にしっかりとしているところを見せたいのか、元々の気質なのかは知らないけれど。僕が必要としている書類を間違えて片付けて何時間もかけて謝りながら見つけ出したり、風呂掃除中にタイル床で足を滑らせて浴槽の中に上半身を突っ込んで底に頭をぶつけたり。色々と危険を伴うポンコツっぷりが「住まわせてもらうのだから。これくらいはやらせてほしい」と掃除や一部の家事を買って出た気概をことごとく台無しにしている。
そして極めつけに。彼女はいろいろと脆い。夜な夜ないまだ再開できない迷子の子供の様にすすり泣き。雨が降たからと慌てて洗濯物を取り込もうとして机に脚の脛《すね》をぶつけて長い間苦しみ悶えたりと。心身ともにもろいのだ。その大人びた雰囲気と体格は飾りなのかと言いたくなるが、泣きそうなのでやめておく。
「……帰らなきゃ。……皆の役に立たなきゃ……」
ただでさえ、寝ているとき。精神面のもろさがうわごとのように零れるのだから、冗談でも追い打ちめいた事は、僕は言わない。だって僕も、彼女といる時間が長ければ長いほどに事案の重み、そして彼女から聞こえる急かしから焦燥感に駆られ、いつ落ちるかもわからないジェットコースターが上がり続けているようで、そんなことを言う気分には全く慣れないからだ。あぁ全く、好ましくないにもほどがある。
最近は日課のように暇さえあればイヴァンナ・マハノヴァがはぐれた。彼女曰く同胞なる集団を探している。愛しの我が家に帰って心も体も癒したいのにだ。
どうして僕がこんなことをなんて思いながら、毎日、食費節約のお手伝いですと最早食べ飽きたタケノコを持ってくる早乙女桃花と協力して事の解決に急ぐ。早乙女桃花、もしくはイヴァンナが近くいる時は人々に呼びかけ、僕だけの時はネットで探す。それでも成果らしい成果はなく。胸が苦しくなる。見つからない、手掛かりも、足掛かりも、影も形も。何も見つからない。
そもそもはぐれた同胞たちとやらも、同胞たちだ。イヴァンナ・マハノヴァが居なくなったのなら、そちらでも探して居る痕跡が在ってもいいはずだ。なのにそれが何日も見つからないとなると、イヴァンナ・マハノヴァが迷子の果てに事件発生時の場所から遠く離れたこの街にやって来たのか、それとも彼女がその同胞たちの中で好ましく思われていないか。……やめよう、どうあっても嫌な事態と言う事に成る。
何も見つからず仕方がなくイヴァンナ・マハノヴァを家に住まわせているという劇的に変化している日々を過ごして居ると注意を払っていても、日常の些細な変化よりも気が付かれやすいように僕は思う。
なぜそう思うに至ったのかと誰かに尋ねられたのなら僕はこう言うだろう。「実体験が有るからだ」と。
「やっほー。大沢先生っ!」
「芳奈か。おはよう。……朝からピスタチオ片手に食べ歩きしているのか君は……」
「小腹が空いちゃってね。それに美味しいからついつい手を出しちゃうんだ。巷ではダイエット効果が見込めるらしいけれどね。僕としてはこんなついつい食べ過ぎてしまうような豆は人によっては逆効果になりえる諸刃の豆だよ。大沢先生が勧めてくれただけあって高カロリーだしね」
「そうか、まぁ、なんだ。気に入って貰えて何よりだよ。でも食べるならとっとと食べるか。食べるのは止めてしまうかしてくれないか」
「はーい。……んー。やっぱり……。
大沢先生、最近凄くタケノコのいい匂いがするけど何でかな? 私、大沢先生ってタケノコ食べてるイメージがあんまりないけど、実は好きだったりするの?」
僕の激変した日常に感づいたのは木下芳奈だ。飲食物をしまいながら後ろについて来て、鼻をヒクヒクと動かして僕から匂いをかぎ分ける。君は犬か何かか? なんて言っている場合じゃない、僕が迂闊だった。まさかイヴァンナ・マハノヴァの影を見てではなく。早乙女桃花のデイリープレゼントのタケノコから違和感を感じるなんて思わなかったのだ。
「そうだよ。僕はタケノコ料理とか美味しいく頂ける人だからね。それを知った友人が善意で送ってくれるから、ここ最近はタケノコ御飯とか食べてるよ」
「ふーん。ねぇ大沢先生。その友達って女の人かな? それとも男の人なのかな?」
何とか誤魔化そうとするけれど、僕の言葉の節々に木下芳佳の興味が惹かれて裏目にでる。
「女性の方だ。今ちょっと手詰まりな所を手伝って貰っているんだよ。もういいだろ? さっさと行かないと遅れるぞ」
「……はーい」
蚊帳の外にしないで、置いて行かないでと事を知れば彼女は言うだろう。でも、駄目だ。君には関係が無いのだから。関係が無いなら首を突っ込まない方がいい。そうすれば互いに楽だと、僕は思うから。
「イヴァンナ 。あの人ずっとこっちを見ているけれど知り合いか?」
「どう、何だろうか。
あんな風体の連れは居なかったように思う……が。ずっと見られているのも気になる。話しかけてみようか」
知らない人なら別に声を駆けなくてもいいのではと思うけれど、当人であるイヴァンナ・マハノヴァはふと気が付いたときにはそこに居て、ずっとこちらを見ている太った男に近寄って「そこの黄色いヘッドホンの男、どうして私達を見ている。何か用があるなら申すがいい」とどことなく尊大に声をかけた。僕と早乙女桃花に出会った頃の落ち込みっぷりと言うか、拙い気を遣おうとした阿野区長はどこへ行ったのだろうか。あの時から気分は一応回復しているからか? それとも僕か? 僕の所為なのか? 確かに僕は巣の口調でもいいとは彼女に言いはしたが。それは僕は別に僕自身に向ける口調を気にしなくていいと言ったのであって、見ず知らずの他人にモスの口調で大丈夫だとは言っていない。つまり何が言いたいのかと言うと、僕は悪くない。
「声をかけるのが速いぜ。人払いが終わってないってのによ」
「どういう……」
イヴァンナ・マハノヴァは男と何か言葉を交わし、疑問を抱いたような様子で周囲をみはじめたのに気が付いて。僕は何故周囲を見ているのかと真似て周囲を見渡す。______おかしい。この時間帯で、この街の大通りのような立ち位置であるこの場所で。どうして、こんなにも人が少ない? 今日、何か行事があったか? 無いはずだ。偶々か? いや、さっきまで……そう、あの男が出現する前までは絶え間なく交差していた人の群れが居たんだ。偶々にしても不自然だ。……ひどく嫌な予感がする。
「お父様達へ。そして我らが家族の主へ#捧__ささ__ぐ」
「なに? おとう…………なっ!? 貴様まさかロロ何ちゃらのところのか!?」
男がほくそ笑み、イヴァンナ ・マハノヴァは踵を返して僕をーの元へと走りながら「大沢先生! 逃げろ!」と叫ぶ。どうやら嫌な予感は今から当たるらしい。でも半ば予感していたとはいえ、逃げろと行動を指示されたとはいえ。何がどう起きるのか知らないのだから対処しようがない。
僕を、僕たちを襲ったのは。下手ではないが格段上手くもなくカラオケ慣れしている人間の歌声。強いて特徴を上げるなら無駄に声が大きく、見た目も合わさってオークの遠吠えとしか思えず煩いなとしか感想がない歌声だった。
頭が割れるほどに痛い。視界が揺れる。周りにいる人々も蹲って頭を抱えているところを見るに、僕と同じ状況に陥っていることが分かった。
あぁ、最悪だ。何かに巻き込まれたことが嫌に理解できて酷く気分を害しながら、歯を食い縛ってイヴァンナ・マハノヴァを見た。彼女も例外に漏れず蹲ってこの苦しみに悶えている。その背後には歌う男がにじり寄っている。
____僕が頭痛を起こして酷く気分を害している原因は恐らくあの男だ。……気に入らない。そしてイヴァンナ・マハノヴァを苦しめていることから、これからあの男が彼女にもたらす事はイヴァンナ・マハノヴァ彼女にとって好ましくない事だろう、でなければこんな苦しめるようなことはしない。……気に入らないあの男への嫌がらせはすぐさま思いついた。それに、僕はここでイヴァンナ・マハノヴァを見捨てるほど、薄情でもないと自負している。だから嫌がらせはすぐに決行された。
「おい、此処から離れるぞ。歯を食い縛れ!」
「大沢……先生?」
イヴァンナ・マハノヴァに走り寄って腕を掴んで無理やり立たせ、その場から逃げ出した。あの男はイヴァンナ・マハノヴァが目的のように見えた。だからこの女を連れて逃げ出せば、今とりあえずできるあの男への最大の嫌がらせになる。そう思っての逃走だ。瞬間、歌声が止まって、自転車に轢かれた時を連想させる衝撃が背中に走って吹き飛ばされた。
感覚的には自転車以上だ。車にひかれた時はこんな感じなのだろうか。背中に走った衝撃と落下した時の衝撃が合い舞って全身に痛みが走っている。背中に走った衝撃の方向性から。この衝撃の原因があの歌う男から来たものだと推測出来て、僕は察した。あぁ、あの男はアイツと同じなのかと。そして最悪だと改めて気分を害した。
「大沢先生!」
クソがと悪態をつきたいが、体の中の何かがきしんで声を出す事さえも辛い。目を開いて状況を確認すると男が歌をやめたことで頭痛から解放されて、人々が男から走って逃げ出している。そんなものだ。彼らは当然の行動をしている。ヒーロー気質の人間なんてのはこの場には居なかったようだ。
「無駄な足掻きはすんなよ。兄弟姉妹たちが今、逃げてった奴ら始末しに行ってっから。その後にそうせお前も死ぬんだからさ。手間、取らせるようなことすんなよ。ウッゼェな。空気読めって」
男が近づいてくる。イヴァンナ・マハノヴァは……何かを決めかねているようだ。僕は身体が動かない。逃げるか逃げないかの選択で悩んでいるなら、動けなくなった僕を置いて逃げた方が賢い。僕はそれを推奨する。動けなくなった今では、置いて行かれても僕は別にそれを咎めない。状況が状況だ。君は逃げても悪くない。
「どうする……どうする…………指揮官の言いつけを護るなら……でも大沢先生には恩が……えぇい。仕方がない! 大沢先生。今見る物は絶対に校外禁止だ。出ないと私は大沢先生を殺さなければいけなくなる!」
イヴァンナ・マハノヴァが何か決めたような様子で、僕を見た。どうして逃げ出さないんだ。なんて疑問が沸くがそれ以上に。なんで僕に向き直っているんだと疑問に思う。それに答えるかのようにイヴァンナ・マハノヴァは小石をいくつか拾いながら僕を担いで人間とは思えない速さで逃げ出し「これより戦闘を開始する」と口にした。
彼女に与えた服が変貌していく。布から光沢を持った硬そうな、強いて言うなれば装甲じみた何かへと存在を変えていく。
背中に横長の上が開いた箱状の物が浮き出て、存在意義不明な横長のリュックを背負ったような状態になったところで変貌がいったん止まる。そこで僕を担いでいるからか四苦八苦しつつも、拾い上げたいくつかの小石を背中の箱状のものに入れると開いていた上の部分が閉じて、箱がまた変貌を開始する。
横長の箱状のものは左右の部分を前方に伸びてイヴァンナ・マハノヴァを中心に挟む様にして彼女と同じ位の高さを誇る大きな車輪を形作る。また箱状の側面には縦向きの円柱が浮き出て砲身を思わせる筒を生やしていた。
上面には中心部から円柱が生えて彼女の頭部よりも頭一つ分高くなったところで頭部よりも高くなった部分が膨らんで簡素な櫓のような形状になって前方、後方、側方に砲身を思わせる筒を生やした。
背面からは地面に向けて尻尾を思わせる部位を生やしその先端にはローラが形作られている。総合的に考えると車輪の大きさが逆の、巨大な三輪車のような形状になったのだ。
「流石と言うか何と言うか。唯の布切れの存在を書き換えて武装が可能とかさ。俺のお父様は悔しがっているんだぜ? 後から来た奴がこの世界の惨状を利用して当たり前のように異能の生産技術を獲得しやがったって。その内の一体がなんか大通りで実質私は迷子でーす。はぐれましたーって言ってんだから、能力開発、どうやってんのか、確保して聞きだして、実験して、分解してサンプルにするために確保しないとだよな
でもいいのか? その身体能力で逃げ回った方が良かったと思うぜ? その形状だと動きにくいだろ?」
男の発言から。イヴァンナ・マハノヴァがアイツと同じ普通から逸脱した存在なのだと察する中で、僕の意見が男と被る。心外ではあるが同意だ。あまりにも動き辛そうだ。
するとイヴァンナ・マハノヴァは大きくカーブして、男を正面にとらえる。
「ふん、私は逃げる気はない。いま、ここで君を屠《ほふ》ってやる!」
巷で言う、お姫様抱っこをされている僕は目だけを動かして、それを見た。彼女の頭部よりも高く突き出た部分から生えた正面に向く筒が男を指す様に向きを調整されて、そして中から砲弾と思わしきものを撃ちだしたのである。
撃ちだされた砲弾と思わしきそれは、男に着弾……とはならず。男の目前で振動するように歪む空間に受け止められた。
「空気は振動を伝える。振動は音にもなる。衝撃にもなる。強い振動を身に纏えばこの通り。日本警察がもつ拳銃程度なら容易に防げる装甲が作れるんだぜ? 今のは何所と無く大砲のようだったから焦ったけれどな。射撃力が無いな」
「だからどうした! 主砲! てー!」
どうやら筒は砲身、砲弾と思わしきものはそのまま砲弾と認識していいようだ。爆音が鳴って耳が悲鳴を上げているがどうにもできず。辛い思いをしながら事の顛末を見守る事しかできない。
続いてイヴァンナ・マハノヴァは、上面の砲身で砲弾を売って居る間に、側面の砲身を男に向けて居り。そこから砲弾を発射した。
発射された2発の砲弾は、イヴァンナ・マハノヴァ自身の装備である大きな車輪を双方ともに破壊しながら男に……1つだけ着弾し。右足を抉る。
「なっ……がぁ!」
「確かに私は射撃力が弱い。だが最初に撃った副砲よりかは主砲の方が幾分かマシだ! どうやら主砲ならば通用するようだな。であれば全弾くれてやる!」
キーンとなって抉れそうな耳にとどめを刺され、意識を手放すまで僕は。僕はイヴァンナ・マハノヴァ、彼女と振動を使う男の闘いを。そっちが主砲かよと言いたくなる側面の砲台を用いて何度も何度も何度も男に打ち込んで、ミンチにしようとする様を。動けなくなった男が振動を発して彼女を傷つけて反撃している様を見ていたのだ。
気が付けば知らない天井……いや、何度か見た事がある天井がそこに在った。僕はどうやら病院に居るようで身体の節々にギブスが取り付けられている。
「入院か……」
「むっ、目が覚めたのか大沢先生! 大丈夫か!?」
僕が目を覚ましたことに気が付いて隣で転寝しそうになって居たイヴァンナが顔を覗き込んだ。包帯は巻かれているもののその様子を見るに、何度か男から反撃を受けてもなお軽症で済んだようだ。一発でこんな風になった僕が脆いのだろうか。いやそんなはずはない自転車衝突以上の衝撃を食らえば一発でこうなる可能性は誰にでも十分あるはずだ。
「イヴァンナか……あれからどうなったか……は想像できるから別にいいよ。後処理とかそこらへんは気になるけど。それは置いておいてとりあえず君の事。誰にも話さないから話してくれるか?」
「……変わらず同胞探しに協力してくれるか?」
「内容次第だけれど……なるべく協力する。僕は薄情じゃないからね」
あぁ、なんでこんな事に成ったと気分を害しながら、僕は何かよくわからないものに関わっていく。
やれ、風邪をひくから床で寝るなちゃんとしたところで寝ろだとか、カップは昨日食べたから今日はしっかりと野菜を食べろとか。君は日本人なのだろ? どうして麺ばかり食べる? 選択肢に米はないのか? とか。君は僕の何なんだと言いたくなるような日常生活への進言の数々。最後に至っては遠回しに自身の要望を口にしているだけだ。日本人の主食が米だけだと思うな。蕎麦やうどんの存在を忘れないでくれ。全く。
僕にしっかりとしているところを見せたいのか、元々の気質なのかは知らないけれど。僕が必要としている書類を間違えて片付けて何時間もかけて謝りながら見つけ出したり、風呂掃除中にタイル床で足を滑らせて浴槽の中に上半身を突っ込んで底に頭をぶつけたり。色々と危険を伴うポンコツっぷりが「住まわせてもらうのだから。これくらいはやらせてほしい」と掃除や一部の家事を買って出た気概をことごとく台無しにしている。
そして極めつけに。彼女はいろいろと脆い。夜な夜ないまだ再開できない迷子の子供の様にすすり泣き。雨が降たからと慌てて洗濯物を取り込もうとして机に脚の脛《すね》をぶつけて長い間苦しみ悶えたりと。心身ともにもろいのだ。その大人びた雰囲気と体格は飾りなのかと言いたくなるが、泣きそうなのでやめておく。
「……帰らなきゃ。……皆の役に立たなきゃ……」
ただでさえ、寝ているとき。精神面のもろさがうわごとのように零れるのだから、冗談でも追い打ちめいた事は、僕は言わない。だって僕も、彼女といる時間が長ければ長いほどに事案の重み、そして彼女から聞こえる急かしから焦燥感に駆られ、いつ落ちるかもわからないジェットコースターが上がり続けているようで、そんなことを言う気分には全く慣れないからだ。あぁ全く、好ましくないにもほどがある。
最近は日課のように暇さえあればイヴァンナ・マハノヴァがはぐれた。彼女曰く同胞なる集団を探している。愛しの我が家に帰って心も体も癒したいのにだ。
どうして僕がこんなことをなんて思いながら、毎日、食費節約のお手伝いですと最早食べ飽きたタケノコを持ってくる早乙女桃花と協力して事の解決に急ぐ。早乙女桃花、もしくはイヴァンナが近くいる時は人々に呼びかけ、僕だけの時はネットで探す。それでも成果らしい成果はなく。胸が苦しくなる。見つからない、手掛かりも、足掛かりも、影も形も。何も見つからない。
そもそもはぐれた同胞たちとやらも、同胞たちだ。イヴァンナ・マハノヴァが居なくなったのなら、そちらでも探して居る痕跡が在ってもいいはずだ。なのにそれが何日も見つからないとなると、イヴァンナ・マハノヴァが迷子の果てに事件発生時の場所から遠く離れたこの街にやって来たのか、それとも彼女がその同胞たちの中で好ましく思われていないか。……やめよう、どうあっても嫌な事態と言う事に成る。
何も見つからず仕方がなくイヴァンナ・マハノヴァを家に住まわせているという劇的に変化している日々を過ごして居ると注意を払っていても、日常の些細な変化よりも気が付かれやすいように僕は思う。
なぜそう思うに至ったのかと誰かに尋ねられたのなら僕はこう言うだろう。「実体験が有るからだ」と。
「やっほー。大沢先生っ!」
「芳奈か。おはよう。……朝からピスタチオ片手に食べ歩きしているのか君は……」
「小腹が空いちゃってね。それに美味しいからついつい手を出しちゃうんだ。巷ではダイエット効果が見込めるらしいけれどね。僕としてはこんなついつい食べ過ぎてしまうような豆は人によっては逆効果になりえる諸刃の豆だよ。大沢先生が勧めてくれただけあって高カロリーだしね」
「そうか、まぁ、なんだ。気に入って貰えて何よりだよ。でも食べるならとっとと食べるか。食べるのは止めてしまうかしてくれないか」
「はーい。……んー。やっぱり……。
大沢先生、最近凄くタケノコのいい匂いがするけど何でかな? 私、大沢先生ってタケノコ食べてるイメージがあんまりないけど、実は好きだったりするの?」
僕の激変した日常に感づいたのは木下芳奈だ。飲食物をしまいながら後ろについて来て、鼻をヒクヒクと動かして僕から匂いをかぎ分ける。君は犬か何かか? なんて言っている場合じゃない、僕が迂闊だった。まさかイヴァンナ・マハノヴァの影を見てではなく。早乙女桃花のデイリープレゼントのタケノコから違和感を感じるなんて思わなかったのだ。
「そうだよ。僕はタケノコ料理とか美味しいく頂ける人だからね。それを知った友人が善意で送ってくれるから、ここ最近はタケノコ御飯とか食べてるよ」
「ふーん。ねぇ大沢先生。その友達って女の人かな? それとも男の人なのかな?」
何とか誤魔化そうとするけれど、僕の言葉の節々に木下芳佳の興味が惹かれて裏目にでる。
「女性の方だ。今ちょっと手詰まりな所を手伝って貰っているんだよ。もういいだろ? さっさと行かないと遅れるぞ」
「……はーい」
蚊帳の外にしないで、置いて行かないでと事を知れば彼女は言うだろう。でも、駄目だ。君には関係が無いのだから。関係が無いなら首を突っ込まない方がいい。そうすれば互いに楽だと、僕は思うから。
「イヴァンナ 。あの人ずっとこっちを見ているけれど知り合いか?」
「どう、何だろうか。
あんな風体の連れは居なかったように思う……が。ずっと見られているのも気になる。話しかけてみようか」
知らない人なら別に声を駆けなくてもいいのではと思うけれど、当人であるイヴァンナ・マハノヴァはふと気が付いたときにはそこに居て、ずっとこちらを見ている太った男に近寄って「そこの黄色いヘッドホンの男、どうして私達を見ている。何か用があるなら申すがいい」とどことなく尊大に声をかけた。僕と早乙女桃花に出会った頃の落ち込みっぷりと言うか、拙い気を遣おうとした阿野区長はどこへ行ったのだろうか。あの時から気分は一応回復しているからか? それとも僕か? 僕の所為なのか? 確かに僕は巣の口調でもいいとは彼女に言いはしたが。それは僕は別に僕自身に向ける口調を気にしなくていいと言ったのであって、見ず知らずの他人にモスの口調で大丈夫だとは言っていない。つまり何が言いたいのかと言うと、僕は悪くない。
「声をかけるのが速いぜ。人払いが終わってないってのによ」
「どういう……」
イヴァンナ・マハノヴァは男と何か言葉を交わし、疑問を抱いたような様子で周囲をみはじめたのに気が付いて。僕は何故周囲を見ているのかと真似て周囲を見渡す。______おかしい。この時間帯で、この街の大通りのような立ち位置であるこの場所で。どうして、こんなにも人が少ない? 今日、何か行事があったか? 無いはずだ。偶々か? いや、さっきまで……そう、あの男が出現する前までは絶え間なく交差していた人の群れが居たんだ。偶々にしても不自然だ。……ひどく嫌な予感がする。
「お父様達へ。そして我らが家族の主へ#捧__ささ__ぐ」
「なに? おとう…………なっ!? 貴様まさかロロ何ちゃらのところのか!?」
男がほくそ笑み、イヴァンナ ・マハノヴァは踵を返して僕をーの元へと走りながら「大沢先生! 逃げろ!」と叫ぶ。どうやら嫌な予感は今から当たるらしい。でも半ば予感していたとはいえ、逃げろと行動を指示されたとはいえ。何がどう起きるのか知らないのだから対処しようがない。
僕を、僕たちを襲ったのは。下手ではないが格段上手くもなくカラオケ慣れしている人間の歌声。強いて特徴を上げるなら無駄に声が大きく、見た目も合わさってオークの遠吠えとしか思えず煩いなとしか感想がない歌声だった。
頭が割れるほどに痛い。視界が揺れる。周りにいる人々も蹲って頭を抱えているところを見るに、僕と同じ状況に陥っていることが分かった。
あぁ、最悪だ。何かに巻き込まれたことが嫌に理解できて酷く気分を害しながら、歯を食い縛ってイヴァンナ・マハノヴァを見た。彼女も例外に漏れず蹲ってこの苦しみに悶えている。その背後には歌う男がにじり寄っている。
____僕が頭痛を起こして酷く気分を害している原因は恐らくあの男だ。……気に入らない。そしてイヴァンナ・マハノヴァを苦しめていることから、これからあの男が彼女にもたらす事はイヴァンナ・マハノヴァ彼女にとって好ましくない事だろう、でなければこんな苦しめるようなことはしない。……気に入らないあの男への嫌がらせはすぐさま思いついた。それに、僕はここでイヴァンナ・マハノヴァを見捨てるほど、薄情でもないと自負している。だから嫌がらせはすぐに決行された。
「おい、此処から離れるぞ。歯を食い縛れ!」
「大沢……先生?」
イヴァンナ・マハノヴァに走り寄って腕を掴んで無理やり立たせ、その場から逃げ出した。あの男はイヴァンナ・マハノヴァが目的のように見えた。だからこの女を連れて逃げ出せば、今とりあえずできるあの男への最大の嫌がらせになる。そう思っての逃走だ。瞬間、歌声が止まって、自転車に轢かれた時を連想させる衝撃が背中に走って吹き飛ばされた。
感覚的には自転車以上だ。車にひかれた時はこんな感じなのだろうか。背中に走った衝撃と落下した時の衝撃が合い舞って全身に痛みが走っている。背中に走った衝撃の方向性から。この衝撃の原因があの歌う男から来たものだと推測出来て、僕は察した。あぁ、あの男はアイツと同じなのかと。そして最悪だと改めて気分を害した。
「大沢先生!」
クソがと悪態をつきたいが、体の中の何かがきしんで声を出す事さえも辛い。目を開いて状況を確認すると男が歌をやめたことで頭痛から解放されて、人々が男から走って逃げ出している。そんなものだ。彼らは当然の行動をしている。ヒーロー気質の人間なんてのはこの場には居なかったようだ。
「無駄な足掻きはすんなよ。兄弟姉妹たちが今、逃げてった奴ら始末しに行ってっから。その後にそうせお前も死ぬんだからさ。手間、取らせるようなことすんなよ。ウッゼェな。空気読めって」
男が近づいてくる。イヴァンナ・マハノヴァは……何かを決めかねているようだ。僕は身体が動かない。逃げるか逃げないかの選択で悩んでいるなら、動けなくなった僕を置いて逃げた方が賢い。僕はそれを推奨する。動けなくなった今では、置いて行かれても僕は別にそれを咎めない。状況が状況だ。君は逃げても悪くない。
「どうする……どうする…………指揮官の言いつけを護るなら……でも大沢先生には恩が……えぇい。仕方がない! 大沢先生。今見る物は絶対に校外禁止だ。出ないと私は大沢先生を殺さなければいけなくなる!」
イヴァンナ・マハノヴァが何か決めたような様子で、僕を見た。どうして逃げ出さないんだ。なんて疑問が沸くがそれ以上に。なんで僕に向き直っているんだと疑問に思う。それに答えるかのようにイヴァンナ・マハノヴァは小石をいくつか拾いながら僕を担いで人間とは思えない速さで逃げ出し「これより戦闘を開始する」と口にした。
彼女に与えた服が変貌していく。布から光沢を持った硬そうな、強いて言うなれば装甲じみた何かへと存在を変えていく。
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横長の箱状のものは左右の部分を前方に伸びてイヴァンナ・マハノヴァを中心に挟む様にして彼女と同じ位の高さを誇る大きな車輪を形作る。また箱状の側面には縦向きの円柱が浮き出て砲身を思わせる筒を生やしていた。
上面には中心部から円柱が生えて彼女の頭部よりも頭一つ分高くなったところで頭部よりも高くなった部分が膨らんで簡素な櫓のような形状になって前方、後方、側方に砲身を思わせる筒を生やした。
背面からは地面に向けて尻尾を思わせる部位を生やしその先端にはローラが形作られている。総合的に考えると車輪の大きさが逆の、巨大な三輪車のような形状になったのだ。
「流石と言うか何と言うか。唯の布切れの存在を書き換えて武装が可能とかさ。俺のお父様は悔しがっているんだぜ? 後から来た奴がこの世界の惨状を利用して当たり前のように異能の生産技術を獲得しやがったって。その内の一体がなんか大通りで実質私は迷子でーす。はぐれましたーって言ってんだから、能力開発、どうやってんのか、確保して聞きだして、実験して、分解してサンプルにするために確保しないとだよな
でもいいのか? その身体能力で逃げ回った方が良かったと思うぜ? その形状だと動きにくいだろ?」
男の発言から。イヴァンナ・マハノヴァがアイツと同じ普通から逸脱した存在なのだと察する中で、僕の意見が男と被る。心外ではあるが同意だ。あまりにも動き辛そうだ。
するとイヴァンナ・マハノヴァは大きくカーブして、男を正面にとらえる。
「ふん、私は逃げる気はない。いま、ここで君を屠《ほふ》ってやる!」
巷で言う、お姫様抱っこをされている僕は目だけを動かして、それを見た。彼女の頭部よりも高く突き出た部分から生えた正面に向く筒が男を指す様に向きを調整されて、そして中から砲弾と思わしきものを撃ちだしたのである。
撃ちだされた砲弾と思わしきそれは、男に着弾……とはならず。男の目前で振動するように歪む空間に受け止められた。
「空気は振動を伝える。振動は音にもなる。衝撃にもなる。強い振動を身に纏えばこの通り。日本警察がもつ拳銃程度なら容易に防げる装甲が作れるんだぜ? 今のは何所と無く大砲のようだったから焦ったけれどな。射撃力が無いな」
「だからどうした! 主砲! てー!」
どうやら筒は砲身、砲弾と思わしきものはそのまま砲弾と認識していいようだ。爆音が鳴って耳が悲鳴を上げているがどうにもできず。辛い思いをしながら事の顛末を見守る事しかできない。
続いてイヴァンナ・マハノヴァは、上面の砲身で砲弾を売って居る間に、側面の砲身を男に向けて居り。そこから砲弾を発射した。
発射された2発の砲弾は、イヴァンナ・マハノヴァ自身の装備である大きな車輪を双方ともに破壊しながら男に……1つだけ着弾し。右足を抉る。
「なっ……がぁ!」
「確かに私は射撃力が弱い。だが最初に撃った副砲よりかは主砲の方が幾分かマシだ! どうやら主砲ならば通用するようだな。であれば全弾くれてやる!」
キーンとなって抉れそうな耳にとどめを刺され、意識を手放すまで僕は。僕はイヴァンナ・マハノヴァ、彼女と振動を使う男の闘いを。そっちが主砲かよと言いたくなる側面の砲台を用いて何度も何度も何度も男に打ち込んで、ミンチにしようとする様を。動けなくなった男が振動を発して彼女を傷つけて反撃している様を見ていたのだ。
気が付けば知らない天井……いや、何度か見た事がある天井がそこに在った。僕はどうやら病院に居るようで身体の節々にギブスが取り付けられている。
「入院か……」
「むっ、目が覚めたのか大沢先生! 大丈夫か!?」
僕が目を覚ましたことに気が付いて隣で転寝しそうになって居たイヴァンナが顔を覗き込んだ。包帯は巻かれているもののその様子を見るに、何度か男から反撃を受けてもなお軽症で済んだようだ。一発でこんな風になった僕が脆いのだろうか。いやそんなはずはない自転車衝突以上の衝撃を食らえば一発でこうなる可能性は誰にでも十分あるはずだ。
「イヴァンナか……あれからどうなったか……は想像できるから別にいいよ。後処理とかそこらへんは気になるけど。それは置いておいてとりあえず君の事。誰にも話さないから話してくれるか?」
「……変わらず同胞探しに協力してくれるか?」
「内容次第だけれど……なるべく協力する。僕は薄情じゃないからね」
あぁ、なんでこんな事に成ったと気分を害しながら、僕は何かよくわからないものに関わっていく。
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