付き合う条件が挿入の有無、なら

雪本 風香

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 私はもうわけがわからなくなっていた。
 何度も絢斗さんの指でイかされ、舌で舐められて。その度にぶるぶると震えるほど悦んでイヤらしく喘いで。
 尖りきった乳首も、カチカチになって触ってと主張するクリトリスも、ドロドロに蕩けているナカも。
 全部余すことなく絢斗さんの前にさらけ出していた。

 だからいつの間にかゴムを付けた絢斗さんが、私の上に乗ってきた時にもロクな抵抗をすることはできなかった。ただ、小声で。
「…………入んないよ」
 と、呟くのが精一杯だ。絢斗さんは、私を安心させるように額に、それから唇にキスを落とした。
 舌は入れてないのに。唇をハムハムと挟まれると、散々ヨガった後にも関わらず、じんわりとした快感がまた腰から背筋の辺りから生まれてくる。
「……あっ」
 私が短く声を漏らしたのが合図だった。さすがに身長差から、キスしながら挿入することは出来ない。絢斗さんは、名残惜しそうに唇を離すと、私の入り口に大きすぎるものをあてがう。
「……んっ」
 無意識に私の腰が引ける。その様子を見た絢斗さんは、安心させるように微笑んだ。
「大丈夫。ゆっくり解したから入るよ。痛かったら教えて。……それとも俺と繋がるのは、イヤ?」
 そんな聞き方はズルい。イヤなわけないんだから。
 私は首を左右に振って意思表示をする。絢斗さんは、私の返答に、良かった、と呟くと、改めて男根で入り口にキスをする。


「奈緒さん」
「……んぁ」
 絢斗さんの声は、低くて、熱っぽくて。私は呼びかけられただけなのに小さい声で喘いでしまった。
 絢斗さんは男根を慣らすように、何度か入り口付近を擦りながら私から溢れている愛液をソレにまとわりつかせる。そして、準備が整ったというようにピタリと動きを止めて。

「俺と付き合ってください、奈緒さん。…………好きだよ」

 言い終わると同時に、グッと大きい肉棒を押し込んだのだった。


 ※

「えっ!? ひっ……あっ!! いっ!! おっきっ……ぃ……痛っ……んんっ!!」
 ナカをこじ開けるように入ってきた絢斗さんのモノは、やっぱり大きくて痛みを伴っていた。けれど、予想していたよりも衝撃は少ない。更にいうなら。
「やっ! あっ!! へんっ!! 痛いのにぃ……、っつ!! ジンジンするっ!!」
「変? どのあたりが?」
 一気に奥まで突き刺されると思った私とは反対に、絢斗さんは先端だけ挿れた状態でピタリと動きを止めていた。
 それが、どうにも物足りないのだ。奥まで挿れられたら痛みは、今の比ではないのは想像出来るのに。奥の方が大きすぎる絢斗さんの男根を求めてムズムズしている。

 セックスは、男の人が気持ちよくなるための行為だと思っていたのに。
 散々舌と指で解されたからか、私の身体は覚えたての快感を勝手に追いかけていた。
「もっと……」
「もっと?」
「うん……。奥に……その……押し込んでください」
 こんな恥ずかしいおねだりをしたの初めてだ。顔が熱を持つのを感じながら、私は絢斗さんの返事を待つ。
 すぐに了承してくれると思ったのに。絢斗さんは困ったように眉を寄せた。
 その様子で私はがっかりしてしまう。と、同時にやっぱり、とも思った。私のナカが狭いから、絢斗さんは奥まで突っ込めないんだと。
「ダメ……ですか? 絢斗さん。…………私の身長低いから、奥まで入らない? やっぱり私、絢斗さんを……満足させてあげられない……」
 声が湿っぽくなったのには気付かないで欲しい。そう願ったのに、絢斗さんにはすぐ察せられた。

「泣かないでよ、奈緒さん」
「…………泣いてない」
 絢斗さんは苦笑しつつ、私の目尻の涙を拭う。
「痛いでしょ、奥まで挿れたら。先っぽだけでもこんなにキツキツに締め付けているのに」
「でも……」
 私は一瞬躊躇した。今から言おうとしたセリフは、先程とは比べ物にならないくらい恥ずかしいものだ。それでも口にしたのは、本能が、いや、私の全身が絢斗さんを求めていたから。

「ほ、欲しくなったんだから、……仕方ないでしょ!?」
 恥ずかしさから怒鳴るように告げた私に、絢斗さんは一瞬息を呑み、そして深くため息をついた。
 呆れたように聞こえるその嘆息に私は焦って言い訳をする。
「違っ……くて。じゃなくて、違わないけれど。えっと……こんなこと言うの初めてで……。今まで男の人の挿れられても早く終われって思っていたけれど、……あ、絢斗さんのだったら痛くても。……お、奥まで挿れて欲しくなって……。っていうか、奥に挿れないってことは私のサイズ、やっぱり合わないってこと……だよね?」
「違う」
 間髪入れずに答えた絢斗さんは、もう一度深くため息をついた。

「言ったでしょ、女の子の身体は気持ちよくなるためにあるって。奥まで挿れたら奈緒さん、気持ちよくなるよりも痛みの方が勝つよ」
「…………いいの、それでも」
「ダメ。俺がイヤ」
「なんでよ。ってか、今までの男の人なんか問答無用で挿れていたし、痛みがあるのは慣れて……」
だよ」
  
 今度は絢斗さんが怒ったように言ってくる。
「奈緒さんはさ小柄だしセックスは痛みがあるのが普通って思ってるでしょ。俺のモノだって、自分が小さいから入らないって思いこんでいるし。俺とソイツは違うのに、前の男から言われたくだらない言葉を引き摺って、告白したのに変な風に断ろうとするし」
 私はそこでやっと気づいた。これは怒っているんじゃなくて。
「絢斗さん、もしかしてヤキモチ? ってか不貞腐れてる?」 
 ぐぅ、と絢斗さんの喉が鳴る。図星だったようだ。私はそんな絢斗さんが可愛くて、つい笑ってしまった。
「んっ! ……はぁ」
 笑った瞬間、私のナカが震えて絢斗さんのモノを締め付けてしまう。繋がっているところから感じたのは痛みではなく、快感だった。
 挿入してからずっと絢斗さんが動いていないことに、私はようやく気づいた。それが男の人にとってどれだけ忍耐力がいるのか、朧気ながら理解しているつもりだ。私のが馴染むまでじっと耐えている絢斗さんが、愛おしくて、私は覆いかぶさっている身体をぎゅっと抱き締めた。
「ちょっ……」
 不意打ちだったのか、絢斗さんがバランスを崩して私の上にのしかかる格好になる。大きな身体は私に女を自覚させるには充分であった。
 しかし、自分とは違う大柄で男性らしく筋肉質な身体に酔いしれる間はなかった。一気に私に体重がかかった瞬間、グッとナカに絢斗さんの肉棒が押し込められた。

「ひゃあ!! いった…………あっ!! んんっ!!」
「っつ! ごめっ…………。はぁ、……きっつ……。ってか、半分しか入ってないのにこんなに締め付け強いとか、反則だろ。……これ耐えんの、拷問でしかないし」
 絢斗さんは熱い息を漏らしながら眉間にシワを寄せて何かを我慢するように歯を食いしばる。痛みの中に間違いない快感を感じながら、私も乱れる呼吸で囁いた。
「これくらいなら我慢できるから。だから……」
 好きに動いて、という私の言葉は絢斗さんの視線に黙殺された。

「……ちゃんと慣らせば身長差とか関係なく挿入できるって証明したいし。……なにより、俺の手で奈緒さんを気持ちよくヨガらせたいの」
「……そんなの、何度も身体重ねてたらいずれ慣れるでしょ」
 私の放った一言に、なぜか絢斗さんは固まった。そして深く深く息を吐くと、独りごちる。

「なんでそういうことは軽はずみに言うかな」
「軽はずみって……」
「そうでしょ。告白は断ろうとするのに、挿れたら付き合うって言って、あっさりとホテルまでついてくるし。今だってっ簡単に言うけど」
 絢斗さんは私をジロリと見る。
「俺、何もOK貰えてないんだよ。告白の返事も付き合うのも」
「そ、そんなの、……言わなくても……わか……」
「わからない」
「だって……私、誰とでもこんなことしない……」
 絢斗さんは私の目を見据えてもう一度同じ言葉を繰り返した。
「そうだとしても、言ってくれないとわからないから」
 絢斗さんはもう一度ため息をつく。

「奈緒さん、俺のこと思って挿入出来るか気にしていたけどさ。ちゃんと出来てるから。ってか、心外なんだけど。俺がセックス出来ないから振る男だと思われていたなんて」
「う……。ご、めんなさい」
 私の謝罪に絢斗さんは、真面目な顔を向けた。
「本当に悪いと思ってる?」
「お、思ってるよ!」
 私は絢斗さんに即答する。
 絢斗さんは、なら、と低い声で囁いた。

「俺のこと、好きって言ってよ。好きだからホテル来たし、ちゃんと付き合いたいって……。言ってよ、奈緒さん」
 最後の方は懇願だった。
 自分より40センチも身長が高くて、体躯通りに堂々としていたのに。のしかかっているから逞しい身体が目の前にあるのに、不思議と小さく見える絢斗さんが滑稽で私は笑ってしまった。
「なに?」
 ジト目で見てくる絢斗さんに、私はキスしたくてたまらなくなった。さすがに繋がったままじゃ届かないのを残念に思いながら、私は絢斗さんの目を覗き込む。

「好き。……じゃないと挿入出来るか気にしないし、ノコノコホテルについてこないよ」
 私の言葉に、絢斗さんの肩からホッと力が抜ける。そして確認するように口を開いた。
「ならお付き合いを……今日、というか今から彼女、ということでよろしいでしょうか?」
 何故か敬語になる絢斗さんにつられて私も敬語で返す。
「はい、よろしくお願いします」

 絢斗さんは嬉しそうに微笑むと、ゆっくりと挿入していたモノを抜いた。えっ、と声に出した私に、絢斗さんは改めて口を開いた。

「ならさ、最初から仕切り直していい? 付き合うかどうか試すためのセックスじゃなくて。奈緒さんと恋人同士として繋がりたい」

 ここまでで大分時間を使って疲れ果てているのにも関わらず、私は絢斗さんの言葉にゆっくりと頷いていたのだった。
 
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