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焦げた!生焼け?雪崩るワッフル 6
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後は酔いつぶれる様に作業場の畳の部屋で寝落ちをすればかたかたと言う物音に目を覚ませば
「飯田さん?」
「ああ、起こしてすみません。朝ご飯用意してるので食べれたら食べて行ってくださいね」
時計を見ればまだまだ暗い朝の三時半。
手元の明かりから零れ落ちた光で俺の側で宮下と篠田が寝ていた。
「先生達は隣で寝てるので気にしなくて大丈夫ですよ」
なんて言いながらもぎっ、ぎっ、と床を踏みしめる音が聞こえた。
妙に生々しく聞こえる音に背筋がぞっとする物の足元だけを照らすライトに浮かび上がる姿を見てほっとしてしまう。
「ああ、なんだ。夜月も起きてたのか」
「先生おはようございます。なんか目が冷めちゃって……」
「ああ、シェフの朝飯につられたか」
「そう言う先生は?」
手に持つ着替えに気付かずにはいられない。
「とりあえず風呂。シェフは風呂入ったのか?」
「はい。疲れないようにざっとですが、今ならちょうどいい温度ですよ」
「それは何より」
言いながら風呂場へと向かう背中を見ていれば
「何だ?一緒に入るか?背中流してやるぞ」
そんなお誘い。
慌てて結構ですと言う様に顔を横に振って
「あとからで十分です」
「そうか?」
言ってニヤニヤと笑う姿にからかわれた事にやっと気が付いた。
先生ってこんな人だっけ?
もっと感情がないような、フラットな人だと思ってたのにと訝しげになっていれば
「おはよー。あ、夜月早いね」
「あ、いや、俺はなんか目が覚めただけ」
「そう?じゃあ、もう少し寝るといいよ。さすがにまだ早いだろうし」
さっきまで横で寝ていたと思ったのに妙に爽やかな顔で起きてきた宮下は既に着替えも済ませていた。
「そう言うお前は?もう着替えてるし……」
早起きしすぎだろと思うも
「飯田さんお見送りしたらお風呂に入ろうと思ってね」
は?帰るって……
「今から?」
「はい。東京に戻って一眠りしてから夕方の仕込に仕事に行かなくてはいけないので」
「無謀だろう……」
「この時間帯だと高速もまだ空いているのでそこまで疲れませんよ」
なんて笑顔。
この笑顔がだんだん怖く思っている間に
「じゃあ、気を付けて帰れよー」
なんて先生は風呂へと向かって行ってしまった。物凄くドライで俺の知ってる先生でほっとした。
「では宮下君、ご飯の準備は出来たので後はお任せします」
「いえ、こちらこそ後片付けまでしてもらってすみません。しかも夜月のお世話まで……」
「ああ、それは頼まれていたので心配しないでください」
頼まれてたって
「ひょっとして魔王に?」
じろりと飯田さんに睨まれた。
きゅっとおまたが縮こむような恐怖を覚えてしまって無意識で宮下の背中に隠れた。だけど宮下は気にしないと言う様に笑い
「いくら自分がおしゃれな古民家カフェに行きたいからって、ほんと飯田さんにこんな事まで頼むなんて人使い荒いよな。
魔王って呼ばれてもホント仕方がないよ」
やれやれと言う言い草にそうだそうだと言いたいが
「だけど人の家を自分好みの古民家カフェに改造させた挙句に飯田さん仕込みの料理を他人に作らせるんだから魔王って言っても間違いないよな」
うーん、なんて真剣に本当に良いのかと言う宮下と飯田に俺も初めて疑問に辿り着いた。
そういや、魔王に勧められるままリフォームして家具を再利用したりバリスタでもないのにすごいレベルのコーヒーの淹れ方を学んだりして、何だか手の上で転がされてる気分……
「俺魔王に嵌められてる?!」
「今頃気付いたのですか?
まあ、魔王って呼んでるんだから立派な魔王らしくっていいじゃありませんか」
魔王の腹心の部下の飯田さんはにっこりとそれこそ感情が分らないくらいの良い笑顔を浮かべていた。
ああ、もう完全に憑りつかれてるじゃん俺……
通りでいろんな人に「いいの?」「本当にいいの?」と繰り返し聞かれたはずだと今更ながら気付く。うちの親とか婆ちゃんとか、みんな無防備に恩人の孫だからと言う事なんでも受け入れてるし、お袋も俺に色々と世話をしてくれるので良い人だと思ってるし……
「だけどまさか俺の金で魔王の心地よい空間作るなんてあり得るのか?!」
「すごく悦んでたの夜月じゃん。一切の否定なしに」
「そうだった!」
誰よりも周囲の疑問に耳を傾けれないほど鼻血を流して興奮してたのは俺であって……
「まぁ、長い事営業してもらうつもりのようですのでここは今まで同様疑問を持たずに魔王の下僕として言いなりになりましょう。
なに、言う事を聞く忠実な下僕は色々親切にする傾向があるので魔王の部下で良かったと思う日が来るまで頑張りましょう」
「俺が働いていた会社よりもブラックな職場になったんだけど?!」
涙ながらに訴えれば
「安心してください。
ブラックも続けばそれはホワイトと言うのが持論なので社会が決めた基準何て忘れましょう。それに労働基準法は労働者を守る法律なので他人に雇われてない個人事業主は労働者ではないので労働基準法では守られませんよ?」
……。
そんな話高校の時に勉強したような?ないような?
こういう時質問したい先生は今は風呂だし、理科の教師だから聞いても知らんとか言われそうだし……さすがにそれはないよね?何て不安に思うも聞こえてくる鼻歌のせいでもう不安しかない。
憧れ焦がれた神動画の主達は現実では容赦ない悪魔で、それに毒された下僕達で構成されていると言う魔界だった。
「飯田さん?」
「ああ、起こしてすみません。朝ご飯用意してるので食べれたら食べて行ってくださいね」
時計を見ればまだまだ暗い朝の三時半。
手元の明かりから零れ落ちた光で俺の側で宮下と篠田が寝ていた。
「先生達は隣で寝てるので気にしなくて大丈夫ですよ」
なんて言いながらもぎっ、ぎっ、と床を踏みしめる音が聞こえた。
妙に生々しく聞こえる音に背筋がぞっとする物の足元だけを照らすライトに浮かび上がる姿を見てほっとしてしまう。
「ああ、なんだ。夜月も起きてたのか」
「先生おはようございます。なんか目が冷めちゃって……」
「ああ、シェフの朝飯につられたか」
「そう言う先生は?」
手に持つ着替えに気付かずにはいられない。
「とりあえず風呂。シェフは風呂入ったのか?」
「はい。疲れないようにざっとですが、今ならちょうどいい温度ですよ」
「それは何より」
言いながら風呂場へと向かう背中を見ていれば
「何だ?一緒に入るか?背中流してやるぞ」
そんなお誘い。
慌てて結構ですと言う様に顔を横に振って
「あとからで十分です」
「そうか?」
言ってニヤニヤと笑う姿にからかわれた事にやっと気が付いた。
先生ってこんな人だっけ?
もっと感情がないような、フラットな人だと思ってたのにと訝しげになっていれば
「おはよー。あ、夜月早いね」
「あ、いや、俺はなんか目が覚めただけ」
「そう?じゃあ、もう少し寝るといいよ。さすがにまだ早いだろうし」
さっきまで横で寝ていたと思ったのに妙に爽やかな顔で起きてきた宮下は既に着替えも済ませていた。
「そう言うお前は?もう着替えてるし……」
早起きしすぎだろと思うも
「飯田さんお見送りしたらお風呂に入ろうと思ってね」
は?帰るって……
「今から?」
「はい。東京に戻って一眠りしてから夕方の仕込に仕事に行かなくてはいけないので」
「無謀だろう……」
「この時間帯だと高速もまだ空いているのでそこまで疲れませんよ」
なんて笑顔。
この笑顔がだんだん怖く思っている間に
「じゃあ、気を付けて帰れよー」
なんて先生は風呂へと向かって行ってしまった。物凄くドライで俺の知ってる先生でほっとした。
「では宮下君、ご飯の準備は出来たので後はお任せします」
「いえ、こちらこそ後片付けまでしてもらってすみません。しかも夜月のお世話まで……」
「ああ、それは頼まれていたので心配しないでください」
頼まれてたって
「ひょっとして魔王に?」
じろりと飯田さんに睨まれた。
きゅっとおまたが縮こむような恐怖を覚えてしまって無意識で宮下の背中に隠れた。だけど宮下は気にしないと言う様に笑い
「いくら自分がおしゃれな古民家カフェに行きたいからって、ほんと飯田さんにこんな事まで頼むなんて人使い荒いよな。
魔王って呼ばれてもホント仕方がないよ」
やれやれと言う言い草にそうだそうだと言いたいが
「だけど人の家を自分好みの古民家カフェに改造させた挙句に飯田さん仕込みの料理を他人に作らせるんだから魔王って言っても間違いないよな」
うーん、なんて真剣に本当に良いのかと言う宮下と飯田に俺も初めて疑問に辿り着いた。
そういや、魔王に勧められるままリフォームして家具を再利用したりバリスタでもないのにすごいレベルのコーヒーの淹れ方を学んだりして、何だか手の上で転がされてる気分……
「俺魔王に嵌められてる?!」
「今頃気付いたのですか?
まあ、魔王って呼んでるんだから立派な魔王らしくっていいじゃありませんか」
魔王の腹心の部下の飯田さんはにっこりとそれこそ感情が分らないくらいの良い笑顔を浮かべていた。
ああ、もう完全に憑りつかれてるじゃん俺……
通りでいろんな人に「いいの?」「本当にいいの?」と繰り返し聞かれたはずだと今更ながら気付く。うちの親とか婆ちゃんとか、みんな無防備に恩人の孫だからと言う事なんでも受け入れてるし、お袋も俺に色々と世話をしてくれるので良い人だと思ってるし……
「だけどまさか俺の金で魔王の心地よい空間作るなんてあり得るのか?!」
「すごく悦んでたの夜月じゃん。一切の否定なしに」
「そうだった!」
誰よりも周囲の疑問に耳を傾けれないほど鼻血を流して興奮してたのは俺であって……
「まぁ、長い事営業してもらうつもりのようですのでここは今まで同様疑問を持たずに魔王の下僕として言いなりになりましょう。
なに、言う事を聞く忠実な下僕は色々親切にする傾向があるので魔王の部下で良かったと思う日が来るまで頑張りましょう」
「俺が働いていた会社よりもブラックな職場になったんだけど?!」
涙ながらに訴えれば
「安心してください。
ブラックも続けばそれはホワイトと言うのが持論なので社会が決めた基準何て忘れましょう。それに労働基準法は労働者を守る法律なので他人に雇われてない個人事業主は労働者ではないので労働基準法では守られませんよ?」
……。
そんな話高校の時に勉強したような?ないような?
こういう時質問したい先生は今は風呂だし、理科の教師だから聞いても知らんとか言われそうだし……さすがにそれはないよね?何て不安に思うも聞こえてくる鼻歌のせいでもう不安しかない。
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