裏路地古民家カフェでまったりしたい

雪那 由多

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焦げた!生焼け?雪崩るワッフル 10

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「こうなると美味しいジャムとかも欲しくなるし、そうだ。ホイップクリームも作るのなら衛生面には気を付けなさいよ。ホイップは傷みやすいんだから食べる直前にホイップして冷蔵庫で管理。翌日には持ち越さないが鉄則よ?」
「母さん詳しいなあ?」
「そりゃあ若い頃喫茶店でアルバイトぐらいしていたもの。その時に学んだ知識よ」
「へー」
 俺が知る母さんは隣の街の本屋で働いてるぐらいしか知らないが
「そういやパート辞めたの何でさ」
 俺が帰って来る直前にパートを辞めたと聞いてどうしたもんだかと思っていたが、爺ちゃんの葬式と店の立ち上げで今更だが聞いてみても良いだろうかと思えば
「スーパーとかと一緒にテナントとして本屋が入ってたじゃない。
 スーパーの撤退と共に建物の維持費が出来なくって建物自体が閉鎖する事になったの。老朽化もあったしね。
 ほんと母体が弱いと生き残れないなんて世知辛いわぁ」
 世知辛いと言いながらも至福の顔でワッフルを口に運んではコーヒーを飲み、幸せその物の顔をしているお袋に次は飯田さん作とまでは言わないが美味しいワッフルを食べてもらいたいと決意する。
とりあえず作ったワッフルを食べ終えた所で
「よし、もう一度作るぞ」
 お皿を流しに持って行けば
「今日一日家にいるの?
 だったらお母さんちょっと出かけて来るからよろしく」
「ほいよー。
 因みに帰宅時間は?」
「お昼には帰って来るけど時間が分らないからご飯は適当に食べててね。
 隣町のホームセンターのパートの面接なの。行ってくるわね」
「頑張って。って言うかそう言うのは早く言えよ」
「昨日連絡来たの。燈火がいなかったから仕方がないじゃないの」
「そうでした……」
 一日所か朝帰りまでした俺は申し訳なさそうな態度をしながらもそんな事気にしないと準備をしたお袋が車に乗って出かけて行くのを見送ればさてと言う様に俺も綺麗に洗った調理器具を拭ってからまた並べて

「さて、もう一度焼くか」

 手順はまだぼんやりなのでまた一から動画を再生する。
 計量はもうお手の物だし混ぜる時の失敗はもうない。かき混ぜる時も注意してみた物の焼き上がりがさっきは焼きすぎたのでと少し早めにとすれば見事
「まさかの生焼け……」
 焼くのにそこまで時間は必要ないとは言え失敗するとかある?いや、お前失敗しただろと自分で自分に突っ込みながらもうちょっと焼いて誤魔化しておく。
 二度焼だからか焼ムラが出来て美しくないので再リベンジ。
 今度は分量を見誤って角っこがきっちりと作れなくって美しくないと失敗。
 まさかのワッフルメーカーのコツがわからなくってもう一度粉を振るう所から再チャレンジ。
 今度はお袋のワッフルメーカーも使って時短を計る様に纏めて焼けば
「何で同じ生地を使って食感が変わるんだ?
 ワット数の違いとか……だったしwww」
 そんな所で違いがあるのかありえねえと店で使うのなら同じものを用意しないとなとスマホのメモ帳に記録しておく。
 ついでにたまたま手に入れたワッフルメーカーだけどネットで他にどんな機種があるのか調べてみれば
「へー、ハート形とかキャラクター物もあるんだな。 
 だけどやっぱりワッフルは丸か四角だよな」
 ベルギーワッフルみたいなものなら丸いワッフルが作れるのだろうが、このワッフル生地では四角いワッフルしか作る事が出来ない。いや、むしろ四角い方がいいんじゃね?なんて思うも
「へー、直火式のワッフルプレートもあるのか……」
 そう言えば売り場にあったなと思えばバターの残りの心もとなさに俺は財布を持って家の鍵を閉める。

「ちょっと買ってみようか」
  
 本当にちょっとしたノリだった。
 生地を作るのは慣れれば割と簡単だったし、何度か作るうちに手順も体に沁みついて計量も苦ではなくなって楽しくなってきた。
 たかがワッフル、されどワッフル。
 楽しくなってきたと言う気持ちの先にまさか沼が存在してるとは考えてもいなかった。



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