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ブラック?ミルク?基本のコーヒー牛乳 9
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俺が手伝うよりも圧倒的に早い篠田の仕事に俺は一枚の壁を塗るのがやっとだった。しかも梁から上の小さい部分一区画だけ。
いや、それでも早すぎだろと思う合間にも篠田は鏝で押さえて漆喰に艶を出して行き、陽の長い夏場で外が賑やかになる頃山川さんは戻ってきた。
「おう、大体終わったか?」
「あともう少し」
残り一面の壁を指させばすぐに蒼さんと園芸部が動いてくれてあっという間に仕上げてしまうのを山川さんは満足げに目を細めて静かに微笑んでいた。
弟子の仕事の速さと行動力そして質の良さに満足した顔かは判らないが、仕事に満足している顔を俺は知っている。
山口さんが納得の一杯を入れた時のような満ちたりた顔。
飯田さんが自信を持って淹れたコーヒーを飲んだ時の俺が感動した時を見守る顔。
俺が辿り着くにはまだまだ先の事だが、自分の仕事に自信を持つ人が作る表情はどれも見ている人まで安心してしまう力を持っていた。
俺もそう言う人になりたい、そう言う思いが育っていた事に驚きながらも仕事を仕上げた様子を見て山川さんは俺にも聞こえる様に三人にレクチャーを始めた。
「明治や大正時代の建築物になると天井と壁の間に装飾部分があるのを知っているか?」
俺も含めてふるふると首を横に振るのを知ってたと言う様に山川さんは笑い
「ヨーロッパ建築でもよく見られる手法で漆喰石膏装飾と言う」
言いながら壁と天井の直角になう部分に向かって漆喰を山盛り一直線につけて行く。
何が始まったのか見ていれば、篠田達も俺なんかよりも真剣に食い入る様に見上げていた。
「これは俺の手作りの型で、木の型に鉄板を巻いて作ってもらった特注品だ」
言いながらその山盛りの漆喰に押し付けて数回挽いた所で柔らかな曲線で装飾される境目が出来上がるのだった。
「『置き引き工法』と言って、代表的なのが東京駅のドーム天井で見る事が出来る。色々漆喰アートもあって中々に壮観だぞ」
言いながらも板を渡り歩きながらあっという間に美しいシンプルなラインを作り上げて、小さな鏝で余分な漆喰を落したり境目が分らないようにならしながら調整をしていた。
「圭斗なら天井と壁の境を発砲スチロールかなんかで装飾するあれのを知ってると思うが発想の原型になる奴だ」
「さすがに発泡スチロールはないけど、これ漆喰で出来るんですね」
「できるさ。古い城とか洋館にはこう言う装飾は一種のステータスだからな」
「つまり、お金がかかるのですね」
「腕が必要になるからな」
からからと笑う山川さんは
「一階は俺が責任もって仕上げるから二階部分はお前達に任すぞ」
残り三面を三人でやれと言うミッション。三人に出来たばかりの型を渡すのを見て、これを教える為に山川さんが用意してくれたのは言うまでもない。
すぐに蔵の外で漆喰を練ってバケツに移し替えてブルーシートを敷いた床の上に置いて直ぐに作業にかかる三人の仕事の速さに感心をする。
だけど山川さんはそんな三人を俺の横で見てるだけ。
「一階部分をやるんじゃないんですか?」
「まだ古い壁を落してないのに出来ないよ」
言われたらそう言えばそうだなと気が付く。
「一階部分は明日やるつもりだ。
剥がして補修して塗りつけて、それなりに面積もあるからいくら圭斗が仕事が早くなってもこればかりはどうしようもないし高い金額を頂戴するのだからそれに見合った仕事をしないとならねえ。更に蒼と遠藤もどこに行っても使える様に育てるとなればちょうどいい練習場だ」
かかと笑う山川さんの言う事に納得しながらも少し呆れてしまうも
「そういや宮下はどうなんだ?」
確か一緒に漆喰塗ってたりしてたよなと思うも
「ああ、あいつは器用だからね。圭斗より先にいろいろ教えてあるから卒業したよ」
「宮下すげーな」
「ふふふ、これで資格試験通れたら問題ないんだけどね」
「宮下相変らずだな」
「ふふふ……」
どことなく寂しそうな顔をしている様子に
「でも篠田もいるし蒼さんとか園芸部だっているじゃないっすか!」
人材は豊富だと気を持ちなおすように声をかけるも
「俺はね、あの四人を一人前に仕事をさせる大将をホント尊敬してるんだよ。
何て事無くさせていたから軽く考えていたけど、すごく根気がいてね、弟子を抱えるのとはまた違ったむずかしさがあってな、身体に教え込むのがやっとだったんだ。むしろそっちはスムーズなのによく電気工技師の資格取らせたって大将を尊敬するよ」
風前の灯のような姿の山川さんにこれ以上聞けないと言う様に口を閉ざしてしまう中思い出す。
「そういや浩太さんと鉄治さんの姿は見えませんね」
今頃気付いたのも何なんだが無理やり話を反らせて気分も強引に入れ替える。
「おう、あの二人は家の中で仕事してるぞ。二階にいるから顔を見せて来い」
どこかまだ目は死んでいるけどそう言って促してくれるのでありがたくこの場を後にさせてもらう。何だか胃の辺りをさすっているのが心配だけどそこは色んな意味を含めて心配だけして置いた。
いや、それでも早すぎだろと思う合間にも篠田は鏝で押さえて漆喰に艶を出して行き、陽の長い夏場で外が賑やかになる頃山川さんは戻ってきた。
「おう、大体終わったか?」
「あともう少し」
残り一面の壁を指させばすぐに蒼さんと園芸部が動いてくれてあっという間に仕上げてしまうのを山川さんは満足げに目を細めて静かに微笑んでいた。
弟子の仕事の速さと行動力そして質の良さに満足した顔かは判らないが、仕事に満足している顔を俺は知っている。
山口さんが納得の一杯を入れた時のような満ちたりた顔。
飯田さんが自信を持って淹れたコーヒーを飲んだ時の俺が感動した時を見守る顔。
俺が辿り着くにはまだまだ先の事だが、自分の仕事に自信を持つ人が作る表情はどれも見ている人まで安心してしまう力を持っていた。
俺もそう言う人になりたい、そう言う思いが育っていた事に驚きながらも仕事を仕上げた様子を見て山川さんは俺にも聞こえる様に三人にレクチャーを始めた。
「明治や大正時代の建築物になると天井と壁の間に装飾部分があるのを知っているか?」
俺も含めてふるふると首を横に振るのを知ってたと言う様に山川さんは笑い
「ヨーロッパ建築でもよく見られる手法で漆喰石膏装飾と言う」
言いながら壁と天井の直角になう部分に向かって漆喰を山盛り一直線につけて行く。
何が始まったのか見ていれば、篠田達も俺なんかよりも真剣に食い入る様に見上げていた。
「これは俺の手作りの型で、木の型に鉄板を巻いて作ってもらった特注品だ」
言いながらその山盛りの漆喰に押し付けて数回挽いた所で柔らかな曲線で装飾される境目が出来上がるのだった。
「『置き引き工法』と言って、代表的なのが東京駅のドーム天井で見る事が出来る。色々漆喰アートもあって中々に壮観だぞ」
言いながらも板を渡り歩きながらあっという間に美しいシンプルなラインを作り上げて、小さな鏝で余分な漆喰を落したり境目が分らないようにならしながら調整をしていた。
「圭斗なら天井と壁の境を発砲スチロールかなんかで装飾するあれのを知ってると思うが発想の原型になる奴だ」
「さすがに発泡スチロールはないけど、これ漆喰で出来るんですね」
「できるさ。古い城とか洋館にはこう言う装飾は一種のステータスだからな」
「つまり、お金がかかるのですね」
「腕が必要になるからな」
からからと笑う山川さんは
「一階は俺が責任もって仕上げるから二階部分はお前達に任すぞ」
残り三面を三人でやれと言うミッション。三人に出来たばかりの型を渡すのを見て、これを教える為に山川さんが用意してくれたのは言うまでもない。
すぐに蔵の外で漆喰を練ってバケツに移し替えてブルーシートを敷いた床の上に置いて直ぐに作業にかかる三人の仕事の速さに感心をする。
だけど山川さんはそんな三人を俺の横で見てるだけ。
「一階部分をやるんじゃないんですか?」
「まだ古い壁を落してないのに出来ないよ」
言われたらそう言えばそうだなと気が付く。
「一階部分は明日やるつもりだ。
剥がして補修して塗りつけて、それなりに面積もあるからいくら圭斗が仕事が早くなってもこればかりはどうしようもないし高い金額を頂戴するのだからそれに見合った仕事をしないとならねえ。更に蒼と遠藤もどこに行っても使える様に育てるとなればちょうどいい練習場だ」
かかと笑う山川さんの言う事に納得しながらも少し呆れてしまうも
「そういや宮下はどうなんだ?」
確か一緒に漆喰塗ってたりしてたよなと思うも
「ああ、あいつは器用だからね。圭斗より先にいろいろ教えてあるから卒業したよ」
「宮下すげーな」
「ふふふ、これで資格試験通れたら問題ないんだけどね」
「宮下相変らずだな」
「ふふふ……」
どことなく寂しそうな顔をしている様子に
「でも篠田もいるし蒼さんとか園芸部だっているじゃないっすか!」
人材は豊富だと気を持ちなおすように声をかけるも
「俺はね、あの四人を一人前に仕事をさせる大将をホント尊敬してるんだよ。
何て事無くさせていたから軽く考えていたけど、すごく根気がいてね、弟子を抱えるのとはまた違ったむずかしさがあってな、身体に教え込むのがやっとだったんだ。むしろそっちはスムーズなのによく電気工技師の資格取らせたって大将を尊敬するよ」
風前の灯のような姿の山川さんにこれ以上聞けないと言う様に口を閉ざしてしまう中思い出す。
「そういや浩太さんと鉄治さんの姿は見えませんね」
今頃気付いたのも何なんだが無理やり話を反らせて気分も強引に入れ替える。
「おう、あの二人は家の中で仕事してるぞ。二階にいるから顔を見せて来い」
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