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顔をあげれば古民家カフェ三日月 1
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店の名前が決まったら後は怒涛の忙しさが押し寄せてきた。
宮下が案内代わりにとHPを作ってくれたり、カードまで作ってくれた。
何より感動したのが長沢さんの奥様はあの一枚板に
『古民家カフェ 三日月』
少し癖のあるどこか独特の味のある文字で書いてくれた。
それを長沢さんが彫刻で掘ってくれて墨を入れてくれた。
本当は何とかってペンキみたいなものなのだが、仕事柄昔通り墨を入れると言うらしい。
「他の地域じゃ知らんがな」
まさかの適当だった。
いや、ここまで来たらもういいけどさ。
立派に仕上がった看板を浩太さんと篠田に取り付けられるのを皆で右側が下がってる!縁起悪いぞ!何て騒々しくも掲げたのが一番のイベントだった。
後は購入した食器の梱包を外したり、宮下の作業場からの家具の搬入、購入した家具の設置など手伝ってくれる友人が篠田達しか居ないのでとにかく栄養ドリンクを飲みながら頑張った。
それに加え俺の二階への引っ越し。
ベットを購入するのもお金がかかるからと篠田がベッドを作ってくれた。ありがたい申し出にマットレスはちゃんと当然ながら自腹を切らせてもらうのだった。
二階の家具の購入はそれぐらいで、食器とかは爺ちゃんの家の色々な物を処分する時に確保していたお皿やお茶碗とかを使わしてもらう事にした。
電化製品はさすがに一式買い替える。電子レンジに冷蔵庫にその他もろもろも購入する。なんせお店側の方はあの魔王によって家電まで色々指示が入っていたので俺はその指示に沿ってネットで探して購入をした。
当然ネットで探せって指令もあったけどね。
だけど解せないのは店舗の方は隙無く総ての指示を出してくれたのに自宅の方は一切指示を出してくれなかった。
「そりゃ当然だよ。プライベートにまでとやかく首つっこまない性質だし」
「多少は首を突っ込んでもらいたかった」
そう。
例にもれず俺が選ぶセンスは最悪だとお袋に言われ続けている。
大丈夫。
そこは自覚ある件。
なので近くのニ●リに篠田達を買い物に付き合ってもらおうとすれば
「実桜さん。出番ですよ!」
園芸部が大声で呼びだしてくれた。
何をと思ったが
「良いですか?うちの社長は値段で物を選ぶし、宮下さんは自分の欲しい物しか選べないですから。カラーリングとか統一感のセンスなら実桜さんが抜群ですから。
無駄遣いできないのは判ってるので後悔しない買い物をしてください」
絶望的な事を聞かされた気がした。
「お前ら、それでよく人様の家を作ろうとしてるな」
「だって材木の色って選びようがないじゃん」
開き直った宮下の言葉にほんとに魔王がいてくれてよかった。魔王の下僕と言う地位を得た事で古民家カフェが迷走しなくてよかったとそっと涙をぬぐうのだった。
「燈火~、クローゼットに衣類入れたけどあんた服はこれだけしか持ってないの?
働いてた時のスーツはどうしたの!」
そんな叫び声に俺は二階に駆け上がれば
「一々大声で言うなよ!
スーツ何てもう着る予定もないしよれて傷んでるから要らないだろ!」
さらに言えばスーパーの衣料コーナーで買った一万円前後のスーツ。成人式の時に婆ちゃんが買ってくれたスーツだってもう体形が変わって着れなくなって処分したと言うのに……
はい。俺、深夜飯のせいでかなり太りました。深夜のラーメン最高です!
おかげで高校時代から10Kgプラスされてます。
高校時代が痩せすぎだったのもあるかもしれないけど、だからと言って10Kgはよろしくありません。
ですが深夜のラーメンは今も止められません。
時々お袋がやってきて
「燈火何で一人で良い匂いさせてるのよ!」
なんて俺からラーメンを奪っておいて
「これでお母さん太ったら燈火のせいだからね!」
あまりにも理不尽な捨て台詞を言うので太ってしまえと呪いをかけておく。勿論効果抜群のようだ。
そうこうしながら高校時代の友人達にDMを送る。LIMEで三年のクラスの時のルームがまだあるのだがそこに今も名前を残すメンバーに古民家カフェを開く事にしたと場所とオープン日時を書きこんで
「良かったら近くに立ち寄った時は覗いてみてください」
そんな定型文を書いておいた。
もちろんみんな祝福する言葉と遊びに行くね!そんな言葉が繋がって行く。
だけど社会人になってそんな言葉がただのあいさつ程度の物だと病むほど理解した俺は悪いが真に受けない。
随分ひねくれてしまったけど、それが大人と言う物だろう。
だけど俺は落ち込まない。
相手の顔を見ずに書きこんだ文字よりも篠田、宮下と言う毎日のように顔を合わせてああだこうだと討論しながら店を作ってきた仲間がいる。
それに付き合う様に蒼さんと兄貴夫妻に癒しの凛ちゃん。更に兄貴の作業場のおばさま達(と言わないと怒られる)に内田家族に長沢夫妻、園芸部から園芸部の元の職場の人達とこの半年近くの間に高校時代の友人よりも強い信頼を得た人達とのつながりも出来た。
さらに篠田に連れて行かれた商工会にも登録してもらい、観光業がメインとなってしまった街の繋がりも出来た。
爺ちゃんは有名人なのか知らないけど
「夜月さんのお孫さんかい?」
「あの家を引き継いでくれるなんて立派な孫で夜月さんも今頃あっちで大泣きだろう」
新入りなのにものすごく温かく受け入れてくれて涙が出そうになった。
一日では終わらなかった引っ越し作業の合間に店の調理場の使い心地も確かめて行く。
空調の試運転、会話を邪魔しないように流れるジャズクラッシック。確認する事はいろいろあるが、各種手続きも終わり七月の夏休み前に問題なくオープンが出来る手筈が出来た。
宮下が案内代わりにとHPを作ってくれたり、カードまで作ってくれた。
何より感動したのが長沢さんの奥様はあの一枚板に
『古民家カフェ 三日月』
少し癖のあるどこか独特の味のある文字で書いてくれた。
それを長沢さんが彫刻で掘ってくれて墨を入れてくれた。
本当は何とかってペンキみたいなものなのだが、仕事柄昔通り墨を入れると言うらしい。
「他の地域じゃ知らんがな」
まさかの適当だった。
いや、ここまで来たらもういいけどさ。
立派に仕上がった看板を浩太さんと篠田に取り付けられるのを皆で右側が下がってる!縁起悪いぞ!何て騒々しくも掲げたのが一番のイベントだった。
後は購入した食器の梱包を外したり、宮下の作業場からの家具の搬入、購入した家具の設置など手伝ってくれる友人が篠田達しか居ないのでとにかく栄養ドリンクを飲みながら頑張った。
それに加え俺の二階への引っ越し。
ベットを購入するのもお金がかかるからと篠田がベッドを作ってくれた。ありがたい申し出にマットレスはちゃんと当然ながら自腹を切らせてもらうのだった。
二階の家具の購入はそれぐらいで、食器とかは爺ちゃんの家の色々な物を処分する時に確保していたお皿やお茶碗とかを使わしてもらう事にした。
電化製品はさすがに一式買い替える。電子レンジに冷蔵庫にその他もろもろも購入する。なんせお店側の方はあの魔王によって家電まで色々指示が入っていたので俺はその指示に沿ってネットで探して購入をした。
当然ネットで探せって指令もあったけどね。
だけど解せないのは店舗の方は隙無く総ての指示を出してくれたのに自宅の方は一切指示を出してくれなかった。
「そりゃ当然だよ。プライベートにまでとやかく首つっこまない性質だし」
「多少は首を突っ込んでもらいたかった」
そう。
例にもれず俺が選ぶセンスは最悪だとお袋に言われ続けている。
大丈夫。
そこは自覚ある件。
なので近くのニ●リに篠田達を買い物に付き合ってもらおうとすれば
「実桜さん。出番ですよ!」
園芸部が大声で呼びだしてくれた。
何をと思ったが
「良いですか?うちの社長は値段で物を選ぶし、宮下さんは自分の欲しい物しか選べないですから。カラーリングとか統一感のセンスなら実桜さんが抜群ですから。
無駄遣いできないのは判ってるので後悔しない買い物をしてください」
絶望的な事を聞かされた気がした。
「お前ら、それでよく人様の家を作ろうとしてるな」
「だって材木の色って選びようがないじゃん」
開き直った宮下の言葉にほんとに魔王がいてくれてよかった。魔王の下僕と言う地位を得た事で古民家カフェが迷走しなくてよかったとそっと涙をぬぐうのだった。
「燈火~、クローゼットに衣類入れたけどあんた服はこれだけしか持ってないの?
働いてた時のスーツはどうしたの!」
そんな叫び声に俺は二階に駆け上がれば
「一々大声で言うなよ!
スーツ何てもう着る予定もないしよれて傷んでるから要らないだろ!」
さらに言えばスーパーの衣料コーナーで買った一万円前後のスーツ。成人式の時に婆ちゃんが買ってくれたスーツだってもう体形が変わって着れなくなって処分したと言うのに……
はい。俺、深夜飯のせいでかなり太りました。深夜のラーメン最高です!
おかげで高校時代から10Kgプラスされてます。
高校時代が痩せすぎだったのもあるかもしれないけど、だからと言って10Kgはよろしくありません。
ですが深夜のラーメンは今も止められません。
時々お袋がやってきて
「燈火何で一人で良い匂いさせてるのよ!」
なんて俺からラーメンを奪っておいて
「これでお母さん太ったら燈火のせいだからね!」
あまりにも理不尽な捨て台詞を言うので太ってしまえと呪いをかけておく。勿論効果抜群のようだ。
そうこうしながら高校時代の友人達にDMを送る。LIMEで三年のクラスの時のルームがまだあるのだがそこに今も名前を残すメンバーに古民家カフェを開く事にしたと場所とオープン日時を書きこんで
「良かったら近くに立ち寄った時は覗いてみてください」
そんな定型文を書いておいた。
もちろんみんな祝福する言葉と遊びに行くね!そんな言葉が繋がって行く。
だけど社会人になってそんな言葉がただのあいさつ程度の物だと病むほど理解した俺は悪いが真に受けない。
随分ひねくれてしまったけど、それが大人と言う物だろう。
だけど俺は落ち込まない。
相手の顔を見ずに書きこんだ文字よりも篠田、宮下と言う毎日のように顔を合わせてああだこうだと討論しながら店を作ってきた仲間がいる。
それに付き合う様に蒼さんと兄貴夫妻に癒しの凛ちゃん。更に兄貴の作業場のおばさま達(と言わないと怒られる)に内田家族に長沢夫妻、園芸部から園芸部の元の職場の人達とこの半年近くの間に高校時代の友人よりも強い信頼を得た人達とのつながりも出来た。
さらに篠田に連れて行かれた商工会にも登録してもらい、観光業がメインとなってしまった街の繋がりも出来た。
爺ちゃんは有名人なのか知らないけど
「夜月さんのお孫さんかい?」
「あの家を引き継いでくれるなんて立派な孫で夜月さんも今頃あっちで大泣きだろう」
新入りなのにものすごく温かく受け入れてくれて涙が出そうになった。
一日では終わらなかった引っ越し作業の合間に店の調理場の使い心地も確かめて行く。
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