人生負け組のスローライフ

雪那 由多

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身体が動く季節なので皆さん働こうではないか 3

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 なんの金銭的な物を生み出さない竹の処分はどれだけ考えてもどうあがいても負の遺産にしかならなかった。
 竹炭何て作ってたとえ販売に漕ぎ付いたとしてもだ。県が定めた最低賃金以下の報酬しかならない作業を好き好んでやる奇特な奴はいないだろう。やればやるほど赤字になる事業をやるにはよほどの思いがあるはず。残念な事に綾人には一切そんな物がないのでじゃんじゃんチッパーで粉砕するのだが、いかんせん。なんの生産を生み出さない作業はすぐに飽きが来て結局
「お前ら、圭斗の代わりにチッパーで処理を頼む」
 ちらりと茶封筒に入れた給料は八時間労働に最低賃金をかけた物。まぁ、少し位、小銭を用意するのが面倒だからと千円札を束で用意してせっせと詰めたのだが、この年齢なら十分な小遣いとなるだろう。
 そんな中に一つ頭の小さな子もちゃんといた。
 なんだかんだ園田達が面倒見よく連れまわしているようで前に見た時よりもこの輪に馴染んでいるように見えた。
 日下一樹。
 相変わらずクラスにはなじめないようだけど、少しずつ勉強もでき出したせいか隣の席のクラスメイトと少しずつ話をするようになったと言う。体育の授業でもペアが出来たり、少しずつ改善して行っていると言ったのはわざわざ教室の前を通り過ぎるおせっかい部の奴らの言葉。こんな事に嘘はつかないし俺に対して嘘はつかないから内心ほっとしている事をばれないように
「これからもちょくちょく見てやってくれ」
 そんなお願いをするのが卒業生が出来る程度の事だ。
 
 一度竹を切らせた経験があるのでしっかりとチッパー対策はしてある高校生ズにおまいら準備良さ過ぎだなと呆れて見せるが
「前回懲りたからね。長そで長ズボン、首にはタオル、ゴーグル、帽子は必須でしょ」
 教育がよく届いていますと感心する合間にも上島のおやじさんと水野のじいさんがやって来た。
「竹のチップが貰えるって聞いたから来たよ」
 我が家と同じほどではないけど標高の高い所に住む上島家の畑が冬を越えるのにはこう言ったチップや藁が必須となる。今回それを貰いに来たといい笑顔を見せてくれるスタイルは園田達同様の対策済みスタイル。
「すみません、大人の頭数が圧倒的に少ないので安全の為に来て貰って」
「なーに、家に居ても暇してたからちょうどいい。
 それに国道を使う身としてこの竹藪が明るくなって見通しが良くなると言うのならいくらでも協力するから」
 すみません。
 長い事放置していてご迷惑おかけしてましたと言うのはジイちゃんが死んでからずっと放置していた年季が物語っている。
 今見回しても立ち枯れした竹や、倒木した竹が遠くにごろごろと転がっている。
 それでもこれでだいぶ綺麗になったと言うのだからその前を想像してはいけないと言う物。
「そういや内田の奴は見ないなあ」
 水野のじいさんが幸治に元気してるか?と聞くも
「相変わらずだよ。
 最近は仕事にちょっと遠い所まで行ってる」
 人気者はつらいですね鉄治さんとみんなと一緒に笑い合えば、幸治は少しだけ誇らしげに胸を張るのだった。

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