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身体が動く季節なので皆さん働こうではないか 4
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「綾っちー、チップ溜まったけどどうするー?」
「綾っち言うなー。とりあえず上島さんのトラックに乗せて。幌ついてるけど下はブルーシートちゃんと敷けよ」
「りょーかい!」
「綾っちー、切った竹谷間に落としていいの?」
「綾っち言うなー。とりあえず谷間に落とせ。根元を下にしておとせよー」
「あー、川上落ちたけど大丈夫かー?」
「受験生に落ちた言うなー!」
「綾っちー、蛇が出たー」
「綾っち言うなってか蛇絶対こっちに持って来るなよ!持ってきたらバイト代出さないからな!」
「綾っちマジ泣きしてるwww」
「キャッチ&リリース絶対!
虫も芋虫もお断りだ!」
「あ、綾人さん。カブトムシの幼虫ですよ?」
「角が生えて黒くないならただの芋虫だ!
ポイしろ!」
「お前は相変わらず虫と獣しかいない山奥に住んでいるのに苦手なのは変わらんのだな」
先生は開けた場所の木の手入れをしてくれていた。
枝打ちしてわき目が出た新しい枝を落して本体の力を温存させようとしていた。
「虫何て一緒に暮らさなくても何の問題のないもんだろ!
もし俺に触って欲しかったら六本足とかマジ止めてくれ!」
思い出させないでくれーと逃げて行く後姿に誰ともなく笑いながら
「陸斗ー、圭斗ー、そのチップ少しこっちにも持って来てブナの木の下に蒔いてくれ」
「あー、バケツ……」
「圭斗君、ブルーシート使っていいよ」
上島さんがトラックの荷台に置いていた古いブルーシートを持って来てくれた。
「広げたブルーシートの上に置いて簡単に丸めて包んで両端を二人で引っ張れば結構運べるぞ」
「あー、なるほど」
「四隅の穴にロープを通して巾着にして運ぶのが一番だけど、しまったなー。そこまで考えてなかった」
いつの間にか戻ってきていた綾人が圭斗の家着でブルーシートを何枚か買っていた。
置き場には困らないがどれだけ買うと問いたいが
「物置が広いからここに常備しておこう。ロープも買ったし次の時にはわざわざ荷物持ってくる事がないようにしたいな」
それは確かに。
だけど予想より重たいので無言のまま陸斗とひきずってしまう。
その合間に先生は近くにあったまだ節の白い若い竹を切って枝を落し、木の周囲を囲む様に組み合わせるのだった。ロープもなく竹の一部を削って重ね合わせるログハウスな作り。ただし隙間は見るも無残な状態。
その中に枝を落した葉っぱを入れて枠の隙間を塞ごうとするも無駄な行為と言うくらい隙間だらけだった。
「先生何やってるの」
やっとの思いでウッドチッパーが置いてある場所から斜面を登って運んだ圭斗の疑問。
「ん?どうせなら越冬の準備と肥料?」
「何で疑問形なんだ?」
綾人は首をかしげる先生に何始めたんだと警戒するけど
「ほら、綾人の畑でもよく落ち葉を樹の周りに置いて腐葉土にしてるだろ?
竹でも出来るかなーなんて実験?」
疑問形なのは理解できた。
理論的なら出来るのだが、竹チップで出来るかなんて今まで試した事はない。調べればやってる人はいるのだろが、あまりにマイノリティな方法なだけに綾人もあまり知らない。
チップにしなくても枯れ葉と雑草は山ほどある。燃料代かけてやる意味はない。
上島さん所では越冬のためのチップであって、冬を越えて回収不能なくらい散らかった竹チップをトラクターで梳きこむのは理解できたが
「さすがにこの方法は試した事ないな」
枠を作ってチップを投げ込むなんて、そんな面倒した事ないし、俺の農業の基礎はバアちゃんの教えだ。バアちゃんが教えてくれた事以外は宮下に調べさせた物を実行するぐらい農業への情熱は食糧事情に一因する程度しかない。まぁ、最近は飯田さんに育ててくれと言われたハーブや野菜の未知数に楽しさを覚えてはいるが、その程度。
何度も往復しながらその囲いの中を何とかいっぱいにした様子に満足してか先生はさっきから何か拾い集めていた両手いっぱいの物をそのチップの中にばらまいた。
何だと思えば
「うわっ、止めてよ!芋虫何て埋めないでよ!!!」
「芋虫じゃない!
カブトムシの幼虫だ!」
「虫には変わらんだろ!!!」
「何言ってる!カブトムシは男の子のロマンだろ!!!」
「おっさんのロマンなんて知りたくもねえ!」
何とか掘りだそうとするもカブトムシの幼虫は突然土から掘り起こされて寒いと言う様にあっという間に潜り込んでしまって行方不明だ。
掘り起こせば良いだけの事だけどその時にうっかり触ったりでもしたらどうする?!今は強い味方の烏骨鶏もここにはいない。
これはピンチ……なんてフリーズしている間に
「せんせー、カブトムシの幼虫見つけたから入れても良い?」
「おう、入れておけ。どんどんいれろ。
無事育ったら分けてやるからな」
「まじカブトムシ畑止めてよ……」
竹のチップでも構わないと言う様にどんどん潜り込んでいく幼虫と俺が必死になって懇願する様が面白いのか竹のチップを作るよりも幼虫探しに夢中になり出す始末。そこに一樹もやってきて
「えー?
カブトムシ何て買いたくても三日で死ぬのにもったいなくて買えなかったからいっぱい育てようよ」
街中育ちの一樹の発言に川上と山田がその両肩に手を置いた。
「一樹、それは間違った育て方だ。
カブトムシの寿命は大体一年。このCの字型のスナック菓子みたいな姿は八か月しかないし可愛いベビースタイルだ!おなじみのカブトムシの姿となったら一カ月から三カ月ぐらいの短いような長い人生。三日で死ぬなんてあるわけがない!
ペットショップで売ってる奴らならゼリーカップみたいなやつだけ与えておけば寿命まで生きるはず。ちなみに餌は?」
「食べ終わったスイカとかメロンとか?」
「ノー!!!
そんな水分の多い物を与えたから腹を壊してお陀仏なんだ。
とりあえずゼリー状の餌で十分だ。一袋あれば十分足りる。メスは卵産むからタンパク質多めの奴食べさせておけばいいし、あいつら餌から離れないからコップの中でも育てられるぞ」
それはどうだろうか。
せめて文房具屋でも売ってるような水槽型の虫籠に入れてやれよと思う。
あえてなのか誰もつっこまないのが田舎の常識世間の非常識かどうかなんて俺の知る所ではない。だが、コップは止めろ。カブトムシ死んだ後そのコップはどうする?まさか洗って使うとは言わせんぞと鳥肌の立つ腕をさすりながらデンジャーゾーンから距離を取れば上島さんが一度荷物を畑に置いて来ると言うから手伝ってくるから先生後頼むと言って逃げ出す俺だった。
「綾っち言うなー。とりあえず上島さんのトラックに乗せて。幌ついてるけど下はブルーシートちゃんと敷けよ」
「りょーかい!」
「綾っちー、切った竹谷間に落としていいの?」
「綾っち言うなー。とりあえず谷間に落とせ。根元を下にしておとせよー」
「あー、川上落ちたけど大丈夫かー?」
「受験生に落ちた言うなー!」
「綾っちー、蛇が出たー」
「綾っち言うなってか蛇絶対こっちに持って来るなよ!持ってきたらバイト代出さないからな!」
「綾っちマジ泣きしてるwww」
「キャッチ&リリース絶対!
虫も芋虫もお断りだ!」
「あ、綾人さん。カブトムシの幼虫ですよ?」
「角が生えて黒くないならただの芋虫だ!
ポイしろ!」
「お前は相変わらず虫と獣しかいない山奥に住んでいるのに苦手なのは変わらんのだな」
先生は開けた場所の木の手入れをしてくれていた。
枝打ちしてわき目が出た新しい枝を落して本体の力を温存させようとしていた。
「虫何て一緒に暮らさなくても何の問題のないもんだろ!
もし俺に触って欲しかったら六本足とかマジ止めてくれ!」
思い出させないでくれーと逃げて行く後姿に誰ともなく笑いながら
「陸斗ー、圭斗ー、そのチップ少しこっちにも持って来てブナの木の下に蒔いてくれ」
「あー、バケツ……」
「圭斗君、ブルーシート使っていいよ」
上島さんがトラックの荷台に置いていた古いブルーシートを持って来てくれた。
「広げたブルーシートの上に置いて簡単に丸めて包んで両端を二人で引っ張れば結構運べるぞ」
「あー、なるほど」
「四隅の穴にロープを通して巾着にして運ぶのが一番だけど、しまったなー。そこまで考えてなかった」
いつの間にか戻ってきていた綾人が圭斗の家着でブルーシートを何枚か買っていた。
置き場には困らないがどれだけ買うと問いたいが
「物置が広いからここに常備しておこう。ロープも買ったし次の時にはわざわざ荷物持ってくる事がないようにしたいな」
それは確かに。
だけど予想より重たいので無言のまま陸斗とひきずってしまう。
その合間に先生は近くにあったまだ節の白い若い竹を切って枝を落し、木の周囲を囲む様に組み合わせるのだった。ロープもなく竹の一部を削って重ね合わせるログハウスな作り。ただし隙間は見るも無残な状態。
その中に枝を落した葉っぱを入れて枠の隙間を塞ごうとするも無駄な行為と言うくらい隙間だらけだった。
「先生何やってるの」
やっとの思いでウッドチッパーが置いてある場所から斜面を登って運んだ圭斗の疑問。
「ん?どうせなら越冬の準備と肥料?」
「何で疑問形なんだ?」
綾人は首をかしげる先生に何始めたんだと警戒するけど
「ほら、綾人の畑でもよく落ち葉を樹の周りに置いて腐葉土にしてるだろ?
竹でも出来るかなーなんて実験?」
疑問形なのは理解できた。
理論的なら出来るのだが、竹チップで出来るかなんて今まで試した事はない。調べればやってる人はいるのだろが、あまりにマイノリティな方法なだけに綾人もあまり知らない。
チップにしなくても枯れ葉と雑草は山ほどある。燃料代かけてやる意味はない。
上島さん所では越冬のためのチップであって、冬を越えて回収不能なくらい散らかった竹チップをトラクターで梳きこむのは理解できたが
「さすがにこの方法は試した事ないな」
枠を作ってチップを投げ込むなんて、そんな面倒した事ないし、俺の農業の基礎はバアちゃんの教えだ。バアちゃんが教えてくれた事以外は宮下に調べさせた物を実行するぐらい農業への情熱は食糧事情に一因する程度しかない。まぁ、最近は飯田さんに育ててくれと言われたハーブや野菜の未知数に楽しさを覚えてはいるが、その程度。
何度も往復しながらその囲いの中を何とかいっぱいにした様子に満足してか先生はさっきから何か拾い集めていた両手いっぱいの物をそのチップの中にばらまいた。
何だと思えば
「うわっ、止めてよ!芋虫何て埋めないでよ!!!」
「芋虫じゃない!
カブトムシの幼虫だ!」
「虫には変わらんだろ!!!」
「何言ってる!カブトムシは男の子のロマンだろ!!!」
「おっさんのロマンなんて知りたくもねえ!」
何とか掘りだそうとするもカブトムシの幼虫は突然土から掘り起こされて寒いと言う様にあっという間に潜り込んでしまって行方不明だ。
掘り起こせば良いだけの事だけどその時にうっかり触ったりでもしたらどうする?!今は強い味方の烏骨鶏もここにはいない。
これはピンチ……なんてフリーズしている間に
「せんせー、カブトムシの幼虫見つけたから入れても良い?」
「おう、入れておけ。どんどんいれろ。
無事育ったら分けてやるからな」
「まじカブトムシ畑止めてよ……」
竹のチップでも構わないと言う様にどんどん潜り込んでいく幼虫と俺が必死になって懇願する様が面白いのか竹のチップを作るよりも幼虫探しに夢中になり出す始末。そこに一樹もやってきて
「えー?
カブトムシ何て買いたくても三日で死ぬのにもったいなくて買えなかったからいっぱい育てようよ」
街中育ちの一樹の発言に川上と山田がその両肩に手を置いた。
「一樹、それは間違った育て方だ。
カブトムシの寿命は大体一年。このCの字型のスナック菓子みたいな姿は八か月しかないし可愛いベビースタイルだ!おなじみのカブトムシの姿となったら一カ月から三カ月ぐらいの短いような長い人生。三日で死ぬなんてあるわけがない!
ペットショップで売ってる奴らならゼリーカップみたいなやつだけ与えておけば寿命まで生きるはず。ちなみに餌は?」
「食べ終わったスイカとかメロンとか?」
「ノー!!!
そんな水分の多い物を与えたから腹を壊してお陀仏なんだ。
とりあえずゼリー状の餌で十分だ。一袋あれば十分足りる。メスは卵産むからタンパク質多めの奴食べさせておけばいいし、あいつら餌から離れないからコップの中でも育てられるぞ」
それはどうだろうか。
せめて文房具屋でも売ってるような水槽型の虫籠に入れてやれよと思う。
あえてなのか誰もつっこまないのが田舎の常識世間の非常識かどうかなんて俺の知る所ではない。だが、コップは止めろ。カブトムシ死んだ後そのコップはどうする?まさか洗って使うとは言わせんぞと鳥肌の立つ腕をさすりながらデンジャーゾーンから距離を取れば上島さんが一度荷物を畑に置いて来ると言うから手伝ってくるから先生後頼むと言って逃げ出す俺だった。
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