738 / 976
夏をだらだら過ごすなんて夢のような話はこの山では伝説です 7
しおりを挟む
八月に入って夏たけなわ。
一週目の日曜日の楽しみという様にダイジェストの富士登山駅伝を見ていた。
毎年見ていてもこの駅伝は熱い。
あの富士登山道を観光客の合間を縫ってのタスキリレー。
岩場だったり鎖の梯子を上ったりアスレチック要素も盛りだくさん。
何より標高三千メートル以上の場所でやるスポーツってどうよと鍛え抜いた自衛隊の皆さんが高山病で苦しみながら登るドラマが在ったり山頂で判子を持って待機してるシュールな神主さんがいたり何より怪我をしても足を止めないその根性。無時次のタスキを渡せることを願いつつ砂走りでタスキを渡した後転がってすちゃっと立ち上がった後のキメ顔。思わず拍手を送りたい。
「綾人も毎度それ好きだなあ」
「もうね、これほどエキサイトするスポーツってないよね。
登山の装備はしっかりと言ってるわりには軽装備以前の装備で駆け上がって行くんだぜ?今は見なくなったけど昔はそれに自転車持って担いでる人も居たんだから俺には縁のない世界だよなあ」
「だよな。毎年同じこと言ってるのが良い証拠だ」
俺が興奮しながら見てる横で先生は塩茹でをした落花生を摘みながらビールを楽しみ、ワサビ菜を浅漬けしたのをまた摘まむ。
「くあっ!ワサビ菜効くなあ!」
「今朝少し間引いた物を漬けただけだよ。烏骨鶏に食べさせれないから先生にってね」
「なんかせんせーのご飯が鶏以下って聞こえるんだけどー?」
「そんな事ないよー。まだ虫食べさせてないだろ?」
思わず返す言葉を探す高山だったがそこは無言を貫いて落花生をまた摘まむ。
「そういやお前の従弟、自衛隊の奴元気にしてるか?」
「んー?生存報告は届いてるよ。そうだ。結局陽菜の奴迷いに迷って調理師免許取りながらパン屋でバイトしているらしいぞ」
「まぁ、なんか女の子らしい夢のある話だな」
「ケーキも作ってるらしい。でも自分で店を開くのはやめとけと傷口は抉っておいた。実母が趣味の店を開いて赤字で閉店&離婚からの家族の奴隷と言うトラウマを思い出させておいた」
「えげつない話ねぇ」
やれやれと言う様にビールを飲む。
「大丈夫。当事者が一番夢とかそんな事考えてなかった。
目指すはホテルのパティシエとかなんとか。狭き門だががんばれと応援はして置いた」
「学費返して貰わないといけないからなとは言え陽菜は頑張り屋さんだなあ」
「それー。
あの馬鹿の給料で二人分の生活費は何とか賄えれても一番金のかかる時期の学費を出せるだけの余裕はないからな。頑張ってもらわないとな」
「って言っても無事就職したんだろ?」
「まだ。学費溜める為に浪人してたから」
意外な進路だった。
当たり前のように進路の為の説明を受けるつもりでお金を貸すのだろうと思っていたけど103万の壁を超えないように堅実に働いて約一年分の学費を貯めていた。
「意外と現実派だね」
「いろいろあったからな。ちゃんと物事は考えれるようになったらしい」
留学先では学費を溜めて入学を遅らす事なんて全く普通な事に少し新鮮さを覚えた綾人だったが意外な所にこんなにも身近な所に居たのに感動した。
「とりあえずそれでもどうしても足りない部分はあるだろうからと何も言ってこないから高校と同じぐらいの毎月同じ額の振り込みはしている。あくまでも諸経費何て考えてないだろうあの馬鹿に物事を覚えるにはちょうどいいタイミングだから」
「まぁ、あるわねえ。先生も学校の個人面談の時に
『授業費無償なんて至ってても光熱費って意外と高いんですね!』
なんて言われてね
『授業費に光熱費は関係ありませんからね。なら運動場で授業しましょうかって話しになるので真夏や真冬は無理になりますから』
って説明すると大体納得してもらえるわ。ほら、たった一人の意見で学校全体を巻き込む事になるでしょ?誰だってお子さんを生贄にしたくないじゃない」
納得の内容とうちの親なら景気よく生贄に捧げただろうな。むしろ生存価値すらなかったしと考えながらそんな所にも興味を持たなかった親だったから逆に良かったのかと考えてしまえば頭をトンと叩かれた。
「お前親は自分大切だからそんな事はしない」
一番ダメージ受ける言葉だったが
「俺の心の中まで読まないでよ」
思わず自分で自分をガード。なんで先生に考えていること読まれる?あれ?以外にもけっこう読まれてるななんて思考を巡らしていれば
「お前は考えている時ほど表情が抜け落ちる。怖いから考えすぎるな」
「なんか失礼だな」
そう言って落花生を独り占めする事にした。一瞬酷いと言う様に伸ばされた手を無視してビールと一緒に口に放り込む。
ちゅっと中身を吸い出したラッカセイは圧力鍋が良い仕事をしてくれてふちゃふちゃで、落花生を作ってもらった事に感謝をして先生を一切無視し通した。
落花生に負けた先生かっこいい!
なんて言っておけば大体丸く収まるので一応今回も言っておいたそんな言葉遊びで誤魔化していれば
「綾人君、悪いね。今回もだけど茅貰ってくよ」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。
何か草刈りとかまでしてもらった挙句に麓の家の水場に茅を葺いてもらうとか」
「鉄治さんの指示と長沢さんの気合に負けないくらい綺麗に葺きましたので是非見て行ってあげてください。どこの仏閣かってぐらい手の込んだ場所になってますよ」
そんな井上さんの苦笑。だけど俺は俺が作った設計書よりも何倍もかっこよく、そして美しくなっているだろう仕上がりに見ないでももう満足はしている。
森下さんを初め沢山の人が夏休みを満喫しながら手伝いに来てくれたのだ。
毎度思うのだが
「みんな好きだなあ」
何がとは言わずにいれば
「そりゃあ天然のクーラーの中に居るんだ。今最高気温の場所と気温が10℃違うと聞けばみんな体を休めに来るさ」
俺が帰って来てからずっと山暮らしをしている先生が言うと納得と言う様に頷いた所で富士登山駅伝が終わった。
毎年ながら安定の地元の優勝にホッとしながらも皆さん似たようなタイムなので省略される一般市民ランナーの皆さんを見る前に終了。テレビ放送はダイジェストだから仕方がないからね。
箱根もびっくりな急な坂道を駆け上がるドラマ満載の良い駅伝だったと夏休みの終わりを告げるような俺の中のイベントが無事終われば皆さん五右衛門風呂で汗を流してさっぱりとしたり誰かが持ち込んだBBQコンロで楽しみだしていた。ちなみに野菜は取り放題で食べてもらっている。
奥さんに三下り半疲れても知らないぞと見守っていれば
「綾人君、テレビが終わったなら食べにおいで。先生も。スペアリブがいい感じに焼けてきたぞ!」
満喫しすぎな森下さんに俺達は苦笑を隠す事なく笑いながら
「せっかくなのでたくさんいただきますね!」
「もちろん。今までいっぱい甘えさせてもらったんだから、ぜひ今日はたくさん食べてくださいね!」
言いながら片手にはビールをご機嫌に握りしめていた。
一週目の日曜日の楽しみという様にダイジェストの富士登山駅伝を見ていた。
毎年見ていてもこの駅伝は熱い。
あの富士登山道を観光客の合間を縫ってのタスキリレー。
岩場だったり鎖の梯子を上ったりアスレチック要素も盛りだくさん。
何より標高三千メートル以上の場所でやるスポーツってどうよと鍛え抜いた自衛隊の皆さんが高山病で苦しみながら登るドラマが在ったり山頂で判子を持って待機してるシュールな神主さんがいたり何より怪我をしても足を止めないその根性。無時次のタスキを渡せることを願いつつ砂走りでタスキを渡した後転がってすちゃっと立ち上がった後のキメ顔。思わず拍手を送りたい。
「綾人も毎度それ好きだなあ」
「もうね、これほどエキサイトするスポーツってないよね。
登山の装備はしっかりと言ってるわりには軽装備以前の装備で駆け上がって行くんだぜ?今は見なくなったけど昔はそれに自転車持って担いでる人も居たんだから俺には縁のない世界だよなあ」
「だよな。毎年同じこと言ってるのが良い証拠だ」
俺が興奮しながら見てる横で先生は塩茹でをした落花生を摘みながらビールを楽しみ、ワサビ菜を浅漬けしたのをまた摘まむ。
「くあっ!ワサビ菜効くなあ!」
「今朝少し間引いた物を漬けただけだよ。烏骨鶏に食べさせれないから先生にってね」
「なんかせんせーのご飯が鶏以下って聞こえるんだけどー?」
「そんな事ないよー。まだ虫食べさせてないだろ?」
思わず返す言葉を探す高山だったがそこは無言を貫いて落花生をまた摘まむ。
「そういやお前の従弟、自衛隊の奴元気にしてるか?」
「んー?生存報告は届いてるよ。そうだ。結局陽菜の奴迷いに迷って調理師免許取りながらパン屋でバイトしているらしいぞ」
「まぁ、なんか女の子らしい夢のある話だな」
「ケーキも作ってるらしい。でも自分で店を開くのはやめとけと傷口は抉っておいた。実母が趣味の店を開いて赤字で閉店&離婚からの家族の奴隷と言うトラウマを思い出させておいた」
「えげつない話ねぇ」
やれやれと言う様にビールを飲む。
「大丈夫。当事者が一番夢とかそんな事考えてなかった。
目指すはホテルのパティシエとかなんとか。狭き門だががんばれと応援はして置いた」
「学費返して貰わないといけないからなとは言え陽菜は頑張り屋さんだなあ」
「それー。
あの馬鹿の給料で二人分の生活費は何とか賄えれても一番金のかかる時期の学費を出せるだけの余裕はないからな。頑張ってもらわないとな」
「って言っても無事就職したんだろ?」
「まだ。学費溜める為に浪人してたから」
意外な進路だった。
当たり前のように進路の為の説明を受けるつもりでお金を貸すのだろうと思っていたけど103万の壁を超えないように堅実に働いて約一年分の学費を貯めていた。
「意外と現実派だね」
「いろいろあったからな。ちゃんと物事は考えれるようになったらしい」
留学先では学費を溜めて入学を遅らす事なんて全く普通な事に少し新鮮さを覚えた綾人だったが意外な所にこんなにも身近な所に居たのに感動した。
「とりあえずそれでもどうしても足りない部分はあるだろうからと何も言ってこないから高校と同じぐらいの毎月同じ額の振り込みはしている。あくまでも諸経費何て考えてないだろうあの馬鹿に物事を覚えるにはちょうどいいタイミングだから」
「まぁ、あるわねえ。先生も学校の個人面談の時に
『授業費無償なんて至ってても光熱費って意外と高いんですね!』
なんて言われてね
『授業費に光熱費は関係ありませんからね。なら運動場で授業しましょうかって話しになるので真夏や真冬は無理になりますから』
って説明すると大体納得してもらえるわ。ほら、たった一人の意見で学校全体を巻き込む事になるでしょ?誰だってお子さんを生贄にしたくないじゃない」
納得の内容とうちの親なら景気よく生贄に捧げただろうな。むしろ生存価値すらなかったしと考えながらそんな所にも興味を持たなかった親だったから逆に良かったのかと考えてしまえば頭をトンと叩かれた。
「お前親は自分大切だからそんな事はしない」
一番ダメージ受ける言葉だったが
「俺の心の中まで読まないでよ」
思わず自分で自分をガード。なんで先生に考えていること読まれる?あれ?以外にもけっこう読まれてるななんて思考を巡らしていれば
「お前は考えている時ほど表情が抜け落ちる。怖いから考えすぎるな」
「なんか失礼だな」
そう言って落花生を独り占めする事にした。一瞬酷いと言う様に伸ばされた手を無視してビールと一緒に口に放り込む。
ちゅっと中身を吸い出したラッカセイは圧力鍋が良い仕事をしてくれてふちゃふちゃで、落花生を作ってもらった事に感謝をして先生を一切無視し通した。
落花生に負けた先生かっこいい!
なんて言っておけば大体丸く収まるので一応今回も言っておいたそんな言葉遊びで誤魔化していれば
「綾人君、悪いね。今回もだけど茅貰ってくよ」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。
何か草刈りとかまでしてもらった挙句に麓の家の水場に茅を葺いてもらうとか」
「鉄治さんの指示と長沢さんの気合に負けないくらい綺麗に葺きましたので是非見て行ってあげてください。どこの仏閣かってぐらい手の込んだ場所になってますよ」
そんな井上さんの苦笑。だけど俺は俺が作った設計書よりも何倍もかっこよく、そして美しくなっているだろう仕上がりに見ないでももう満足はしている。
森下さんを初め沢山の人が夏休みを満喫しながら手伝いに来てくれたのだ。
毎度思うのだが
「みんな好きだなあ」
何がとは言わずにいれば
「そりゃあ天然のクーラーの中に居るんだ。今最高気温の場所と気温が10℃違うと聞けばみんな体を休めに来るさ」
俺が帰って来てからずっと山暮らしをしている先生が言うと納得と言う様に頷いた所で富士登山駅伝が終わった。
毎年ながら安定の地元の優勝にホッとしながらも皆さん似たようなタイムなので省略される一般市民ランナーの皆さんを見る前に終了。テレビ放送はダイジェストだから仕方がないからね。
箱根もびっくりな急な坂道を駆け上がるドラマ満載の良い駅伝だったと夏休みの終わりを告げるような俺の中のイベントが無事終われば皆さん五右衛門風呂で汗を流してさっぱりとしたり誰かが持ち込んだBBQコンロで楽しみだしていた。ちなみに野菜は取り放題で食べてもらっている。
奥さんに三下り半疲れても知らないぞと見守っていれば
「綾人君、テレビが終わったなら食べにおいで。先生も。スペアリブがいい感じに焼けてきたぞ!」
満喫しすぎな森下さんに俺達は苦笑を隠す事なく笑いながら
「せっかくなのでたくさんいただきますね!」
「もちろん。今までいっぱい甘えさせてもらったんだから、ぜひ今日はたくさん食べてくださいね!」
言いながら片手にはビールをご機嫌に握りしめていた。
252
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる