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夏をだらだら過ごすなんて夢のような話はこの山では伝説です 8
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楽しいイベントあれば変わらない山の仕事もある。
テレビではどこどこで四十度を記録したとかニュースで騒ぎ立てているのに長そで長ズボン軍手に首にはタオル、そして麦わら帽子装備の俺は大きなかごを担ぎ、かごの中には小型チェーンソーやロープ、片手斧におにぎりとペットボトルの水。あと簡易救急セットにおやつはチョコレート。
俺の山仕事の標準装備でもある。
長谷川さんにお願いして作ってもらった柵は陸斗や上島弟がちょくちょくやって来ては柵の内側の草刈りや畑の整備をしてくれているし、烏骨鶏の世話も抜かりなくやってくれている。庭の方は時々実桜さんと園芸部がやってきてキャッキャウフフと小型チェーンソーや枝キリばさみ、剪定ばさみを持って野生化してるハーブ園をハリリ回っている。危ないから気を付けてくれと思うも収穫した一部は農協で売ったり、飯田さんや小山さんからの依頼で送料だけの代金引き換えで納品していると言う。ちなみにスマホの電波が入る所なので通話所か映像を見ながら状態を確認してもらって収穫すると言うサービス。
まあ、俺がやってるわけじゃないから文句言わないけど
「あまり甘やかさないでよ?」
「綾人さんが言うんですか?」
「これ以上どう甘やかすんですか?」
実桜さんと園芸部にダメ出しされた。いや、その辺自覚はあるけどさと自分に突っ込みながらも
「普通に自分達で収穫させろ」
「普通に来た時も収穫してますよ?」
「は?ハーブってそんなに収穫して大丈夫なの?」
ささやかな疑問。
「幾らフレンチでもハーブ何てそこそこしか使わないでしょう。
寧ろこの量をたった二件にしか卸さないのはもったいない位です。
私も頂いてますが農協にでも卸したいくらいです」
「あ、はい。お願いします」
いつの間にか立派な商売人の顔をするのでウコ達も食べない草なのでどうぞとつい言ってしまった。だけど慌てて
「飯田さんと小山さん優先してください。農協は二人の残り物で。
あと売り上げはちゃんと圭斗に申請するように」
「はい。判っております」
キャッキャウフフと幸せそうにお世話をしていたのにこれは仕事ですと線引きした途端死んだ目をする二人に対する思いは欠片もない。
そもそもだ。
「ハーブ引っこ抜いて山葡萄育てたいんだけどー。ブルーベリーとか木苺でもいいんだけどさあ。
美味しく食べれる物植えたいんだけど」
「植えてもどうせ猿と熊が食べに来て終了ですよ」
「他にも鳥とかもいっぱい来るから烏骨鶏の為にはあまりよくないですよ」
烏骨鶏に山葡萄やブルーベリーも食べさせてあげられないらしい。
「真っ白な羽を山葡萄色に染めてみたかっただけなのに……」
南の国の派手な鳥をイメージしてみたが
「マダラに染まって汚く見えるだけですよ」
普通に考えればそうなのだが園芸部よ。少し位夢を見させてくれと口には出せずに心の中で盛大に訴えてみるのだった。
そんな事もあり、綾人は家をぐるりと囲う柵を出て道なき道を進む。
まだまだ先生のテリトリーの内で記憶にもある所なので安心して山を登っていく。
そして一つの大きな岩を手前に右へ進む道の所を俺は左へと向かう。
そこからはジイちゃんに教えられた道になる。
細い道で分かりにくいけどそう言った道がこの山には沢山ある。
先生はそれを発見する事に謎の情熱を燃やしていたりする。このうちのどれかに松茸の繁殖地があるのはばれているとは言えまだまだ見つけられない様子に俺は『また来年のシーズンに頑張ってください』と言うだけ。ちなみにあの先生群生地を気づかずに通り過ぎているのでこの様子では一生見つけられないと俺は見切りをつけているし教えるつもりもない。
何せこの山は俺が税金を払っている俺名義の山だから。
幸田さん達が知ってる群生地はご近所付き合いで周囲にばれないようにと採取を許可している。
ほら、俺が取りに行ったものをどうぞって渡すのめんどくさいじゃん?
場所知ってるなら採りに行けと言うのがこの山に住む人間の感覚だ。比較的取りやすい場所でもあるしね。元吉野の職人さん達の楽しみとしてこれからも長生きしてほしいと頑張ってくれと気をかけておく。
そんなこんなで細い道を覆いつくそうとする雑草や枝を打ち払いながら進んだ先は開けた場所だった。
ジイちゃんが山の獣たちが麓の畑とか下の畑とかに侵入しないように山の中に木の実の生る樹木をわりとまめに植樹していた。
主にどんぐりの木が多いが、時々こう言った物も植えている。
「やったね、まだ残ってた」
俺が近づいた事で鳥達が一斉に飛び立っていくのを見送り、かごを置いて取り出したビニール袋の中に剪定ばさみで収穫した山葡萄を入れて行く。
まだ小さかった時ジイちゃんの家に預けられた時に教えてもらった時に食べた山ブドウが美味しくて感動をした。
ジイちゃんと収穫してバアちゃんがジャムにしてくれてパンにたっぷりと塗って食べた感動はひとしおで、その記憶がお互い大きかった為にバアちゃんはパン焼き機何て買ったのかなあ、なんて思って見たりもする。今となれば単にバアちゃんが新しいもの好きかパン好きかはもう聞けないが、それでもそれなりに収穫して荒れた山葡萄棚の下の雑草を軽く処理をしておく。
おにぎりとペットボトルの水で軽く昼食を済ませ、もうひと踏ん張りした所で家に帰って取り立ての山葡萄を山水で綺麗に洗い、祠にお供えをする。
すぐに烏骨鶏に見つかって突かれてしまったのを笑いながら、祠の中の物は無事なので無視が集まる前には回収しないとなと考えた所で
「綾人さんお帰りなさい」
「やっと帰って来たか。山に入ったと先生から聞いたが、また凄い格好だな」
山葡萄の収穫や剪定で来ていた服が山葡萄の知るまみれに染まっていた。
まるで烏骨鶏にしようとしていた姿だなと俺は一人笑っていれば
「ほら、そんな所で突っ立ってないで。圭斗も早く綾人をお風呂に入れさせて!
出て来たらご飯にするから。先生も勝手に晩酌始めちゃってるからあまり長風呂にならないでよ!」
どこのオカンだと突っ込まずにはいられない宮下に
「これお土産。
ジャムにして食べたいです」
そんなリクエストをすれば真横で見ていた陸斗の目がキラキラと輝いていた。
さあ、これは拒否できないぞと笑えば
「仕方がないなあ。確か何処かビンがあったよね」
何て受け取って台所に向かう姿を見てにんまりと笑い
「じゃあ風呂入って来るから」
あとよろしくではなく先生をよろしくと別れた所で山葡萄争奪戦に参加した山葡萄色に染まる烏骨鶏とすれ違い、似たような姿に思わず笑ってしまった。
テレビではどこどこで四十度を記録したとかニュースで騒ぎ立てているのに長そで長ズボン軍手に首にはタオル、そして麦わら帽子装備の俺は大きなかごを担ぎ、かごの中には小型チェーンソーやロープ、片手斧におにぎりとペットボトルの水。あと簡易救急セットにおやつはチョコレート。
俺の山仕事の標準装備でもある。
長谷川さんにお願いして作ってもらった柵は陸斗や上島弟がちょくちょくやって来ては柵の内側の草刈りや畑の整備をしてくれているし、烏骨鶏の世話も抜かりなくやってくれている。庭の方は時々実桜さんと園芸部がやってきてキャッキャウフフと小型チェーンソーや枝キリばさみ、剪定ばさみを持って野生化してるハーブ園をハリリ回っている。危ないから気を付けてくれと思うも収穫した一部は農協で売ったり、飯田さんや小山さんからの依頼で送料だけの代金引き換えで納品していると言う。ちなみにスマホの電波が入る所なので通話所か映像を見ながら状態を確認してもらって収穫すると言うサービス。
まあ、俺がやってるわけじゃないから文句言わないけど
「あまり甘やかさないでよ?」
「綾人さんが言うんですか?」
「これ以上どう甘やかすんですか?」
実桜さんと園芸部にダメ出しされた。いや、その辺自覚はあるけどさと自分に突っ込みながらも
「普通に自分達で収穫させろ」
「普通に来た時も収穫してますよ?」
「は?ハーブってそんなに収穫して大丈夫なの?」
ささやかな疑問。
「幾らフレンチでもハーブ何てそこそこしか使わないでしょう。
寧ろこの量をたった二件にしか卸さないのはもったいない位です。
私も頂いてますが農協にでも卸したいくらいです」
「あ、はい。お願いします」
いつの間にか立派な商売人の顔をするのでウコ達も食べない草なのでどうぞとつい言ってしまった。だけど慌てて
「飯田さんと小山さん優先してください。農協は二人の残り物で。
あと売り上げはちゃんと圭斗に申請するように」
「はい。判っております」
キャッキャウフフと幸せそうにお世話をしていたのにこれは仕事ですと線引きした途端死んだ目をする二人に対する思いは欠片もない。
そもそもだ。
「ハーブ引っこ抜いて山葡萄育てたいんだけどー。ブルーベリーとか木苺でもいいんだけどさあ。
美味しく食べれる物植えたいんだけど」
「植えてもどうせ猿と熊が食べに来て終了ですよ」
「他にも鳥とかもいっぱい来るから烏骨鶏の為にはあまりよくないですよ」
烏骨鶏に山葡萄やブルーベリーも食べさせてあげられないらしい。
「真っ白な羽を山葡萄色に染めてみたかっただけなのに……」
南の国の派手な鳥をイメージしてみたが
「マダラに染まって汚く見えるだけですよ」
普通に考えればそうなのだが園芸部よ。少し位夢を見させてくれと口には出せずに心の中で盛大に訴えてみるのだった。
そんな事もあり、綾人は家をぐるりと囲う柵を出て道なき道を進む。
まだまだ先生のテリトリーの内で記憶にもある所なので安心して山を登っていく。
そして一つの大きな岩を手前に右へ進む道の所を俺は左へと向かう。
そこからはジイちゃんに教えられた道になる。
細い道で分かりにくいけどそう言った道がこの山には沢山ある。
先生はそれを発見する事に謎の情熱を燃やしていたりする。このうちのどれかに松茸の繁殖地があるのはばれているとは言えまだまだ見つけられない様子に俺は『また来年のシーズンに頑張ってください』と言うだけ。ちなみにあの先生群生地を気づかずに通り過ぎているのでこの様子では一生見つけられないと俺は見切りをつけているし教えるつもりもない。
何せこの山は俺が税金を払っている俺名義の山だから。
幸田さん達が知ってる群生地はご近所付き合いで周囲にばれないようにと採取を許可している。
ほら、俺が取りに行ったものをどうぞって渡すのめんどくさいじゃん?
場所知ってるなら採りに行けと言うのがこの山に住む人間の感覚だ。比較的取りやすい場所でもあるしね。元吉野の職人さん達の楽しみとしてこれからも長生きしてほしいと頑張ってくれと気をかけておく。
そんなこんなで細い道を覆いつくそうとする雑草や枝を打ち払いながら進んだ先は開けた場所だった。
ジイちゃんが山の獣たちが麓の畑とか下の畑とかに侵入しないように山の中に木の実の生る樹木をわりとまめに植樹していた。
主にどんぐりの木が多いが、時々こう言った物も植えている。
「やったね、まだ残ってた」
俺が近づいた事で鳥達が一斉に飛び立っていくのを見送り、かごを置いて取り出したビニール袋の中に剪定ばさみで収穫した山葡萄を入れて行く。
まだ小さかった時ジイちゃんの家に預けられた時に教えてもらった時に食べた山ブドウが美味しくて感動をした。
ジイちゃんと収穫してバアちゃんがジャムにしてくれてパンにたっぷりと塗って食べた感動はひとしおで、その記憶がお互い大きかった為にバアちゃんはパン焼き機何て買ったのかなあ、なんて思って見たりもする。今となれば単にバアちゃんが新しいもの好きかパン好きかはもう聞けないが、それでもそれなりに収穫して荒れた山葡萄棚の下の雑草を軽く処理をしておく。
おにぎりとペットボトルの水で軽く昼食を済ませ、もうひと踏ん張りした所で家に帰って取り立ての山葡萄を山水で綺麗に洗い、祠にお供えをする。
すぐに烏骨鶏に見つかって突かれてしまったのを笑いながら、祠の中の物は無事なので無視が集まる前には回収しないとなと考えた所で
「綾人さんお帰りなさい」
「やっと帰って来たか。山に入ったと先生から聞いたが、また凄い格好だな」
山葡萄の収穫や剪定で来ていた服が山葡萄の知るまみれに染まっていた。
まるで烏骨鶏にしようとしていた姿だなと俺は一人笑っていれば
「ほら、そんな所で突っ立ってないで。圭斗も早く綾人をお風呂に入れさせて!
出て来たらご飯にするから。先生も勝手に晩酌始めちゃってるからあまり長風呂にならないでよ!」
どこのオカンだと突っ込まずにはいられない宮下に
「これお土産。
ジャムにして食べたいです」
そんなリクエストをすれば真横で見ていた陸斗の目がキラキラと輝いていた。
さあ、これは拒否できないぞと笑えば
「仕方がないなあ。確か何処かビンがあったよね」
何て受け取って台所に向かう姿を見てにんまりと笑い
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