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大変恐縮ではございますがお集まりいただきたく思います 8
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飯田さんの襲撃から一眠りして起きたころ枕元に飯田さんが正座をして俺が起きるのを待っていた。
ごめんなさい。
普通に怖いです。
たびたび襲撃に来る熊のせいで物音には敏感だったはずなのにと飯田さんの気配に慣れ過ぎたのが敗因かと分析しながら
「起きましたらご飯はいかがです?
笹鰈の干物があります。お味噌汁は浅蜊などいかがでしょう」
目を覚ますような誘惑に
「楽しみにしています!」
そういって山の生活のように起き上がって畑へ向かおうとしたところで障子を開ければ知らない庭が広がっていた事にここが深山の家ではなかったことを思い出した。
少し気まずくそっと後ろを振り向けば、想像通り飯田さんは声を必死に殺しながらもだえるように笑っていた。
意地が悪いのは知っていたがちょっとひどく無い?となんだか泣きたい気持ちを無視して縁側から降りて芝生が足の裏をくすぐる庭のチェックをするのだった。
まだ街の喧騒とは縁遠い時間帯。
不夜城のごとく騒がしい場所から縁遠いがそれでもすでに街は目覚め始めている。
「騒がしいな」
「静かな方ですよ」
深山の静かさを知ってしまえばこの物音さえ騒がしく聞こえてしまう俺の方が問題だがそこは気にしないでいる。
「お庭の方は綾人さんが手を入れたのですか?随分と整えられていますが」
「まあ、形を整えた程度だよ。週末に実桜さんに樹形をととのえてもらうけどね」
まだまだ花盛りの季節。
落ち葉や枯れた花を摘んで気になる個所を整えておく。
これだけ手を入れた庭だとそれすら不協和音の如く気に障るもの。深山の家のようにそれが当たり前だと何もない方に違和感が起きて居心地が悪い。
とはいえ緑の侵略には徹底に抵抗させてもらうけど、ウコ達がついばむ雑草ぐらいは目をつむってやる。ほんとクレソンって奴は繁殖力半端なくってたくましい。
時々食卓にも上がるクレソンのサラダにウコたちと同じものを食べているのかとなんとなく複雑な気分になるが、それでも食べ放題なのだ。深山から駆逐できない不思議に植物の生命のたくましさに感謝するのだった。
「綾人君、起きられましたか」
声をかけられて振り向けばそこには青山さんがいらした。
隣に爺さんと浅野さん。
「おはようございます。皆さん早いですね」
夏至に向けてだんだん朝を迎えるのが早くなる時間。
それなのに皆さんぴしりと寝起きには思えないくらいの素晴らしい身支度を整えられていた。
「吉野よ、お前は靴も履かずに何をしている」
「庭のチェックですのでお気になさらず。それにしてもやっぱり芝生の庭っていいですね。
フランスの城の芝生の庭はやっぱり馬場やサッカー場として使っていたのでそれなりに地面が荒くて歩いていても痛いけど、ここは本当に丁寧に手入れがされているのでくすぐったいくらいに気持ちがいいですね」
一朝一夕ではできない子の庭の作り込みをほめたたえれば満足げな顔で笑っていた。
奥様に先立たれてからもこの庭の維持だけは頑張ったと言う処だろう。
意外にも愛妻家でしたのねと言う驚きは俺の中だけにしておいて、水道で手を洗い、差し出されたタオルを見て足も洗って縁側から上がる。
「わしの息子や孫でさえ庭に裸足で降りるという事はしなかったぞ」
「それはよく教育が行き届いていて何よりです」
浅野さんは俺がぬぐい終えたタオルを受け取ってくれるので申し訳ないと思いつつ
もお願いしてしまう。
至れり尽くせりもここまで行くと申し訳なさすぎだ。
「それにしても朝起きたら飯田の息子がいたのには驚いたぞ」
言えば青山さんが頭を下げた。
この場合の飯田の息子さんは青山さんの方か、ならわれらがお犬様の飯田さんは孫と言う処だろうか。
まとめて飯田さんでいいけどと意地悪な爺さんの言葉の読み間違え注意と自分の中で注意喚起をする。油断ならない爺さんだからな。
「朝早くから申し訳ありません。
薫からとんでもないことを聞きましたので直ぐにでもとご挨拶に伺おうとした所でこれがちょうどお伺いする所でしたので」
ついでにお邪魔させて戴いたと言うのだろう。
ちらりと俺に向けられた爺さんの視線に
「飯田さんはうちの家の合いかぎを持ってもらってるし、飯田さんの家の合鍵も預からせてもらっています。
「何かあった時すぐに駆け付けてくれるという意味でも俺の信頼は浅野さん以上ですので」
むしろ俺が浅野さんの信頼を得る必要もないし、浅野さんを信用する必要はない。
爺さんのお世話係としてならそれで十分だし、この家はすでに俺のものだ。爺さんにとやかく言われる筋合いはない。
それを声に出していちいち言うほどガキではない。
何せ、今は爺さんが間借りしている状態。
一応二階には勝手に上がらないし、爺さんがこの家のどこにいようと文句は言わない。俺は客間に拠点があればいいし
「それにご飯はおいしいに限りますので」
昨晩まで浅野さんのご飯を頂いていたのだが、可もなく不可もなく。
自分が作っても変わらない平凡なお味と言えば贅沢だろう。
ゆえにおいしいものが食べられる、それ以上のぜいたくはないと言えば爺さんも頷き、青山さんも頷いた。
あ、今日の朝食絶対うまいやつ。
そんな直観ににこにことしてしまうも飯田さんが動かないのが解せない。
真っ先に動くはずだと思っていたのにと思えば
「綾人君おはようございます。
皆さんも朝食の準備がご用意できましたので食堂へ移動お願いします」
なぜか高遠さんが現れた。
思わずぐりんと首をめぐらして飯田さんへと目を向けるも
「飯田はいつも綾人君の家で楽しんでいるからね。
俺のテリトリーの中では俺がボスだよ」
さっと目をそらしたのは飯田さんだけではない。
浅野さんも同様に目をそらしたあたり俺の想像ではお茶をお出しした時点でダメ出しを食らったのだろう。
「客にまずい茶を出すのが山下様の教育なのか?」
飯田さんの師匠とあってこの人料理以外ぼーっとしていてもいう事は言う。
しかもかなりきつい言葉で。
青山さん曰く
「薫が調理場を締めないと高遠が〆ていくからね」
しめる、言葉の重みの違いにキッチンが平和で何よりですと思ってしまうのは当然だろう。
「市場で朝食にいい感じの干物を見つけてきたから楽しみにしていてくださいね」
のほほんとした、むしろ笑みを浮かべるようなのんびりした口調にひょっとして爺さんより手ごわいのではないかと思うのは俺の周囲にいないような人物だからだろうと思った。
ごめんなさい。
普通に怖いです。
たびたび襲撃に来る熊のせいで物音には敏感だったはずなのにと飯田さんの気配に慣れ過ぎたのが敗因かと分析しながら
「起きましたらご飯はいかがです?
笹鰈の干物があります。お味噌汁は浅蜊などいかがでしょう」
目を覚ますような誘惑に
「楽しみにしています!」
そういって山の生活のように起き上がって畑へ向かおうとしたところで障子を開ければ知らない庭が広がっていた事にここが深山の家ではなかったことを思い出した。
少し気まずくそっと後ろを振り向けば、想像通り飯田さんは声を必死に殺しながらもだえるように笑っていた。
意地が悪いのは知っていたがちょっとひどく無い?となんだか泣きたい気持ちを無視して縁側から降りて芝生が足の裏をくすぐる庭のチェックをするのだった。
まだ街の喧騒とは縁遠い時間帯。
不夜城のごとく騒がしい場所から縁遠いがそれでもすでに街は目覚め始めている。
「騒がしいな」
「静かな方ですよ」
深山の静かさを知ってしまえばこの物音さえ騒がしく聞こえてしまう俺の方が問題だがそこは気にしないでいる。
「お庭の方は綾人さんが手を入れたのですか?随分と整えられていますが」
「まあ、形を整えた程度だよ。週末に実桜さんに樹形をととのえてもらうけどね」
まだまだ花盛りの季節。
落ち葉や枯れた花を摘んで気になる個所を整えておく。
これだけ手を入れた庭だとそれすら不協和音の如く気に障るもの。深山の家のようにそれが当たり前だと何もない方に違和感が起きて居心地が悪い。
とはいえ緑の侵略には徹底に抵抗させてもらうけど、ウコ達がついばむ雑草ぐらいは目をつむってやる。ほんとクレソンって奴は繁殖力半端なくってたくましい。
時々食卓にも上がるクレソンのサラダにウコたちと同じものを食べているのかとなんとなく複雑な気分になるが、それでも食べ放題なのだ。深山から駆逐できない不思議に植物の生命のたくましさに感謝するのだった。
「綾人君、起きられましたか」
声をかけられて振り向けばそこには青山さんがいらした。
隣に爺さんと浅野さん。
「おはようございます。皆さん早いですね」
夏至に向けてだんだん朝を迎えるのが早くなる時間。
それなのに皆さんぴしりと寝起きには思えないくらいの素晴らしい身支度を整えられていた。
「吉野よ、お前は靴も履かずに何をしている」
「庭のチェックですのでお気になさらず。それにしてもやっぱり芝生の庭っていいですね。
フランスの城の芝生の庭はやっぱり馬場やサッカー場として使っていたのでそれなりに地面が荒くて歩いていても痛いけど、ここは本当に丁寧に手入れがされているのでくすぐったいくらいに気持ちがいいですね」
一朝一夕ではできない子の庭の作り込みをほめたたえれば満足げな顔で笑っていた。
奥様に先立たれてからもこの庭の維持だけは頑張ったと言う処だろう。
意外にも愛妻家でしたのねと言う驚きは俺の中だけにしておいて、水道で手を洗い、差し出されたタオルを見て足も洗って縁側から上がる。
「わしの息子や孫でさえ庭に裸足で降りるという事はしなかったぞ」
「それはよく教育が行き届いていて何よりです」
浅野さんは俺がぬぐい終えたタオルを受け取ってくれるので申し訳ないと思いつつ
もお願いしてしまう。
至れり尽くせりもここまで行くと申し訳なさすぎだ。
「それにしても朝起きたら飯田の息子がいたのには驚いたぞ」
言えば青山さんが頭を下げた。
この場合の飯田の息子さんは青山さんの方か、ならわれらがお犬様の飯田さんは孫と言う処だろうか。
まとめて飯田さんでいいけどと意地悪な爺さんの言葉の読み間違え注意と自分の中で注意喚起をする。油断ならない爺さんだからな。
「朝早くから申し訳ありません。
薫からとんでもないことを聞きましたので直ぐにでもとご挨拶に伺おうとした所でこれがちょうどお伺いする所でしたので」
ついでにお邪魔させて戴いたと言うのだろう。
ちらりと俺に向けられた爺さんの視線に
「飯田さんはうちの家の合いかぎを持ってもらってるし、飯田さんの家の合鍵も預からせてもらっています。
「何かあった時すぐに駆け付けてくれるという意味でも俺の信頼は浅野さん以上ですので」
むしろ俺が浅野さんの信頼を得る必要もないし、浅野さんを信用する必要はない。
爺さんのお世話係としてならそれで十分だし、この家はすでに俺のものだ。爺さんにとやかく言われる筋合いはない。
それを声に出していちいち言うほどガキではない。
何せ、今は爺さんが間借りしている状態。
一応二階には勝手に上がらないし、爺さんがこの家のどこにいようと文句は言わない。俺は客間に拠点があればいいし
「それにご飯はおいしいに限りますので」
昨晩まで浅野さんのご飯を頂いていたのだが、可もなく不可もなく。
自分が作っても変わらない平凡なお味と言えば贅沢だろう。
ゆえにおいしいものが食べられる、それ以上のぜいたくはないと言えば爺さんも頷き、青山さんも頷いた。
あ、今日の朝食絶対うまいやつ。
そんな直観ににこにことしてしまうも飯田さんが動かないのが解せない。
真っ先に動くはずだと思っていたのにと思えば
「綾人君おはようございます。
皆さんも朝食の準備がご用意できましたので食堂へ移動お願いします」
なぜか高遠さんが現れた。
思わずぐりんと首をめぐらして飯田さんへと目を向けるも
「飯田はいつも綾人君の家で楽しんでいるからね。
俺のテリトリーの中では俺がボスだよ」
さっと目をそらしたのは飯田さんだけではない。
浅野さんも同様に目をそらしたあたり俺の想像ではお茶をお出しした時点でダメ出しを食らったのだろう。
「客にまずい茶を出すのが山下様の教育なのか?」
飯田さんの師匠とあってこの人料理以外ぼーっとしていてもいう事は言う。
しかもかなりきつい言葉で。
青山さん曰く
「薫が調理場を締めないと高遠が〆ていくからね」
しめる、言葉の重みの違いにキッチンが平和で何よりですと思ってしまうのは当然だろう。
「市場で朝食にいい感じの干物を見つけてきたから楽しみにしていてくださいね」
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