人生負け組のスローライフ

雪那 由多

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一人、二人、そして 2

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 一通り爺さんの家を満喫したアイヴィーは事前にやり取りしていたように浅野さんを連れて外回りも散策に行った。当然飯田さん達は何をしているのかと思ったようだが
「アイヴィーは環境セキュリティを学んできました。
 俺はソフトだけにのめり込んでしまいますが、アイヴィーはハード、つまりこの家と言う環境のセキュリティを洗いざらい見直して最適な防御を提案してくれます。
 ありがたいことにここは日本なので銃での狙撃は基本無いという条件があり、主に痴漢、誘拐、強盗、盗難、盗撮そう言ったたぐいを条件にセキュリティをくみ上げていきます。
 もちろん監視社会に慣れたアイヴィーの感覚はまだこの国では嫌悪するレベルになると思います。ですが逆に言えばこの家の周囲の家にもそのセキュリティを約束する事になるので安全と引き換えに納得できることは約束できます。
 ソフト面では俺が組んであるので一度何かしたら逃がさないことを保証します」
 なんて事を自信持って言えば飯田さんを始め皆さん無言になってしまった。
 何がそこまで引くことがあったかと思うも考えても分からなかったのでスルーする事にして
「プログラムは既存のものが一年前の作品なのでアップデートして、それをこの家の条件に変更を加えてとりあえず設置してみます。
 市販の機械を使いますので満足な結果よりも最低限の結果ぐらいしか出せませんが、カラー画像、ズーム機能、音声録音はできるようにしておきます」
「いえ、それで十分です。それ以上はプライバシーの侵害という事になるかと」
 そこは植草さんがストップを言ってくれたが
「犯罪者にプライバシーなんて必要ありませんよ。お天道様に向かって堂々としていれる人間ならばそれぐらいの事に疑問を持ちません」
 爺ちゃんが言っていた言葉。
 当時はよくわからなかったけどこういうシーンで使われる言葉と思えばしっくりして納得はできた。
 だけど飯田さんを含めて皆さん言葉にはしないけどそういうものか?と言う疑問を浮かべているのでそういうものですとごり押しで話を進める。
 たとえ植草さんの犯罪者じゃない人には問題ですという声を出したような気がしたけど話が進まないのでとりあえず後回しにするし、イギリスでは当たり前だったのでそこは屋敷の外と中では別のプログラムという事にしようと頭の隅で変更するプログラムを考えておく。
「機材は家電屋で購入できるもので対処しますが、アイヴィーの作ったプログラムならPCを一台用意できれば十分です。なるべく容量の大きなものを使って24時間放置で構いません。仕上がり次第使い方は説明します」
 すでにその場所も決めている。
 部屋と部屋の間に防音を兼ねてだろうか三畳ほどの納戸があった。場所はそこで十分。机にPCが置ければいい。いろいろな機材も纏めておければなおさら問題ないし、何より一階のあまり人の目がない場所にある。
 ほんとでかい家ってどんな使い方をするかわからない部屋があってあきれるねと俺の家も人の事が言えない謎な部屋があるもののそこを倉庫として使っているだけあって多分この納戸も来客の多い家なら当然のように必要とする物量の対応として使っていたのだろう。

 うちもそうだったからね。

 離れのごみを処分した時を思い出してもなおあふれる物量はすでに見ないふりをしているところもある。
 ウコハウスには開かずの間があることを忘れてはいけない。
 二階は養蚕場だったからフラットなワンフロアだけど、ウコハウスのウコが住み着いている所は本来なら玄関だという事を忘れてはいけない。
一見広く見えても一軒家の四畳ぐらいの場所しかない。
 害獣対策で囲ってあるから導線が死んでしまっているけどすぐ裏側に二階に上がる階段を閉ざしてしまった扉があったり、ごみを入れて封じられた納戸があったりと言ったように知られてない廊下がある事を俺は誰にも言えないでいる。
 多分皆さんこの家の大きさから想像はついていると思うものの何も言わないあたり知らない方が幸せと言う言葉を選んでいるだけだと思う。
 ちなみに入り方は道具を置いてある部屋から入る事が出来る。
 棚で通行止めしてあるだけでどければ普通に入れる。はず。
 解体場の裏側に廊下があって、挟んだ向こう側に風呂とトイレと二部屋ほどあった。
 解体場を荷物置き場としてバアちゃんが使っていたのしか覚えがない。ならなんで俺が知っているかと思うと小さいころ山に預けられていた時にジイちゃんの後ろを追いかけていた時の発見。あの時点で汚部屋だったからきっと今もそのままだと思う。
 なんせ物置にごみを入れて壁で封印した実績を持つジイちゃんだからね。
 いつかは片付けよう。
 心はいつもそう言っている。
 まあ、今は忙しいから無理だけどねーなんて思えば脳内で宮下が
「どうせ俺たちにやらせるつもりでしょ?!」
 なんてぷりぷりと怒っている姿が目に浮かぶ。
 相変わらず親友のそんな姿をかわいらしいと思えば宮下にお願いするかと決定事項に決めた。





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