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足跡は残すつもりがなくとも残っていく 3
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予想通り多紀さんからのオファーと言うものが俺と宮下の所に正式に出演依頼と言う形でやって来た。
有名ユーチューバーみたいにどこにも所属してない俺達は動画概要欄に置いたメールが唯一の窓口と表向きはなっている。プレゼントとかの送り先にも手紙とかが来ているそうだが、やっぱり圧倒的にメールの方が多い。コメント欄も返信不可能なくらい山ほどコメントを頂けるようになったし、英語、フランス語訳をつけ始めてからは容赦なくその他の言語まで書かれるようになって宮下がビビっているのはちょっと笑えて面白い。おかげで歩く翻訳機と化した俺は知らない言語を学ぶ機会も得てちょっと楽しいと思っている所もある。
そんな俺達に多紀さんはだいぶ昔に交換したLIMEからの出演依頼が届いたときは軽いなーなんて宮下と二人笑っていた。
「服部さん、木下さん、堀さんお久しぶりです!」
「綾人君も相変わらずだね」
「宮下君も新婚生活は順調かい?」
「綾人にこき使われながらも頑張ってます!」
「あはあ、お嫁さんも苦労してるね」
香奈に至っては
『綾人さんいらっしゃーい。今お茶持ってくるから座って待ってて下さいね』
『適当に野菜と虹鱒持ってきたから冷蔵庫に入れといて』
『ごちそうさまです!あ、トウモロコシもある!この間のトウモロコシすごく甘くっておいしかったです!』
『食べてもらわないと烏骨鶏の餌になるだけだからね』
『贅沢してて羨ましい!』
からからと笑う香奈はすっかり今の生活にも慣れ、一人留守番する事が多い事務所での仕事も黙々とこなして圭斗と園芸部のご飯まで面倒見る立派なお母さんになっていた。
『え?そりゃあ、二人分作るよりたくさん作った方が美味しいじゃないですか』
どこの肝っ玉母ちゃんかっていう所だろうか。
大きな子供のお母さんになってしまってかわいそうにと思いながらも明るい笑顔は昔のように疲れ切った笑顔ではないので当面好きなようにさせている。
園芸部からお礼にと古民家カフェ三日月のコーヒーチケットを月一でもらっているのでそれも楽しみとやる気の一つとなっているらしい。
安上がりだなあと思うもちゃんとご飯代を入れているので圭斗の采配に任すことにしているからのようにマイペースな所は宮下のペースに染まっている証拠だろう。
久しぶりの三人との再会に話に花を咲かせる中それを見守る一人の影。
言わずもがな多紀さんだ。
カメラを構えれば寡黙にじっとその存在感を消して空気と一体化する、普段の鬱陶しさはどこにもない。
かつて多紀さんがうちに突撃しに来ては回収に来てくれた三人組と離れの長火鉢を囲みながら虹鱒や自慢の畑の野菜を焼いたりシーズン的には今一つの猪や鹿を串焼きにして食べながらお酒を飲む。
酒の肴としてこの家をモデルとした映画用に建てた家の話しになる。
全くの新築ではだめなので取り壊す家から木材を貰ってきたり台所もリサイクル店をめぐって集めた家財道具。それだけでは足りないのでわざとダメージ加工したり、ジーパン化と突っ込みながら笑いあう。
気が付けば多紀さんも仲間に入っていて、固定カメラが俺達を囲んでいる中お酒と深山で焼かれた炭で焙られた肉や野菜は芳しい香りを家中に満たしていた。
別の日には宮下と一緒に畑仕事をしている様子も撮られ、自分達では見せない編集作業もしっかり多紀さんは記録していった。
面白ければ使うし、流れに合わなかったら削り取る。素材はいくらあっても構わないし。とにかく撮りまくると言っては飯田さんが遊びに来た日の様子や先生との週末のグダグダな日。
本当は誰にも見せたくない金曜日の狂気の一日も多紀さんは撮影していった。
もちろんいろいろ制限のある部屋なので事前にあの荷物たちを別の部屋に隠すという事も忘れなかった。
多紀さんもさすがに錬金術とは思ってなかったけどあまりの情報量の多さに映画の編集がかわいく思えたと言ってくれた時はにやりと笑うしかない満足な話。
まあ、ここは没になるだろうし、普通にはまねができないので没にしてくれた。なんてったってスローライフには一切表に出.てほしくないような光景だ。だけど多紀さんには十分.納得できたようなので良しとする。
俺って親切と、出会った頃はかたくなに見られたくなくって拒否していたのはどうしたというくらい
「俺って丸くなったなー」
なんて撮影が終わって荷物を片付けていた木下さんは笑って
「みんなが綾人君を構いたくなる理由解りますよ。理屈じゃなくって目が離せないんですよ」
「そうそう、無茶ばっかしてて。こういうのもおかしいけどこの大きいとは言えない体のどこにこんなにもパワーがあるのかっていつも思いますね」
なんて堀さんにも言われた。
「そのくせ電池切れしたように全く動かなくなるから目が離せれないって言うか、そういう心配はもうさせないでくださいね」
服部さんにまで忠告されてしまう。
そんな心配させるようなことをしたかと思うも心当たりが多すぎてどれかと悩む方が難しかった。
「そうそう、この全く反省してない顔」
「俺達も見習わないとな」
「そうだね。綾人君を見てると僕も頑張らなくちゃって思うよ」
「「「「多紀さんはもっと自重してください」」」」
くしくも四人の心が一致してあふれ出た声にこの人たちとなら映画を撮影したいという蓮司たちの気持ちのかけらをやっと一つ理解することが出来た。
有名ユーチューバーみたいにどこにも所属してない俺達は動画概要欄に置いたメールが唯一の窓口と表向きはなっている。プレゼントとかの送り先にも手紙とかが来ているそうだが、やっぱり圧倒的にメールの方が多い。コメント欄も返信不可能なくらい山ほどコメントを頂けるようになったし、英語、フランス語訳をつけ始めてからは容赦なくその他の言語まで書かれるようになって宮下がビビっているのはちょっと笑えて面白い。おかげで歩く翻訳機と化した俺は知らない言語を学ぶ機会も得てちょっと楽しいと思っている所もある。
そんな俺達に多紀さんはだいぶ昔に交換したLIMEからの出演依頼が届いたときは軽いなーなんて宮下と二人笑っていた。
「服部さん、木下さん、堀さんお久しぶりです!」
「綾人君も相変わらずだね」
「宮下君も新婚生活は順調かい?」
「綾人にこき使われながらも頑張ってます!」
「あはあ、お嫁さんも苦労してるね」
香奈に至っては
『綾人さんいらっしゃーい。今お茶持ってくるから座って待ってて下さいね』
『適当に野菜と虹鱒持ってきたから冷蔵庫に入れといて』
『ごちそうさまです!あ、トウモロコシもある!この間のトウモロコシすごく甘くっておいしかったです!』
『食べてもらわないと烏骨鶏の餌になるだけだからね』
『贅沢してて羨ましい!』
からからと笑う香奈はすっかり今の生活にも慣れ、一人留守番する事が多い事務所での仕事も黙々とこなして圭斗と園芸部のご飯まで面倒見る立派なお母さんになっていた。
『え?そりゃあ、二人分作るよりたくさん作った方が美味しいじゃないですか』
どこの肝っ玉母ちゃんかっていう所だろうか。
大きな子供のお母さんになってしまってかわいそうにと思いながらも明るい笑顔は昔のように疲れ切った笑顔ではないので当面好きなようにさせている。
園芸部からお礼にと古民家カフェ三日月のコーヒーチケットを月一でもらっているのでそれも楽しみとやる気の一つとなっているらしい。
安上がりだなあと思うもちゃんとご飯代を入れているので圭斗の采配に任すことにしているからのようにマイペースな所は宮下のペースに染まっている証拠だろう。
久しぶりの三人との再会に話に花を咲かせる中それを見守る一人の影。
言わずもがな多紀さんだ。
カメラを構えれば寡黙にじっとその存在感を消して空気と一体化する、普段の鬱陶しさはどこにもない。
かつて多紀さんがうちに突撃しに来ては回収に来てくれた三人組と離れの長火鉢を囲みながら虹鱒や自慢の畑の野菜を焼いたりシーズン的には今一つの猪や鹿を串焼きにして食べながらお酒を飲む。
酒の肴としてこの家をモデルとした映画用に建てた家の話しになる。
全くの新築ではだめなので取り壊す家から木材を貰ってきたり台所もリサイクル店をめぐって集めた家財道具。それだけでは足りないのでわざとダメージ加工したり、ジーパン化と突っ込みながら笑いあう。
気が付けば多紀さんも仲間に入っていて、固定カメラが俺達を囲んでいる中お酒と深山で焼かれた炭で焙られた肉や野菜は芳しい香りを家中に満たしていた。
別の日には宮下と一緒に畑仕事をしている様子も撮られ、自分達では見せない編集作業もしっかり多紀さんは記録していった。
面白ければ使うし、流れに合わなかったら削り取る。素材はいくらあっても構わないし。とにかく撮りまくると言っては飯田さんが遊びに来た日の様子や先生との週末のグダグダな日。
本当は誰にも見せたくない金曜日の狂気の一日も多紀さんは撮影していった。
もちろんいろいろ制限のある部屋なので事前にあの荷物たちを別の部屋に隠すという事も忘れなかった。
多紀さんもさすがに錬金術とは思ってなかったけどあまりの情報量の多さに映画の編集がかわいく思えたと言ってくれた時はにやりと笑うしかない満足な話。
まあ、ここは没になるだろうし、普通にはまねができないので没にしてくれた。なんてったってスローライフには一切表に出.てほしくないような光景だ。だけど多紀さんには十分.納得できたようなので良しとする。
俺って親切と、出会った頃はかたくなに見られたくなくって拒否していたのはどうしたというくらい
「俺って丸くなったなー」
なんて撮影が終わって荷物を片付けていた木下さんは笑って
「みんなが綾人君を構いたくなる理由解りますよ。理屈じゃなくって目が離せないんですよ」
「そうそう、無茶ばっかしてて。こういうのもおかしいけどこの大きいとは言えない体のどこにこんなにもパワーがあるのかっていつも思いますね」
なんて堀さんにも言われた。
「そのくせ電池切れしたように全く動かなくなるから目が離せれないって言うか、そういう心配はもうさせないでくださいね」
服部さんにまで忠告されてしまう。
そんな心配させるようなことをしたかと思うも心当たりが多すぎてどれかと悩む方が難しかった。
「そうそう、この全く反省してない顔」
「俺達も見習わないとな」
「そうだね。綾人君を見てると僕も頑張らなくちゃって思うよ」
「「「「多紀さんはもっと自重してください」」」」
くしくも四人の心が一致してあふれ出た声にこの人たちとなら映画を撮影したいという蓮司たちの気持ちのかけらをやっと一つ理解することが出来た。
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