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夏を迎える前のアレ 1
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大学に入って初めて心許せる友人となった海野渉は少しどころかかなり気が小さい奴だった。
その気の小ささにすでに大学ではノート見せてなどいいように扱われている。
そんな奴がほとんど寮と言ってもいいようなアパートに暮らしている事を知ってどんな目に遭っているのか考えただけで不安になり無理やり遊びに行かせてもらった。
最悪狭くてもうちのアパートに引っ越して来いと言うつもりだったのに……
風呂無し共同トイレご飯付きで月三万円。
この条件が飲めれば大学生活を応援してくれるアパートらしい。ちなみにWi-Fi付き電気・水道代フリーだ。
ものすごく美味しい。美味しすぎて聞き直したほどだ。
しかも同居人はみんな良い人で俺同様家からの仕送りをあまり期待できない家庭環境。
金銭的にも週末は飲み会、なんてことはせずに自分が飲む分だけを持ちよっての宅飲み。金銭感覚が同じなので正直いろいろと気が楽になった。
だけど宅飲みとはいえ未成年だからとアルコールを禁止される始末。
斬新だ。
いや、単に法律を守っただけの言葉だけどみんなそれに従うのは貰いものだから自由にと置いて行かれるお茶とジュースがあればわざわざお金出してアルコールは買わないだけの話。
ものすごく健全過ぎてここは寺か俺達は修行僧かと思ったくらい。
いやいや、共同トイレ風呂無しなんて条件さえなければなんていい所だろうか。
むしろこれだけ気のいい人たちとならば共同トイレも気にならないし、風呂は銭湯で強制アルバイトがあるからむしろお願いしますという所。
だけど夢にまで見たひとり暮らしと足を伸ばして寝れる環境と借りているアパートの規約を考えればすぐにとは言えない。
ただ
「遊びに来る?
だったら食費千円で二食付きだがどうする?
あと布団はないから自分でどうにかしろ」
そんな大家の修司さんからの提案に千円は少し高いと思ったけど遊び歩いた日々の出費を思えばお願いしますと頭を下げた。
いや、千円なんて全然高くない。
大学に入ってみんなに誘われて飲み会に参加すれば軽く五千円はすぐに飛んだ。
さらにそのあとカラオケとかサウナとか底なしに消えていくお金にあっという間に今月の仕送りは尽きてしまった。途方に暮れて連絡を入れれば母さんもそこは予想していたようで
「付き合う友達はちゃんと考えなさい」
家から解放された、背伸びをしてみたかった、そんな考えは俺を育ててきた母さんにはお見通しでそれ以降俺は友達を選ぶようになった。
いろいろ遊びに誘ってくれた友達はいつの間にか裕福な友達ばかりで構成され、俺同様地方から来ている奴らはそれなりの友達で集まっていた。
そして俺は……
社交的、この場合は八方美人と言うのだろうかそんな性格が災いとなって友達は多いけど心許せる友達はいないという状況になっていた。
まあ、地元ではうちの貧困さに一緒に遊ぶ友達もいなかったから困った事はないけど。
ただ新しい、見知らぬ、誰も俺も知らない土地で新しい人生をスタートさせるという俺の夢は人づきあいと言う経験値の足りなさについえてしまっただけ。
今の友人達も俺の愛想よさと言うだけの大学内だけの繋がり。
細く大学時代だけの顔見知り程度の関係かと寂しさを思うも俺以上にお一人様の奴を見つけてつい声をかけてみた。
それが海野渉。
あまりの気の弱さにいいように扱われる渉にイライラとしながらもイライラしているだけの俺と言う存在に気付けば毎日持ってきている弁当を見てきっかけを作ってみた。
そこからまさかのお泊り会をする仲になるとは誰が思うだろうか。
しかも大学の先輩達とも知り合えて、講義の取り方とか教授たちの癖とかをいろいろ教わる事になった。
しかもゼミが同じの渉とはほとんど授業が被っていたのには驚きを超えた奇跡。
チューターに指導された通りにとったのが原因とは言え後に単位を落としていく奴らを見ればこの指導は本当にありがたかった。
渉のアパートで知り合った瑞己さんからも講義の取り方を教えてもらったりして渉と後期の授業もなるべく同じものをとろうという間柄にもなった。
そんな事もあり、週末は毎週とはバイトの都合もあって言わないが。
むしろ渉たちの鬼畜なまでのバイトの詰め込み。
授業の方はちゃんとついてきてるのだろうか俺でも心配になってきた。
「そんなわけでお前らテスト二週間前だからバイト禁止でしっかり勉強しろ」
なぜか俺まで呼び出されたと思ったら大家さんが仁王立ちで俺達を待ち構えていた。
その手には大皿にこんもりと盛られた八宝菜。
美味しそうだと俺を含めた皆の視線は八宝菜に注目。
誰も修司さんのお話なんて聞いてはいない。
だけど
「瑞己はあと卒論だけかな?
ここで卒論を落とす…… なんてめったなことはないけどやっちゃったら後期の卒論は厳しくなるから卒業にてこずるよ?
就職先の企業研修もあるしここでやっつけないと余裕がなくなるよ?」
修司さんから八宝菜を受け取って俺達の器に分ける人がしのさんと言う人。
渉がこのアパートの話をするときに一番よく出てくる人物にやっと会えた。
なんとなく優し気な口調から渉がお気に入りになるわけだと納得しながらもちゃんと八宝菜を平等に取り分けてくれていた。
「しのさん、俺ピーマン少な目で。みんなにたっぷり食べさせてあげて」
「ふふっ、修司はそんなにもピーマンが好きなんだね。特別にたっぷり入れておくから」
にっこりと笑うその強者。
敵にしたらいけないタイプなんだねとおもうさりげなく渉の器には少しお肉が多めに入っていた。
それは気のせいかと思ったけど
「渉はしっかり食べて標準体重まで大きくなろうね?」
「はい。頑張ります……」
小柄だとは思っていたけどそうか。そんなにも小柄だったのかと身長だけじゃない小柄ぶりに俺は自分に配られたお皿からお肉を一つ贈呈。
「然り食べような?」
「お肉じゃなくてパイナップルにチェンジして!」
そんなかわいいお願い。
もちろんそれは先輩方がかなえてくれて……
「渉、よかったね?」
「多い、おなかいっぱいで苦しい……」
「夜食に残すのもいいよ?」
「だけどしのさんのとうもろこしご飯が楽しみだから」
そんな甘やかせ上手なしのさんに俺もいい人認定したけど……
「克己は基本が出来てないからね。
大丈夫。基本だから何度も繰り返せばしぜんにおぼわる、だから基本なんだから。
少し古いけど練習するには十分な資料があるから反射で解けるくらいがんばろうね?」
優しい言葉でさらりと恐ろしい事を言う鬼畜ぶり。
そして皆さんも体験済みなのか少しだけ顔いろを悪くして真剣にテスト勉強に取り掛かるその様子。
大学受験の時の追い込みを思い出したのは俺だけではないようで、こうやって仲間意識が芽生えていくのかと受験対策、ではなくテスト対策のに取り掛かるのだった。
その気の小ささにすでに大学ではノート見せてなどいいように扱われている。
そんな奴がほとんど寮と言ってもいいようなアパートに暮らしている事を知ってどんな目に遭っているのか考えただけで不安になり無理やり遊びに行かせてもらった。
最悪狭くてもうちのアパートに引っ越して来いと言うつもりだったのに……
風呂無し共同トイレご飯付きで月三万円。
この条件が飲めれば大学生活を応援してくれるアパートらしい。ちなみにWi-Fi付き電気・水道代フリーだ。
ものすごく美味しい。美味しすぎて聞き直したほどだ。
しかも同居人はみんな良い人で俺同様家からの仕送りをあまり期待できない家庭環境。
金銭的にも週末は飲み会、なんてことはせずに自分が飲む分だけを持ちよっての宅飲み。金銭感覚が同じなので正直いろいろと気が楽になった。
だけど宅飲みとはいえ未成年だからとアルコールを禁止される始末。
斬新だ。
いや、単に法律を守っただけの言葉だけどみんなそれに従うのは貰いものだから自由にと置いて行かれるお茶とジュースがあればわざわざお金出してアルコールは買わないだけの話。
ものすごく健全過ぎてここは寺か俺達は修行僧かと思ったくらい。
いやいや、共同トイレ風呂無しなんて条件さえなければなんていい所だろうか。
むしろこれだけ気のいい人たちとならば共同トイレも気にならないし、風呂は銭湯で強制アルバイトがあるからむしろお願いしますという所。
だけど夢にまで見たひとり暮らしと足を伸ばして寝れる環境と借りているアパートの規約を考えればすぐにとは言えない。
ただ
「遊びに来る?
だったら食費千円で二食付きだがどうする?
あと布団はないから自分でどうにかしろ」
そんな大家の修司さんからの提案に千円は少し高いと思ったけど遊び歩いた日々の出費を思えばお願いしますと頭を下げた。
いや、千円なんて全然高くない。
大学に入ってみんなに誘われて飲み会に参加すれば軽く五千円はすぐに飛んだ。
さらにそのあとカラオケとかサウナとか底なしに消えていくお金にあっという間に今月の仕送りは尽きてしまった。途方に暮れて連絡を入れれば母さんもそこは予想していたようで
「付き合う友達はちゃんと考えなさい」
家から解放された、背伸びをしてみたかった、そんな考えは俺を育ててきた母さんにはお見通しでそれ以降俺は友達を選ぶようになった。
いろいろ遊びに誘ってくれた友達はいつの間にか裕福な友達ばかりで構成され、俺同様地方から来ている奴らはそれなりの友達で集まっていた。
そして俺は……
社交的、この場合は八方美人と言うのだろうかそんな性格が災いとなって友達は多いけど心許せる友達はいないという状況になっていた。
まあ、地元ではうちの貧困さに一緒に遊ぶ友達もいなかったから困った事はないけど。
ただ新しい、見知らぬ、誰も俺も知らない土地で新しい人生をスタートさせるという俺の夢は人づきあいと言う経験値の足りなさについえてしまっただけ。
今の友人達も俺の愛想よさと言うだけの大学内だけの繋がり。
細く大学時代だけの顔見知り程度の関係かと寂しさを思うも俺以上にお一人様の奴を見つけてつい声をかけてみた。
それが海野渉。
あまりの気の弱さにいいように扱われる渉にイライラとしながらもイライラしているだけの俺と言う存在に気付けば毎日持ってきている弁当を見てきっかけを作ってみた。
そこからまさかのお泊り会をする仲になるとは誰が思うだろうか。
しかも大学の先輩達とも知り合えて、講義の取り方とか教授たちの癖とかをいろいろ教わる事になった。
しかもゼミが同じの渉とはほとんど授業が被っていたのには驚きを超えた奇跡。
チューターに指導された通りにとったのが原因とは言え後に単位を落としていく奴らを見ればこの指導は本当にありがたかった。
渉のアパートで知り合った瑞己さんからも講義の取り方を教えてもらったりして渉と後期の授業もなるべく同じものをとろうという間柄にもなった。
そんな事もあり、週末は毎週とはバイトの都合もあって言わないが。
むしろ渉たちの鬼畜なまでのバイトの詰め込み。
授業の方はちゃんとついてきてるのだろうか俺でも心配になってきた。
「そんなわけでお前らテスト二週間前だからバイト禁止でしっかり勉強しろ」
なぜか俺まで呼び出されたと思ったら大家さんが仁王立ちで俺達を待ち構えていた。
その手には大皿にこんもりと盛られた八宝菜。
美味しそうだと俺を含めた皆の視線は八宝菜に注目。
誰も修司さんのお話なんて聞いてはいない。
だけど
「瑞己はあと卒論だけかな?
ここで卒論を落とす…… なんてめったなことはないけどやっちゃったら後期の卒論は厳しくなるから卒業にてこずるよ?
就職先の企業研修もあるしここでやっつけないと余裕がなくなるよ?」
修司さんから八宝菜を受け取って俺達の器に分ける人がしのさんと言う人。
渉がこのアパートの話をするときに一番よく出てくる人物にやっと会えた。
なんとなく優し気な口調から渉がお気に入りになるわけだと納得しながらもちゃんと八宝菜を平等に取り分けてくれていた。
「しのさん、俺ピーマン少な目で。みんなにたっぷり食べさせてあげて」
「ふふっ、修司はそんなにもピーマンが好きなんだね。特別にたっぷり入れておくから」
にっこりと笑うその強者。
敵にしたらいけないタイプなんだねとおもうさりげなく渉の器には少しお肉が多めに入っていた。
それは気のせいかと思ったけど
「渉はしっかり食べて標準体重まで大きくなろうね?」
「はい。頑張ります……」
小柄だとは思っていたけどそうか。そんなにも小柄だったのかと身長だけじゃない小柄ぶりに俺は自分に配られたお皿からお肉を一つ贈呈。
「然り食べような?」
「お肉じゃなくてパイナップルにチェンジして!」
そんなかわいいお願い。
もちろんそれは先輩方がかなえてくれて……
「渉、よかったね?」
「多い、おなかいっぱいで苦しい……」
「夜食に残すのもいいよ?」
「だけどしのさんのとうもろこしご飯が楽しみだから」
そんな甘やかせ上手なしのさんに俺もいい人認定したけど……
「克己は基本が出来てないからね。
大丈夫。基本だから何度も繰り返せばしぜんにおぼわる、だから基本なんだから。
少し古いけど練習するには十分な資料があるから反射で解けるくらいがんばろうね?」
優しい言葉でさらりと恐ろしい事を言う鬼畜ぶり。
そして皆さんも体験済みなのか少しだけ顔いろを悪くして真剣にテスト勉強に取り掛かるその様子。
大学受験の時の追い込みを思い出したのは俺だけではないようで、こうやって仲間意識が芽生えていくのかと受験対策、ではなくテスト対策のに取り掛かるのだった。
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