クリスタライズ~ある狙撃手へのレクイエム~

浅倉優稀

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#1 罪の精算

#1 罪の精算

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「いやだ! 僕はもういやだ!」
 後ずさるももう後ろに逃げ道はない。兵士たちは徐々にミズキを取り囲んでいく。数は四人。振り切れなくはないが、ここで抵抗すると、また激しい責め苦を加えられるのがわかっている。
 ミズキは何度となく、シュトラウスから罰を受けているから知っている。
 この罰則は、ミズキの尊厳を叩き壊す儀式なのだ。
「やだっ……あんなの、嫌だ……」
「おまえは私の言いつけを守らなかっただろうが。だからこれは罰だ」
 男たちの後ろでシュトラウスがニヤニヤ笑っている。
「二十三歳にもなって、言われたことすら聞けないとはな。私に対する所作をもう一度、その身体に教え込む必要がある」
「だっておじさん、僕……」
「まただ。おじさん、ではないだろう? 私のことは何と呼ぶのだ? それとも手酷く抱かれたくてわざと背いてるのか。もういい。おまえたち、ミズキを犯せ。好きにして構わん。暴れるなら押さえ付けろ。ただし、絶対にミズキをイかすなよ」
 男たちは無言で頷くと、ミズキに襲い掛かる。八本の腕が明確な意思を持って、ミズキの身体と腕を捉えた。
「やめっ……」
 必死に抵抗しても追い詰められているうえ、多勢に無勢だ。あっさりと床に引き倒され、衣服をはぎ取られる。
「いやぁっ!」
 床に磔にされ、手足を抑え込まれる。男たちは下卑た笑みを浮かべ、怯えて震えるミズキを睥睨しながら、ポケットから細長い金属を取り出した。
 ミズキによく見えるようにそれを眼前でちらつかせると、男は萎えたミズキを口に含む。
「ああっ……やめ……だめ」
 柔らかい口腔の粘膜に包まれ、唾液をまぶされ、花茎全体をきつく吸い上げられる。
「あっ……いい……」
 男の身体は単純だ。刺激を与えられれば反応する。自分の意識とは無関係に。やがてゆるりと硬くなったミズキの花茎を数回扱かれ、完全に硬くなったところを見計らい、男はミズキの鈴口に先ほどの金属をあてがった。
「それっ……」
 何をされるのか悟り、瞬間的な恐怖を感じた。
 ミズキは身体を激しく動かして抵抗しようとするが、お構いなしにずぶりと金属を飲み込まされる。スナイパーライフルの弾を加工した性具。
 射精を許さないそれは、狙撃手として育てられたミズキの専用の調教装具だ。
「ああっ! いた、痛いぃ……」
「イカせるなって命令だからな」
 男は愉しげに笑う。
「これでおまえは、受け入れるだけの身体だ」
 さらに別の一人が、ミズキ自身の根元を革紐で縛る。
「ほら、気持ちいいんだろ」
 鈴口の金属を小刻みに揺らされる。小さな口を無理やりこじ開けられて痛く、さらに尿道に異物が蠢く気持ち悪さが混ざってたまらない。
 一人の男がミズキの両足を掬い、大きく脚を開かせる。
 白磁のきめ細かい肌、薄い草むらの奥の秘所まで暴かれ、男たちから感嘆のため息が漏れる。
「本当に男なのか……」
「早くこいつを抱かせろよ」
「たまらねぇな……」
 ミズキに金属を飲み込ませた男が、凶暴な切っ先をミズキの蕾にあてがう。
「さあ、いい声で啼け……」

 ****

「いったい、何人の子種をこの身体に注ぎ込まれたんだ? ミズキ」
 幼いころに両親を殺した部屋で、ミズキは四つんばいに這わされていた。硬く冷たい床の上で揺らされる膝には擦り傷が出来ている。
「こんなにもいやらしく色づきやがって。おまえはやはり淫乱だな」
 後ろからミズキを犯しているシュトラウスが、時折ミズキの尻朶を素手で打擲する。白く滑らかな肌には、彼らが残した傷跡と、彼らの唇によって描かれた欲望の花弁が散らされている。
 シュトラウスを怒らせれば、ナイフで肌を彫って絵を描くくらいのことはする男だ。これ以上酷いことをされたくなくて、ミズキは黙って彼に身を任せ、淫らな闇の海を漂っていた。
 昏い色に染まる意識。全身が軋むように痛む。それは下腹がもっとも酷かった。ぬるりとした物は自分の蜜と男の精液の混ざったものだ。雄の放った臭いを全身に纏わせながら、ミズキは「罰」を受けていた。
 手は皮ベルトで拘束され、ミズキの根本も拘束を解かれてない。汗と体液でベルトが肌に食い込んで締まるうえ、擦れて痛い。
 さらに鈴口に飲み込まされた金属が、せりあがる熱水をせき止め、飛び出そうで出れず、ちゅぷりと弱いピストンのように上下に動いている。
「ほら。ちゃんとお前の罪を贖うんだ」
「は……い……」
 身体を揺らされながら、ミズキはゆるゆると顔を上げる。目の前には軍服を着た兵士が立っていた。着ているものの仕立てがよく、胸にはたくさんの勲章がぶら下がっている。位の高い軍人だ。
 彼はすでにズボンをくつろげている。天を向く赤黒い切っ先はすでにぬめっていた。
「さあミズキ、ちゃんとお願いしろ。教えただろう?」
「お願いしますご主人様……ご主人様の精液で、汚れた僕を綺麗にしてください……」
 ミズキは犯されながらも、男のそれに必死に舌を伸ばした。
 拘束されているからうまく手を使えない。そのもどかしさすら、男の欲情を高めるには十分だったようで、男はさらに大きさを増した。
「ちょうだい……あついの……」
 涙に濡れた目元を赤く染め、上目遣いで男にねだる。
 普段のミズキは少女のような無垢な雰囲気を纏わせているのに、いまここで男に貫かれて喘ぐ強烈で淫靡な艶めかしさを見せられれば、並の男ではまず耐えられない。
「ミズキ、大きく口を開けなさい」
 男の命令にミズキは言われたとおりに口を開ける。
 男はミズキの口に滾る自身を突っ込み、そのまま強引に薄茶色の髪をつかんだ。
「この間教えただろう? 喉の奥で私を感じるんだ。さあ上手にできるかな?」
 息苦しさに悶えることすら、ミズキが興奮しているとみたのか、喉の奥を狙ってくる。
「う、ふっ……」
 ミズキは男のそれに歯をたてないように舌で裏筋や亀頭を必死に愛撫していた。これらもすべて、「罰」で仕込まれた技だ。
「なかなか高度な技を教えたな、アルベルト」
 シュトラウスが歪に笑う。アルベルトと呼ばれた男は「情夫には必要な技術だ」と返した。
「慣れていないうちにやると、確実に吐き戻すからな。今のうちに覚えさせておかないと、こいつは客を取れない。そうだろう、シュトラウス?」
「ミズキはもともとの肉体の素質が淫乱だ。だからなんでも咥えこむ。孔ならどこにでもな」
「これがあのハイネ・ブランケンハイムの息子だとはな。あいつがみたら何というか」
「ふふ、あいつは常に凛とした堅物だったが、同時に絢爛たる美貌を備えた男だった。だからこそスパイとしては最適だったのさ。男も女も騙せるからな。そしてこいつ、ミズキもあの男の血を色濃く受け継いでいる……だからこそ止められない。私はあの男に復讐をしているんだ。あの男によく似た息子を代償に」
 シュトラウスが腰を回しながら最奥に突き込んでくる。彼が敏感な部分を切っ先で掠り、ミズキはあっと小さな悲鳴を上げる。口に咥えていた男がするんと飛び出し、ミズキはようやくまともに呼吸をする。
「あっ、はぁ、んっ……ああっ……」
「さあもっと腰を振れ。俺たちから搾り取ってみろ」
「はい……ご主人様…」
「違うミズキ、俺の事はなんて呼ぶんだ?」
「エル……」
「そうだ、もっとだ」
「あっ、もっと……もっと……そこ、そこがいい……ああ、んっ……エル、の、おおきぃ……」
 下卑た命令にミズキは素直に従う。それを見ながらアルベルトは、呆れたように笑った。
「おまえも大概だな。未練がましいにもほどがある。あいつの呼び方を息子にそのまま言わせるなんて」
「言っただろう、代償だと」
「あいつはおまえを裏切ったんじゃないか。だから処刑したんだろう? おまえはコイツを通してハイネの残影を見ているんじゃないのか?」
「だったら何だ」
「別に。ミズキとあいつは親子だけあってよく似てるが別人だ。ミズキはハイネにはなれない。恋人の面影をそこに見たとして、ミズキでおまえの恋をやり直しすることはできないぞ」
「ふん」
「ま、我がディスタンシアでは同性愛は御法度だ。ミズキとの関係もバレたらえらいことになるぞ、シュトラウス」
「関係ない。こいつは罪を精算しているだけだ。その恩恵に与っておいてよく言う」
「ま、男ばかりでは毒を抜く場所がないからな。さ、ミズキ、口をもっと開けなさい。喉の奥まで咥えこめ」
 アルベルトが赤黒く凶暴なそれで、ミズキの喉奥を犯す。
「そういえばシュトラウス、ミズキの身体には埋め込んだのか」
「ああ、アレか」
「俺の部下がクラリスに接収された工場を取り戻しに行くんだが、ミズキの腕が必要なんだ。ミズキでなければ、クラリスのセキュリティを崩せない。ミズキがいれば失敗はしないだろうが、万が一ということもある。いざという時のためにアレを埋め込んでおきたい」
「おまえの部下か。まともな奴か?」
「少なくとも、俺たちよりはまともさ。アレは俺が準備する。埋め込みは明日で。構わないか、シュトラウス?」
「――いいだろう」
 ミズキの都合などお構いなしだ。大人たちはいつだって勝手に話を進めていく。
 ぼんやりと二人のやり取りを聞きながら、硬く筋張った凶茎から滴る先走りを啜り、唾液を絡めて喉の奥で彼を味わう。
「おいひ……おいひぃ……ん、んっ、むぅ……」
 もはや自分が何を言ってるのかすらわからないほどほどに身も心もドロドロだ。
 ――気持ち悪い。僕は……汚い。
 まだ自分の中に残っているわずかな理性の欠片が、こんな行為は嫌だと拒否する。
 しかしそんなものは後ろで感じる熱であっさり快楽へと融け落ち、舌で感じる男の味が欲望の火を燃え上がらせる。
 そんなものを簡単に受け入れてしまう自分の淫らさが耐えられないのに、水を求めるように男の精を求めていた。
 いったい何人もの男の子種をこの腹に注ぎ込まれただろうか。女だったらとっくに孕んでいてもおかしくない。
 男が男に抱かれる情事への嫌悪、受け入れるようにできていない身体に穿たれる、兵士たちの狂暴な熱核。
 慎ましく閉じた肉道を無理矢理こじ開けられ、その粘膜、肉襞に男たちの形を覚えさせられる。
 それでも男たちを受け入れるうちに徐々に熟れてくる艶かしい蜜壺は、熱核の気配を感じると途端に綻びだす。行為の直前まで必死に抵抗しても、一度貫かれれば、意識はもはや白く淫らに濁り出す。敏感な部分を擦られ、むずむずとした欲望が蛇のように全身を這い回って快楽の出口を必死に探すのに、それが許されていないのだから、意識は達くことだけしか考えられなくなる。
 ミズキは気が狂いそうな快楽に翻弄され、疲労困憊していた。
 栓をされた花茎からは、先走りがあふれ出し、薄い草叢までしっとりと濡れている。押し込まれた弾丸をそのまま押し返してしまいそうなほど、蜜口は残酷な愉悦にぽたぽたと蜜を零し床を濡らす。
 とにかく達きたい。達かせてほしい。
 もはやそれしか考えられない。
「ほうらミズキ、飲ませてやるぞ」
「んむう……んっ……」
 口の中で男が大きさを増し、彼はミズキの頭を掴んで喉の奥で跳ねた。たっぷりとその口に劣情を注がれ、必死でそれを飲み下す。
 舌に広がる精の味が射精の欲求を僅かに緩めてはくれるが、それは一瞬だった。麻痺する思考、痺れる感覚、ぼうっとしてるのに、身体の中では熱が暴れ回る。
 決定的な衝撃がほしい。
「あ……ん、出させて……」
「まずは綺麗にするんだ」
「きれい……はい……」
 最後に舌でちろちろと男自身を清めてにこりと笑う。ここまでが「奉仕」の流れだ。
 誰のでも咥え込めるよう、男に抱かれる所作をシュトラウスから何度も何度も教えられた。
 口での奉仕が終わってもまだこの生臭い謝肉祭は終わらなかった。
 後ろのシュトラウスを満足させなければ、罰が終わらないのだ。シュトラウスは腰をぴったりつけ、ミズキの最奥を穿つ。それが気持ちよくて、もっともっと苛めてほしくて、ミズキは下腹に力を入れた。
「締め付けておねだりか? いやらしい子だ」
「そんなっ……あんっ、あっ……言わないで……」
 腹の中で感じる男の形。逃げられないのなら、快楽に溺れたほうが遙かにマシだ。
 少なくとも、その間だけは何もかも忘れられる。
「あれほど嫌だ嫌だと泣き喚いたくせに、一度挿れてやればあっさり堕ちる。……さあ、教えたとおり言え。おまえはどうして陵辱されているのか。罪を告白するんだ」
 シュトラウスに促され、ミズキは息も絶え絶えに唇を震わせた。
「僕は……ディスタンシアの裏切り者……です。お国の皆さんを喜ばせることが……僕に与えられた……ば、罰、です……」
「いいぞ、さあ続きを言うんだ」
「僕に罰を……激しい罰を与えてください……。そしてお国を守る……兵隊さんの精液で……汚い僕を……浄化して……ください」
「いいぞミズキ、よく言えたな。望み通りにおまえを罰して、綺麗にしてやろう」
 ここで生きていくためには、彼らを満足させなければならなかった。それがミズキに与えられた「罰」であり、「償い」だと、彼らは交合の最中にそう刷り込んだ。
 ミズキを「教育」している彼らは、こうしてミズキに「罰」を与えている。
 肉体の陵辱を意味するこの言葉に、ミズキは嫌悪し、彼らに抵抗したが、泣けば更なる苛烈極まる責めが加えられる。どんなに口で否定をしても快楽を伴うそれは、己の意識を破壊し、男たちから精液を浴びせられることだけを懇願するようになる。
 自分が化けてしまうのだ。
 「ミズキ」ではない、「何か」に。
 やがて腹の中で男が弾け、熱いものが臓腑をじんわり満たすと同時に、出したい欲求が急速に意識を沸騰させる。いきたくていきたくて仕方ない。
 両手が使えないから、戒めを解く事も、自分で慰める事も出来ない。
「ああっ……あつい……あん……出したい……僕、出したい……」
「出したいだと? この淫乱め」
 シュトラウスがあざ笑う。
「さあ罪深い身体を内側からきれいにしてやった。まだ順番を待っている人間がいるからな。せいぜいその身体をお国で働く兵士のために使え。それがおまえの家族が我が国にもたらした罪に対する罰であり、償いだ」
「は……い……」
 何を言われているかもわからないが、とにかく命令は絶対だ。ミズキは条件反射で返事を返すが、シュトラウスはミズキを髪を掴み、無理やり後ろを向かせる。
「いた……っ」
「ふ、目が虚ろだな。これでは罰にならんが仕方ない。おまえの射精は許可しない。もし言いつけを破っておまえの精液で床が汚れたらまた罰だ、いいな」
 ややあって、シュトラウスがミズキから出て行った。
 だが、ミズキ自身は狂気の渦を身体に溜め込んだままで戒めを解かれずに冷たいコンクリートの部屋にひとり残される。
 行為が済めば、興奮は冷め、徐々に理性が戻る。
 内臓すらも汚された自分自身の現実に、心がついていけなくなる。
 男の汗と精液の臭いを纏い、淫辱に濡れ、未だ全身を無数に這い回るゾクゾクした射精感に耐えられず、痛いほど勃ちあがったミズキ自身を床にすり付ける。
「取れて……取れて……」
 運よく鈴口の栓が取れないか、もがきながらも僅かな刺激で自慰をする自らの行為に嫌悪する。
 間もなく、違う男が部屋に入ってきた。
 彼は無言のまま、床に転がるミズキの拘束を解いた。あおむけに寝かせられ、男はミズキの唇に自分のそれを重ねながら、やがてミズキに覆いかぶさってくる。
「僕を……犯してください……」
 反射的に口からこぼれる哀願を男の耳に流し込む。
 欲に飢えた男は暗い瞳でミズキを睥睨しながらも、目の前のごちそうにつられたのか、手早くベルトを外し、ファスナーを下げる。ミズキはそれを感情のない瞳でぼんやりと見つめていた。
 シュトラウスの形に口をあけ、彼の劣情が滴る艶かしく熟れた蜜壷に、熱く滾る凶暴な肉茎をひたと押し当てた。
(あっ……)
 息をのむ間もなく、一気に貫かれたかと思ったら激しく揺らされる。
 何人もの男たちの精液でぬるぬるした孔を凶棒で激しく擦られるのが気持ちいい。
 だけど苦しい。
 苦しい。苦しすぎる――。
 快楽と狂喜を秘めた、さらなる残酷な毒素を身体に流し込まれる。
 満足させれば、花茎の戒めを解いてくれるかも知れない。
 だからそれを乞うために、必死に身体を征服する男たちを受け止めなければならない。
 身体の外も中も、何もかもを彼らの汗と体液で汚されなければ、自分は噴火のごとく熱く激しく押し寄せる快楽をずっと感じ続けなければならない。
 出したくて、達きたくて――そんな自分を自己否定しながら。
 ――僕は汚い。
 汚されることが、自分への最大の「罰」だと知る。
 たった一言のその言葉で、己の制御を喪うほどに。
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