ダンジョン孤児の配信生活~探索者でもないのに知らないうちに全国配信されて有名人になっていました~

ジャジャ丸

文字の大きさ
5 / 42

第5話 武器(ペット)作成

しおりを挟む
 セーフハウスに戻った私は、早速作業に取り掛かった。

 自力で破壊した(ここ重要)モンスターの残骸を取り出し、手を翳す。
 それだけで、残骸は部品単位でバラバラになっていった。

“えっ、なにこのスキル怖い”
“アリスちゃん、それをモンスターに使えば無双出来るのでは……?”

「稼働中の機械相手だと、こんな風に簡単には分解出来ないの。ちょっと時間がかかるから、戦闘しながらは無理だよ」

 視聴者のみんなの疑問に答えながら、《ストレージ》から色々と工具を取り出す。
 小さな金槌、ドライバー、それに金属用のノコギリ。

 どれも、ダンジョンで獲れる金属を使って作った特注品だ。

“なんかすっごい普通の道具出てきたな”
“これで武器なんて作れるの?”

「うん、テュテレールの改造もこれでやったから」

“えっ”
“えっ”

「ふんふふんふふ~ん♪」

 みんなが驚いているのを余所に、私は早速作業を始める。

 鼻歌混じにノコギリの刃を当て、金属の部品を切り取って。
 金槌でトンテンカンとリズミカルに叩いて形を整えて。
 ドライバーでくるっと回して、部品同士をくっ付けて。

「はい、完成!」

 上手に出来ました!

“いやいやいや待って待って待って”
“何が起きてるのこれはw”
“なんとここまで僅か十五分である” 
“おかしいw”

「え? おかしいって何が?」

 完成品の出来映えをチェックしながら、私はこてんと首を傾げる。

 出来上がったものを一言で表現するなら、狙った場所にパンチが飛んでいくマジックハンドだ。

 機械バッタの足回りに使われているスプリングを強化して、同じく機械バッタのエネルギーコアを動力源として弾頭を射出、対象を破壊した後で素早く弾頭を巻き取って再装填する、弾数無限の小さな銃。

 私が持つ銃の部分に比べて、実際に飛んでいく拳……丸い金属塊がかなり大きいから、見た目がちょっとアンバランスなのが玉に瑕かな?

 我ながらいい出来だと思ったんだけど、何か変だったかな?

“ダンジョン産の金属とか、硬すぎて加工が大変だって言われてるのに”
“まるで粘土細工みたいにあっさり作ったな……”
“しかも、普通ならアルミの加工すら出来なさそうな小さい工具で”

「そういうスキルを持ってるからだよ。私と似たようなスキルを持った人っていないの?」

“いないことはないけど、ここまでじゃなかった”
“精々普通の金属くらいに加工が簡単になる程度”

「そうなんだ……?」

 私、物心ついてすぐダンジョン暮らしを始めて、今まで一度だって地上に出たことがなかったから、私のスキルが強いのか弱いのかなんて考えたこともなかった。

 このスキルのお陰でテュテレールと一緒に暮らしてこれたみたいなものだから、後悔とかもなかったけど……珍しいスキルだっていうなら、神様とかに感謝した方がいいのかな?

 祈る神様もいないんだけど。

「んー……よいしょっと!」

 セーフハウスの壁に向けて、作ったばかりの武器──《ロケットパンチ君》を発射する。

 放たれた金属塊が、すごい勢いで壁に激突し、対モンスター用に限界まで強度を引き上げたそれを一発で凹ませた。すごい威力。

 ただ、それを撃った衝撃で、私が後ろに吹っ飛ぶことまでは考えてなかった。

「わきゃっ!?」

『大丈夫か? アリス』

「う、うん、ありがとうテュテレール」

 壁にぶつかりそうになった私を、テュテレールが優しく受け止めてくれた。

 そのお陰で怪我もなかったけど……うーん、失敗かぁ。

「テュテレール、どうしたらいいかな?」

『発射と同時に、背後に向けてバックブラストを生じさせることで反動を相殺するのが最適と判断する。ただし、それを実現するのに必要なエネルギーは二倍に膨れ上がるため、銃身強度とエネルギーコア出力が上層素材では不足すると考えられる』

「うむむ、難しいなぁ」

 中層以降の素材で作ればいいって言っちゃえばそうなんだけど、今は手持ちがないんだよね。
 それに、私の我が儘のためにわざわざテュテレールを戦いに向かわせるのは、守られてるのと変わらないと思う。

 うーん、テュテレールなら、エネルギーコアの出力も体の強度も桁違いだから、縛りも何もなく色々出来るのになぁ。

 ……いっそ、テュテレールに使って貰おうかな? せっかく考えたアイデアだし。

「テュテレール、腕を飛ばせる機能とか付けてみない?」

『巻き取りに必要な時間が致命的な隙に繋がる可能性があるため、推奨されない』

「む~、それなら、いっそテュテレールが飛ばせる新しい腕を作るとか!」

『それよりも、アリスを守る自律行動ロボットの生産を推奨する。攻撃、防御、探索の全てを私一人で行うことは非効率。私の指示に即応可能なロボットを希望』

「あ、そっか。じゃあ、新しい子の機能にロケットパンチを付けよっか! テュテレールと合体とか出来たらカッコいいよね、ほら、この前見たアニメみたいに!」

『……合体は保留にして欲しい、アリス』

“あれ、アリスちゃんの武器を作るって話だったはずなのに、いつの間にかテュテレールを強化する話になってる?”
“強化の話から更に新しいロボ作る話になってるぞ”
“恐ろしく早い話の脱線、俺じゃなきゃ見逃しちゃったね”
“心なしかアリスちゃんも武器作りより活き活きしてる”
“縛りプレイより全力プレイが好きなタイプか”
“まあ実際、アリスちゃんが武器持つよりも、アリスちゃんを守るロボット作った方が絶対強いよな。スキル的に”
“それテュテレールで良くない?”
“だからこその合体よ”
“当のテュテレールは嫌そうだけどなw”

 みんなが何か言ってるけど、そんなことより私は目の前の作業に夢中だった。

 テュテレールの大きさを今以上にすると、ダンジョン内での活動と移動速度に制限がかかっちゃうところだったし、普段は別の機体として活動させて、場面に応じて合体するって良いアイデアだと思う。

「よし、こーして、あーして……」

 残る二体分の素材を使って、私は一体のロボットを作り出す。

 テュテレールみたいな人工知能は難しくて付けれないんだけど、せっかくだから名前も付けようかな。

 うーん、そうだなぁ……。

「よし、出来た! あなたの名前は《ポワン》だよ、よろしくね」

『────』

 拳をそのままロボットにしたような、大型犬サイズの上層探索用護衛ロボット。

 カチャカチャと動くその体を、私は新しいペットを迎えるような気持ちで撫でるのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

ガチャから始まる錬金ライフ

あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...