ああ、スライム。君はなんておいしいんだ!

空兎

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スライム、ファイ

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「あ、この子レベル10もあるわ」

テイムに成功したレッドスライムを鑑定紙で調べてみるとレベルが10あることがわかった。これはスライムであることを考えるとかなり高い数字だ。

基本的にレベルはモンスターを倒すことによって上がっていく。つまりこのレッドスライムは他のモンスターをかなり倒していることになる。

スライムは弱い種族だ。だからスライムにとって最初の一体のモンスターを倒すことはかなり大変なことだ。

リンも最初に会った時はレベルは1だった。それを乗り越えて勝ち続けて来たのだからこのレッドスライムはかなり強い個体だ。

ふふふ、鍛えられているってことはこのレッドスライムはかなりおいしいんじゃないかな?カリカリもちもちのスライムがさらに濃厚な味になる。考えただけで涎が止まりません。

「レッドスライム……は長いな。えっと、じゃあファイって呼ぶね。ファイ、ちびスラを出してくれない?」

レッドスライムにファイと名付ける。ファイアを纏うファイトなスライムなんだろ?もうファイと呼ぶしかありません。さて、これで俺に名付けのセンスがないことは察してもらえたことだろう。

ファイがふるふると震える。揺れる。だけれどもちびスラはでない。おや?

「あ、ちびスラじゃ通じないのか。えっと、ちっさなスライムを増殖して欲しいんだけど、」
「ご主人様、少しよろしいですか?私の方でこの者に言い聞かせますので」

伝わらなくて困っている俺に対してリンがそう申してでる。あ、スライム同士なら言葉が通じるのかな?じゃあリンに通訳頼みましょうか。

「それならお願いしますよ」
「畏まりました。きちんと立場をわからせるように致します」

うん、立場をわからせる?

疑問に思って首をひねった瞬間リンがムズッとファイを掴み、地面に叩きつける。

え?と目の前で起きたことを理解できずフリーズしているとそのままゲシゲシと足蹴にし始めた。ええっ!?

「え、ちょ、リンさん何してるの!?なんでファイをボコり始めたのっ!?」
「この者は畏れ多くもご主人様の命令を意図的に無視致しました。同じご主人様の下僕として見過ごせない行為です。今のうちに立場をわからせておくべきです」

キリッとした顔でリンさんがそういう。あ、ファイがちびスラを出さなかったのはわざとなんだ。なんでだろう?テイム生活5分目でいきなり命令されるのは嫌だった?嫌がるとは思っていなかったんだけどどうすればいいんだろう?

「因みにちびスラ出さなかったのはなんで?」
「口に出すのも不快なのですが、『人間風情の言うことなど聞くつもりはない』とのことです。ご主人様に向かってよくもそのような口がきけたものです。少々お待ち下さい、2度とそのような口をきけないようにわからせますので」
「いやいや、そこまでしなくていいよ。リンが超肯定的だからわからなかったけどやっぱりテイムされることに抵抗があるモンスターもいるんだなぁ。でもレッドスライムのちびスラは絶対に欲しいからごめんね、ファイ。“命令だ”ちびスラを出してくれ」

強い意志を持ってファイにそう告げる。テイムのスキルは俺の方がレベルが上ならば“命令”をすることができる。基本的にこの命令は無視することはできない。ファイには悪いけどちびスラは出してもらおう。スライムを食べることが俺のライフワークなので。

俺の命令を受けたファイがうごうごと揺れる。そしてゆっくり、実に嫌そうに小さなスライムを吐き出した。

おぅ、好かれてはないと思っていたけどここまで拒否されると傷つきます。スライム好きの俺には結構なダメージだわ。つらたん。 

だけれども念願のファイのちびスラを手に入れたことには変わりない。ふふふ、ついに来ましたよ。レベル10もある野生のレッドスライム、こんなのおいしいに決まっているじゃないですか。

ファイが出してくれちびスラを手に取り串に突き刺す。屋台のおっちゃんは軽く炙っていたから俺もそうしよう。

コメット袋から親指と人差し指で挟めるほどの小さな紙を取り出す。これは発火紙といって挟んだ紙を指を鳴らす容量で擦ることで摩擦で火をつけることのできる便利な紙だ。

以前『火を付けるくらいで僕のかっこいい魔法を使うのはヤダ』といったマグの為に作ったのだ。燃える草と言われる火燃草と薄く乾燥しているチリの紙を練金している。凄く使い勝手はいいけど使い捨てだから数には注意しないといけない。

そんなわけで発火紙を擦りちびスラに火をつける。ちびスラにはすぐ火がつき燃え上がった。

燃える。燃える。よく燃える。……うん、ちょっと燃えすぎじゃないかな?

「よく燃えるね、リン」
「そうですね、ご主人様」
「でも燃えすぎじゃない?」
「そうですね、ご主人様」

リンに確認してみたけれど興味なさげだ。誰も共感してくれないけど絶対に焼き過ぎだよ。

串を上下に揺すって火を消そうと試みる。だけれどもいくら振っても火は消えない。え、ちょ、これどうやったら消えるの?おっちゃんが火をつけた時はフランベみたいに一瞬燃え上がっただけでこんなにしつこく燃えてなんかなかったよ!

結局水をかけて火を消したんだけどその頃にはちびスラは消し炭になっていた。……うん、レッドスライムは調理が難しいんだね。今食べるのはやめておいておっちゃんにどうすればいいか聞こう。このままだと俺が全自動ゴミ製造機になってしまうわ。

「残念でしたね、ご主人様」
「うん、本当に残念」
「でしたら食べれなかったレッドスライムの代わりに私のちびスラは如何でしょう?いくらでもご用意できますよ?」

にこにこと笑うリンの手の中にはたくさんのちびスラが乗せられている。どんな時でも全力で食べられに来る安定のリンさん。

せっかくなのでリンさんの手からちびスラをひとつ取り口にいれる。めっちゃ濃い草の味がしました。アーメン。

取り敢えずレッドスライムの捕獲という大きな目的は果たせたので1度街に帰ろうかな。おっちゃんに調理法聞きたいしギルドに行って情報収集もしたい。

皆で街へ向かって歩き出す。ファイを肩に乗せようと手を差し出したのに横をぴょこぴょこと跳ねて行った。泣いた。


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