13 / 16
第二部
第13話 キャンプ2
しおりを挟む
「おーい、円花ー?」
こちらに気付いた男子部員は立ち上がると、そそくさとその場を離れる。俺たちとすれ違うが何も言わない。俺は貴島を負ぶったまま、円花の傍までやってくる。
円花はというと、身を起こすと何も言わずに組みかけていたテントの設営を再開する。
「円花?」
顔を覗き込むが円花は目を逸らせて唇を噛み、テントを組み立て続けている。
これはと思った俺は、円花の動きを観察しながら傍に寄り、ここぞのタイミングで頬にキスした。まあ、正確には耳になってしまったけれど。
「円花、一人で頑張らないで何があったか教えて」
既に涙目だった円花は、うわ~んと両手で顔を抑えて子供のように泣き出す。
「おしり触られちゃった」
「「ええっ」」
よく話を聞くと、お尻ではなく腰に手を回されただけだったようだけれど、円花にはショックだったみたいだ。相手を突き飛ばしたものの、自分もバランスを崩して二人とも座り込んで固まっていたらしい。何かいろいろ心配してしまったけれど拍子抜けだった。
「円花」
俺は傍に寄って円花に声をかけ、いつものように首を傾けた。
円花は俺の頬に両手を添えるといつものように唇を重ねてきた。
「……」
「加奈子!? 何で!?」
円花は、気が付くと目の前にあった、貴島の顔に驚く。
「あー、円花が心配で忘れてた」
貴島を降ろすと透けた服に円花は一応の納得は見せた。
ただ、行動のあまりのバカさ加減に俺たち二人は呆れられていた。
◇◇◇◇◇
「じゃーん! アキ、見て。ノーブラ」
「うあ、やめろ! 近寄るな!」
貴島は夜用らしき春ニットに着替えていた。あれでノーブラはまずいだろ。
「そんなわけないでしょ。私のを貸したわ」
「あっ……へぇ……」
よく考えたら貴島に胸なんてあったっけとか今更思う俺。
「変なこと考えないでよ、予備のスポブラよ。加奈子も何で着替え持ってないのよ」
「こいつ男子みたいなとこあるからな……」
「忘れただけだってば!」
まさに男子じゃねえか。
とりあえずは組み立て途中の円花たちのテントを仕上げてしまってから皆に合流する。
円花のことは、三人で明日花さんへ報告に行った。腰に手を回しただけではあるけど、明日花さんはめっちゃ怒って件の男子部員をこっそり呼び出し、真奈美さんと一緒に叱ってくれてたみたい。
俺たちはしばらく沢で遊んだが、貴島はいい加減、着替えが無くなるので円花に水遊びは禁止されていた。子供か。そして今度は水切りして遊んでいたのだが、七海に勝てなくてムキになっていた。子供か。
◇◇◇◇◇
炭の熱が回ってコンロの準備が整うと、部長さんはじめ男子部員の方々がいろいろと焼き始めた。明日花さんは未成年に酒飲ますなよーと注意して回っている。
「まー、明日花はあの辺お堅いけど女の子は守ってあげないとねー」
真奈美さんが言う。出かける前に母さんが電話で――大学生は新入部員にガンガン飲ませに来るから巻き込まれないように気を付けなよ――とか言ってたけど心配はなさそうだ。
「せ、せんぱい、いっぱい貰っちゃいました!」
七海がペーパーボウルに山ほど肉を載せて貰っていた。
「せんぱい、あ~ん」
「やめろ! 恥ずかしがってたくせに今日の今で頑張るな!」
「この雰囲気でならいけると思ったのに!」
「熱々の肉を口に放り込もうとするな!」
「……しゅん……」
「た、たくさんあるし、一緒に食おうぜ後輩」
七海と座って肩を寄せ合い、肉をむさぼった。
なお、俺が貰いに行っても野菜ばかり載せられた……。
「二人で一緒に食べればバランスいいですね!」
円花はと言うと、咲枝ちゃんにどのくらい食べていいかお伺いを立てていた。そしてそのまま二人は真奈美さんに捕まっているようだ。咲枝ちゃんがこっちを見て手を振っているので、あれは多分、七海にこの場を譲るつもりなのだろう。
貴島は……どこから持ってきたのかハンモックチェアで寛ぎながら、BBQを男子に貢がせていた。いいけどお前、立って食わないとその春ニット、次着られなくなるぞ……。
結局、また七海は山盛りの肉を貰ってきたので二人でたらふく食べた。
食事後も座っていると、咲枝ちゃんと円花がやってきて一緒に座り込んだ。
「円花はたくさん食べられた?」
「真奈美さんと話してたらそんなに食べられなかったけど、いいわ。楽しかったし」
「何を話してたの?」
「いろいろ」
「いろいろ?」
「そう」
「――どれだけ寄り道をしても最後に大事な人を離さないでいれば幸せになれるって」
しばらくの沈黙の後、円花はそう呟いた。咲枝ちゃんもニコニコと頷いてたし、隣にくっついていた七海は俺の手をぎゅっと握ってきた。
「――真奈美さんはそう思うって」
「最後か」
俺は彼女たちの最後で本当にいいのだろうか。まだ高校生なのに。だけど、まだ高校生なのに俺は三人のことで大きな寄り道をした。
◇◇◇◇◇
BBQも終わり、後片付けも手伝い終わると辺りは暗くなってきた。明日花さんたちが珈琲をマグに入れてくれたので、芝生の上にシートを敷いて四人でゆっくりしていた。貴島? 貴島は手伝いもしなかったのでどこに行ったか知らん。
「星がよくみえるね。あっ、流れ星!」
咲枝ちゃんが指さす。
「流れ星かー。流れ星なんて昔はいくらでも見えたのになあ」
「先輩、流れ星は別に先輩が大きくなっても減らないと思いますよ」
七海が耳元で言う。
「え、だって中学の頃は十秒とか十五秒に一回とか流れてるの見えたよ?」
「たまたま流星群の日に当たっただけじゃないの?」
割とそれっぽいことを円花が言う。
「そうかなあ。めちゃくちゃ暗い流星とかもあったし、とにかくあの頃はよく夜空を眺めて流れ星を観てたから」
「先輩、運よく流星群の日だけ夜空を見てたんじゃないですか?」
「そんなわけないと思うんだけどなあ」
「アキくん、願い事はしなかったの?」
「願い事ったって、流れ星なんていちばん長くても二秒見えて無かったし――」
「一秒でも長いわよね」
「――あ、でも……」
思い出した。願ったことがある。何度も何度も願った。中学男子の馬鹿な願掛け。
俺の様子を見て七海と咲枝ちゃんが顔を見合わせる。
「なに?」――理由がわからず円花が聞く
「はぁーあ、ごちそうさまです」――癒されるからと、それまで俺を後ろから抱くように座っていた七海がおもむろに立ちあがる。
「はい、円花さん」――円花と俺の間に座っていた咲枝ちゃんも立ち上がって円花の向こうに座りなおすと、小さなお尻で円花を押す。
円花は押されて俺の隣にくっついて座る。
俺もバツが悪くて言い出しかねていた。
「アキくんが中学の頃、願ったことなんてひとつしか無いじゃないですか」
「そもそも先輩、何でそんなに流れ星を観てたんですかねー」
「……マドカって三回言うだけならいけるって思ったんだ」
その後、俺も円花もお互いの顔など見ていられなかった。
黙りこくってしまったのを見た七海と咲枝ちゃんは、声をかけて先にテントに戻っていった。
「そんなことしてたんだ……」
やっと円花が口を開く。
「だって、とても手の届かない一番星だったんだぞ」
「恥ずかしいこと言わないでよ、もう……」
俺と円花、どちらともなく唇を寄せ合った。
「――ごめんね」
「どうして謝るの?」
「アキを三回も、その、偉そうに断って」
「最後は告白してくれたでしょ」
「あんなに努力家だと思わなかったの。そのころ私も自信あったけど、ずっとすごかった」
円花は最近見せるようになった、二人きりの時の甘えた喋り方でそう言った。
「じゃあ、頑張った甲斐があった」
「加奈子と二股するのかと思っちゃった」
「貴島と? 無いよ」――俺は笑った。
「そうかな」
「そうだよ」
「――本当はね、二度目の時にはもう好きになりかけてたの」
「え……」
「ずっと目で追ってたの。でも結局、言い出せなくて。ごめんね……」
円花の少し悲しげな顔。
努力を見てくれていたのは聞いていたが……。
「よかったって思ってる」
「え?」
「よかったって思ってるよ。円花に並び立てる自信がついて。じゃなきゃこんな強くなれなかった」
「ごめんなさい……」
――またそんな顔をして。
「もう謝らなくていいんだ」――そう円花に言ってもう一度、唇を寄せた。
その後、二人でゆっくり帰ってくると、明日花さんに――テントの外でもヤっちゃダメよ?――と念を押された。やりませんて。
◇◇◇◇◇
「いや、何これ」
テントには困ったモノが寝ていた。
「加奈子ちゃん起きなくて」
「カナ先輩ー。起きてくださいー」
「しょうがないわね加奈子は。アキ、姉さんのテント借りて二人で寝ましょう」
「いやそれ絶対無理だから」
貴島は何故か俺の寝る予定のテントに入って……というより靴を履いたまま、入口から足首から先を出して突っ伏して寝てた。遊び疲れたのか起こしても起きない。
「貴島、襲われたりしてないよなこれ」
「姉さんの目があるから大丈夫とは思うけど」
「はぁ、いいや。俺、このまま寝るわ。運び出すのも面倒だし」
「えっ、ダメ」
「えっ、ダメですよ先輩」
「まあ大丈夫じゃないかしら」
エッ――っと二人が円花を見る。
「この二人、中学の頃は何度も一緒に雑魚寝してたらしいから今更でしょ」
そういうわけで、顔を洗ってきた後は貴島の横で寝た。
明日花さんには円花に説明しておいて貰ったが、どう説明したのだろうか……。
朝になると貴島の姿は無く、七海や咲枝ちゃんと同じテントに戻っていた。
◇◇◇◇◇
翌日、明日花さんの運転で帰宅した。貴島はあのあと何も言わなかったが、おのれの所業をちゃんと反省したのだろうか、全く。
明日花さんはその後、真奈美さんと二人で別のキャンプ地へと向かった。
こちらに気付いた男子部員は立ち上がると、そそくさとその場を離れる。俺たちとすれ違うが何も言わない。俺は貴島を負ぶったまま、円花の傍までやってくる。
円花はというと、身を起こすと何も言わずに組みかけていたテントの設営を再開する。
「円花?」
顔を覗き込むが円花は目を逸らせて唇を噛み、テントを組み立て続けている。
これはと思った俺は、円花の動きを観察しながら傍に寄り、ここぞのタイミングで頬にキスした。まあ、正確には耳になってしまったけれど。
「円花、一人で頑張らないで何があったか教えて」
既に涙目だった円花は、うわ~んと両手で顔を抑えて子供のように泣き出す。
「おしり触られちゃった」
「「ええっ」」
よく話を聞くと、お尻ではなく腰に手を回されただけだったようだけれど、円花にはショックだったみたいだ。相手を突き飛ばしたものの、自分もバランスを崩して二人とも座り込んで固まっていたらしい。何かいろいろ心配してしまったけれど拍子抜けだった。
「円花」
俺は傍に寄って円花に声をかけ、いつものように首を傾けた。
円花は俺の頬に両手を添えるといつものように唇を重ねてきた。
「……」
「加奈子!? 何で!?」
円花は、気が付くと目の前にあった、貴島の顔に驚く。
「あー、円花が心配で忘れてた」
貴島を降ろすと透けた服に円花は一応の納得は見せた。
ただ、行動のあまりのバカさ加減に俺たち二人は呆れられていた。
◇◇◇◇◇
「じゃーん! アキ、見て。ノーブラ」
「うあ、やめろ! 近寄るな!」
貴島は夜用らしき春ニットに着替えていた。あれでノーブラはまずいだろ。
「そんなわけないでしょ。私のを貸したわ」
「あっ……へぇ……」
よく考えたら貴島に胸なんてあったっけとか今更思う俺。
「変なこと考えないでよ、予備のスポブラよ。加奈子も何で着替え持ってないのよ」
「こいつ男子みたいなとこあるからな……」
「忘れただけだってば!」
まさに男子じゃねえか。
とりあえずは組み立て途中の円花たちのテントを仕上げてしまってから皆に合流する。
円花のことは、三人で明日花さんへ報告に行った。腰に手を回しただけではあるけど、明日花さんはめっちゃ怒って件の男子部員をこっそり呼び出し、真奈美さんと一緒に叱ってくれてたみたい。
俺たちはしばらく沢で遊んだが、貴島はいい加減、着替えが無くなるので円花に水遊びは禁止されていた。子供か。そして今度は水切りして遊んでいたのだが、七海に勝てなくてムキになっていた。子供か。
◇◇◇◇◇
炭の熱が回ってコンロの準備が整うと、部長さんはじめ男子部員の方々がいろいろと焼き始めた。明日花さんは未成年に酒飲ますなよーと注意して回っている。
「まー、明日花はあの辺お堅いけど女の子は守ってあげないとねー」
真奈美さんが言う。出かける前に母さんが電話で――大学生は新入部員にガンガン飲ませに来るから巻き込まれないように気を付けなよ――とか言ってたけど心配はなさそうだ。
「せ、せんぱい、いっぱい貰っちゃいました!」
七海がペーパーボウルに山ほど肉を載せて貰っていた。
「せんぱい、あ~ん」
「やめろ! 恥ずかしがってたくせに今日の今で頑張るな!」
「この雰囲気でならいけると思ったのに!」
「熱々の肉を口に放り込もうとするな!」
「……しゅん……」
「た、たくさんあるし、一緒に食おうぜ後輩」
七海と座って肩を寄せ合い、肉をむさぼった。
なお、俺が貰いに行っても野菜ばかり載せられた……。
「二人で一緒に食べればバランスいいですね!」
円花はと言うと、咲枝ちゃんにどのくらい食べていいかお伺いを立てていた。そしてそのまま二人は真奈美さんに捕まっているようだ。咲枝ちゃんがこっちを見て手を振っているので、あれは多分、七海にこの場を譲るつもりなのだろう。
貴島は……どこから持ってきたのかハンモックチェアで寛ぎながら、BBQを男子に貢がせていた。いいけどお前、立って食わないとその春ニット、次着られなくなるぞ……。
結局、また七海は山盛りの肉を貰ってきたので二人でたらふく食べた。
食事後も座っていると、咲枝ちゃんと円花がやってきて一緒に座り込んだ。
「円花はたくさん食べられた?」
「真奈美さんと話してたらそんなに食べられなかったけど、いいわ。楽しかったし」
「何を話してたの?」
「いろいろ」
「いろいろ?」
「そう」
「――どれだけ寄り道をしても最後に大事な人を離さないでいれば幸せになれるって」
しばらくの沈黙の後、円花はそう呟いた。咲枝ちゃんもニコニコと頷いてたし、隣にくっついていた七海は俺の手をぎゅっと握ってきた。
「――真奈美さんはそう思うって」
「最後か」
俺は彼女たちの最後で本当にいいのだろうか。まだ高校生なのに。だけど、まだ高校生なのに俺は三人のことで大きな寄り道をした。
◇◇◇◇◇
BBQも終わり、後片付けも手伝い終わると辺りは暗くなってきた。明日花さんたちが珈琲をマグに入れてくれたので、芝生の上にシートを敷いて四人でゆっくりしていた。貴島? 貴島は手伝いもしなかったのでどこに行ったか知らん。
「星がよくみえるね。あっ、流れ星!」
咲枝ちゃんが指さす。
「流れ星かー。流れ星なんて昔はいくらでも見えたのになあ」
「先輩、流れ星は別に先輩が大きくなっても減らないと思いますよ」
七海が耳元で言う。
「え、だって中学の頃は十秒とか十五秒に一回とか流れてるの見えたよ?」
「たまたま流星群の日に当たっただけじゃないの?」
割とそれっぽいことを円花が言う。
「そうかなあ。めちゃくちゃ暗い流星とかもあったし、とにかくあの頃はよく夜空を眺めて流れ星を観てたから」
「先輩、運よく流星群の日だけ夜空を見てたんじゃないですか?」
「そんなわけないと思うんだけどなあ」
「アキくん、願い事はしなかったの?」
「願い事ったって、流れ星なんていちばん長くても二秒見えて無かったし――」
「一秒でも長いわよね」
「――あ、でも……」
思い出した。願ったことがある。何度も何度も願った。中学男子の馬鹿な願掛け。
俺の様子を見て七海と咲枝ちゃんが顔を見合わせる。
「なに?」――理由がわからず円花が聞く
「はぁーあ、ごちそうさまです」――癒されるからと、それまで俺を後ろから抱くように座っていた七海がおもむろに立ちあがる。
「はい、円花さん」――円花と俺の間に座っていた咲枝ちゃんも立ち上がって円花の向こうに座りなおすと、小さなお尻で円花を押す。
円花は押されて俺の隣にくっついて座る。
俺もバツが悪くて言い出しかねていた。
「アキくんが中学の頃、願ったことなんてひとつしか無いじゃないですか」
「そもそも先輩、何でそんなに流れ星を観てたんですかねー」
「……マドカって三回言うだけならいけるって思ったんだ」
その後、俺も円花もお互いの顔など見ていられなかった。
黙りこくってしまったのを見た七海と咲枝ちゃんは、声をかけて先にテントに戻っていった。
「そんなことしてたんだ……」
やっと円花が口を開く。
「だって、とても手の届かない一番星だったんだぞ」
「恥ずかしいこと言わないでよ、もう……」
俺と円花、どちらともなく唇を寄せ合った。
「――ごめんね」
「どうして謝るの?」
「アキを三回も、その、偉そうに断って」
「最後は告白してくれたでしょ」
「あんなに努力家だと思わなかったの。そのころ私も自信あったけど、ずっとすごかった」
円花は最近見せるようになった、二人きりの時の甘えた喋り方でそう言った。
「じゃあ、頑張った甲斐があった」
「加奈子と二股するのかと思っちゃった」
「貴島と? 無いよ」――俺は笑った。
「そうかな」
「そうだよ」
「――本当はね、二度目の時にはもう好きになりかけてたの」
「え……」
「ずっと目で追ってたの。でも結局、言い出せなくて。ごめんね……」
円花の少し悲しげな顔。
努力を見てくれていたのは聞いていたが……。
「よかったって思ってる」
「え?」
「よかったって思ってるよ。円花に並び立てる自信がついて。じゃなきゃこんな強くなれなかった」
「ごめんなさい……」
――またそんな顔をして。
「もう謝らなくていいんだ」――そう円花に言ってもう一度、唇を寄せた。
その後、二人でゆっくり帰ってくると、明日花さんに――テントの外でもヤっちゃダメよ?――と念を押された。やりませんて。
◇◇◇◇◇
「いや、何これ」
テントには困ったモノが寝ていた。
「加奈子ちゃん起きなくて」
「カナ先輩ー。起きてくださいー」
「しょうがないわね加奈子は。アキ、姉さんのテント借りて二人で寝ましょう」
「いやそれ絶対無理だから」
貴島は何故か俺の寝る予定のテントに入って……というより靴を履いたまま、入口から足首から先を出して突っ伏して寝てた。遊び疲れたのか起こしても起きない。
「貴島、襲われたりしてないよなこれ」
「姉さんの目があるから大丈夫とは思うけど」
「はぁ、いいや。俺、このまま寝るわ。運び出すのも面倒だし」
「えっ、ダメ」
「えっ、ダメですよ先輩」
「まあ大丈夫じゃないかしら」
エッ――っと二人が円花を見る。
「この二人、中学の頃は何度も一緒に雑魚寝してたらしいから今更でしょ」
そういうわけで、顔を洗ってきた後は貴島の横で寝た。
明日花さんには円花に説明しておいて貰ったが、どう説明したのだろうか……。
朝になると貴島の姿は無く、七海や咲枝ちゃんと同じテントに戻っていた。
◇◇◇◇◇
翌日、明日花さんの運転で帰宅した。貴島はあのあと何も言わなかったが、おのれの所業をちゃんと反省したのだろうか、全く。
明日花さんはその後、真奈美さんと二人で別のキャンプ地へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる