恋する僕を裏切って男に走った彼女たち、みんな僕を離してくれない!

あんぜ

文字の大きさ
14 / 16
第二部

第14話 事件1

しおりを挟む
 連休も終わると朝練も始まり、円花と七海は部活に精を出していた。また、それぞれのコミュニティでもちゃんと友人関係を作ってくれていた。朝、登校前にランニングしたりしていると、お弁当は自然と咲枝ちゃんが担当になった。

 朝練のある日は、なんだかんだ自分もかつては慣れた時間だったので、四人で早めに登校し、教室では隣のクラスの咲枝ちゃんと一時間ほどを勉強したり、のんびり過ごしたりしていた。

 昼は用が無いかぎりは四人+一名で集まってお弁当を食べていたが、最近は円花と七海がクラスでの友人関係が充実してきたこともあって出てこられないこともあった。ただ、は誘いを断ってでもやってきていた。もちろん、俺の抵抗にもあう。

 放課後は咲枝ちゃんと買い物をして帰ることが多かった。もちろん、バリバリのスポーツ強豪校なわけでもないため、普通に四人で帰ることも多いが、夏に三年生から部活を引き継いだら円花なんかは忙しくなるかもしれない。

 夕飯は咲枝ちゃんが中心となって作る。一人暮らしの頃のスーパーの総菜やカップ麺とは比べ物にならない豪華さ。いや、そんなものばかり食べてたと知られた最初は怒られたもんだ。円花や七海が居ないときは掃除を自分でやるようになったのもかなりの進歩。夕食後はランニングに付き合ったり、散歩に付き合ったり。

 その後は順番にお風呂に入りながら、円花が頑張ってる勉強に皆で付き合う。円花は中学三年生の勉強が引っ掛かり、特に数学なんかはそれが後々まで影響を及ぼしていた。それも克服されていった。

 円花の生活リズムを正すことも含め、何もかも順調に見えていた。ただ、ひとつだけ、俺と彼女たちの間には後回しにしていた問題があった。それは徐々にフラストレーションを生み、五月も半ばを過ぎた頃、ひとつ目の事件を引き起こした。


 ◇◇◇◇◇


 朝が早いため、週末を除いて夜はみんな寝るのが早い。これだけ早く寝るのは中学のあの頃以来だった。あの頃は貴島に邪魔されることも多かったため、それ以上か。

 俺の部屋は二階で隣の部屋は円花が使っている。一階の少し大きめの部屋は七海と咲枝ちゃんが使っているが、咲枝ちゃんは寝るときには母の部屋で寝ている。他所の家で寝泊まりして気疲れしないのかななんて最初は思っていたけれど、その点は我が家のように寛いでいると三人とも言っていた。いや、それもどうなの?


 さて、皆が寝静まったであろう時間、一階で悲鳴が聞こえた。

「咲枝ちゃん!?」

 あれは咲枝ちゃんの声だった気がする。慌てて飛び起き、階段をドタドタと駆け降りる。廊下には七海が寝てる部屋からの明かりが漏れていた。

「七海!」

 強盗――まずそれが頭に浮かんだ。だが、俺が部屋に入るよりも早く、部屋から飛び出てきた影。

「だめだめだめ! アキくんはだめー!」

 飛び出してきたのはパジャマ姿の咲枝ちゃん。
 彼女に全力で押し返される。

「え、だって七海が!」
「大丈夫だから! 七海ちゃんは大丈夫だからちょっと待ってて!」

 咲枝ちゃんは部屋に戻ると戸をぴしゃりと閉めた。
 訳が分からず、仕方なくその場で待つ。
 そういや円花は起きてこないな。疲れてるんだろうななんて思っていた。

 部屋で何か咲枝ちゃんの怒ってるような声が聞こえた後、戸が開いて中に入るよう促される。

 部屋の中では、Tシャツにショートパンツの七海、そして何故かキャミにカーディガンを羽織った円花が申し訳なさそうな顔で正座していた。

「はい、二人とも!」
「「ごめんなさい」」

 二人が三つ指ついて謝ってきた。なんか前にも見たなこれ……。

「え、なにこれは」

 咲枝ちゃんが言うには、明日の準備をひとつ忘れていたので七海の寝ている部屋に声をかけて入ろうとしたらしい。彼女が部屋の戸を開けると、七海以外の人の気配。咲枝ちゃんは七海が襲われていると思って悲鳴を上げ、とにかく明りをつけたらしい。

「――半裸の二人が抱き合ってました」
「なにやってんの……」

「ご、ごめんなさい、私が悪いの」
「いえ、マドカ先輩じゃなく私が」

 私が私が……と終わりが見えないので、とりあえず円花に説明してもらった。

「前にアキが言ってたじゃない。七海がいい匂いがするって」
「あ……ああ、言ってたような……七海を元気付けた時だっけ」

「それでね、ああこの匂いかぁなんて最初は思ってたんだけれど、その、だんだん変な気分になってきちゃって……」
「そ、それも私が悪いんです。部活終わりに先輩に抱き付けないから、マドカ先輩に抱きついてたのが原因なんです。マドカ先輩後ろから抱っこしたりしてたら私も変な気分になっちゃって……」

「で、いつからなの? いや別に言わなくてもいいけどさ」

「か、帰り道に寄り添ったり、その、軽くちゅうしたりは一週間くらい前からだけど、夜に忍び込んだのは今日が初めてだから……」
「はい、本当です」

「……咲枝ちゃん、どうしよこれ」
「二人ともしばらくご褒美抜きですね!」

「「ぇえ!」」

「いや別にいいんだよ。俺も二人には誰か恋人作ってもいいんだよって言ってたから――」

 二人ともぶんぶんと首を横に振る。

「――二人が好き合ってるならいいんじゃないかなと思うよ?」

「違うの、アキへの好きの延長線上だったの。だからそういうんじゃないの」
「ごめんなさい先輩。私、寂しくて。誰か抱っこしたかったんですぅ」

「ぷっ……」

 なんだか浮気した奥さんの言い訳みたいでおかしくて吹いてしまった。
 そのことを話すと二人ともますます申し訳なさそうな顔をした。

「悪いんだけどさ、咲枝ちゃん、ふたりと一緒に寝てあげてくれない? 今晩だけ」
「えっ」

「一緒に寝ましょう、襲わないから」
「サキエ先輩お願いしますぅ」
「ええっ」


 ◇◇◇◇◇


 翌日、朝起きると疲れた顔をした咲枝ちゃんが居た。
 両側から抱き着かれてあまり眠れなかったらしい。
 代わりに明日と明後日の担当を貰ったそうだ。

 それから咲枝ちゃんは充電とばかりに僕に抱きついてきたのだった。


 しかしその三日後、さらにふたつ目の事件が起きるとは誰も考えていなかった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...