恋する僕を裏切って男に走った彼女たち、みんな僕を離してくれない!

あんぜ

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第二部

第16話 エピローグ

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「童貞を殺すボディソープ ~女子高生の香りってマドカ先輩買いました?」

 部屋にやってきた七海が突然おかしなことを言い始めた。

「えっ? 七海あなた大丈夫?」
「マドカ先輩じゃないんですか? 脱衣所にありましたよ」

「そもそもそんな商品名なの?」
「ええ、はい、ずいぶん前ですけど話題になりましたよ」

 何かいろいろマズい商品名な気もしたけれど、普通に売ってる物なら別にいいわ。

「みんなそれぞれ仕舞う場所が決まってるから加奈子かしら?」
「先輩はマドカ先輩じゃないかって言ってましたけど」

「わっ、わたしが女子高生の香りつけてどうするのよ!」

 慌てて否定したけれど、加奈子も変わらない。
 でも、加奈子くらいしか思い当たらなかった。

 私は一階に降りてキッチンに寄り、お水を入れたコップを片手にこっそりリビングを覗く。ソファにアキと加奈子が座っている。二人ともお風呂上りみたい。

「まだゲームやってるの? よく続くわね」

 私はゲームを覗くふりをして二人の後ろに付く。
 あっ――加奈子いい香り。

「ゆっくりゲームできるのも久しぶりだからなあ」

「そ、そう。ほどほどにね。おやすみなさい」

 私は二階に向かわず、咲枝に声をかけて二人で七海の寝室へ。

「あれ加奈子、絶対何か企んでる」
「そ、そうなんですか……」
「加奈子ちゃん、今日、すっごく静かだもんね」

「やっぱり? そうよね、静かよね……」
「覗いてみよっか」
「の、覗きはよくないですよサキエ先輩……」


 ◇◇◇◇◇


 私たち三人はリビングの入口の角から二人を覗き見ていた。最初は確かにただゲームをしていただけだったけれど、だんだんと……だんだんと加奈子が距離を詰めているのが見て取れた。そして不意にアキが加奈子を押し倒したかと思うと、水音が聞こえ始めた。

 きゅっと締め付けられるような痛みが全身を駆け抜けた。
 握りこぶしをぎゅっと握って唇に押し付け、目の前の光景に耐えていた。

「(いい雰囲気ね……)」
「(アキくん、ゴム忘れてる)」
「(と、止めないと)」

 そして今、少しソファの陰になっているけれど、間違いなく始めようとしている。

「(あれ一度止めたら続けるわけないわ)」
「(せ、先輩のなんかすごく大きくないですか!?)」
「(……)」

 加奈子の悲鳴が聞こえてくる。

「(カナ先輩痛そう……)」
「(加奈子、本当に初めてだったのね)」
「(……)」

 加奈子が訳の分かんないことを喚いているけれど、アキが本気になってきた。

「いいなあ……」
「(咲枝みつかる!)」
「(サキエ先輩!)」

 私たちはふらふらと歩み出て行った咲枝を連れ戻し、七海の部屋まで戻った。

「はぁ……もう、できちゃったらどうするのよ……」

「加奈子ちゃんいいなあ……」
「カナ先輩、いいなあ……」

「……わかった。明日の朝、起こしたらとりあえず怒っておいて、私たちも約束を取り付けましょ」


 二人は奪われてしまったものを加奈子に見て羨んだ。
 二人とは違い、私は自らの浅はかさが原因で失った。
 だけど私の愛する人はそんな私でも救ってくれた。
 私以上に努力家だった彼はやはり運命の人だった。
 二度と彼を手離すことはしない。


 その夜、私たちは抱き合って眠った。
 三日前のように咲枝が嫌がることも無かった。


 ◇◇◇◇◇


 朝、二人は仲睦まじく、カーペットの上で抱き合っていた。
 なんだか怒る気も失せて、タオルケットを掛けておいてあげた。

 ようやく二人が目覚めると、アキが謝ってきた。
 加奈子は何も言わずにさっさとお風呂場へ逃げていった。


 ◆◆◆◆◆


 一学期も終わるころ、円花はついに成績上位者として名乗りを上げるようになった。三年生の引退した部活ではレギュラーに。そりゃあもう大樹に自慢してやった。このまま再び高嶺の花に返り咲く日も近いだろう。誰にも譲る気は無いが。

 普段の円花はまだちょっぴり気が強くてプライドも高いけれど、それはいいのだ。何でも相談してくれるようになったから。ちなみに馬乗りになっておはようを言う彼女の望みも達成された。


 七海はあの日までのおどおどした様子を欠片も見せなくなった。自分の格好を省みず、いつでもでかい声と共に気軽に抱き着いてくる。この前なんか裸タオルで抱き着かれた。後で咲枝ちゃんに怒られてたけど。

 いい匂いさせてくるのも相変わらず。少しはしおらしくしろとも思う。いや、実のところ全くしおらしくないという訳でもなかったのだが、それは二人だけの秘密だった。ああ、彼女のために言っておくが、料理の腕はちゃんと上がっていっている。


 咲枝ちゃんは早いうちから心を開き、円花や七海をサポートしてくれていたが、二人と比べると自信のない様子が見て取れていた。それがあの日、ようやく二人と対等になれたようだった。体もすっかり健康になって、最近では太らないか気にしている様子。少しくらい太っても健康でいて欲しいんだけど。

 そういえば、最初のキスは母さんの入れ知恵だったらしい。よくよく考えたら寝室一緒だったもんな。登校時に手を繋ぐようになったのも大きな変化。右手も嫌われてなくてよかった。


 加奈は気まぐれにリベンジマッチを仕掛けてきた。本人的にはこっそり仕掛けているつもりなのだろうけれど、咲枝ちゃんか円花の『今日は加奈子(ちゃん)、静か(だ)ね』でバレる。対戦成績的には俺が勝ち越していると思いたい。


 ◇◇◇◇◇


「せーんぱい! 海! 海行きましょう!」

「えっ、やだよ。七海たちと行くとすぐ目の前でナンパされてチキンハートが痛むもん」

「そんなのついて行くわけないじゃない。プールでだって断ってたでしょ」

「プール! 思い出した! 円花も七海もなんであんな際どい水着着てくんだよ!」

「だって加奈子が……アキが男友達に私のこと自慢してたっていうから自慢できるように頑張ったのに……」

「自慢され過ぎた大樹が前屈みになってたじゃねーか!」

「そういえばあの日は私の番だったんですけどー、夜ー――」

「わー!! わー!! 七海黙れ!!」

「……ならいいじゃない。それに海ではラッシュガード着るから大丈夫よ」

「クラゲが出る前に三回は行きますよ! 絶対!」

「ねぇねぇ、これどう?」

「サキエ先輩、大胆!」

「咲枝もスタイルいいんだから、そういうのの方がいいと思う」

「ちょ、家の中で水着着てうろうろしないでよ咲枝ちゃん!」

「アキくん、これ変?」

「や、かわいいよ。かわいいけどさ、もうちょっと離れよ?」

「触っても……いいんだよ?」

「せんぱーい、そういうので興奮するんですねー?」

「七海、私たちも着よっか?」

「いいですねー!」

「やめろ!」




 ガチャ――玄関の戸が開いてアイスクリームがたくさん詰まったレジ袋を片手に家に入ってくる、麦わら帽子に白いワンピースの少女。

「うあー夏休み入った途端に何この美少女テーマパーク。テンション上がるわ、撮影しとこ」





恋する僕を裏切って男に走った彼女たち、みんな僕を離してくれない! 完

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みんなの感想(1件)

2023.05.30 ユーザー名の登録がありません

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2023.05.30 あんぜ

完全に自給自足で書いた作品でしたので、そんな風に言ってくださる方がいらっしゃるとは!
コメディとして受け入れていただくには難しい話だろうなとは思っておりましたが、投稿してよかったです!嬉しいです!

この作品に巡り合ってくださり、ありがとうございました。
また、最終話までお付き合いいただき、ありがとうございました!

解除

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