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第1章
オークの洞窟生活 (4)
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「勝者、クロ!」
グッタリとしたまま動かないロトンを見て、続行不能と判断した審判が角笛を吹き鳴らして叫ぶ。静寂の後に押し寄せた大歓声は、1つ前のラルゴ対レケの戦いへのものとは比べ物にならない盛大なものだった。賭けの方も随分と大番狂わせだったようだ。観客の話声に聞き耳を立てて知ったのだが、どうやらロトンは力試しの常連で、これまでに何度も勝利を収めている猛者らしい。その相手を一撃で倒してしまったオレはいったい何者だと皆が口々に噂していた。
「やるじゃねえかクロ! お陰でガッポリだぜ!」
「オレもだ。あのロトンをガツンッと一発だもんな!」
試合を終えたオレをギョロ目と糸目が上機嫌で出迎える。ハックはむしろ鼻血を心配してくれたようだったが、オレが問題ないと答えると安心したように鼻を鳴らして笑った。程良い攻防後に押し出されて負けると言うオレの筋書は、大きく狂ってしまった。まあ、そのお陰でギョロ目と糸目には随分と有難がられたのだが。
ロトンの膂力はなかなかのものだ。あの薙ぎ払うような左フックをまともに喰らったら、あの場に倒れていたのはオレだったかも知れない。いや、本当ならオレが負けるはずだったのだが。
驚いたことにロトンは暫くして起き上がると、頭をブルブルと何度か振り回して立ち上がった。そして、自分が負けたことを知ると悔しそうにしながらも、ダメージを感じさせない足取りで観客の輪へと戻って酒を呷っていた。あの勢いでカウンターの膝蹴りを喰らったら、人間であれば即座に担架が運び込まれる場面だろうに。流石は怪物だ。
今の戦いで実感したことが1つある。オレ自身も怪物になったことで、以前に増して筋力が増強され、動きにもキレが感じられた。怪物になって得たものは他にもある。動体視力や聴覚、嗅覚などの感覚は以前よりかなり鋭くなっているようだ。ひょっとしてそれと引き換えに人間性を失ったりはしていないだろうな。オレは体だけでなく知らず知らずに心までもが怪物と化すことを想像して身震いした。
3回目の力試しとなる平均的な豚面の怪物ウゴンと、もう1人の平均的な豚面の怪物ウガンの試合は、絵に描いたような泥試合となった。小学生の喧嘩のように腰が引けながらもポカポカと殴り合った両者は、一方が勝手に躓いて転んだ拍子に、そのに巻き込まれてもう一方も転んだ。そのまま膝立ちの体勢でポカポカと殴り合う両者。
最後にはお互いの頬っぺたを掴んで、涙目になりながらの我慢比べとなり、結果的にウゴンだかウガンだか、どちらかが参ったしたことで決着となった。決着後の2人は肩を組んで、お互いの健闘を称え合っていた。ちなみにこの2人は普段はとても仲の良い双子の兄弟らしい。
4回目の力試しを前に、勝ち残ったレケとウゴンだけが広場の片隅に呼び出された。そこで2人はグズリから何らかの説明を受けながら、時折そろってオレの方を眺めたりしていた。どうしてオレだけ呼び出されないのだろうか。嫌な予感しかしない。暫くすると2人はグズリから何かを受け取って、ホクホク顔で観客席へと戻り酒を呷り始めた。いったい何の話をしていたのだろう。直後に角笛が吹き鳴らされる。
「レケとウゴンが揃って次の勝負を辞退したため、最後の勝負はクロ対グズリ様とする!」
おいおい。さっきのアレは買収だったのか。そんな横暴がまかり通るのかよ。そんなオレの気持ちなどお構いなしに観客からは大きな声援が巻き起こった。
その直後に次々とグズリへと賭ける声が上がる。無理もない。絶対的な権力を握る族長の倅と、どこの馬の骨かも知れないオレが対戦すると言うのだ。その中から微かにオレへの声援も聞こえた。ハックたちだ。その声にグズリが鼻息を荒げて声の主を探そうとするが、上手いこと人ごみに紛れたハックたちは見付からなかったようだ。オレも辞退することは出来ないのかと審判に訊ねてみたが、横にいたグズリが「ダメだ」と短く返す。審判じゃなくてアンタが答えるのかよ。
あからさまに賭けのオッズがグズリに偏り過ぎているらしく、オレへ賭ける者がもっといないかと募集の声が連呼するが、グズリを前にして手を上げる者はいない。もうそれなら賭けなんか止めろよ。どうせオレはちょうど良いタイミングを見計らって、負けるつもりなのだから。
「ならば不足分は儂が出そう」
突然、玉座に座った族長のババンバがそう口にした。何言ってんのこの人。それを聞き届けると、審判が試合位置に着くようにと合図をする。どうやら今の族長のひと言で賭けが成立してしまったらしい。おいおい、これでオレが負けたらどうなるんだ。まさか族長からお咎めがあるとか。ひょっとしてギョロ目と糸目のやつらは、またオレに賭けたりしてないだろうな。
「言っておくがわざと負けるような事があれば、オレを侮辱したと見なす。その場合はそれ相応の報いを受けてもらうぞ?」
グズリがオレの葛藤を見透かすかのように、仁王立ちのまま言い放つ。あぁ、これで八方塞だ。オレは少し不貞腐れながらも両拳を軽く握り、軽くステップを踏んで見せた。
「それでいい」
グズリは低音の効いた声でそう口にすると、首をゴキゴキと音を鳴らしながら左右に動かし、ゆっくりと態勢を低くしながら構えに入る。それは格闘技の構えと言うよりは、まるで短距離走者のクラウチングスタートを思わせる深く態勢を沈ませた構えだ。
十分に両者の準備が整ったのを確認すると、開始合図となる角笛が吹き鳴らされた。直後に肉の矢と化したグズリが低い姿勢から飛び出した。ロトンとの一戦を観戦していたグズリは、しっかりと頭部のガードを固めている。だが、グローブも無しに頭部を完全にガードするのは難しいものだ。
横に移動しながら、側部から狙い澄ましたカウンターのフックをお見舞いするのも考えたが、一撃で仕留めきれなければ、逆に掴まって強烈なテイクダウンが確定となる。オレは瞬時にグズリを跳び箱に見立てて頭の上を飛び越え、背後からグズリの足へ下段回し蹴りをお見舞いした。そのまま輪から出てくれれば幸いと思ったのだが、グズリの足腰はオレの想像していた以上に強靭だった。まるで丸太を蹴ったかのような感触だ。
すぐさま体勢を整えたグズリは、今度は拳を振り回して再び間合いを詰めて来る。一発一発がOK狙いの殺気の籠った拳だ。
風を切る大振りな右フックを躱して、左前に踏み込みながら胴体を狙った左拳をお見舞いする。右半身の背中側に近い肋骨と腰骨のちょうど間。人間であれば急所の1つとなる肝臓の位置だ。怪物には通用しないのか、グズリはそのままお構いなしに拳を振り回す。こいつらにはボクシングで言うところの、ジャブやストレートと言う打撃技術はないのだろうか。しかし、その強烈なフックは発達した筋力を生かす最善の打撃とも思えた。
グズリの拳の勢いは疲れて衰えるどころか、まるで小さな竜巻のようにますますその回転力を増していく。このままでは躱し切れなくなる。そう思った矢先に、不意にグズリの左拳が軌道を変えた。それに気付いた時には既にヤツの左手がオレの胸ぐらを掴んでいた。直後に左顔面に喰らった右の拳の威力で意識が飛び掛ける。まずい。怒気を孕んだ右拳が再びオレの左顔面に襲い掛かる。その重い一撃は何度でも耐えられるようなものではない。
オレはシャツの襟元が引き千切れる勢いで咄嗟にそれを躱すと、自らの右腕をオレの胸ぐらを掴むグズリの太い右腕に絡める。そのまま相手が押し込む力に逆らわずに、後退りながら相手の左の襟元に左手を差し込み、瞬時に跳躍してグズリの上半身に跳び付いた。虚を突かれたグズリが目を見開いた時には、オレは既に押し込まれた勢いと自重で倒れ込むように、グズリを始点に空中で体を捻り受け身を取っていた。
「うぐっ!」
大きな音を立ててお互いが広場の天井を仰いだ刹那、グズリが小さく喘ぎ声を漏らした。跳び付き腕挫十字固。相手の肘関節を極める、総合格闘技をはじめとする徒手格闘術における最も代表的な関節技の1つだ。それも今行ったのは跳び付きながら仕掛ける相手の虚をつく攻撃だ。
急所への打撃にも怯まないグズリでも、関節を破壊される痛みには耐えかねるはずだ。『全身』対『片腕』の勝負。いかに膂力に優れた相手でも腕1本で相手の全身の筋力を上回るのは不可能だ。だが、それは対人間での話だ。グズリは苦痛に顔を歪めながらも、徐々に大勢を持ち直し膝立ちになる。そして、強引に右腕1本でオレを持ち上げようと試みた。
流石は怪物と言うべきか。それともこいつが別格なのか。オレはそのまま地面に叩きつけられる前に、自ら技を解き相手の脇の下を潜り抜け、背後へと周り込んだ。そして、そのまま素早く両腕を首に回し頸動脈を極める。勿論、振り落とされないように両足は背後からグズリの胴体に回している。
絞め落されまいとグズリが最後の悪あがきで、背後に体重を掛けて倒れ込んだ。オレは咄嗟に体の位置を僅かにずらしたが、100キロ以上あると思われるグズリの体重で肋骨が悲鳴を上げる。何本かヒビが入ったかもしれない。グズリの下敷きになる脇腹に痛みが走る。オレは痛みを堪えながら更に締め上げる腕に渾身の力を込めた。くそ、こいつのせいでオレの計画は滅茶苦茶だ。
「ま、まて、クロ! 決着だ! お前の勝ちだ!」
慌てて跳び込んで来た審判が、血相を変えて止めに入った。気が付くとグズリはオレの上で、泡を吹いて気絶していた。観客席から悲鳴にも似た歓声が沸き上がる。オレはグズリの下から抜け出すと、脇腹の痛みを感じながらそのまま大の字になって天井を見詰めた。
◇
お開きとなった祭りの後に、オレは洞窟の奥まった場所にある、族長の部屋へと呼び出された。そこはどこかヨーロッパの貴族の邸宅の一室と、原始人の塒を足して二分したような不思議な空間だった。立派な安楽椅子の下には、見たことのない大型獣の毛皮が敷いてあり、壁際に置かれた棚には書物と一緒に瓶に入った上等そうな酒が並んでいた。
「クロと言ったな。さっきは良いものを見せてもらった。約束の褒美は後でお前の所へ運ばせよう」
「ありがとうございます」
族長の言葉にオレは素直に礼を述べる。その背後には苦虫を潰したような顔でオレを見詰めるグズリの姿があった。気持ちは分からなくもないが、公平なルールの下で行わせた競技の結果だ。逆恨みは止めて欲しい。そもそもちょうど良く負けてやろうと思っていたのを、脅し文句で阻止したのはお前の方だろ。
「お主、あれ程の技をどこで身につけた?」
オレが格闘技に精通しているのは、幼少の頃に母親に通わされていたある習い事のせいだった。ただ、ここでそんな詳しいことを答えても意味がない。オレは「少しずつ鍛錬いたしました」とだけ答えておいた。決して嘘ではない。族長はオレのその答えに目を細め訝し気な表情を浮かべるが、それ以上は深く問い詰めはしなかった。代わりに口をついて出たのが「今宵の獅子猪はお主が仕留めたそうだな?」と言う問い掛けだった。
既に何者かに話を聞いたのだろう。ここは嘘をついても仕方がない。オレは素直にそれを認めつつも「危ない所でしたが、運良くこちらのナイフが先に獅子猪の喉元に届きました」と言い訳をしておく。実際に楽な戦いではなかったのだ。
「ナイフとは腰に下げたそれのことか?」
不思議そうに問い掛けた族長にオレは頷き返す。それを見届けた族長は高らかに笑い声を上げた。
「聞いたか、グズリよ。よもやお前が力試しで後れを取るとは考えてもみなかったが、これで納得がいったと言うものだ」
背後に控えるグズリに族長が語り掛けた。その言葉の意味が理解できていないオレは、どのような表情をして良いのかが分からずに、仕方なく愛想笑いを浮かべてみる。族長の背後に控えるグズリも驚きの表情を浮かべていたが、オレの愛想笑いが勘に触ったのか今にも飛び掛かって来そうな形相でこちらを睨んだ。
「いかな状況であれ、獅子猪をそのような小さなナイフ1本で仕留めるなど、凡人に出来る業ではない。さぞや厳しい鍛錬を積んだのだろうな」
そう言って族長は満足気に頷いた。確かにオレの積んだ修行は厳しいものだった。今のご時世なら虐待と思われても不思議ではないだろう。
「クロよ、お主に狩猟班の副長を命じる。明日よりまた励むが良い」
突然切り出されたその言葉をオレはどう受け取って良いのか分からず「ふぇ?」と間抜けな音で答えた。狩猟班と言うのは、確かグズリと一緒に山鳥を仕留めたヤツらのことか。待てよ。でも、その狩猟班にはグズリも属しているのではないか。オレがそんなことを思っているとグズリが慌てて族長の前に躍り出た。
「ま、待って下さい、族長! 狩猟班には班長のこの私がいます。副長など必要ありません!」
狩猟班の班長はやはりグズリなのか。その取り乱し方はオレに対する対抗意識なのだろうが、オレはまったく狩猟班にも副長にも興味はない。むしろハックと一緒に採取にでも出掛けたほうが勉強にもなると言うものなのだが。そこは息子なんだしグズリに任せてやれよ。内心でグズリの肩を持ったつもりだが、その訴えは簡単に一蹴される。
「負けたお主にそれを言う権利があるのか?」
グズリは顔を真っ赤にして黙りこくる。気まずい。物凄く気まずい。この空気はオレのせいなのか。オレは本当に副長なんかに興味はない。族長、わざわざグズリがオレを逆恨みするように仕向けるのはやめてくれ。
グズリは奥歯を噛むようにして「わかりました」とだけ声を絞り出した。いや、そこは分かるなよ。もっと食い下がってくれよ。そんなだから族長に言われちゃうんだって。お前だってやれば出来るはずさ。オレの心の声が届いたのだろうか、グズリは悔しそうに横目でオレを睨みつけた。え、まさか聞こえてないよね。違うって、オレはグズリのためを思えばこそ。
オレは心の中でグズリに平伏しながら言い訳を繰り返した。
グッタリとしたまま動かないロトンを見て、続行不能と判断した審判が角笛を吹き鳴らして叫ぶ。静寂の後に押し寄せた大歓声は、1つ前のラルゴ対レケの戦いへのものとは比べ物にならない盛大なものだった。賭けの方も随分と大番狂わせだったようだ。観客の話声に聞き耳を立てて知ったのだが、どうやらロトンは力試しの常連で、これまでに何度も勝利を収めている猛者らしい。その相手を一撃で倒してしまったオレはいったい何者だと皆が口々に噂していた。
「やるじゃねえかクロ! お陰でガッポリだぜ!」
「オレもだ。あのロトンをガツンッと一発だもんな!」
試合を終えたオレをギョロ目と糸目が上機嫌で出迎える。ハックはむしろ鼻血を心配してくれたようだったが、オレが問題ないと答えると安心したように鼻を鳴らして笑った。程良い攻防後に押し出されて負けると言うオレの筋書は、大きく狂ってしまった。まあ、そのお陰でギョロ目と糸目には随分と有難がられたのだが。
ロトンの膂力はなかなかのものだ。あの薙ぎ払うような左フックをまともに喰らったら、あの場に倒れていたのはオレだったかも知れない。いや、本当ならオレが負けるはずだったのだが。
驚いたことにロトンは暫くして起き上がると、頭をブルブルと何度か振り回して立ち上がった。そして、自分が負けたことを知ると悔しそうにしながらも、ダメージを感じさせない足取りで観客の輪へと戻って酒を呷っていた。あの勢いでカウンターの膝蹴りを喰らったら、人間であれば即座に担架が運び込まれる場面だろうに。流石は怪物だ。
今の戦いで実感したことが1つある。オレ自身も怪物になったことで、以前に増して筋力が増強され、動きにもキレが感じられた。怪物になって得たものは他にもある。動体視力や聴覚、嗅覚などの感覚は以前よりかなり鋭くなっているようだ。ひょっとしてそれと引き換えに人間性を失ったりはしていないだろうな。オレは体だけでなく知らず知らずに心までもが怪物と化すことを想像して身震いした。
3回目の力試しとなる平均的な豚面の怪物ウゴンと、もう1人の平均的な豚面の怪物ウガンの試合は、絵に描いたような泥試合となった。小学生の喧嘩のように腰が引けながらもポカポカと殴り合った両者は、一方が勝手に躓いて転んだ拍子に、そのに巻き込まれてもう一方も転んだ。そのまま膝立ちの体勢でポカポカと殴り合う両者。
最後にはお互いの頬っぺたを掴んで、涙目になりながらの我慢比べとなり、結果的にウゴンだかウガンだか、どちらかが参ったしたことで決着となった。決着後の2人は肩を組んで、お互いの健闘を称え合っていた。ちなみにこの2人は普段はとても仲の良い双子の兄弟らしい。
4回目の力試しを前に、勝ち残ったレケとウゴンだけが広場の片隅に呼び出された。そこで2人はグズリから何らかの説明を受けながら、時折そろってオレの方を眺めたりしていた。どうしてオレだけ呼び出されないのだろうか。嫌な予感しかしない。暫くすると2人はグズリから何かを受け取って、ホクホク顔で観客席へと戻り酒を呷り始めた。いったい何の話をしていたのだろう。直後に角笛が吹き鳴らされる。
「レケとウゴンが揃って次の勝負を辞退したため、最後の勝負はクロ対グズリ様とする!」
おいおい。さっきのアレは買収だったのか。そんな横暴がまかり通るのかよ。そんなオレの気持ちなどお構いなしに観客からは大きな声援が巻き起こった。
その直後に次々とグズリへと賭ける声が上がる。無理もない。絶対的な権力を握る族長の倅と、どこの馬の骨かも知れないオレが対戦すると言うのだ。その中から微かにオレへの声援も聞こえた。ハックたちだ。その声にグズリが鼻息を荒げて声の主を探そうとするが、上手いこと人ごみに紛れたハックたちは見付からなかったようだ。オレも辞退することは出来ないのかと審判に訊ねてみたが、横にいたグズリが「ダメだ」と短く返す。審判じゃなくてアンタが答えるのかよ。
あからさまに賭けのオッズがグズリに偏り過ぎているらしく、オレへ賭ける者がもっといないかと募集の声が連呼するが、グズリを前にして手を上げる者はいない。もうそれなら賭けなんか止めろよ。どうせオレはちょうど良いタイミングを見計らって、負けるつもりなのだから。
「ならば不足分は儂が出そう」
突然、玉座に座った族長のババンバがそう口にした。何言ってんのこの人。それを聞き届けると、審判が試合位置に着くようにと合図をする。どうやら今の族長のひと言で賭けが成立してしまったらしい。おいおい、これでオレが負けたらどうなるんだ。まさか族長からお咎めがあるとか。ひょっとしてギョロ目と糸目のやつらは、またオレに賭けたりしてないだろうな。
「言っておくがわざと負けるような事があれば、オレを侮辱したと見なす。その場合はそれ相応の報いを受けてもらうぞ?」
グズリがオレの葛藤を見透かすかのように、仁王立ちのまま言い放つ。あぁ、これで八方塞だ。オレは少し不貞腐れながらも両拳を軽く握り、軽くステップを踏んで見せた。
「それでいい」
グズリは低音の効いた声でそう口にすると、首をゴキゴキと音を鳴らしながら左右に動かし、ゆっくりと態勢を低くしながら構えに入る。それは格闘技の構えと言うよりは、まるで短距離走者のクラウチングスタートを思わせる深く態勢を沈ませた構えだ。
十分に両者の準備が整ったのを確認すると、開始合図となる角笛が吹き鳴らされた。直後に肉の矢と化したグズリが低い姿勢から飛び出した。ロトンとの一戦を観戦していたグズリは、しっかりと頭部のガードを固めている。だが、グローブも無しに頭部を完全にガードするのは難しいものだ。
横に移動しながら、側部から狙い澄ましたカウンターのフックをお見舞いするのも考えたが、一撃で仕留めきれなければ、逆に掴まって強烈なテイクダウンが確定となる。オレは瞬時にグズリを跳び箱に見立てて頭の上を飛び越え、背後からグズリの足へ下段回し蹴りをお見舞いした。そのまま輪から出てくれれば幸いと思ったのだが、グズリの足腰はオレの想像していた以上に強靭だった。まるで丸太を蹴ったかのような感触だ。
すぐさま体勢を整えたグズリは、今度は拳を振り回して再び間合いを詰めて来る。一発一発がOK狙いの殺気の籠った拳だ。
風を切る大振りな右フックを躱して、左前に踏み込みながら胴体を狙った左拳をお見舞いする。右半身の背中側に近い肋骨と腰骨のちょうど間。人間であれば急所の1つとなる肝臓の位置だ。怪物には通用しないのか、グズリはそのままお構いなしに拳を振り回す。こいつらにはボクシングで言うところの、ジャブやストレートと言う打撃技術はないのだろうか。しかし、その強烈なフックは発達した筋力を生かす最善の打撃とも思えた。
グズリの拳の勢いは疲れて衰えるどころか、まるで小さな竜巻のようにますますその回転力を増していく。このままでは躱し切れなくなる。そう思った矢先に、不意にグズリの左拳が軌道を変えた。それに気付いた時には既にヤツの左手がオレの胸ぐらを掴んでいた。直後に左顔面に喰らった右の拳の威力で意識が飛び掛ける。まずい。怒気を孕んだ右拳が再びオレの左顔面に襲い掛かる。その重い一撃は何度でも耐えられるようなものではない。
オレはシャツの襟元が引き千切れる勢いで咄嗟にそれを躱すと、自らの右腕をオレの胸ぐらを掴むグズリの太い右腕に絡める。そのまま相手が押し込む力に逆らわずに、後退りながら相手の左の襟元に左手を差し込み、瞬時に跳躍してグズリの上半身に跳び付いた。虚を突かれたグズリが目を見開いた時には、オレは既に押し込まれた勢いと自重で倒れ込むように、グズリを始点に空中で体を捻り受け身を取っていた。
「うぐっ!」
大きな音を立ててお互いが広場の天井を仰いだ刹那、グズリが小さく喘ぎ声を漏らした。跳び付き腕挫十字固。相手の肘関節を極める、総合格闘技をはじめとする徒手格闘術における最も代表的な関節技の1つだ。それも今行ったのは跳び付きながら仕掛ける相手の虚をつく攻撃だ。
急所への打撃にも怯まないグズリでも、関節を破壊される痛みには耐えかねるはずだ。『全身』対『片腕』の勝負。いかに膂力に優れた相手でも腕1本で相手の全身の筋力を上回るのは不可能だ。だが、それは対人間での話だ。グズリは苦痛に顔を歪めながらも、徐々に大勢を持ち直し膝立ちになる。そして、強引に右腕1本でオレを持ち上げようと試みた。
流石は怪物と言うべきか。それともこいつが別格なのか。オレはそのまま地面に叩きつけられる前に、自ら技を解き相手の脇の下を潜り抜け、背後へと周り込んだ。そして、そのまま素早く両腕を首に回し頸動脈を極める。勿論、振り落とされないように両足は背後からグズリの胴体に回している。
絞め落されまいとグズリが最後の悪あがきで、背後に体重を掛けて倒れ込んだ。オレは咄嗟に体の位置を僅かにずらしたが、100キロ以上あると思われるグズリの体重で肋骨が悲鳴を上げる。何本かヒビが入ったかもしれない。グズリの下敷きになる脇腹に痛みが走る。オレは痛みを堪えながら更に締め上げる腕に渾身の力を込めた。くそ、こいつのせいでオレの計画は滅茶苦茶だ。
「ま、まて、クロ! 決着だ! お前の勝ちだ!」
慌てて跳び込んで来た審判が、血相を変えて止めに入った。気が付くとグズリはオレの上で、泡を吹いて気絶していた。観客席から悲鳴にも似た歓声が沸き上がる。オレはグズリの下から抜け出すと、脇腹の痛みを感じながらそのまま大の字になって天井を見詰めた。
◇
お開きとなった祭りの後に、オレは洞窟の奥まった場所にある、族長の部屋へと呼び出された。そこはどこかヨーロッパの貴族の邸宅の一室と、原始人の塒を足して二分したような不思議な空間だった。立派な安楽椅子の下には、見たことのない大型獣の毛皮が敷いてあり、壁際に置かれた棚には書物と一緒に瓶に入った上等そうな酒が並んでいた。
「クロと言ったな。さっきは良いものを見せてもらった。約束の褒美は後でお前の所へ運ばせよう」
「ありがとうございます」
族長の言葉にオレは素直に礼を述べる。その背後には苦虫を潰したような顔でオレを見詰めるグズリの姿があった。気持ちは分からなくもないが、公平なルールの下で行わせた競技の結果だ。逆恨みは止めて欲しい。そもそもちょうど良く負けてやろうと思っていたのを、脅し文句で阻止したのはお前の方だろ。
「お主、あれ程の技をどこで身につけた?」
オレが格闘技に精通しているのは、幼少の頃に母親に通わされていたある習い事のせいだった。ただ、ここでそんな詳しいことを答えても意味がない。オレは「少しずつ鍛錬いたしました」とだけ答えておいた。決して嘘ではない。族長はオレのその答えに目を細め訝し気な表情を浮かべるが、それ以上は深く問い詰めはしなかった。代わりに口をついて出たのが「今宵の獅子猪はお主が仕留めたそうだな?」と言う問い掛けだった。
既に何者かに話を聞いたのだろう。ここは嘘をついても仕方がない。オレは素直にそれを認めつつも「危ない所でしたが、運良くこちらのナイフが先に獅子猪の喉元に届きました」と言い訳をしておく。実際に楽な戦いではなかったのだ。
「ナイフとは腰に下げたそれのことか?」
不思議そうに問い掛けた族長にオレは頷き返す。それを見届けた族長は高らかに笑い声を上げた。
「聞いたか、グズリよ。よもやお前が力試しで後れを取るとは考えてもみなかったが、これで納得がいったと言うものだ」
背後に控えるグズリに族長が語り掛けた。その言葉の意味が理解できていないオレは、どのような表情をして良いのかが分からずに、仕方なく愛想笑いを浮かべてみる。族長の背後に控えるグズリも驚きの表情を浮かべていたが、オレの愛想笑いが勘に触ったのか今にも飛び掛かって来そうな形相でこちらを睨んだ。
「いかな状況であれ、獅子猪をそのような小さなナイフ1本で仕留めるなど、凡人に出来る業ではない。さぞや厳しい鍛錬を積んだのだろうな」
そう言って族長は満足気に頷いた。確かにオレの積んだ修行は厳しいものだった。今のご時世なら虐待と思われても不思議ではないだろう。
「クロよ、お主に狩猟班の副長を命じる。明日よりまた励むが良い」
突然切り出されたその言葉をオレはどう受け取って良いのか分からず「ふぇ?」と間抜けな音で答えた。狩猟班と言うのは、確かグズリと一緒に山鳥を仕留めたヤツらのことか。待てよ。でも、その狩猟班にはグズリも属しているのではないか。オレがそんなことを思っているとグズリが慌てて族長の前に躍り出た。
「ま、待って下さい、族長! 狩猟班には班長のこの私がいます。副長など必要ありません!」
狩猟班の班長はやはりグズリなのか。その取り乱し方はオレに対する対抗意識なのだろうが、オレはまったく狩猟班にも副長にも興味はない。むしろハックと一緒に採取にでも出掛けたほうが勉強にもなると言うものなのだが。そこは息子なんだしグズリに任せてやれよ。内心でグズリの肩を持ったつもりだが、その訴えは簡単に一蹴される。
「負けたお主にそれを言う権利があるのか?」
グズリは顔を真っ赤にして黙りこくる。気まずい。物凄く気まずい。この空気はオレのせいなのか。オレは本当に副長なんかに興味はない。族長、わざわざグズリがオレを逆恨みするように仕向けるのはやめてくれ。
グズリは奥歯を噛むようにして「わかりました」とだけ声を絞り出した。いや、そこは分かるなよ。もっと食い下がってくれよ。そんなだから族長に言われちゃうんだって。お前だってやれば出来るはずさ。オレの心の声が届いたのだろうか、グズリは悔しそうに横目でオレを睨みつけた。え、まさか聞こえてないよね。違うって、オレはグズリのためを思えばこそ。
オレは心の中でグズリに平伏しながら言い訳を繰り返した。
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