西からきた少年について

ねころびた

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アルベルム〜(10〜)

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 結論、リュークは王城へ出向くこととなった。

 グランツとレオハルトが馬車で同行し、ソロウ、ミハル、ギムナックと十名のアルベルム兵が馬車を護衛する。王都ノルンまでは十五日かかるので、途中はいくつかの町村に立ち寄って宿を取り、あとは野宿する予定だ。

 グランツやアルベルム兵は、リュークの革袋にいくらでも物資を入れられることを知り仰天した。その後、予備の馬を生きたまま入れられることを知り卒倒した。

 見送りに来る道中から泣き崩れて動けなくなってしまった神官らを宥めるのには随分と時間がかかった。教会が旅の安全を願って祈りたいとグランツに申し入れ、感動して申請書類に判を押してしまったグランツの落ち度だ。おかげで出立が一日遅れてしまった。


 リュークは、アルベルムで過ごした一ヶ月と少しの間に極めて多くのことを学んだ。

 貨幣というものの存在や、銅貨と銀貨の違い、パンの値段、風呂と歯磨きの必要性、髪の梳かし方、普段は靴を履き、ベッドに上がる際には靴を脱ぐこと、洗濯物はカゴに入れること──。あとは、街なかでスライムを投げたり蹴ったりしないこと、不潔な腰布を振り回さないこと。むやみに獣人や竜人の耳や尻尾を握ってはいけないこと。暗いうちに眠り、明るくなったら起きること。また、正しい「一日」の数え方も。

 文字はまだ読み書きできないが、「冒険者ギルド」「宿屋」「パン屋」あたりは覚えたようで、看板を見るたびにゆびして一緒に居る大人に教えてやる親切を忘れなかった。

 リュークは冒険者ギルド会館の修繕作業の対価と、革袋に入れていた魔物の素材をギルドへ売り払った分のまとまったお金を受け取っている。ただし、大量の金貨を坂道で転がして遊んだり、他人にもあげようとしたので、暫くの間のお金の管理はソロウに一任された。因みに、死にかけのワイバーンは前例がなく困難という意味で価値が付けられないため買い取られず、そっと革袋に戻されたままである。

 リュークの目はいつも爛々として常に何かに興味を示し、大人たちはそんな彼にすっかり心を奪われていたが、一瞬でも目を離すと何を仕出かすか分からない危うさから、いつもどこかしら緊張していた。なので、今回の長旅には皆が反対した。最終的にノルンへ行くことに決めたのは、他でもないリューク自身である。




「本当に忘れ物はないか?」

 出立の朝、フォスターはリュークを馬車に乗せてやりながら尋ねた。昨夜からもうかれこれ二十回は同じことを聞いている。リュークは初めて聞かれたときと同じように「うん」と素直に答えて座席に座った。

 グランツから冒険者ギルドを通して護衛任務を受けているソロウたち冒険者は、馬で馬車の前後を行くことになっている。

 フォスターとともに見送りに来ていたエリンは、馬車の後方でミハルやアルベルム兵と談笑していたソロウに冊子を差し出した。アルベルムからノルンまでの道で出現が確認されている魔物の資料だ。ソロウはエリンに礼を述べ、エリンは遠回しに沢山の土産を要求した。


 一行は、大勢に見送られて出発した。空はやや曇り。リュークは馬車の窓から身を乗り出して、賑やかな群衆が見えなくなるまで手を振り続けた。

 



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