28 / 199
王都を目指して(20〜)
27
しおりを挟む
グランツ、ソロウ、ギムナックとアルベルム兵士たちはリュークが革袋から出した元気な予備の馬に跨り、オークキングの要塞の場所を明確にしておくために再度発見現場へと向かった。
一方、リュークはどの馬にも乗せてもらえなかったため、ナナイを呼んでレオハルトとミハルと一緒に森を出ることになった。
リュークの後ろを着いてくるナナイは機嫌が良いようで、馬車より大きな身体で器用に木を避けながら、リュークが昆虫を見つけては革袋に仕舞うたびに小さく鼻を鳴らした。
「ナナイは本当に利口だ。リュークが躾けたのですか?」
森を出てすぐのところで、レオハルトが心底感心しながら尋ねた。リュークはナナイの鼻を撫でてやりながら「しつけた?」と首をかしげた。
「人を襲わないし、リュークを助けてくれるでしょう。そうするように教えたのですか?」
「ナナイは人をおそわないし、僕を助けてくれるんだ」
「……ふむ、素晴らしい友達ですね。あの黒いドラゴンは友達じゃないようですが?」
「友達だよ。『イオ』っていうんだ。イオはゴブリンが嫌いなんだって」
「……えっ」
「えっ?」
レオハルトとミハルが驚いて立ち止まる。リュークとナナイも足を止める。
(あれだけ謎めいていた黒いドラゴンについて、こんなにも簡単に情報を得られるとは……)
以前、大人たちが躍起になって聞き出そうとしたときには上手くいかなかった。リュークの回答は、リュークにだけ分かるものが多い。かと思えば、さっきのオークとオークキングについての説明や、今の「イオ」の話など、すんなり解決することもある。
一体何が原因なのか──と、レオハルトとミハルは恰も今なら真理に辿り着けそうな気分になって思考を巡らせたが、そもそも大人たちは子供がどれだけ気まぐれな生き物であるかを念頭に置いていないのだ。特に、誰よりも自由に荒野を駆け回っていたリュークは、大人たちが一々気にするようなことをいっさい気にしない。
賢いナナイがレオハルトたちの不憫な心情を察し、クルル、と喉を鳴らして同情を示した。
その後いくらも経たないうちに森から出てきたグランツたちは、レオハルトから黒いドラゴンのことを聞かされて驚き、しかしすぐさま納得した。
「オークキングの巣は綺麗さっぱり無くなっていた。イオとやらが跡形も無く破壊したのだろう。しかし、いくらゴブリンやオーク嫌いとはいえ、あそこまで……。ゴブリンに親でも殺されたのか?」
「リュークにも理由は分からないそうですから、ドラゴンの感覚などは人の理解の及ぶところではないのでしょう」
「それもそうか。だが……、リュークはイオを友達だと? 攻撃したぞ」
「ええ。曰く、『イオは体が硬いから大丈夫』だそうです」
グランツはパチパチと瞬きを繰り返したあと、声を上げて笑った。すぐに考えるのをやめて笑い飛ばせるのは、筋力の上昇と引き換えに何かを低下させたポールマン家の血筋に見られる特徴の一つである。
ともあれ、一行は漸く無事に道へと戻り、リュークは馬車に乗って、ナナイは再びどこかへ姿を消して、当初の予定通りテルミリアを目指して出発したのだった。
一方、リュークはどの馬にも乗せてもらえなかったため、ナナイを呼んでレオハルトとミハルと一緒に森を出ることになった。
リュークの後ろを着いてくるナナイは機嫌が良いようで、馬車より大きな身体で器用に木を避けながら、リュークが昆虫を見つけては革袋に仕舞うたびに小さく鼻を鳴らした。
「ナナイは本当に利口だ。リュークが躾けたのですか?」
森を出てすぐのところで、レオハルトが心底感心しながら尋ねた。リュークはナナイの鼻を撫でてやりながら「しつけた?」と首をかしげた。
「人を襲わないし、リュークを助けてくれるでしょう。そうするように教えたのですか?」
「ナナイは人をおそわないし、僕を助けてくれるんだ」
「……ふむ、素晴らしい友達ですね。あの黒いドラゴンは友達じゃないようですが?」
「友達だよ。『イオ』っていうんだ。イオはゴブリンが嫌いなんだって」
「……えっ」
「えっ?」
レオハルトとミハルが驚いて立ち止まる。リュークとナナイも足を止める。
(あれだけ謎めいていた黒いドラゴンについて、こんなにも簡単に情報を得られるとは……)
以前、大人たちが躍起になって聞き出そうとしたときには上手くいかなかった。リュークの回答は、リュークにだけ分かるものが多い。かと思えば、さっきのオークとオークキングについての説明や、今の「イオ」の話など、すんなり解決することもある。
一体何が原因なのか──と、レオハルトとミハルは恰も今なら真理に辿り着けそうな気分になって思考を巡らせたが、そもそも大人たちは子供がどれだけ気まぐれな生き物であるかを念頭に置いていないのだ。特に、誰よりも自由に荒野を駆け回っていたリュークは、大人たちが一々気にするようなことをいっさい気にしない。
賢いナナイがレオハルトたちの不憫な心情を察し、クルル、と喉を鳴らして同情を示した。
その後いくらも経たないうちに森から出てきたグランツたちは、レオハルトから黒いドラゴンのことを聞かされて驚き、しかしすぐさま納得した。
「オークキングの巣は綺麗さっぱり無くなっていた。イオとやらが跡形も無く破壊したのだろう。しかし、いくらゴブリンやオーク嫌いとはいえ、あそこまで……。ゴブリンに親でも殺されたのか?」
「リュークにも理由は分からないそうですから、ドラゴンの感覚などは人の理解の及ぶところではないのでしょう」
「それもそうか。だが……、リュークはイオを友達だと? 攻撃したぞ」
「ええ。曰く、『イオは体が硬いから大丈夫』だそうです」
グランツはパチパチと瞬きを繰り返したあと、声を上げて笑った。すぐに考えるのをやめて笑い飛ばせるのは、筋力の上昇と引き換えに何かを低下させたポールマン家の血筋に見られる特徴の一つである。
ともあれ、一行は漸く無事に道へと戻り、リュークは馬車に乗って、ナナイは再びどこかへ姿を消して、当初の予定通りテルミリアを目指して出発したのだった。
28
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!
川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。
だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。
だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。
馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。
俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる