西からきた少年について

ねころびた

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王都を目指して(20〜)

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 グランツ、ソロウ、ギムナックとアルベルム兵士たちはリュークが革袋から出した元気な予備の馬にまたがり、オークキングの要塞の場所を明確にしておくために再度発見現場へと向かった。

 一方、リュークはどの馬にも乗せてもらえなかったため、ナナイを呼んでレオハルトとミハルと一緒に森を出ることになった。

 リュークの後ろを着いてくるナナイは機嫌が良いようで、馬車より大きな身体で器用に木を避けながら、リュークが昆虫を見つけては革袋に仕舞うたびに小さく鼻を鳴らした。

「ナナイは本当に利口だ。リュークが躾けたのですか?」

 森を出てすぐのところで、レオハルトが心底感心しながら尋ねた。リュークはナナイの鼻を撫でてやりながら「しつけた?」と首をかしげた。

「人を襲わないし、リュークを助けてくれるでしょう。そうするように教えたのですか?」

「ナナイは人をおそわないし、僕を助けてくれるんだ」

「……ふむ、素晴らしい友達ですね。あの黒いドラゴンは友達じゃないようですが?」

「友達だよ。『イオ』っていうんだ。イオはゴブリンが嫌いなんだって」

「……えっ」
「えっ?」

 レオハルトとミハルが驚いて立ち止まる。リュークとナナイも足を止める。

(あれだけ謎めいていた黒いドラゴンについて、こんなにも簡単に情報を得られるとは……)

 以前、大人たちが躍起やっきになって聞き出そうとしたときには上手くいかなかった。リュークの回答は、リュークにだけ分かるものが多い。かと思えば、さっきのオークとオークキングについての説明や、今の「イオ」の話など、すんなり解決することもある。

 一体何が原因なのか──と、レオハルトとミハルはあたかも今なら真理に辿り着けそうな気分になって思考を巡らせたが、そもそも大人たちは子供がどれだけ気まぐれな生き物であるかを念頭に置いていないのだ。特に、誰よりも自由に荒野を駆け回っていたリュークは、大人たちが一々気にするようなことをいっさい気にしない。

 賢いナナイがレオハルトたちの不憫ふびんな心情を察し、クルル、と喉を鳴らして同情を示した。
 



 その後いくらも経たないうちに森から出てきたグランツたちは、レオハルトから黒いドラゴンのことを聞かされて驚き、しかしすぐさま納得した。

「オークキングの巣は綺麗さっぱり無くなっていた。イオとやらが跡形あとかたも無く破壊したのだろう。しかし、いくらゴブリンやオーク嫌いとはいえ、あそこまで……。ゴブリンに親でも殺されたのか?」

「リュークにも理由は分からないそうですから、ドラゴンの感覚などは人の理解の及ぶところではないのでしょう」

「それもそうか。だが……、リュークはイオを友達だと? 攻撃したぞ」

「ええ。曰く、『イオは体が硬いから大丈夫』だそうです」

 グランツはパチパチと瞬きを繰り返したあと、声を上げて笑った。すぐに考えるのをやめて笑い飛ばせるのは、筋力の上昇と引き換えに何かを低下させたポールマン家の血筋に見られる特徴の一つである。
 
 ともあれ、一行はようやく無事に道へと戻り、リュークは馬車に乗って、ナナイは再びどこかへ姿を消して、当初の予定通りテルミリアを目指して出発したのだった。







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