偽聖女ですが、ご不満ですか?〜婚約破棄され、追放された元最強のラスボス魔女は自由を満喫する

冬月光輝

文字の大きさ
3 / 23

仲間

しおりを挟む
「さてと、荷物も背負いましたし。手頃なほうきも手に入れましたし」

 私は少ない着替えや食料などを入れたリュックサックを背負い、ほうきに跨った。
 歩くのは疲れるし、飛んで行ったほうが早い。

「アリシア様! お一人で行かれるなんて水臭いじゃないですか!」
「僕らもお供させて貰いますよ。アリシア様の護衛として」

 国外へと一気に飛んで行こうとしたとき、赤毛のショートカットの女性と白髪で糸目の男性がこちらに近付いて来た。

「――クラリスにリックじゃないですか。どうかしましたか? あなた方の仕事は聖女の世話係兼護衛。私が偽物だった時点でお役御免のはず」

 クラリスとリックは王宮内で色々と私の世話を焼いてくれたが、二人共、もはや私と無関係のはず。

 なぜ、国を離れて私に付いてこようとしているのだろう。

「いえ、私はあなたに生涯仕えると決めていました。アリシア様こそ、私たちの命の恩人なのですから」

「そうでしたっけ?」

「そうですよ。というより、忘れないでください。少しショックです」

「ほら、一年前に山でワーウルフの群れに囲まれた僕たちを助けてくれたじゃないですか」

 うーん、一年前。

 確か、先代の聖女が引き継ぎをせずにお亡くなりになって、国内に魔物が入り込んでいた時期か。

 私の住んでいた山は特に魔物が多くて、唸り声や遠吠えが安眠を阻害していたので、適当に氷の槍で串刺しにして駆除していた気がする。

(やっぱり、助けてないじゃないですか! 安眠の為に動いた結果、たまたま、お二人が襲われていただけじゃないですか)

 そんなことを心の中で考えていたが、二人は目を輝かせているところを見ると、どうやら本気でそう思っているみたいだ。

「――あの、私は助けてませんよ。結果的にタイミングが良かっただけです。あなた方が恩に感じる必要はありません」

「アリシア様の意思がどうあれ、あのとき……僕らは死を覚悟しました。だから、王宮が聖女様の護衛を募集していたとき……僕らは冒険者を辞めて、アリシア様の身を守るためにそれに志願したのです」

「聖女様が本物か偽物だったかなんて関係ありません。私たちはアリシア様だからお仕えしているのですから。冒険者としての知識もきっと役立つはずです。お願いします。お供させてください」

 なんかすごく感謝されている……。
 前々から甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるなぁって、思っていた。
 なるほど。個人的な崇拝みたいな感情もあったという訳か。

 慕ってくれているのは嬉しいけど、そういう気持ちにつけ込んで追放されてからも世話になるというのは何だか悪い気がする。

(まぁいいか。私が損する話でも無いですし)

 世界征服をしようとしていた魔女が今さらお人好しな部分を出すのも何だか滑稽である。

 お二人は旅慣れている様子。
 何かと助けになりそうだし、この際、恩人という立場を利用させてもらうとしよう。

「それでは、お言葉に甘えさせて貰いましょうか。一人ならほうきで空を飛んで動こうかと思っていたのですが……、三人となると」

「私たちは走りますから、アリシア様は箒をお使いください」

「空中浮遊は超高等魔法と聞きます。それが見られるなんて感激です」

 クラリスとリックは走って私に付いてくると言っているが、それはちょっと気が引ける。

(仕方ないですね。出費は避けようと思っていましたが、この際です)

 今後、荷物も増えると思うしお二人を歩かせないために私はあることを提案しようと口を開く。

「馬車を買いに行きましょう。荷物を置く場所も欲しいですし」

「……しかし、アリシア様。お金は?」

「大丈夫です。それくらいなら捻出出来ますから」

 心配そうな二人を尻目に、私は馬車を購入する他に城下町の繁華街に向かった。
 どうせなら、丈夫で大きな馬車が欲しい。

「では、この馬車にしましょう」
「「――っ!?」」

 大きな黒馬が引く立派な馬車を私は購入した。

 クラリスとリックはビックリしたような表情で馬車を眺めている。

「あの~、アリシア様。この馬車って随分と高かったんじゃ」

「ええ。でも婚約指輪が思いの外、高く売れましたから。所持金にはかなり余裕がありますよ」

「え~~っ!? 皇太子殿下からの婚約指輪、売っちゃったんですかぁ!? そんなことしても大丈夫なんです?」

「もちろんですよ。返せと言われなかったのですから、あれは私の物です。どう扱おうと私の勝手でしょう」

 クラリスは殿下から頂いた婚約指輪を売却したことに驚いているが、私からすると当然の行動である。

 別れた相手からの婚約指輪なんて、手元に置いておきたくない物ランキングで上位に入る代物だろう。

 それに何ヶ月も大きな結界を張って治安維持に貢献したのだ。
 
 これくらいの給金は頂いて然るべきだと思う。

 ということで、馬車を手に入れた私たちは国境を越えようと馬を走らせようとした。

「ところでアリシア様、目的地はどちらに行かれるおつもりですか?」

「冒険者ギルドのある国が良いのですが、心当たりはありますか?」

「この辺りの国はどこの国にもギルドはありますよ。僕らもこの国のギルドにかつて所属していました」

「……なるほど。では、海が見える国が良いです。山暮らしでしたから、海というものを一度見てみたかったのです」

「それなら、レッゼフィール王国ですね。海が綺麗で海産物も美味しいですし、いいところですよ。あの国のギルドマスターでしたら、私たち……面識があります」

 レッゼフィール王国か。この国の南側の半島にある小国。

 そういえば、レッゼフィール王国にも――。

「あちらにも聖女様が居ますよね。今代の聖女様は歴代で最も強い力を持っているらしいですよ。私も噂でしか知らないのですが」

「その聖女様も本物なら良いですね。ふふっ……」

「あはは、アリシア様ったら。冗談がお好きですよね」

 クラリスは私が冗談を言ったように聞こえているみたいだ。

 偽聖女をさせられた身としては、あり得ない話とも思っているんだけど、はてさて……。

 かくして、目的地は海沿いの国。レッゼフィール王国に決まり、私たち三人は馬車で南を目指した。

 それにしても、冒険者ギルドとはどのような所なのだろうか。

 期待と不安を胸に秘めながら、私は馬車の揺れを感じていた。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。 ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。 魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。 そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。 ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。 妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。 侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。 しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました

お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。 その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。

私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?

狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」 「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」 「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」 「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」 「だから、お前の夫が俺だって──」 少しずつ日差しが強くなっている頃。 昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。 ……誰コイツ。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

処理中です...