名探偵に憧れた私はついうっかり異世界に探偵事務所を構えてしまった

冬月光輝

文字の大きさ
3 / 64

第3話 アルバムと写真と幼い記憶

しおりを挟む
 本棚の奥からアルバムを取り出す。
 こうやって開いて見るのは何年ぶりだろうか。

 ゆっくりとページをめくってみると、どういう訳か、あたしは父がもうこの世に居ないような気がしてしまって目頭が熱くなってきた。

 そんな不吉な考えを消そうと、次のページをまためくってみる。
 12年前に両親と幼い私の3人で河原にキャンプに行った時の写真が目に入った。
 みんな笑顔で、幸せそうだ。

 次の写真は……。

「あれっ? こんな写真見たことない」
 当たり前だが、父は今よりずっと若い。
 しかし違和感はそれじゃ無かった。

 父はまるで、物語の中のお城をバックに中世の騎士のような鎧を着ていた。

「そんな趣味があったかしら」
 独り言が出てしまう。

 その時、突然ガツンと、あたしは酷い頭痛に襲われた。

「痛っ……」
 頭を抑えながら、写真を見つめる。
 幼い日の記憶がビックリするくらい溢れてくる。
 なぜ今まで忘れていたのだろうか?

 写真の場所は……。この大げさなお城は……。

「あたし……は……、ココに住んでいた?」
 懐かしさと、怖さと、好奇心が入り混じった不思議な感覚になっていた。

 そんなはずはない、だってあたしは‥普通に幼稚園に行って、小学校に行って、中学校も卒業して、今年から高校に入学して、平凡な毎日を送っていたんだから。

 でも、その前は……。
今まで、小さい頃の記憶が無いことに違和感を感じたことはまるで無かった……。
普通のことだと思っていたから……。

 しかし、あたしが赤ちゃんの頃から2歳くらいの頃の話は不思議と父は何も語らなかった。
 母のことを思い出すからと思っていた。

「そうじゃない」
 あたしは、首を振りながら呟いた。
 絶対に意味がある……。
 
 幼い日を過ごしたこの場所のことを忘れさせられていたことには、必ず意味がある。

 そして、父が居なくなってしまったことにも繋がるかもしれない。
 写真をもっとよく見たかったので、アルバムから取り出してみる。
 コスプレをしているようにも見える父の顔は、真剣な表情だった。
 そういえば、出かける前もこんな表情をしていたと思う。

「なんだろう……?」
 写真の裏にも文字のようなものが書かれていた。

「英語? でもないか……」
 日本語は、もちろんのことアルファベットにも見えない。
 でも不思議なことに、見覚えはあった。

 というか、あり得ない話なのだが読めてしまった。

「ゴクッ」
 読もうとしたのだが、どうしても躊躇して生唾を飲んでしまう。
 この見慣れない言葉を発してしまえば、この世界の人間では無くなってしまうような、嫌な予感がしたからだ。

「馬鹿みたい。こんなの読んだって消えちゃう訳ないんだから」
 少し自嘲気味に笑ってしまった。
 ひと呼吸置いて、写真を眺めながら呟いた。

「ラウド……マカ……トム……ラウド……」

――カッ

「えっ何これ……?」
 突然、写真がとてつもない光で輝き出した。
 まるで太陽のような、強烈な光に思わず目を背ける。
 写真を持っている右手から光が体をドンドン侵食してくる。

 首元から頭のてっぺんまで光に包み込まれた瞬間、あたしは体重が無くなった感覚になった。
 そして、あたしの姿は父の書斎から消えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

処理中です...