名探偵に憧れた私はついうっかり異世界に探偵事務所を構えてしまった

冬月光輝

文字の大きさ
15 / 64

第15話 シャンパンと緑色とお手柄

しおりを挟む
 ガルシア=ノーマンは25歳、シンポート王国議会の議員秘書である。その仕事振りは、上司に忠実すぎるとの評判だった。
 
「昔から立場の上の人間には顔色を伺って、シッポばかり振っていたわ。理不尽な命令にも、必死で従うの。次第に嫌われ者になっていったわ。そりゃあ顔は良かったから、関係のない女にはモテていたけど」
彼の幼馴染の1人であるフィリア=トリビアーノはそう語った。

「ガルシアさんですか?悪い人では無かったです。去年、私は結婚したのですが、夫は彼の紹介で知り合いました。まあ私の結婚はあまり喜んでくれませんでしたが。あと、最近は交友関係が広いことをよく自慢していましたね」
同じく幼馴染のケイト=マハラに彼についてこのように評した。

「色々変な噂はあったけどよぉ、ただ頑張り屋なだけなんだ。必死になる方向性を間違えちまうことが多かったから、よく喧嘩はしていたぜ。やっぱり筋が通らないこと言われると、俺も許せないからな。だけど、殺そうとなんて考えたことはない。本当だ」
 最後に最も付き合いが長いというクラウド=タイガーヘッドに話を聞いてみた。

 立花は一通りガルシアの人物像を質問して回った。
 質問が終わった後、立花はガルシア最後に飲んだシャンパンに目を付けた。

「これをノーマン氏は最後に飲まれてましたよねぇ」
 シャンパンを指さして立花は質問した。

「まさか、それに毒が?でもそれはガルシアが自分で持ってきたものだぜ。俺も同じものを貰ったからな」
 クラウドがそう答えると、ケイトも頷く。

「なるほどぉ」
 短く立花が答えると、側にあったグラスにシャンパンを注ぐ。
 更にグラスの中に、粉末状の何かを入れていた。
 グラスの液体は緑色になった。

「立花さん、何をしているのですか?」
 ずっと突っ立てたあたしは、ようやく落ち着いたので聞いてみた。

「涼子くん。付き合わせてすまないねぇ。一応これは便利な薬っていったところかな。人体の死に強く影響があるものが混じっていれば赤色になるんだが……。もちろんアルコールだって人によっては毒なんだからあまり信頼性の強いものじゃないんだけどねぇ」
 立花は緑色の液体を見ながら説明した。

「まあ、このシャンパンはほとんど安全って言ったところかな」
 立花はシャンパンをじっと見ながらそう言った。

「クラウドさん、貴方がノーマン氏から頂いたシャンパンはもう飲まれたのですか?」
 立花はクラウドに尋ねる。

「いや、ガルシアには美味いから飲めよって勧められたんだけどよお。騎士団からの命令で食事制限させられててな。今日も全然食べられなかったんだ」
 クラウドは未開封のシャンパンを指差した。
 シャンパンには【クラウド=タイガーヘッド】と書かれていた。

「ちょっと拝借してもよろしいですかな?」
 立花はクラウドに聞いてみた。

「構わないけど、こんな時に飲みたいのかい?」
 クラウドは怪訝な顔をした。

「ははっまさか。いくら私でもそれはないですよ」
 立花はクラウドのシャンパンをグラスに注ぐ。
 グラスの中の液体は緑色だった。

「そう来たか?ふーん」
 立花は少し楽しそうだった。

「もしかしたら、無差別殺人なのでは?他の食べ物は、パーティーの参加者なら誰でも口にする可能性がありましたよ。誰が死んでも良かったんだ。犯人は私のホテルの評判を落とすためにこんなことをやったに違いない」
 側で見ていたスタンレー氏は心配そうな顔で、尋ねた。

「かもしれませんなあ……」
 立花は聞いているのか、いないのか適当に返事をした。

 あたしは、この非日常の連続に疲れたのか少しよろめいた。

「おっと大丈夫かい?涼子くん」
 立花はあたしを支えてくれた。

「ありがとうございます。大丈夫です」
 あたしは立花にお礼を言った。

「でも、少し疲れます。だってあたしがこの世界に飛ばされてから、色々ありすぎて‥」
 あたしがそう言うと、立花ははっとした表情になった。

「涼子くん……飛ばされる……転移魔法……ふふっなるほど……」
 立花はブツブツ言っている。

「たっ立花さん?」
 あたしは立花の豹変に驚いていると‥

「エクセレント!お手柄だよ涼子くん」
 立花はあたしの肩を突然抱いて叫び出した。

「へっ」
 あたしは間の抜けた声が出た。

「はっはっは。君のおかげで事件が解決しそうだよ。ニーナくんちょっとこちらに‥」
 自信満々の表情で立花はニーナを呼ぶ。ニーナに、いくつか指示を出した。

「先生、承知しましたわ。と言いたいのですが本当に大丈夫ですの?」
 ニーナは不安そうな声を上げる。

「私を【信頼】しなさい、犯人は【あの人】で間違いないからねぇ」
 立花はいつものように髭を触りながら話していた。

「先生が、そこまでおっしゃるのでしたら承知いたしましたわ」
 ニーナは意思を固めた表情をしていた。

「それでは、【あの人】のところへ行きますか」
 立花はそう言うと、ゆっくりと歩いていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

処理中です...