名探偵に憧れた私はついうっかり異世界に探偵事務所を構えてしまった

冬月光輝

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第23話 港町と民芸品と転生者

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 あたし達は、サンポルト共和国の港町コルドーで一泊することになった。

 宿に着くと、ニーナは疲れているからと自分の部屋に足早に入っていった。

「ニーナくんが一番会いたくない相手に会ってしまったからねぇ」
 立花はそう言っただけで多くは語らなかった。
 
 あたしは、レオンとニーナの間に何があったのか気にはなったけど、立花の態度を見てこれ以上聞くことを諦めた。

(あーあ、ニーナさん寂しそうな顔だったな)
 あたしは、何も力になれないことが悔しかった。

「何か元気付けられれば良いのだけど‥そうだ!」
 あたしは、宿の一階にお土産物屋があることを思い出した。

「村長さんに貰ったお給金も残っているし」
 ニーナにプレゼントを買おう作戦を実施することに決めた。

 一階に着くと、小さな民芸品が売っていた。

「わあ、色々あるなあ」
 手作りの人形は見たこともない塗料が使われていて不思議な輝きをしていた。

「あはっ。これ、立花さんに似てるかも」
 タヌキのような生き物の人形を手に取る。

「これに決めた」
 人形を持って店主のところに行く。

「あんた、これはここでは使えないよ」
 あたしは、エジシアのお金しか持っていなかったことに今気がついた。

「そうですか、すみません‥」
 あたしはガッカリして肩を落とした。

「これで足りますか?」
 後ろから黒髪で上下黒い服を着た男が、店主にお金を渡す。

「ん?あんたこの子の連れかい?もちろんこれだけあればお釣りが出るよ」
 店主は男にお釣りを渡す。

「どうぞ、お嬢さん」
 男はニコリと微笑んで、あたしに人形を手渡そうとする。

「そんな、悪いですよ。そもそも見ず知らずの人ですし」
 あたしは、手を振って断った。

「これは失礼しました。僕は平田と言います。お嬢さんと同じ世界にいた事もありますよ」
 平田と名乗った男は、頭を下げて自己紹介した。

「平田さんも日本人なんですね。あたしは雨宮涼子と言います。この世界で立花さん以外の日本人を初めて見ました」
 あたしは少し驚いていた。

「そうですか、僕も久しぶりですよ。だから、嬉しくなってつい。驚かせてすみません」
 平田はもう一度頭を下げた。

「あっそんな、あたし、全然気にしてないです。平田さんはこちらの世界に来て長いのですか」
 あたしは、誠実そうなの平田に興味を持った。

「僕ですか?日本人だったのは20年以上前ですよ。だから涼子さんとはかなり世代は違いますね」
 平田はそう答えると人形をもう一度手渡した。

「そうなんですか。でも、平田さんは凄く若そうに見えますよ」
 あたしは無意識に人形を受け取りながら答えた。

「ええ。僕はいわゆる転生者と言いまして、一回死んだことがあるのですよ」
 平田は凄く自然に変なことを、口走った。

「はぁ、死んだこと‥ですか?」
 あたしは、全然意味がわからなかった。

「簡単に言えば、生まれ変わったということです。だから正確に言えば僕は【日本人だった】のです」
 平田さんはニコニコ笑って説明してくれた。

「生まれ変わりですか?本当にこっちの世界って色々あるなあ。へぇー」
 あたしは、何とか理解しようとするように努力した。

「そうなんですよ。まあその色々が僕は楽しいと思ってます。涼子さんもそう思いませんか?」
 平田は楽しそうに話していた。

「楽しいと言えば、楽しいことも多いですね。でも、全然慣れなくて混乱することだらけです」
 あたしも釣られて笑顔になる。

「ははっ涼子さんって素直な人なんですね」
 平田はあたしの目を見ながら言った。

「もう!平田さんも立花さんみたいなこと言わないでくださいよ。何か少し馬鹿にされてるように聞こえます」
 あたしは、少し照れくさくなって答える。

「僕はそんなつもりで言ったわけでは無いのですが。その立花って人もこのホテルに泊まっているのですか?」
 平田から笑顔が消えたような気がした。

「そうですけど、呼んできましょうか?」
 あたしは平田の質問に答えた。

「それはまた今度にしておきます。ところで涼子さん、【平田】という名前は僕が一度死ぬ前の名前なんです。最後に僕のこっちの世界での本名を名乗ってもいいですか?」
 平田がまた変なことを平然と言った。

「えー、凄くややこしいですよ。今は【平田】さんではないということですか?」
 あたしは話を何とか合わせようとした。

「ええ、僕にはこっちの世界の名前もあるのですよ、それは‥」
「フィリップ=デロン……」
 後ろから立花の声がした。

「涼子くん!今すぐ、あいつから離れたまえ!」
 立花が珍しく焦って大声を上げた。

「おやおや、挨拶はまた今度にしようと思ったんだけどな。ジンさん久しぶりですね。元気そうで何よりです」
 平田は笑っていた。

「君も相変わらずだねぇ。何しに来たんだい、死神‥」
 立花はあたしを自分の後ろに下げる。

「僕がここに来た理由ですか?決まってますよ‥」
 平田の笑顔が真顔に変わる。

「復讐です……」
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