名探偵に憧れた私はついうっかり異世界に探偵事務所を構えてしまった

冬月光輝

文字の大きさ
32 / 64

第32話:ナイフとトラップと説明書

しおりを挟む
「本当は待っているつもりでしたが、ここで終わらせてあげましょう」
 フィリップは不敵に笑っていた。

「お前たちは手を出すな。僕が決着を着ける」
 レオンは、一瞬で間合いを詰めて、斬りかかる。

「あっ待ちたまえ」
 立花が止めたが間に合わず、レオンは剣を降り下ろした。

――ガキンッ
 
 レオンの剣はフィリップには届かず、透明な壁にでもぶつかったような衝撃が起こった。
 繰り出された斬撃の威力がそのまま、レオンに跳ね返された。

「ぐわぁ」
 レオンは吹き飛ばされてしまった。

「あーあ、だから言わんこっちゃない」
 立花は呆れ顔で言った。

「お兄様、言わんこっちゃないですわ」
 ニーナも続けた。

「うるさいな。お前はさっきから全然戦ってないじゃないか!口ばっかりの癖に」
 レオンが大声を上げる。

「あらら、痛いとこつくねぇ」
 立花は苦笑いして、左右に小さなナイフを投げた。

 ナイフは、左右の木に突き刺さり徐々に発光していく。ナイフの光と反比例してフィリップの姿は消えてしまった。

「どういうことだ?倒した訳ではないのだろ?」
 レオンは不思議そうな顔をした。

「これは初歩的なトラップだねぇ。あのフィリップはもちろん偽者。獲物をおびき寄せて透明なバリアに誘い込む」
 立花は説明を始めた。

「まあ、今みたいに魔力の発信元をストップさせると起動しなくなるけどね。最も引っ掛かるとは思ってなくて挑発のつもりで仕掛けたのだろうけどねぇ」
 立花はナイフを抜きながら言った。

「それは、僕に対する嫌味か何かか?」
 レオンは立花を睨む。

「お兄様、落ち着いてくださいまし」
 ニーナはおどおどしている。

「別に嫌味じゃなくて、警告さ。彼が死神芸術家とも言われたのは、圧倒的な強さだけじゃない。狡猾なトラップの才能こそが彼の真骨頂だったんだ。幸い私もこの手のトラップのプロだからねぇ。この辺は任せてもらうよ」
 立花は自信満々の笑みを浮かべて言った。

「こういう狡いことは嫌いなんだ。勝手にしてくれ」
 レオンはそっぽを向いて答えた。

 立花達は目の前に見える洋館に向かって歩みを進めた。

――15分後。

「ニーナくん気が付いたかい?私たちは全くあの洋館に近づいてないよ」
 立花はニーナに話しかけた。

「えっ、先生何を…。あっ確かにさっきから全く近づいてませんわ」
 ニーナは驚いて反応した。

「おいおい、またトラップとか言うんじゃないだろうな」
 レオンも立ち止まって反応する。

「流石に鈍感な君でも気づいたね」
 立花は意外そうな表情で言った。

「お前はさっきから喧嘩を打っているのか?」
 レオンは今にも剣を抜きそうだ。

「先生、余計なことをこんなときまで言わないでくださいまし」
 ニーナは、立花を咎める。

「これは失敬。ニーナくん、このトラップは何かに似てないかい?」
 立花はニーナに質問する。

「そういえば、この間のよろず屋さんから、もらったお札に似てますわ」
 ニーナは思い出して言った。

「そう、君が解除し忘れて涼子くんを無駄に歩かせた、あのお札だねぇ」
 立花は髭を触りだした。

「それは忘れてくださいまし」
 ニーナは頬を赤らめて言った。

「何だ、このトラップは知っているものなのか?だったら早く解除したらいい」
 レオンは会話に口を挟んできた。

「まあ、落ち着きなさい。よろず屋から説明書をもらったからねぇ」
 立花は落ち着いていた。

「このトラップの解除方法はねー…………」

「………」

長い沈黙が流れた……。

「そういえば、忙しくて説明書を最後まで読んでなかったよ」
 立花は頭を掻きながら言った。

「先生、ふざけないでくださいまし」
 ニーナは立花に詰め寄った。

「誰がトラップのプロだって?」
 レオンは立花を睨み付けた。

「いやあ、読もうと思った日に涼子くんが来てねぇ。読みそびれてしまったよ」
 立花は言い訳をした。

「まあ、落ち着きなさい。時間はまだあるんだ。少し考えよう」
 立花は座り込んで腕を組んだ。

「悠長なことを言うな。もういい、遠ざかるスピードより早く動いてやる」
 レオンはそう言い残すと、猛スピードで駆け出した。

「君の兄さんって、あんなに頭悪かったっけ?」
 立花はため息をついて言った。

「まあ、昔から面倒なことは考えない人でしたわ」
 ニーナも苦笑いしていた。

30分後、息を切らせてレオンは戻ってきた。

約束の時間まで後、14時間40分
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...