名探偵に憧れた私はついうっかり異世界に探偵事務所を構えてしまった

冬月光輝

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第38話 精神世界と兄妹喧嘩と謝罪

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 船は、きちんとサンポルトの港に着いてしまった。ニーナはとりあえず、立花と涼子と共に船を降りた。

「さあて、ここから隣国のグレス王国までは歩いて行く事となる。その前に入国手続きと出国手続きを両方やらなくてはならないから、今日はこの街に一泊するよ」
 こちらの立花も同じことを言う。

「ニーナさん、ずっと気分が優れなさそうですが、大丈夫ですか?」
 涼子は前回同様ニーナを心配した。心配の理由は異なるが。

(このままだと、またフィリップが襲いに来る。それを阻止したとしてもここは偽物の世界…どうすれば…)

「ニーナくん、精神世界に閉じ込めるタイプの魔術は君の心の一番弱い所を突いてくるんだ。もし、抜け出せるチャンスがあるとすれば、君が自分の殻を破るときだよ」
 立花は偽物というのに、ニーナにいつものようなアドバイスをしていた。

「それじゃあ、私は手続きをしてくるから」
 立花はそう言い残して、受付に向かって行った。

「ニーナさん、先程から落ち着きがなさそうですが、大丈夫ですか?」
 涼子はまた前回と同じ質問をした。

「ええ、大丈夫ですわ」
 ニーナは気分を落ち着かせて答えた。

(このままだと、本当に抜け出せなくなる。私の弱い心というのは、それは…)

「いやあ、まいったよ。この国はやたらと書類の分量が多いねぇ」
 そうこうしている内に、立花が戻ってきた。

「先生、私やっぱり……」
 ニーナは不安そうに立花を見つめる。

「とりあえず私も予定通り動くから、チャンスを探したまえ」
 立花がこっそり耳打ちする。

「それじゃあ、今日の宿に向かおうか」
 ニーナは立花の後に続いた。

「キャー、泥棒よ。誰かー」
 叫び声のした方向を向くと前回同様、覆面の男が2人が、店の品物を持って猛スピードで逃げている。

「やれやれ、ニーナくん。悪いんだけど、流石に…」
 立花がニーナに指示を出すよりも早く動く。

「セイファー流‥追跡する鎌鼬(トレイサーソード)」
 瞬く間に2人の泥棒を捕獲する。

「全く、騒ぎがあって来てみたら…。君はどこぞの、落ちこぼれじゃないか。一族の恥さらしが何しに来たんだ」
 レオンはニーナを睨みながら言った。

「そういえば、あのペテン師とは縁を切ったのか?それなら、父上に謝りに行けば許して貰えるかもしれないぞ」
 レオンは前回と同じセリフを吐いた。

 ニーナは震えていたが、立花の言葉を思い出して、深呼吸する。

「先生はペテン師などではありませんわ。取り下げてくださいまし!!」
 自分の声とは思えない大きな声が出た。

「ほう、少し会わない内に生意気を言うようになったじゃないか、騎士団から逃げ出したような弱虫のお前が…。謝れば聞かなかったことにしてやるぞ」
 レオンはニーナに向けて剣を構えた。

「私は、逃げ出してなんかいない!お前こそ先生に謝れ!!」
 ニーナも剣を構える。

「血迷ったか?それとも僕の力を忘れたのかな。良いだろう、少しだけ躾をしてやろう」
 レオンとニーナは身体が金色に輝かせ戦闘体制に入る。

 前回は戦闘になりかけた時、止めが入ったが今回はそのような様子は無かった。

「「終焉の蛇群(ラストスネイク)!!」」

 同時に互いの剣から無数の蛇が出る。
 そして、蛇同士が互いを喰い千切り消えて行く。

「「双竜絶技(トゥワイスブレイド)!!」」

 お互いの姿が別れて2対2の戦いのようになった。
 互角の兄妹喧嘩はいつまで経っても決着が着かない。
 気付けば周りの建物は消えてなくなり、真っ白な空間で2人は戦い続けた。

「私は、もう【あの頃】とは違いますわ!自分の道は自分で決めさせてもらいます」
 ニーナは叫びに近い声を上げて、全身全霊の力を剣に込める。

「巨人の一閃(ギガントブレイク)!!」
 ニーナの全てを込めた一撃を何故かレオンは一歩も動かずに受けてしまう。

「お兄様……」
 気が付くと、レオンの姿も消えてしまった。

 その瞬間、ニーナの頭に激痛が走った…………。

「頭が痛い……、どうなっ……て……すの?」
 ニーナは再び気を失ってしまった。

「……ナくん、ニーナくん、しっかりしたまえ」
 立花の声でニーナは、再び目を覚ました。

「先生…、ここはどこですの…」
 ニーナは恐怖を感じながら質問した。

「ここは、フィリップの潜伏先の洋館じゃないか…。大丈夫かい?」
 立花は不思議そうな顔をする。

「やっと、出てこれましたわ…」
 ニーナは安堵して、立花にこれまでの経緯を話した。

「なるほどねぇ、突然動かなくなったから心配したんだ。それは大変だったねぇ。私も何とか出ようとしたのだが、君が術を破るまで球体から出られなくてね」
 立花は納得した表情をした。

「お兄様…、ニーナは今の仕事に誇りを持っていますわ。自分の道を自分で決めて責任を持ちたいのですの。だから、これからは…」
 ニーナがそういいかけると、レオンは言葉を遮る。

「まあ、お前がその道に逃げたのではないならそれでいい。僕も、なんだ、その……、悪かったな」
 レオンは小さな声で謝罪した。

「あと、父には僕が言っておくから、たまには、実家に帰るんだな」
 レオンは優しく声をかけた。

「承知いたしましたわ」
 ニーナは嬉しそうな声を出す。

「ところで私はどれくらい気を失ってましたの?」
 ニーナは立花の方を振り替えって聞いてみた。

「……時間てとこだねぇ」
 立花は言いにくそうに答えた。

「えっもう一度教えてくださいまし」
 ニーナは聞き間違えを、祈って聞き返した。

「大体、8時間くらいだねぇ」
 立花は苦笑いしながら宣告した。

「ええ、そんなにですの…」
 ニーナはもう一度気を失いそうになった。

約束の時間まで後、3時間50分
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