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第一話
しおりを挟む本日は快晴……空の色は一点の曇もない青であり、私の心とは正反対で鬱々とした気持ちを顕にしてくれます。
もちろん、空には罪は無いのですが晴れ渡る青と燦々と光る太陽を見て私はため息をつきました。
理由は一通の手紙です。
その手紙の内容について触れる前に半年前の婚約破棄について少しだけ説明を。
私ことリノア・フェルメールはフェルメール侯爵家の長女であり……半年前までこの国の第二王子であるロレンス殿下の婚約者でした。
しかし、あの日……殿下は私に婚約を解消してほしいと頼み込んできます。
「リノア、お前の愛は重すぎる。僕はまだ若いし……遊びも覚えたい。悪いが愛人ならあと6人ほど居るし、それを咎められても僕はどうすることも出来ない」
ロレンス殿下が他の女性と相瀬を繰り返しているという噂を聞いて、それを確認すると彼は開き直りました。
その上、噂の女性以外にも複数人と関係を持っていることを悪びれもせずに語ります。
「言っとくがなぁ。この国くらいだぞ、王族の浮気に煩いのは。君の元に最後には帰って来るのだから正妻としてどっしりと構えておれば良いのだ。甲斐性のある男の婚約者なのだと誇りに思ってな。この話はこれっきりにしてくれ」
友好国へと勉学のために留学した経験のある殿下は他国の価値観を持ち出して浮気を正当化しようとされました。
最後には私のところに戻ってくると言われて喜ぶ女性もいるのだと聞きます。正妻としての認められることが他の女性よりも優位に立った証だと誇りに思う方も。
しかし、私にはどうしてもそんな風に思うことが出来ません。
愛する人には自分のこと方向だけを向いて欲しいと思うのはそんなに可笑しいことでしょうか?
「だから君の愛は重いのだ。そういえばお前みたいな女が婚約者を刺したとかそんな話をよく聞くな。お前は嫉妬深そうだし、もういいよ。婚約を解消しよう」
殿下はあっさりと私に婚約破棄を申し出ました。
浮気は嫌だと訴えただけで、刺されそうとまで仰せになられて……。
それが半年前のこと。
殿下には婚約破棄されましたが、お互いに性格が合わなかったと極めて平和的に話を終わらせました。
フェルメール家は王家とも懇意にしていますし、争ったところで何も得することは無かったのです。
両親も殿下が遊ばれているという話を聞いて、結婚前に分かって良かったと理解を示してくれましたので、私自身もショックではありましたが立ち直りかけておりました。
そんな中、届いた殿下からの一通の手紙。
殿下から届いた手紙は今月になって実に5度目です。
これまでの4通は復縁要請でした。
私のような女性はいなかったとか。
君の愛の深さのありがたさを知ったとか。
そんな内容で――私とやり直したいとのことでした。
しかし、私としては「人を刺すような女」だと見られたことがどうしてもショックで、今でも泣きそうになるくらい心が傷ついていましたので、申し訳ないのですが、殿下には断りの返事をしました。
4度目に返事を出したとき、さすがに私もうんざりしてきました。
もういい加減にしてほしいと……迷惑だと感じていたのです。
そういう経緯もあり、5度の手紙も復縁要請だと思っていたのですが――書き出しからいつもと様子が違いました。
『君が僕の元婚約者だと聞いて手紙を書いた。聞けば、僕は君に随分と酷いことをしたらしいね。実は僕は昨日までの記憶を失っている。何か記憶を戻すための手がかりを探っていたら君からの手紙を見つけた。失った記憶を取り戻すヒントになるかもしれないから、嫌だとは思うが一度だけ会ってほしい……』
手紙には殿下が私にしたことへの謝罪と記憶を取り戻すために協力してほしいということが丁寧に書かれていました。
殿下との婚約破棄からは立ち直りかけてはおりますが、彼と会うのは正直に申しますと怖いです。
でも、これまでのことを全て忘れたというのはお辛いと思いますし……。
「はぁ……、どうしたら良いのでしょう」
晴れ渡る空の下で私はもう一度ため息をつきました――。
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