【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝

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プロローグ:追放コンビ結成編

第2話:空から降ってきた【堕天使】ラミアとの馴れ初めの話

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 転職のしすぎが原因なのか、勇者のパーティーを追放された私は、国境を出た瞬間、空から降ってきた女性を文字通りキャッチした。
彼女の背中には黒い翼がついていた。

「本当に、大怪我しちゃうところでしたわ。何とお礼を言えばいいのか。あっ、申し遅れました。わたくしは、ラミアって名前ですの。あなたの名前を教えてくださいまし」
 独特のテンポで話す、ラミアと名乗った彼女は上目遣いで私の名前を聞く。

「私はルシア=ノーティス。それで、あなたは一体……」
 私は最初の質問を繰り返そうとした。

「あぁ、ルシア様ですかぁ。見た目も名前もとぉってもカッコイイです。しかも、わたくしをしっかりと受け止めてくれた剛腕……。一目惚れしましたわ」
 駄目だ、ラミア(こいつ)は話を聞かないタイプだ。
やめろ、抱きついてくるな。
だから、お前はなんなんだ?

「えっ、わたくしですか? ちょっと天界で色々あって追放された天使ですの」
 ラミアはあっけらかんとした表情でやっと私の質問に答えた。
こいつも追放されたのか、今日は追放に縁があるなあ。

「ふーん、つまり【堕天使】ってことか。なんか、【堕天使】ってこう、もっと恐ろしい存在ってイメージだけど……。てか、そろそろ離れてくれないか」
 私はラミアを引き離した。

「えー。わたくし、もっとルシア様とくっついていたいですわ。あと、大事なお話を忘れてましたの。聞いてくださいまし……」
 ラミアは私に近づいて耳打ちした。

 何だ、大事な話って? もしかしてあれか、今空から降ってきている化物達のことを言っているのか?
あれって、どう見ても悪魔だよな。
尖った耳に紫色の肌、黒い翼。
おいおい、やたらとデカイ体のやつも居るじゃないか。

「実は、わたくし悪魔の集団に追いかけられてまして、もうすぐここにやってきますの。だから、早く逃げたほうがよろしいですわ」
 ラミアはゆっくりとした口調で私に話した。

 もう手遅れだよ、上を見ろ上を!
いや、首を傾げても可愛くないから、あれだろ? あなたを追いかけてきた悪魔って。
私は指を上に向けて、ラミアに状況を伝えた。

「あっ、もう悪魔たちが来ちゃってましたー。ルシア様、申し訳ありません。わたくしが囮になりますので、お逃げくださいまし。大丈夫です、少しなら時間を稼げますから。死ぬ前にルシア様みたいな方に出会えて幸せでしたぁ」
 ラミアは精一杯真剣な表情でそう言った。

 なんか、愛する者のために命を賭ける【わたくし】、みたいな感じを出しているけど、悪魔の狙いってあなただけだから。
私は部外者で、関係ないからね。
あー、でも彼女は本気で死ぬ気なんだな。
ほっとけないよね。
私もお人好しなんだから。

 一番先頭の悪魔がラミアを剣で切り裂こうとした。

――バシッ

 私はジャンプしながら廻し蹴りを悪魔の顔面に直撃させた。
悪魔は吹っ飛んでいった。

「ルシア様、すごいですわぁ」
 ラミアから熱烈な視線を感じる。

 並のモンスターならこれで倒せるのだが、悪魔相手にはそうは行かないらしい。
蹴った感触で肌が鉄並みに硬いことがわかった。
ああ、やっぱり立ち上がったか。

 実は私はほとんど丸腰だ。
国境を出るとき、勇者からの通達で武器と防具がほとんど没収された。
アレックスってこんな陰湿なヤツだったのかと失望したものだ。

 まあ、こういう時に役立つのは今までの職業の経験なんだよな。
私はおもむろに暖房用の練炭を袋から出した。

【錬金術師スキル発動】

 練炭→ダイヤモンド

【鍛冶屋スキル発動】

 ダイヤモンド→ダイヤモンドの剣

 これで、即席の武器は手に入った。
柄の部分の装飾が少しばかり気に食わないが、時間が無いので仕方がない。
悪魔は、全部で4体か……

【剣士スキル、魔法使いスキル同時発動】

 上段斬り+初級雷系魔法=雷帝斬り

――ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ

 悪魔たちは剣撃と雷撃を同時に受けて絶命した。

「ルシア様ぁ、とってもお強いんですね。わたくし、決めましたわ。ルシア様に一生付いていきます。きっと、名のあるパーティーに所属しているのでしょう。お供させてくださいまし」
 ラミアは私に抱きついて、そんなことを嘯いていた。

「断る。私は勇者のパーティーを追放されたんだ。適当に放浪するだけだから一緒に来てもつまらんよ」
冗談じゃない、こんなトラブルメーカーに付いてこられてたまるか。
 私がただの追放者だと知れば、興味もなくすだろう。

「ええー。ルシア様って追放者なんですか」
 ラミアは驚いた顔をした。
そうだ、私はならず者だ。
失望したろ、さっさと立ち去るがよい。

「わたくしと一緒だぁ。わたくし達追放仲間ですね。これって運命じゃないですか?」
 ラミアは目をキラキラさせてそう言った。
私は心の中で盛大にズッコケた。
というか、追放仲間ってなんかムカつくな。

「だから、ダメだって。大体、そんな真っ黒な翼が丸見えの【堕天使】に付いてこられたら大騒ぎだよ。私は静かに旅をしたいんだ。わかったら、どこかに行きなさい」
 私は再びはっきりと断る。

「ああ、翼でしたらほらっ、簡単に消せますよ。ねぇ、お願いします。わたくし、ルシア様に一生尽くしたいのですわ」
 ラミアはぎゅーっと私の腕に胸を押し付けてくる。
そして、上目遣いでゆっくりとこう言った。

「何でもしますわぁ……。本当になんでも……」
 艷やかな表情で甘美な声を響かせた。
なんで、彼女はこんなことをするのだろうか?
ダメだと何度も言っているし、頭が悪いのだろうか?

「あれぇ、ルシア様ってなんか変ですよ。わたくしが習った人間についての話では、男の人はこうすれば言うことを聞いてくれるって教えて貰ったのにぃ」
 ラミアはほっぺを膨らませてそう言った。

 なるほど、確かにアレックスなら簡単に言うこと聞きそうだな。
それで、さっきからやたらとベタベタとスキンシップをとっていたのか。
天使とはそういうものだと勘違いするところだった。
早い話、色香で私を釣ろうとしていたのだな。

 おい、アホ堕天使、あなたの作戦は根本から間違っているぞ。
私はため息をついてこう言った。

「私は、女だ……」
 何が楽しくてこんな宣言をせねばならんのだ。

「へっ、ルシア様が女…………。えぇ!! 嘘ぉ!!」
 ラミアは絶叫した。

 そんなに驚かなくたっていいだろう。
確かに髪は戦いの邪魔になるから短くしてるし、身長も180センチ越えてるし、化粧なんて面倒なことは普段からしない。
まぁ、さらに言えば、地声が低い上に胸もないし、口調もこの通りだ。

 だからといって、そんなに絶叫しないでくれ。
ちょっと傷付く。
まぁ、私が女だとわかれば流石に彼女の関心もなくなるだろう。
悪かったな、いい男ならどこかにいるさ。

「まぁいいかぁ。愛のかたちは色々ですし。ルシア様に一目惚れしちゃったのは紛れもない事実ですもの」
 ラミアは唇に人差し指を付けながら呟いた。

 おいおい、何て恐ろしいことを呟いているんだ。
天使っていうのは、見境ないのか?
はたまた、見境ないから彼女は【堕天使】なのか?

「ルシア様、天界を追い出されて本当に行くところがないんですぅ。お願いします、お供させてくださいまし。変なことは致しませんから」
 ラミアは涙目で懇願した。

 変なことってなんだ?
確かに私と同様行くところがないのは同情するが、彼女を連れていった結果、私の貞操が危うくなるのは御免だぞ。
本当に何もしないのだな。
絶対だぞ、フリじゃないからな。

「……わかったよ。とりあえず、飽きるまで付いてくればいいさ。よく考えると私も独りは寂しいからな」
 私は根負けして、ラミアの同行を許可した。

「ありがとうございますぅ。わたくし、精一杯ご奉仕させて頂きますわ」
 ラミアは私に飛び付いた。
だから、そういうことは男にやれって、選択間違えたかなぁ。

 かくして、勇者のパーティーを追放された私と天界を追放された【堕天使】ラミアの追放コンビの放浪の旅が始まった。
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