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第ニ章:新たな侵略者、【魔界貴族】編

第43話:伝説の忍と一戦交える話

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 【魔界貴族】の要塞内へと潜入した私達はフィーナが【ウェパル女公爵】と戦闘中の現場に遭遇する。
 私とターニャは【ウェパル女公爵】に操られているコゴロウ=フウマと戦うことになった。

「伝説の忍、この人が弱いはずがない……」
 私は剣を構えた。

「拙者に挑むのは、無名の【勇者】とルーキーか。ふむ、弱い者いじめは趣味ではござらぬが仕方あるまい」
 コゴロウは刀を構えて私を見据えた。

――ガキン

 コゴロウが目にも止まらぬスピードで私との間合いを一気に詰めた。
 げっ、早いじゃないか。私は咄嗟に防御出来たが反応が少し遅れた。

ターニャ→コゴロウ
【仙人スキル発動】

 閃光流水乱舞

 ターニャは私とコゴロウが鍔迫り合いをしている間合いに踏み込み、連打をコゴロウに向かって放った。

――スッ、スカッ、スッ

 ターニャの連打をコゴロウは余裕で躱してしまった。
 私と剣を重ねているにも関わらず、こうも完璧に避けるとは……。スピードの差が大きすぎるか。

コゴロウ→ターニャ、ルシア
【忍者スキル発動】
 風遁の秘奥義

コゴロウは目を見開いて、片手で印を結ぶ。

――ブオァァァァァァ

 突如、コゴロウから無数の真空の刃が猛烈な勢いで飛び出した。
 私もターニャも避けきることができずに、ズタズタに切り裂かれて吹き飛ばされてしまった。
 片手で印を結ぶと忍術の威力が半減するはずなのにこれ程の威力とは、やはりとんでもない人だ。スピードもこれだけ早いとかなり厄介だぞ。

ルシア→ルシア、ターニャ
【賢者スキル発動】
 
 速度強化魔法

 私は自分とターニャに速度強化魔法をかけた。
 これで、普段の1.5倍速くらいで動けるはずだ。更に……。

ルシア、ターニャ
【仙人スキル発動】

 仙舞影歩

 私とターニャの連携の基本動作である、仙舞影歩の同時発動。
 これなら、スピード負けしないだろう。

コゴロウ
【忍者スキル発動】

 分身の術(20体)

 コゴロウの分身が20体出現した。
んな、馬鹿な。体力の消費もダメージも20倍になるんだぞ、まともな神経でこんなこと出来るはずがない。

――ザッ、ザッ、ザッ

 20体がそれぞれ先ほど以上のスピードで動いている。
 まともに一撃入れることが出来れば大ダメージを与えられるはずだが、火力の差がありすぎて攻められない。
 くそっ、分身の術なんて卑怯な忍者め。
 
 トップスピードでは、私とターニャの方が若干上。更に残像による翻弄で一時的には攻撃を避けきっているが……。
 このままでは捉えられるのは時間の問題だぞ。
 こうなったら、また精霊憑依(エレメンタルコネクト)を……。

「……ルシア先生。それは、ダメだ。次は痛みだけじゃ済まないかもしれない……」
 私の考えていることを読んだのか、ターニャが私を制止した。
 ふふっ、教え子に暴走を止められるなんて。
 この子はこの状況でも冷静さを失わないのか。自分より格上だらけの状況なのに……。

「……私がスキを必ず作ってくる。先生はその瞬間を狙ってくれ」
 ターニャははっきりとそう言った。
 この多勢に無勢な状況でどうやって……。

ターニャ→コゴロウ
【仙人スキル発動】

 閃光流水乱舞

 ターニャはコゴロウの内の一体を狙って連打を放った。

――スカッ、カシュッ、ズドン

 一撃だけだがターニャの拳がコゴロウにヒットする。分身は20体だから20発分の威力になるから、結構なダメージだな。
 スキが出来たら攻撃を……って、ターニャが他の分身体に捕まったぞ。
 ターニャは駆けつけた他の2つの個体に腕を掴まれた。絶体絶命か……。

ターニャ→コゴロウ
【武闘家スキル発動】

 大声砲弾

 ターニャは掴まれたこともお構いなしに、殴った目の前の個体に声の弾丸をぶつけた。
 なるほど、大声砲弾の威力も20倍になるならコゴロウの分身達は……。
 コゴロウの体は振動し、全ての分身体が身動きが取れなくなった。こうなったら、分身の術は弱点でしかない。

「………」
 コゴロウは分身の術を解除した。
 そりゃあ、そうするよね。あのまま、まともに20倍のダメージを食らったら終わりだもん。
 有言実行、しっかりとスキを作ってくれたな。

ルシア→コゴロウ
【魔法剣士(ルーンナイト)スキル発動】

 神焔一閃(カミホムラノイッセン)

 私の剣技がコゴロウを捉えようとした。

コゴロウ→ルシア
【忍者スキル発動】

 火遁の秘奥義

 コゴロウはかろうじて左手だけを動かして、忍術を発動する。
 巨大な火の鳥が私を狙い撃ちにする。
 ターニャが作ったチャンスを無駄にするもんか。

ルシア→コゴロウ
【忍者スキル、大魔道士スキル同時発動】

分身の術(2体)+最上級氷系魔法

 私は分身体を作り出して、最大出力に調節した最上級氷系魔法を発動させた。
 氷系魔法は火の鳥とぶつかり相殺された。
 よしっ、これでもくらえ!

――ズバンッ

 私の魔法剣がコゴロウに直撃した。
 コゴロウは胸から鮮血を出して、苦悶の表情を浮かべた。

「よっ、よくやったな。無名の【勇者】よ……。よもや、拙者の十八番の分身の術で一泡吹かせるとは……、大したものでござる……。お主の勝ちだ……」
 正気に戻ったのか、コゴロウは私を見て一瞬微笑んだ。
 そして、バタリとその場に倒れた。

「ふぅ、ターニャが居なかったら危なかったな」
 私は頼もしい仲間に成長した教え子の顔を見た。
 ターニャは相変わらず眠たそうな顔でぼんやりとしていた。
 格上相手には状態異常、特訓のときに覚えた分身体の弱点、私が教えたことを私以上に冷静に判断して実践した。
 本当に自慢の生徒だよ、お前は……。

――ドガァァァァァン

 フィーナと【ウェパル女公爵】の戦いはまだ続いている様子だった。

「ホホホホ、若いのは見た目だけのようじゃ。随分と腕が鈍ったのぉ、フィーナよ」
 ウェパルの熾烈な魔法がフィーナを圧倒しているようだった。

「それはどうかしら。妾には切り札があるかもしれないわよぉ」
 フィーナは余裕の表情でそう答えた。

「ホホホホ、それは愉しみじゃ。しかし、出し惜しみしないほうが人間共の為じゃよ。既に【魔界貴族】の本隊が邪魔者が消えたお主らの陣地に向かって出陣を開始したからのぉ。到着まであと10分といったところかのぉ。石化の呪いはこのくらいの時間が経つと簡単に破壊出来るくらい脆くなるんじゃよ」
 ウェパルはニヤニヤした表情でそう言った。

 なんだって、あと10分で仲間が……。
 タイムリミットを聞いて私は戦慄した。

「ルシア、ターニャ。聞いたでしょ、コゴロウを倒したんだったら早く妾を手伝いなさい!」
 フィーナは大声で私を呼んだ。
 その通りだ、急いでアイツを倒さなきゃ。ターニャ、連戦だけど大丈夫か?

「……問題ない」
 ターニャは力強く答えた。

 私とターニャがフィーナの横に立って、臨戦態勢をとった。
 
「ホホホホ、意外じゃ。余ですら、コゴロウを操作出来るまで弱らせるのは中々苦労したのに……。ノーマークのお主らがまさかこれ程とは……」
 ウェパルは本当に意外そうな表情だった。

「当たり前よ。このルシアは、お前の愛した男と憎んだ息子と同じ血を引いているのよぉ」
 フィーナは挑発的な口調で話した。

「はぁ? なんじゃと? まさか、こやつに【ノーティスの血】が……。確かにバハムティア様の面影がある……。ホホホホ、これは全力で殺さなくてはならん!」
 ウェパルの周りの空気が殺気に溢れて変わった。コイツは今までの【魔界貴族】の中でも群を抜いて威圧感があるぞ。

「あら、挑発して集中力を削ごうとしたけど逆効果だったかしらぁ」
 フィーナはのんきな言っていた。

 仲間達の命運をかけた戦いが始まった。


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