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最終章:魔王と勇者と神々を超えしもの編
第72話:与える神と奪う神の話
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「ターニャを救う方法がある? それは本当ですか? フィーナさん!」
私はフィーナに近づいて、肩を抱いた。
「ちょっと、近いわよ……。貴女って本当に天然のジゴロの才能あるんじゃなぁい? その顔で迫られたら大抵の娘はやられちゃうわよぉ」
フィーナはじぃーっと私の顔を見ながらそう答えた。
いや、そんなのはどうでもいいから、ターニャの件を……。
「うふふ、冗談よぉ。そんな焦った顔してたら上手くいくことも下手を打つことになるわぁ。とりあえず、紅茶のお代わりでも飲みながらゆっくりと聞きなさい。時間はまだあるのだから……」
フィーナはそう言うと、本当に紅茶を淹れに立ち上がった。そうだな、私が冷静さを失えばターニャに笑われてしまう。
★
フィーナに紅茶のお代わりを頂いた私は少し気持ちが落ち着いた気がした。
「ターニャの体を蝕む原因は、過剰な【加護の力】による負荷。ならばそれを取り除けばいい。つまり、ターニャから【加護の力】を奪い取れば彼女は助かる。【勇者】ではなくなるけどね」
フィーナが私に話した内容は実にシンプルだった。
しかし、【加護の力】を奪うなんてこと出来るのか? それに出来たとして、ターニャが【勇者】ではなくなるなんて……。いや、命の方がそんなことより大事に決まっている。
「フィーナさんは【加護の力】を奪い取る方法を知っているって訳ですね。教えてください、ターニャを死なせるわけにはいきません」
私はどうしてもターニャを助けたかった。
「まっ、貴女はそう言うわよね。簡単じゃないけど方法はある。【女神】が与える力を司る守護天使の長ならば、その反対の神も居るってわけ。奪う力を司る神、【ヘルメス】。彼ならターニャの【加護の力】を取り出すことが出来るはず」
フィーナは私の質問に答えてくれた。
「【ヘルメス】という神様なら可能ということですね。しかし、天界に喧嘩を売った私の頼みなど聞いていただけるかどうか……」
私は軽く絶望していた。神に助けなど求めても無駄だと思っていたからだ。
「大丈夫、彼は神の中では若手で癖の強いタイプだから【女神】と仲が悪いし、話はわかる方よ。ちょっと変わり者だけどぉ、貴女となら気が合うかもねぇ。貴女がどうしてもと言うのなら妾が彼の所まで案内してあげるわぁ」
フィーナは自信がありそうな感じだった。
そうなのか、だったらお願いしたい。
「どうしても、ターニャを救いたい。お願いします!」
「ふふっ、これで【魔界貴族】との戦いの借りが返せるわね。そうと決まれば早速行くわよ」
「【天界】ですか?」
「いいえ、彼はジプティアの古代遺跡に住居を構えているの。変わっているでしょ、地上に住んでいる神なんて」
フィーナの言うことには、ヘルメスはジプティア王国付近の砂漠にある古代遺跡に住んでいるそうだ。
そんな神様も居たのか。
☆
☆
というわけで、私とフィーナはヘルメスが住んでいるという遺跡の前までやってきた。
遺跡は砂漠のど真ん中にもかかわらず、周りに植物が生えていて神秘的な雰囲気の四角錐状の建物だった。
「フィーナさん、なんか怪しい雰囲気ですが……、魔獣でも居るのですか?」
「流石に鋭いわねぇ。実はここには【魔人ミノタウロス】がヘルメスの護衛として鎮座してるのよぉ。コイツがほんっとうに物覚えの悪いやつでねぇ。見境なく襲ってくるから、妾のパーティーの三人の【ケンロウ】が毎回大怪我しちゃって大変なのよぉ。相手にするのは疲れるから貴女に任せるわねぇ」
フィーナはいつもの調子でサラリと恐ろしいことを言った。
魔人ねぇ、話には聞いたことあるけど……。
「ほうら、この扉の先に魔人ミノタウロスが居るから身構えなさぁい。あとぉ、あんまりミノタウロスを傷付けたりするとヘルメスの機嫌損ねちゃうから注意してねぇ」
注意ってどうすりゃいいの? とか思いつつ私は迷うことなく扉を開けた。
――ガチャ
「グォォォォォォン! ハイッデグルヤヅミナゴロジダァァァァ」
大きな斧を持った、牛のような顔をした大男が血走った目で私に襲いかかってくる。
あーこりゃあ、なんにも知らなきゃ面食らっていたなぁ。
うーん、出来るだけ傷付けないようにか……。無茶ぶりだよ、そんなの。
ルシア
【侍スキル発動】
片手白羽取り
――パシッ
私はミノタウロスの斧を右手で掴んだ。見た目通り結構パワーあるなぁ。
「ヒュー、お見事ねぇ。貴女見てると、やっぱりちょっと引いちゃうわぁ」
ルシア→ミノタウロス
【忍者スキル発動】
金縛りの術
――ビィィィィン
知能の低い奴にはよく効くんだけど、どうかなぁ。
「アデェ? オデ、ウゴゲナイィィ」
ミノタウロスはあっさりと動けなくなった。
ありゃま、これがキチンと決まったのって3回目位だよ。ちょっと、嬉しい。
「貴女って、本当に化物じみてる力も凄いけど、器用なところがもっと恐ろしいわぁ。コイツを大人しくさせるのに、妾たちがどんなに苦労したかわからないでしょ」
フィーナは少し呆れ顔で私に話しかけた。
「それは褒めてるのですか?」
私はどうもバカにされている気がした。
「もちろんよぉ、最大級の賛辞を送ったつもりだけど……。あら、今日は早くおいでなすったわねぇ」
フィーナは天井に顔を向けた。
「やぁ、フィーナ。ミノタウロスを寝かしつけるタイムが最速記録だったねぇ。僕ぁ驚いたよー」
天井を見ると、ボロボロの布を纏った長い白髪の男が逆さまになって立っていた。
なんだ? あいつは。とりあえず不潔そうな奴だ。
というか、何故逆さまに立っている。
「ヘルメス、相変わらずねぇ。貴方に用事がある人間を連れてきたわぁ」
フィーナは私を紹介しようとした。
――ん? 今、ヘルメスって言ったよね? あの汚い白髪の男が神様だってぇ!?
私はフィーナに近づいて、肩を抱いた。
「ちょっと、近いわよ……。貴女って本当に天然のジゴロの才能あるんじゃなぁい? その顔で迫られたら大抵の娘はやられちゃうわよぉ」
フィーナはじぃーっと私の顔を見ながらそう答えた。
いや、そんなのはどうでもいいから、ターニャの件を……。
「うふふ、冗談よぉ。そんな焦った顔してたら上手くいくことも下手を打つことになるわぁ。とりあえず、紅茶のお代わりでも飲みながらゆっくりと聞きなさい。時間はまだあるのだから……」
フィーナはそう言うと、本当に紅茶を淹れに立ち上がった。そうだな、私が冷静さを失えばターニャに笑われてしまう。
★
フィーナに紅茶のお代わりを頂いた私は少し気持ちが落ち着いた気がした。
「ターニャの体を蝕む原因は、過剰な【加護の力】による負荷。ならばそれを取り除けばいい。つまり、ターニャから【加護の力】を奪い取れば彼女は助かる。【勇者】ではなくなるけどね」
フィーナが私に話した内容は実にシンプルだった。
しかし、【加護の力】を奪うなんてこと出来るのか? それに出来たとして、ターニャが【勇者】ではなくなるなんて……。いや、命の方がそんなことより大事に決まっている。
「フィーナさんは【加護の力】を奪い取る方法を知っているって訳ですね。教えてください、ターニャを死なせるわけにはいきません」
私はどうしてもターニャを助けたかった。
「まっ、貴女はそう言うわよね。簡単じゃないけど方法はある。【女神】が与える力を司る守護天使の長ならば、その反対の神も居るってわけ。奪う力を司る神、【ヘルメス】。彼ならターニャの【加護の力】を取り出すことが出来るはず」
フィーナは私の質問に答えてくれた。
「【ヘルメス】という神様なら可能ということですね。しかし、天界に喧嘩を売った私の頼みなど聞いていただけるかどうか……」
私は軽く絶望していた。神に助けなど求めても無駄だと思っていたからだ。
「大丈夫、彼は神の中では若手で癖の強いタイプだから【女神】と仲が悪いし、話はわかる方よ。ちょっと変わり者だけどぉ、貴女となら気が合うかもねぇ。貴女がどうしてもと言うのなら妾が彼の所まで案内してあげるわぁ」
フィーナは自信がありそうな感じだった。
そうなのか、だったらお願いしたい。
「どうしても、ターニャを救いたい。お願いします!」
「ふふっ、これで【魔界貴族】との戦いの借りが返せるわね。そうと決まれば早速行くわよ」
「【天界】ですか?」
「いいえ、彼はジプティアの古代遺跡に住居を構えているの。変わっているでしょ、地上に住んでいる神なんて」
フィーナの言うことには、ヘルメスはジプティア王国付近の砂漠にある古代遺跡に住んでいるそうだ。
そんな神様も居たのか。
☆
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というわけで、私とフィーナはヘルメスが住んでいるという遺跡の前までやってきた。
遺跡は砂漠のど真ん中にもかかわらず、周りに植物が生えていて神秘的な雰囲気の四角錐状の建物だった。
「フィーナさん、なんか怪しい雰囲気ですが……、魔獣でも居るのですか?」
「流石に鋭いわねぇ。実はここには【魔人ミノタウロス】がヘルメスの護衛として鎮座してるのよぉ。コイツがほんっとうに物覚えの悪いやつでねぇ。見境なく襲ってくるから、妾のパーティーの三人の【ケンロウ】が毎回大怪我しちゃって大変なのよぉ。相手にするのは疲れるから貴女に任せるわねぇ」
フィーナはいつもの調子でサラリと恐ろしいことを言った。
魔人ねぇ、話には聞いたことあるけど……。
「ほうら、この扉の先に魔人ミノタウロスが居るから身構えなさぁい。あとぉ、あんまりミノタウロスを傷付けたりするとヘルメスの機嫌損ねちゃうから注意してねぇ」
注意ってどうすりゃいいの? とか思いつつ私は迷うことなく扉を開けた。
――ガチャ
「グォォォォォォン! ハイッデグルヤヅミナゴロジダァァァァ」
大きな斧を持った、牛のような顔をした大男が血走った目で私に襲いかかってくる。
あーこりゃあ、なんにも知らなきゃ面食らっていたなぁ。
うーん、出来るだけ傷付けないようにか……。無茶ぶりだよ、そんなの。
ルシア
【侍スキル発動】
片手白羽取り
――パシッ
私はミノタウロスの斧を右手で掴んだ。見た目通り結構パワーあるなぁ。
「ヒュー、お見事ねぇ。貴女見てると、やっぱりちょっと引いちゃうわぁ」
ルシア→ミノタウロス
【忍者スキル発動】
金縛りの術
――ビィィィィン
知能の低い奴にはよく効くんだけど、どうかなぁ。
「アデェ? オデ、ウゴゲナイィィ」
ミノタウロスはあっさりと動けなくなった。
ありゃま、これがキチンと決まったのって3回目位だよ。ちょっと、嬉しい。
「貴女って、本当に化物じみてる力も凄いけど、器用なところがもっと恐ろしいわぁ。コイツを大人しくさせるのに、妾たちがどんなに苦労したかわからないでしょ」
フィーナは少し呆れ顔で私に話しかけた。
「それは褒めてるのですか?」
私はどうもバカにされている気がした。
「もちろんよぉ、最大級の賛辞を送ったつもりだけど……。あら、今日は早くおいでなすったわねぇ」
フィーナは天井に顔を向けた。
「やぁ、フィーナ。ミノタウロスを寝かしつけるタイムが最速記録だったねぇ。僕ぁ驚いたよー」
天井を見ると、ボロボロの布を纏った長い白髪の男が逆さまになって立っていた。
なんだ? あいつは。とりあえず不潔そうな奴だ。
というか、何故逆さまに立っている。
「ヘルメス、相変わらずねぇ。貴方に用事がある人間を連れてきたわぁ」
フィーナは私を紹介しようとした。
――ん? 今、ヘルメスって言ったよね? あの汚い白髪の男が神様だってぇ!?
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