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第八話
「る、ルミア……。これは如何にもやり過ぎじゃない?」
「へーき、へーきだよ。心配しなくて大丈夫だから」
ルミアのアドバイス通りにメイク用の魔導具を一式揃えさせたティアナ様。
そこから、ナッシュの母であるシェムロイ夫人に似せるためのメイクが始まったのですが、これが思った以上の出来栄えでして、ティアナ様は大変身されます。
これって、どうなのでしょうか。私もシェムロイ夫人に似ているといえば、似ている程度なのですが、ティアナ様のそれはそんな次元を超えていました。
ほとんどシェムロイ夫人を若返らせた姿と一緒と言って良いほどの見た目になっています。
最近の魔導具って凄いんですね。目つきや鼻の形まで違和感なく変えられるなんて――。
「これで本当にナッシュ様は私に振り向いて下さいますの? シェリルさんと同じ銀髪にしただけではありませんか」
「そ、そうですね。ナッシュ様は銀髪の女性が好きだと仰っていましたから、恐らく大丈夫かと」
私はティアナ様を直視出来ないでいました。
何だか自分の身代わりを作っているみたいで、いたたまれなくなってしまったのです。
それに見た目が変わったからといって、単純にティアナ様を好きになるのかイマイチ心配です。
「これで本当に上手くいくかしら?」
「そこは特に心配してなかったなぁ。だって、ナッシュ様ってさ。100%姉さんの見た目で婚約者にしたじゃない。性格を一ミリも考慮しないっていうのも珍しいけど、それだけ単純ってことだから」
確かにルミアの言うとおりです。
ナッシュ様は私の内面的なことに一切触れることはありませんでした。
良いところは全部見た目で、それは彼の母親と会う前から引っかかっていた部分ではあります。
「ティアナ様、分かっていらっしゃるとは存じますが、姉はティアナ様だからこそナッシュ様を諦めるのです。ですから――」
「分かってますとも。王家の人間は受けた恩は忘れません。この件が成功した暁には、シェリルさんやルミアさんには王家と縁が深い家柄の殿方との縁談が結べるように協力して差し上げましょう」
えっ? ルミア、あなたいつの間にそんな約束をしていたのですか?
厚かましいにも程がありますよ。ティアナ様にナッシュを押しつけるだけで十分ですのに、その上で恩を売ろうとするなんて――。
こうして、私たちはティアナ様とナッシュを引き合わせる段取りをして、この場を引き上げたのでした――。
◆ ◆ ◆
「何たる、不運! まさか、ティアナ様の離縁のタイミングと重なるとは!」
「流石にティアナ様に乗り換えると言われますと、私たちでは太刀打ち出来ませんもの。シェリルの婚姻を巡って王族と争うなんて馬鹿げています」
あっさり婚約破棄を申し出たナッシュに少しだけ苛立ちましたが、無事に私は彼と別れることが出来ました。
両親もティアナ様が相手では分が悪いと言わんばかりで不運だと諦めてくれています。
何でもナッシュはメイクアップしたティアナ様に「あなたこそ、本当の運命の人だ。僕は真実の愛に目覚めた」とか言って求婚したのだとか。
あまりにも節操がないと思いましたが、真実の愛という言葉が如何にも安っぽいということが分かっただけ勉強になりました。
「まぁまぁ、これが縁で私はティアナ様と友達になれたし、差し引きはプラスだよ」
「なぜ、ルミアがティアナ様と友人になったのだ?」
「うーん。私の人徳ってやつかな?」
「意味が分からん……」
そしてルミアは妙にティアナ様に気に入られて、相談相手として彼女の友人になったみたいです。
やっぱり、この子は恐ろしい妹ですね。敵に回したくない人です。
これで終わった。何もかも……。
そう思っていたのですが――。
「シェリルさん! 話が違うではないですか! ティアナ様が出てくるって意味が分かりません! お腹の子供を育ててくれる話はどうなったのですか!?」
まさか、シェムロイ夫人にまたもや突撃されるなんて。
いやいや、もう私はナッシュとは他人なんで関係ないですよね――?
「へーき、へーきだよ。心配しなくて大丈夫だから」
ルミアのアドバイス通りにメイク用の魔導具を一式揃えさせたティアナ様。
そこから、ナッシュの母であるシェムロイ夫人に似せるためのメイクが始まったのですが、これが思った以上の出来栄えでして、ティアナ様は大変身されます。
これって、どうなのでしょうか。私もシェムロイ夫人に似ているといえば、似ている程度なのですが、ティアナ様のそれはそんな次元を超えていました。
ほとんどシェムロイ夫人を若返らせた姿と一緒と言って良いほどの見た目になっています。
最近の魔導具って凄いんですね。目つきや鼻の形まで違和感なく変えられるなんて――。
「これで本当にナッシュ様は私に振り向いて下さいますの? シェリルさんと同じ銀髪にしただけではありませんか」
「そ、そうですね。ナッシュ様は銀髪の女性が好きだと仰っていましたから、恐らく大丈夫かと」
私はティアナ様を直視出来ないでいました。
何だか自分の身代わりを作っているみたいで、いたたまれなくなってしまったのです。
それに見た目が変わったからといって、単純にティアナ様を好きになるのかイマイチ心配です。
「これで本当に上手くいくかしら?」
「そこは特に心配してなかったなぁ。だって、ナッシュ様ってさ。100%姉さんの見た目で婚約者にしたじゃない。性格を一ミリも考慮しないっていうのも珍しいけど、それだけ単純ってことだから」
確かにルミアの言うとおりです。
ナッシュ様は私の内面的なことに一切触れることはありませんでした。
良いところは全部見た目で、それは彼の母親と会う前から引っかかっていた部分ではあります。
「ティアナ様、分かっていらっしゃるとは存じますが、姉はティアナ様だからこそナッシュ様を諦めるのです。ですから――」
「分かってますとも。王家の人間は受けた恩は忘れません。この件が成功した暁には、シェリルさんやルミアさんには王家と縁が深い家柄の殿方との縁談が結べるように協力して差し上げましょう」
えっ? ルミア、あなたいつの間にそんな約束をしていたのですか?
厚かましいにも程がありますよ。ティアナ様にナッシュを押しつけるだけで十分ですのに、その上で恩を売ろうとするなんて――。
こうして、私たちはティアナ様とナッシュを引き合わせる段取りをして、この場を引き上げたのでした――。
◆ ◆ ◆
「何たる、不運! まさか、ティアナ様の離縁のタイミングと重なるとは!」
「流石にティアナ様に乗り換えると言われますと、私たちでは太刀打ち出来ませんもの。シェリルの婚姻を巡って王族と争うなんて馬鹿げています」
あっさり婚約破棄を申し出たナッシュに少しだけ苛立ちましたが、無事に私は彼と別れることが出来ました。
両親もティアナ様が相手では分が悪いと言わんばかりで不運だと諦めてくれています。
何でもナッシュはメイクアップしたティアナ様に「あなたこそ、本当の運命の人だ。僕は真実の愛に目覚めた」とか言って求婚したのだとか。
あまりにも節操がないと思いましたが、真実の愛という言葉が如何にも安っぽいということが分かっただけ勉強になりました。
「まぁまぁ、これが縁で私はティアナ様と友達になれたし、差し引きはプラスだよ」
「なぜ、ルミアがティアナ様と友人になったのだ?」
「うーん。私の人徳ってやつかな?」
「意味が分からん……」
そしてルミアは妙にティアナ様に気に入られて、相談相手として彼女の友人になったみたいです。
やっぱり、この子は恐ろしい妹ですね。敵に回したくない人です。
これで終わった。何もかも……。
そう思っていたのですが――。
「シェリルさん! 話が違うではないですか! ティアナ様が出てくるって意味が分かりません! お腹の子供を育ててくれる話はどうなったのですか!?」
まさか、シェムロイ夫人にまたもや突撃されるなんて。
いやいや、もう私はナッシュとは他人なんで関係ないですよね――?
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