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第二話
「エルミリオン伯爵、伯爵夫人。ミラとの結婚を許してくれ。僕ら、愛し合っているんだ」
我が家の客間でミラと並んで結婚の許可を貰おうとするゲイツ。
両親はボーッとしている。それもそのはず、ゲイツは一時間前まで私の婚約者だったからだ。
「ゲイツ殿、君はアリアと婚約破棄してミラと婚約するつもりなのか? 侯爵殿はアリアを気に入ってくれたのだが」
「父上が結婚するのではない。大事なのは、二人の“愛”だろ? 僕はミラのことを愛している。彼女を幸せにするためなら、何でもするし、父上に怒られるなんて怖くない」
「まぁ、ゲイツ様! 素敵ですわ!」
「あはっ! あははは! 素敵かい!? 僕ってそんなに素敵かい!? あはははは!」
真剣にミラを愛しているというゲイツ。そして、そのセリフにうっとりするミラ。
はぁ、「幸せにするためなら何でもする」ときたか。
そんな大言壮語を吐くなんて、ゲイツはミラによっぽど夢中なのね。
「アリア、お前は良いのか? 婚約者だったゲイツ殿がミラと婚約しても」
「もちろん、良い気はしません。ですが、ことさら反対しようとも思いません。二人の結婚式に出席したくはありませんが」
「お姉様ったら、意地悪な言い方をしますのね。まるで、わたくしが悪者みたいではありませんか」
父に気持ちを聞かれた私は素直に思っていることを口にする。
正直言って、心が疲れてしまってどうでも良かった。簡単に自分のことを捨ててその妹に乗り換えようとする男のことなど考えたくもなかったから。
ミラと結婚したいのなら、どうぞご自由にという感じだ。
「まぁ、アリアなら他にも良縁はあろう。ゲイツ殿、ミラは君の前でどういう態度を取っているのか知らないが手のかかる娘だぞ。それでも、幸せにすると言った以上はまた別れるというようなことは許さないし、侯爵殿にもそれは了承してもらう。それが婚約の条件だ」
結局、父は折れて婚約を認めた。
決して別れないようにと念を押して……。
今まで縁談がいくつも立ち消えて、父も焦っていたのだろう。厄介なミラをゲイツが引き受けると約束するならば、それも良しだと考えたのだ。
「あはは! 何を言うかと思えばそんなことか。僕はこの麗しきミラを手放すはずがない! なんなら彼女と別れたら十億エルドの慰謝料を払う約束をしたっていい!」
「まぁ、ゲイツ様ぁ! 格好いいですわぁ! わたくし、惚れ直しましたぁ!」
「なは! なは! なははは! そ、そうかい!? 惚れ直したって!? なははは! よしっ! この場で契約書を書いてやろう! 血判つきでな!」
ふんぞり返ってデレデレした表情を見せながら、笑うゲイツ。
大丈夫なのかしら……。なんか、とんでもない契約書を書くって勝手に言って書いているし。
父も多額の慰謝料を払うという契約を結ぶことを拒否する理由はないので書かせている。
「それでは、僕は父上を説得してくるよ。ミラ、君との結婚が楽しみだ。大好きだよ」
「わたくしも、ゲイツ様を愛していますわ」
こうして、ゲイツ様は侯爵家へと帰っていきました。
やはり、この方はまだミラの本性を知らないみたいね。でも、もう私の婚約者ではないし、仮に彼が後悔しても関係ないわ。
それにミラも今までと違ってゲイツ様の前では本性を――。
「はぁ、あの豚男。暑苦しいったらありゃしませんわ。ちょっと優しく媚びるとつけ上がって、頭の中ケーキよりも甘いんじゃないかしら」
ゲイツ様が帰るなり、吐き捨てるようにそんなことを言うミラ。
彼は本当にこの子と結婚して幸せになるつもりなのかしら……。
我が家の客間でミラと並んで結婚の許可を貰おうとするゲイツ。
両親はボーッとしている。それもそのはず、ゲイツは一時間前まで私の婚約者だったからだ。
「ゲイツ殿、君はアリアと婚約破棄してミラと婚約するつもりなのか? 侯爵殿はアリアを気に入ってくれたのだが」
「父上が結婚するのではない。大事なのは、二人の“愛”だろ? 僕はミラのことを愛している。彼女を幸せにするためなら、何でもするし、父上に怒られるなんて怖くない」
「まぁ、ゲイツ様! 素敵ですわ!」
「あはっ! あははは! 素敵かい!? 僕ってそんなに素敵かい!? あはははは!」
真剣にミラを愛しているというゲイツ。そして、そのセリフにうっとりするミラ。
はぁ、「幸せにするためなら何でもする」ときたか。
そんな大言壮語を吐くなんて、ゲイツはミラによっぽど夢中なのね。
「アリア、お前は良いのか? 婚約者だったゲイツ殿がミラと婚約しても」
「もちろん、良い気はしません。ですが、ことさら反対しようとも思いません。二人の結婚式に出席したくはありませんが」
「お姉様ったら、意地悪な言い方をしますのね。まるで、わたくしが悪者みたいではありませんか」
父に気持ちを聞かれた私は素直に思っていることを口にする。
正直言って、心が疲れてしまってどうでも良かった。簡単に自分のことを捨ててその妹に乗り換えようとする男のことなど考えたくもなかったから。
ミラと結婚したいのなら、どうぞご自由にという感じだ。
「まぁ、アリアなら他にも良縁はあろう。ゲイツ殿、ミラは君の前でどういう態度を取っているのか知らないが手のかかる娘だぞ。それでも、幸せにすると言った以上はまた別れるというようなことは許さないし、侯爵殿にもそれは了承してもらう。それが婚約の条件だ」
結局、父は折れて婚約を認めた。
決して別れないようにと念を押して……。
今まで縁談がいくつも立ち消えて、父も焦っていたのだろう。厄介なミラをゲイツが引き受けると約束するならば、それも良しだと考えたのだ。
「あはは! 何を言うかと思えばそんなことか。僕はこの麗しきミラを手放すはずがない! なんなら彼女と別れたら十億エルドの慰謝料を払う約束をしたっていい!」
「まぁ、ゲイツ様ぁ! 格好いいですわぁ! わたくし、惚れ直しましたぁ!」
「なは! なは! なははは! そ、そうかい!? 惚れ直したって!? なははは! よしっ! この場で契約書を書いてやろう! 血判つきでな!」
ふんぞり返ってデレデレした表情を見せながら、笑うゲイツ。
大丈夫なのかしら……。なんか、とんでもない契約書を書くって勝手に言って書いているし。
父も多額の慰謝料を払うという契約を結ぶことを拒否する理由はないので書かせている。
「それでは、僕は父上を説得してくるよ。ミラ、君との結婚が楽しみだ。大好きだよ」
「わたくしも、ゲイツ様を愛していますわ」
こうして、ゲイツ様は侯爵家へと帰っていきました。
やはり、この方はまだミラの本性を知らないみたいね。でも、もう私の婚約者ではないし、仮に彼が後悔しても関係ないわ。
それにミラも今までと違ってゲイツ様の前では本性を――。
「はぁ、あの豚男。暑苦しいったらありゃしませんわ。ちょっと優しく媚びるとつけ上がって、頭の中ケーキよりも甘いんじゃないかしら」
ゲイツ様が帰るなり、吐き捨てるようにそんなことを言うミラ。
彼は本当にこの子と結婚して幸せになるつもりなのかしら……。
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