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第十四話
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アルフレート殿下が我が家に来られて早々に妹のミリムが何を間違ったのか彼に迫るという事態が発生し、私も両親も背筋が凍る思いをします。
初めてですね。両親が大声を出して、妹を強制退出させたのは……。
その後、長旅の疲れもあるだろうということで変な雰囲気が残るまま、挨拶もそこそこに殿下には王都にある要人専用の宿泊施設へと足を運んで貰いました。
そして、今日改めて会食という形で王都のレストランでアルフレート殿下とお話をする流れとなったのですが……。
「昨日は妹のミリムが粗相をしてしまい申し訳ありませんでした」
私はアルフレート殿下に昨日の妹の非礼を詫ました。
謝って許されることをしたとは思っていません。
ただ、あの場の空気は最悪でしたし、殿下も大層不快な思いをされたのは間違いありませんから、私は頭を下げずにはいられなかったのです。
「驚いたのは事実だけど、僕も悪かった。不快感を全面に出してしまっていたからね。どうやら気付かぬ内に疲れが溜まっていたらしい」
幸運にもアルフレート殿下はミリムの件を許してくれました。
自分も大人気なかったとまで仰って頂けて私もホッとします。
殿下の好意に甘えるわけにはいかないのですが、どうやら本当に怒っていないみたいです。
「だが、ミリムだっけ? 大丈夫なのかい? リーンハルトくんの婚約者ということは、将来は公爵夫人だ。公の場で何かやらかしたりしていないのか?」
真剣なトーンでアルフレート殿下は私にミリムが公の場で何かとんでもない事をやらかしていたのではと尋ねました。
そうですね。あの子のあの感じを見ればそう思っても仕方がありませんよね……。
将来は公爵夫人――そう考えると殿下の懸念どおり良い未来は想像出来ないかもしれません。
「彼女は見た目が良いですから。少々の失敗は許されてきたのです。両親も年齢が上がれば、直に大人になるだろうと言っていて特に注意もせず……。私の言葉はまるで聞いて貰えませんでしたので」
これまでも、ミリムは目上の方に対して失礼なことをしてしまい、その度に私はヒヤッとしていました。
さすがに先日ほどの無礼を働いたことはなかったのですが……。
ですから、私は注意を何度もしているのです。
ただ、ミリムの見た目と愛嬌で許された部分も多く……両親も大人になれば大丈夫だと根拠のないことを言っており、放置していました。
その結果、全然大丈夫では無かったのですが……。
「ふむ。いや、僕らの結婚式には君たちの家族も当然出席してもらう事になるし、エゼルスタ王国以外の近隣諸国の要人も招待するしね」
「ミリムを出席させるのは、止めておいた方が良さそうですね。残念ですが……」
「今から、矯正出来るなら構わないけど、その方が賢明じゃないかな? 君の家にも関わる話だし、僕も君には恥をかかせたくないし」
アルフレート殿下はミリムには結婚式を欠席してもらった方が良いとアドバイスされました。
私もそれには同意なのですが、両親が何と言うか……。きっとミリムも出席したいと泣き出すでしょうし。
今から矯正は出来るのでしたら、それはもちろんその方が良いのですが、あの子がきちんとした淑女としての嗜みを覚えるには如何せん時間が足りな過ぎます。
「分かりました。両親にミリムは結婚式に欠席させた方が良いと伝えます」
「もしも、言い難いのなら僕から言おうか?」
「いえ、そこまで殿下に手を煩わせるのは畏れ多いです」
妹に結婚式の出席を諦めさせるのに、わざわざアルフレート殿下に仰ってもらうなんて……我が家としても、とてもそんなお願いは出来ません。
とにかく、まずは両親に相談しましょう。ミリムも家の未来に関わると言われれば流石に文句は言わないかもしれませんから――。
初めてですね。両親が大声を出して、妹を強制退出させたのは……。
その後、長旅の疲れもあるだろうということで変な雰囲気が残るまま、挨拶もそこそこに殿下には王都にある要人専用の宿泊施設へと足を運んで貰いました。
そして、今日改めて会食という形で王都のレストランでアルフレート殿下とお話をする流れとなったのですが……。
「昨日は妹のミリムが粗相をしてしまい申し訳ありませんでした」
私はアルフレート殿下に昨日の妹の非礼を詫ました。
謝って許されることをしたとは思っていません。
ただ、あの場の空気は最悪でしたし、殿下も大層不快な思いをされたのは間違いありませんから、私は頭を下げずにはいられなかったのです。
「驚いたのは事実だけど、僕も悪かった。不快感を全面に出してしまっていたからね。どうやら気付かぬ内に疲れが溜まっていたらしい」
幸運にもアルフレート殿下はミリムの件を許してくれました。
自分も大人気なかったとまで仰って頂けて私もホッとします。
殿下の好意に甘えるわけにはいかないのですが、どうやら本当に怒っていないみたいです。
「だが、ミリムだっけ? 大丈夫なのかい? リーンハルトくんの婚約者ということは、将来は公爵夫人だ。公の場で何かやらかしたりしていないのか?」
真剣なトーンでアルフレート殿下は私にミリムが公の場で何かとんでもない事をやらかしていたのではと尋ねました。
そうですね。あの子のあの感じを見ればそう思っても仕方がありませんよね……。
将来は公爵夫人――そう考えると殿下の懸念どおり良い未来は想像出来ないかもしれません。
「彼女は見た目が良いですから。少々の失敗は許されてきたのです。両親も年齢が上がれば、直に大人になるだろうと言っていて特に注意もせず……。私の言葉はまるで聞いて貰えませんでしたので」
これまでも、ミリムは目上の方に対して失礼なことをしてしまい、その度に私はヒヤッとしていました。
さすがに先日ほどの無礼を働いたことはなかったのですが……。
ですから、私は注意を何度もしているのです。
ただ、ミリムの見た目と愛嬌で許された部分も多く……両親も大人になれば大丈夫だと根拠のないことを言っており、放置していました。
その結果、全然大丈夫では無かったのですが……。
「ふむ。いや、僕らの結婚式には君たちの家族も当然出席してもらう事になるし、エゼルスタ王国以外の近隣諸国の要人も招待するしね」
「ミリムを出席させるのは、止めておいた方が良さそうですね。残念ですが……」
「今から、矯正出来るなら構わないけど、その方が賢明じゃないかな? 君の家にも関わる話だし、僕も君には恥をかかせたくないし」
アルフレート殿下はミリムには結婚式を欠席してもらった方が良いとアドバイスされました。
私もそれには同意なのですが、両親が何と言うか……。きっとミリムも出席したいと泣き出すでしょうし。
今から矯正は出来るのでしたら、それはもちろんその方が良いのですが、あの子がきちんとした淑女としての嗜みを覚えるには如何せん時間が足りな過ぎます。
「分かりました。両親にミリムは結婚式に欠席させた方が良いと伝えます」
「もしも、言い難いのなら僕から言おうか?」
「いえ、そこまで殿下に手を煩わせるのは畏れ多いです」
妹に結婚式の出席を諦めさせるのに、わざわざアルフレート殿下に仰ってもらうなんて……我が家としても、とてもそんなお願いは出来ません。
とにかく、まずは両親に相談しましょう。ミリムも家の未来に関わると言われれば流石に文句は言わないかもしれませんから――。
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