14 / 53
第十四話
しおりを挟む
アルフレート殿下が我が家に来られて早々に妹のミリムが何を間違ったのか彼に迫るという事態が発生し、私も両親も背筋が凍る思いをします。
初めてですね。両親が大声を出して、妹を強制退出させたのは……。
その後、長旅の疲れもあるだろうということで変な雰囲気が残るまま、挨拶もそこそこに殿下には王都にある要人専用の宿泊施設へと足を運んで貰いました。
そして、今日改めて会食という形で王都のレストランでアルフレート殿下とお話をする流れとなったのですが……。
「昨日は妹のミリムが粗相をしてしまい申し訳ありませんでした」
私はアルフレート殿下に昨日の妹の非礼を詫ました。
謝って許されることをしたとは思っていません。
ただ、あの場の空気は最悪でしたし、殿下も大層不快な思いをされたのは間違いありませんから、私は頭を下げずにはいられなかったのです。
「驚いたのは事実だけど、僕も悪かった。不快感を全面に出してしまっていたからね。どうやら気付かぬ内に疲れが溜まっていたらしい」
幸運にもアルフレート殿下はミリムの件を許してくれました。
自分も大人気なかったとまで仰って頂けて私もホッとします。
殿下の好意に甘えるわけにはいかないのですが、どうやら本当に怒っていないみたいです。
「だが、ミリムだっけ? 大丈夫なのかい? リーンハルトくんの婚約者ということは、将来は公爵夫人だ。公の場で何かやらかしたりしていないのか?」
真剣なトーンでアルフレート殿下は私にミリムが公の場で何かとんでもない事をやらかしていたのではと尋ねました。
そうですね。あの子のあの感じを見ればそう思っても仕方がありませんよね……。
将来は公爵夫人――そう考えると殿下の懸念どおり良い未来は想像出来ないかもしれません。
「彼女は見た目が良いですから。少々の失敗は許されてきたのです。両親も年齢が上がれば、直に大人になるだろうと言っていて特に注意もせず……。私の言葉はまるで聞いて貰えませんでしたので」
これまでも、ミリムは目上の方に対して失礼なことをしてしまい、その度に私はヒヤッとしていました。
さすがに先日ほどの無礼を働いたことはなかったのですが……。
ですから、私は注意を何度もしているのです。
ただ、ミリムの見た目と愛嬌で許された部分も多く……両親も大人になれば大丈夫だと根拠のないことを言っており、放置していました。
その結果、全然大丈夫では無かったのですが……。
「ふむ。いや、僕らの結婚式には君たちの家族も当然出席してもらう事になるし、エゼルスタ王国以外の近隣諸国の要人も招待するしね」
「ミリムを出席させるのは、止めておいた方が良さそうですね。残念ですが……」
「今から、矯正出来るなら構わないけど、その方が賢明じゃないかな? 君の家にも関わる話だし、僕も君には恥をかかせたくないし」
アルフレート殿下はミリムには結婚式を欠席してもらった方が良いとアドバイスされました。
私もそれには同意なのですが、両親が何と言うか……。きっとミリムも出席したいと泣き出すでしょうし。
今から矯正は出来るのでしたら、それはもちろんその方が良いのですが、あの子がきちんとした淑女としての嗜みを覚えるには如何せん時間が足りな過ぎます。
「分かりました。両親にミリムは結婚式に欠席させた方が良いと伝えます」
「もしも、言い難いのなら僕から言おうか?」
「いえ、そこまで殿下に手を煩わせるのは畏れ多いです」
妹に結婚式の出席を諦めさせるのに、わざわざアルフレート殿下に仰ってもらうなんて……我が家としても、とてもそんなお願いは出来ません。
とにかく、まずは両親に相談しましょう。ミリムも家の未来に関わると言われれば流石に文句は言わないかもしれませんから――。
初めてですね。両親が大声を出して、妹を強制退出させたのは……。
その後、長旅の疲れもあるだろうということで変な雰囲気が残るまま、挨拶もそこそこに殿下には王都にある要人専用の宿泊施設へと足を運んで貰いました。
そして、今日改めて会食という形で王都のレストランでアルフレート殿下とお話をする流れとなったのですが……。
「昨日は妹のミリムが粗相をしてしまい申し訳ありませんでした」
私はアルフレート殿下に昨日の妹の非礼を詫ました。
謝って許されることをしたとは思っていません。
ただ、あの場の空気は最悪でしたし、殿下も大層不快な思いをされたのは間違いありませんから、私は頭を下げずにはいられなかったのです。
「驚いたのは事実だけど、僕も悪かった。不快感を全面に出してしまっていたからね。どうやら気付かぬ内に疲れが溜まっていたらしい」
幸運にもアルフレート殿下はミリムの件を許してくれました。
自分も大人気なかったとまで仰って頂けて私もホッとします。
殿下の好意に甘えるわけにはいかないのですが、どうやら本当に怒っていないみたいです。
「だが、ミリムだっけ? 大丈夫なのかい? リーンハルトくんの婚約者ということは、将来は公爵夫人だ。公の場で何かやらかしたりしていないのか?」
真剣なトーンでアルフレート殿下は私にミリムが公の場で何かとんでもない事をやらかしていたのではと尋ねました。
そうですね。あの子のあの感じを見ればそう思っても仕方がありませんよね……。
将来は公爵夫人――そう考えると殿下の懸念どおり良い未来は想像出来ないかもしれません。
「彼女は見た目が良いですから。少々の失敗は許されてきたのです。両親も年齢が上がれば、直に大人になるだろうと言っていて特に注意もせず……。私の言葉はまるで聞いて貰えませんでしたので」
これまでも、ミリムは目上の方に対して失礼なことをしてしまい、その度に私はヒヤッとしていました。
さすがに先日ほどの無礼を働いたことはなかったのですが……。
ですから、私は注意を何度もしているのです。
ただ、ミリムの見た目と愛嬌で許された部分も多く……両親も大人になれば大丈夫だと根拠のないことを言っており、放置していました。
その結果、全然大丈夫では無かったのですが……。
「ふむ。いや、僕らの結婚式には君たちの家族も当然出席してもらう事になるし、エゼルスタ王国以外の近隣諸国の要人も招待するしね」
「ミリムを出席させるのは、止めておいた方が良さそうですね。残念ですが……」
「今から、矯正出来るなら構わないけど、その方が賢明じゃないかな? 君の家にも関わる話だし、僕も君には恥をかかせたくないし」
アルフレート殿下はミリムには結婚式を欠席してもらった方が良いとアドバイスされました。
私もそれには同意なのですが、両親が何と言うか……。きっとミリムも出席したいと泣き出すでしょうし。
今から矯正は出来るのでしたら、それはもちろんその方が良いのですが、あの子がきちんとした淑女としての嗜みを覚えるには如何せん時間が足りな過ぎます。
「分かりました。両親にミリムは結婚式に欠席させた方が良いと伝えます」
「もしも、言い難いのなら僕から言おうか?」
「いえ、そこまで殿下に手を煩わせるのは畏れ多いです」
妹に結婚式の出席を諦めさせるのに、わざわざアルフレート殿下に仰ってもらうなんて……我が家としても、とてもそんなお願いは出来ません。
とにかく、まずは両親に相談しましょう。ミリムも家の未来に関わると言われれば流石に文句は言わないかもしれませんから――。
156
あなたにおすすめの小説
私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。
ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。
しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。
もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが…
そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。
“側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ”
死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。
向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。
深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは…
※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。
他サイトでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。
アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。
もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい
水空 葵
恋愛
一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。
それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。
リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。
そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。
でも、次に目を覚ました時。
どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。
二度目の人生。
今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。
一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。
そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか?
※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。
7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜
腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。
「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。
エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。
幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?
ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」
「はあ……なるほどね」
伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。
彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。
アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。
ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。
ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。
婚約破棄されました。
まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。
本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。
ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。
習作なので短めの話となります。
恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。
ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。
Copyright©︎2020-まるねこ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる