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第二十二話(ミリム視点)
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リーンハルト様、酷いですわ。
わたくしが運命の人と結ばれるように尽力すると仰ったのに、いきなりわたくしの顔を打つなんて……。
最低です。まだ、ジンジンしますし、顔に傷が付いたらどうしてくれるのでしょう……。
「……ちょ、ちょっと、殿下。待ってください……」
「いいよ、君が僕の婚約者に喧嘩を売るなら。こっちにも考えがあるから……!」
「ひぃっ……!」
あらあらあらあらぁ?
リーンハルト様ったら、何やらアルフレート様に怒られて腰を抜かしていますわね。
――ざまぁみろですの。
わたくしの顔を叩いた報いですわ。
うふふふ。アルフレート様ったら、わたくしの為に怒って下さったのですね。
頬が痛くて、何を言っていたのか聞こえませんでしたがきっとそうですわ。
やっぱり、アルフレート様はシャルロットお姉様でなくて、わたくしを愛して下さっている。
そうです。そうに決まっていますわ。
だって、シャルロットお姉様は不細工ですし難しい呪文のような言葉ばかり吐いて話していて退屈ですし、楽器が得意なだけの詰まらない女性ですもの。
「どうした? リーンハルトくん。もう用事が無いのならここから出て行ってくれないかな? 僕はこれからシャルロットとの結婚について打ち合わせなくてはならないことが沢山あるんだ」
アルフレート様、格好良く悪人であるリーンハルト様を裁いているのですね。
それもわたくしのために……。はぁぁぁぁ、これが真実の愛なのでしょう。
見た目も格好良くて、頭も良くて、しかも王子様だなんて、やっぱりミリムはアルフレート様のお嫁さんになりたいですぅ。
「……は、はい! ど、どうか! どうか寛大な措置を……! アルフレート殿下ぁ……」
「…………」
うふふふふ、リーンハルト様、涙目で格好悪いですの。
こんなにも格好悪い暴力男なんかよりも、アルフレート様のほうが1億万倍魅力的ですわ。
決めました。
わたくし、もう一度アルフレート様にちゃんと告白します。とびきりの可愛い顔で――!
必ず、絶対に、どんな殿方も振り返るような表情で……!
きっと、アルフレート様だってわたくしのことを好きになるに決まっていますわ。
だって、お姉様の顔を見てくださいな。ミリムはあんな顔で生まれたら生きていけませんもの。うふふふ。
「あ、あのぉ。アルフレートさ――」
「で、ミリムは修道院に送ってくれるんだね。あー、良かったよ。彼女は僕の結婚式のゲストには相応しくないと思ったから、アーゼル家の名誉もこれで守れるという訳だ」
「えっ……?」
えっ? えっ? えっ? えっ?
あ、アルフレート様、わたくしが修道院に送られる話をどうしてそんな笑顔で飲み込みますの?
「正直、心配していたんだ。アーゼル伯爵はミリムに甘いと聞いていたし。こんな子を厳格なパーティーの席に出席させるのなんて、野生の獣を放し飼いにするのと同じだからね」
こ、こんな子? 変ですわ。アルフレート様がわたくしのことを、こんなにも悪く言われるなんて……。
お、お姉様もそれに頷いている? ま、まさか。シャルロットお姉様がわたくしの悪口をアルフレート様に吹き込んで――。
お、お姉様……。酷いですわ。
わたくしが幸せになることを邪魔するために、嘘八百をアルフレート様に告げ口するなんて……!
「あ、アルフレート様ぁ。お待ち下さい! わたくし、わたくし、アルフレート様が仰るような酷い女ではありませんの!」
「ふーむ。では、聞くが、ミリムよ……。我が父、アルビニア国王の名前は知っているか?」
「……えっ? 王様って名前がありますの?」
「アーゼル伯爵、至急この娘を僕の視界から遠ざけてくれ。今のを聞いてなかったことにして欲しかったらな」
ちょ、ちょっと! お父様!
どうして、わたくしが部屋の外に追い出されなくてはなりませんの!?
わ、わたくしが、わたくしが、何をしたと言いますの!?
わたくしが運命の人と結ばれるように尽力すると仰ったのに、いきなりわたくしの顔を打つなんて……。
最低です。まだ、ジンジンしますし、顔に傷が付いたらどうしてくれるのでしょう……。
「……ちょ、ちょっと、殿下。待ってください……」
「いいよ、君が僕の婚約者に喧嘩を売るなら。こっちにも考えがあるから……!」
「ひぃっ……!」
あらあらあらあらぁ?
リーンハルト様ったら、何やらアルフレート様に怒られて腰を抜かしていますわね。
――ざまぁみろですの。
わたくしの顔を叩いた報いですわ。
うふふふ。アルフレート様ったら、わたくしの為に怒って下さったのですね。
頬が痛くて、何を言っていたのか聞こえませんでしたがきっとそうですわ。
やっぱり、アルフレート様はシャルロットお姉様でなくて、わたくしを愛して下さっている。
そうです。そうに決まっていますわ。
だって、シャルロットお姉様は不細工ですし難しい呪文のような言葉ばかり吐いて話していて退屈ですし、楽器が得意なだけの詰まらない女性ですもの。
「どうした? リーンハルトくん。もう用事が無いのならここから出て行ってくれないかな? 僕はこれからシャルロットとの結婚について打ち合わせなくてはならないことが沢山あるんだ」
アルフレート様、格好良く悪人であるリーンハルト様を裁いているのですね。
それもわたくしのために……。はぁぁぁぁ、これが真実の愛なのでしょう。
見た目も格好良くて、頭も良くて、しかも王子様だなんて、やっぱりミリムはアルフレート様のお嫁さんになりたいですぅ。
「……は、はい! ど、どうか! どうか寛大な措置を……! アルフレート殿下ぁ……」
「…………」
うふふふふ、リーンハルト様、涙目で格好悪いですの。
こんなにも格好悪い暴力男なんかよりも、アルフレート様のほうが1億万倍魅力的ですわ。
決めました。
わたくし、もう一度アルフレート様にちゃんと告白します。とびきりの可愛い顔で――!
必ず、絶対に、どんな殿方も振り返るような表情で……!
きっと、アルフレート様だってわたくしのことを好きになるに決まっていますわ。
だって、お姉様の顔を見てくださいな。ミリムはあんな顔で生まれたら生きていけませんもの。うふふふ。
「あ、あのぉ。アルフレートさ――」
「で、ミリムは修道院に送ってくれるんだね。あー、良かったよ。彼女は僕の結婚式のゲストには相応しくないと思ったから、アーゼル家の名誉もこれで守れるという訳だ」
「えっ……?」
えっ? えっ? えっ? えっ?
あ、アルフレート様、わたくしが修道院に送られる話をどうしてそんな笑顔で飲み込みますの?
「正直、心配していたんだ。アーゼル伯爵はミリムに甘いと聞いていたし。こんな子を厳格なパーティーの席に出席させるのなんて、野生の獣を放し飼いにするのと同じだからね」
こ、こんな子? 変ですわ。アルフレート様がわたくしのことを、こんなにも悪く言われるなんて……。
お、お姉様もそれに頷いている? ま、まさか。シャルロットお姉様がわたくしの悪口をアルフレート様に吹き込んで――。
お、お姉様……。酷いですわ。
わたくしが幸せになることを邪魔するために、嘘八百をアルフレート様に告げ口するなんて……!
「あ、アルフレート様ぁ。お待ち下さい! わたくし、わたくし、アルフレート様が仰るような酷い女ではありませんの!」
「ふーむ。では、聞くが、ミリムよ……。我が父、アルビニア国王の名前は知っているか?」
「……えっ? 王様って名前がありますの?」
「アーゼル伯爵、至急この娘を僕の視界から遠ざけてくれ。今のを聞いてなかったことにして欲しかったらな」
ちょ、ちょっと! お父様!
どうして、わたくしが部屋の外に追い出されなくてはなりませんの!?
わ、わたくしが、わたくしが、何をしたと言いますの!?
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