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第二十七話
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ミリムを妻に迎えたいというエルムハルト様は公爵家の分家筋に養子に出すようにと要求しました。
これは両親との縁を切らせたいが為でしょう。
私はどちらにしろ、彼女を迎え入れるのは止めたほうが良いと思ったのですが。
「いやいや、エルムハルト殿。それは無理な話です。大事な娘を養子になど出せませんし、それなら結婚だって許しません」
父は当然、意味を失う公爵家との縁談を拒否します。
このような縁談は許されないと、自分たちが損をするばかりだと。
つい先日、アルフレート殿下に同じことを仄めかされて、青ざめていた父ですが……まだ婚約すらしていないエルムハルト様には強気みたいです。
「そうでしょうか? 私はいいお話だと思ったのですが。多分、もうミリムさんに縁談の話は来ませんよ。噂の伝わるスピードは早いですし、いつかは王室にも届くかも――」
「――っ!? ミリムの件が王室まで? そ、それはいかん! エルムハルト様、あなたという方は……」
エルムハルト様の脅迫とも取れる言葉。
ミリムを差し出さねば、彼女がアルフレート殿下の前で醜態を晒したことを噂を広げると言っているみたいですが、そこまでしたいものでしょうか。
どう考えてもミリムを迎えるメリットは感じられず、リーンハルト様へのあてつけとしか思えないのです。
彼の見た目に幼さが残っているからでしょうか。間違った選択を正しいと信じている、いや信じようと頑張っているだけのような気がします。
「エルムハルト様、もしもリーンハルト様への感情が原因でミリムを妻にと思っているのであれば、止められた方が賢明です。将来を見据えて冷静にお考えください」
私はエルムハルト様に個人的な恨みの感情でミリムと結婚しない方が良いとアドバイスしました。
この方がリーンハルト様を恨んでいることは明白です。ですが、その恨みの気持ちを結婚に結びつけるのは間違っていまし、きっと幸せにはなりません。
「シャルロットさん……。ずっと優秀な姉でいたあなたには私の気持ちは分かりませんよ。二番目に生まれたというだけで、あの兄の下で居続けなければならない屈辱を受け続けた私の気持ちなど」
ギラついた目で私を見据えるエルムハルト様。
この方には私はずっと順風満帆の人生を歩んでいたように見えるみたいです。
残念ですが、私がどんな言葉をかけても響きそうにありませんね……。
「シャルロット、諦めなよ。彼は心を病んでいる。僕らの言葉は届かない。君にも僕にも、重圧とか苦労とかは確かにあった。だが、それを論じても、ね」
アルフレート殿下は生まれながらに王太子でした。
そんな自分の言い分はエルムハルト様には届かないと口を閉じたようです。
「まぁ、君たちは時間があるんだ。ゆっくりと話し合うが良い。僕はシャルロットを連れて帰るまで、もう間がないんでね。そろそろ、良いかい?」
「これは失礼致しました。そして、お見苦しい所をお見せして申し訳ありません。では、今日のところは引き上げます。お時間を取らせて申し訳ありません」
長話をしても、今日中に結論など出ないだろうと読んだアルフレート殿下は、エルムハルト様にゆっくりと話し合うようにアドバイスしました。
彼もそれを受け入れて帰ろうと立ち上がります。
「ふぅ、エルムハルト様にも困ったものだ。殿下、すみません。ゴタゴタを見せてしまって」
「ああ、まったくだ。やはりシャルロットをこの家に置いておく訳にはいかないな。一刻も早くアルビニアに連れて行こうと決意したよ。言っておくが、僕は噂を撒くなんてまどろっこしいことはしないぞ。彼女を守るためなら何でもする」
アルフレート殿下はそう言い放つと、私を抱き上げました。
えっ? ええーっと、いきなり殿下の腕の中に!?
そして、彼はそのまま私を抱えて家を出て――さっさと馬車の中に入れます。
「荷物などは後で取りに行かせよう」
私の思考が追いつかないうちに、馬車は出発してしまいました――。
これは両親との縁を切らせたいが為でしょう。
私はどちらにしろ、彼女を迎え入れるのは止めたほうが良いと思ったのですが。
「いやいや、エルムハルト殿。それは無理な話です。大事な娘を養子になど出せませんし、それなら結婚だって許しません」
父は当然、意味を失う公爵家との縁談を拒否します。
このような縁談は許されないと、自分たちが損をするばかりだと。
つい先日、アルフレート殿下に同じことを仄めかされて、青ざめていた父ですが……まだ婚約すらしていないエルムハルト様には強気みたいです。
「そうでしょうか? 私はいいお話だと思ったのですが。多分、もうミリムさんに縁談の話は来ませんよ。噂の伝わるスピードは早いですし、いつかは王室にも届くかも――」
「――っ!? ミリムの件が王室まで? そ、それはいかん! エルムハルト様、あなたという方は……」
エルムハルト様の脅迫とも取れる言葉。
ミリムを差し出さねば、彼女がアルフレート殿下の前で醜態を晒したことを噂を広げると言っているみたいですが、そこまでしたいものでしょうか。
どう考えてもミリムを迎えるメリットは感じられず、リーンハルト様へのあてつけとしか思えないのです。
彼の見た目に幼さが残っているからでしょうか。間違った選択を正しいと信じている、いや信じようと頑張っているだけのような気がします。
「エルムハルト様、もしもリーンハルト様への感情が原因でミリムを妻にと思っているのであれば、止められた方が賢明です。将来を見据えて冷静にお考えください」
私はエルムハルト様に個人的な恨みの感情でミリムと結婚しない方が良いとアドバイスしました。
この方がリーンハルト様を恨んでいることは明白です。ですが、その恨みの気持ちを結婚に結びつけるのは間違っていまし、きっと幸せにはなりません。
「シャルロットさん……。ずっと優秀な姉でいたあなたには私の気持ちは分かりませんよ。二番目に生まれたというだけで、あの兄の下で居続けなければならない屈辱を受け続けた私の気持ちなど」
ギラついた目で私を見据えるエルムハルト様。
この方には私はずっと順風満帆の人生を歩んでいたように見えるみたいです。
残念ですが、私がどんな言葉をかけても響きそうにありませんね……。
「シャルロット、諦めなよ。彼は心を病んでいる。僕らの言葉は届かない。君にも僕にも、重圧とか苦労とかは確かにあった。だが、それを論じても、ね」
アルフレート殿下は生まれながらに王太子でした。
そんな自分の言い分はエルムハルト様には届かないと口を閉じたようです。
「まぁ、君たちは時間があるんだ。ゆっくりと話し合うが良い。僕はシャルロットを連れて帰るまで、もう間がないんでね。そろそろ、良いかい?」
「これは失礼致しました。そして、お見苦しい所をお見せして申し訳ありません。では、今日のところは引き上げます。お時間を取らせて申し訳ありません」
長話をしても、今日中に結論など出ないだろうと読んだアルフレート殿下は、エルムハルト様にゆっくりと話し合うようにアドバイスしました。
彼もそれを受け入れて帰ろうと立ち上がります。
「ふぅ、エルムハルト様にも困ったものだ。殿下、すみません。ゴタゴタを見せてしまって」
「ああ、まったくだ。やはりシャルロットをこの家に置いておく訳にはいかないな。一刻も早くアルビニアに連れて行こうと決意したよ。言っておくが、僕は噂を撒くなんてまどろっこしいことはしないぞ。彼女を守るためなら何でもする」
アルフレート殿下はそう言い放つと、私を抱き上げました。
えっ? ええーっと、いきなり殿下の腕の中に!?
そして、彼はそのまま私を抱えて家を出て――さっさと馬車の中に入れます。
「荷物などは後で取りに行かせよう」
私の思考が追いつかないうちに、馬車は出発してしまいました――。
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