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Ep9 調査内容
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私はアレンデールの勧誘を受け入れました。
正直、一人では手詰まりなのは確かですし、この男は気に入りませんが皇王一族への恨みは私よりも強そうに見受けられましたので、協力者としては不足はなさそうです。
もちろん、手放しに信頼までは出来ませんが……。
そして、何よりセリスがこの話を聞いても私の味方をしてくれると言ってくれたのは嬉しかったです。
彼女が側で一緒に戦ってくれると言ってくれたから、私は首を縦に振ることが出来たのです。
「先程の貴方とリルアさんの話から察するに、私を利用して皇王に近付こうと企んでいるようですが、どのような絵を描いているのか話していただけますか?」
私は率直にアレンデールの策とやらを聞いてみようと思いました。
自分の正体を話すリスクを背負ってまで私に近づいたのです。それなりに自信のある作戦があるはずなのです。
「おっ、乗り気じゃあないですか。もちろん教えて差し上げますよ。その前に説明することが何点かありますが……。お手洗いは――」
「それはもういいです!」
「アレンっ、今度はセリスさんに殴ってもらうよ」
「ん、ウチが本気で拳を使うと骨が折れるより凄いことになるけど良いのかい?」
アレンデールは私達に一斉に捲し立てられ、さすがに軽口は吐けなくなったようです。
「皆さんが結託して僕にいじめを……。あと、セリスさんは拳を収めてください。怖いですから……」
そんなことを言いながらやれやれという仕草のポーズをとっていました。この方は一々ふざけないと死んじゃう病気か何かなのでしょうか?
「コホンっ、僕とリルアちゃんは皇族の弱点を探ろうと独自に調査していました。当然、皇太子くんや、その婚約者である貴女のことも調べましたよ。貴女は非の打ち所がなかったです。ミスパーフェクトと言われるだけあります。まぁ、ランニングに出掛けるフリをしてモンブランを時々買い食いしているのはご愛嬌ですかねぇ」
アレンデールはクスリと笑いながら余計な一言を加えました。
なっなっなんで、そのことをご存知なのですか――誰も知らないと思ってましたのに――。
「くっ、お嬢の唯一の楽しみをウチら以外が知っていたとは――。尾行に気づかなかったウチら使用人たちの不覚だ――」
セリスは心底悔しかったのか、顔を歪ませて膝を叩きました。
ええーっ、セリスは知っていたのですか? というより、今の口ぶりだと使用人全員が知っているような――。
全然、あとを付けられているのに気が付きませんでした――。
「そりゃあ、お嬢に気付かれるような尾行をする人間にアルティメシア家の使用人は務まらねぇです」
セリスは誇らしげな顔をしていましたが、釈然としませんでした。
「続けますよぉ? 皇太子くんの方はまぁ、叩けば埃しか出ませんでしたねー。婚約中にも関わらずお構いなしにそこら中の女の子に声掛けまくり、遊びまくりの良いご身分でしたよー。まぁ、皇太子なんでホントに良い身分なんですけどねぇ。とにかく、ここに攻めるポイントがありそうだと、僕は睨んで調査を進めたわけです。ハニートラップとか簡単にひっかかってくれそうですし――」
アレンデールは得意気な顔をして説明を続けます。
でも、ちょっと待ってください。
「皇太子は婚約中にクラリスという女以外とも関係していたのですか?」
「ええ、関係を肉体関係というなら、5人。キスくらいでしたら12人ですねぇ。そりゃあもう、お盛んでした。特に引いたのは2人同時に――ったい! リルアちゃん?」
アレンデールにリルアは顔を赤くして、肘鉄を食らわせました。
「だっ誰もそんな生々しいところまで、聞いてないっての。グレイス様の気持ちを考えろっこの“人でなし”!」
「そうですかねぇ。面白いネタだったのですが、残念です。とにかく、僕は皇太子から攻めていけば皇族にダメージを与えられると確信していました。あの女を見るまでは――」
アレンデールの声のトーンが低くなりました。
あの女――、大体察しはつきます。もちろん――。
「そう、クラリス=フリージア。巷では聖女、女神の化身、などと言われています。普通はそう言ったのって比喩表現に過ぎないのですが、彼女に関してはそのまんまの意味ととっても差し支えないでしょう。彼女の出現で僕の計画も一筋縄じゃあいかなくなったのです」
アレンデールは肩を落としてクラリスを恐れるような発言をしました。
確かに彼女の演説?からの逆転には驚きましたが、だからといって人外のような印象は受けませんでした。
悪魔の血で魔法が使えるアレンデールの方が私は余程怖いのですが……。
「彼女、恐ろしい方ですよぉ。最後に聖女ちゃんのお話をしましょう。彼女こそが僕の計画の1番の障害にして1番のキーポイントなのですから――」
クラリス=フリージア。聖女と呼ばれる可憐な美少女。
それを恐ろしい方と評するアレンデールはゆっくりと話し始めました。
正直、一人では手詰まりなのは確かですし、この男は気に入りませんが皇王一族への恨みは私よりも強そうに見受けられましたので、協力者としては不足はなさそうです。
もちろん、手放しに信頼までは出来ませんが……。
そして、何よりセリスがこの話を聞いても私の味方をしてくれると言ってくれたのは嬉しかったです。
彼女が側で一緒に戦ってくれると言ってくれたから、私は首を縦に振ることが出来たのです。
「先程の貴方とリルアさんの話から察するに、私を利用して皇王に近付こうと企んでいるようですが、どのような絵を描いているのか話していただけますか?」
私は率直にアレンデールの策とやらを聞いてみようと思いました。
自分の正体を話すリスクを背負ってまで私に近づいたのです。それなりに自信のある作戦があるはずなのです。
「おっ、乗り気じゃあないですか。もちろん教えて差し上げますよ。その前に説明することが何点かありますが……。お手洗いは――」
「それはもういいです!」
「アレンっ、今度はセリスさんに殴ってもらうよ」
「ん、ウチが本気で拳を使うと骨が折れるより凄いことになるけど良いのかい?」
アレンデールは私達に一斉に捲し立てられ、さすがに軽口は吐けなくなったようです。
「皆さんが結託して僕にいじめを……。あと、セリスさんは拳を収めてください。怖いですから……」
そんなことを言いながらやれやれという仕草のポーズをとっていました。この方は一々ふざけないと死んじゃう病気か何かなのでしょうか?
「コホンっ、僕とリルアちゃんは皇族の弱点を探ろうと独自に調査していました。当然、皇太子くんや、その婚約者である貴女のことも調べましたよ。貴女は非の打ち所がなかったです。ミスパーフェクトと言われるだけあります。まぁ、ランニングに出掛けるフリをしてモンブランを時々買い食いしているのはご愛嬌ですかねぇ」
アレンデールはクスリと笑いながら余計な一言を加えました。
なっなっなんで、そのことをご存知なのですか――誰も知らないと思ってましたのに――。
「くっ、お嬢の唯一の楽しみをウチら以外が知っていたとは――。尾行に気づかなかったウチら使用人たちの不覚だ――」
セリスは心底悔しかったのか、顔を歪ませて膝を叩きました。
ええーっ、セリスは知っていたのですか? というより、今の口ぶりだと使用人全員が知っているような――。
全然、あとを付けられているのに気が付きませんでした――。
「そりゃあ、お嬢に気付かれるような尾行をする人間にアルティメシア家の使用人は務まらねぇです」
セリスは誇らしげな顔をしていましたが、釈然としませんでした。
「続けますよぉ? 皇太子くんの方はまぁ、叩けば埃しか出ませんでしたねー。婚約中にも関わらずお構いなしにそこら中の女の子に声掛けまくり、遊びまくりの良いご身分でしたよー。まぁ、皇太子なんでホントに良い身分なんですけどねぇ。とにかく、ここに攻めるポイントがありそうだと、僕は睨んで調査を進めたわけです。ハニートラップとか簡単にひっかかってくれそうですし――」
アレンデールは得意気な顔をして説明を続けます。
でも、ちょっと待ってください。
「皇太子は婚約中にクラリスという女以外とも関係していたのですか?」
「ええ、関係を肉体関係というなら、5人。キスくらいでしたら12人ですねぇ。そりゃあもう、お盛んでした。特に引いたのは2人同時に――ったい! リルアちゃん?」
アレンデールにリルアは顔を赤くして、肘鉄を食らわせました。
「だっ誰もそんな生々しいところまで、聞いてないっての。グレイス様の気持ちを考えろっこの“人でなし”!」
「そうですかねぇ。面白いネタだったのですが、残念です。とにかく、僕は皇太子から攻めていけば皇族にダメージを与えられると確信していました。あの女を見るまでは――」
アレンデールの声のトーンが低くなりました。
あの女――、大体察しはつきます。もちろん――。
「そう、クラリス=フリージア。巷では聖女、女神の化身、などと言われています。普通はそう言ったのって比喩表現に過ぎないのですが、彼女に関してはそのまんまの意味ととっても差し支えないでしょう。彼女の出現で僕の計画も一筋縄じゃあいかなくなったのです」
アレンデールは肩を落としてクラリスを恐れるような発言をしました。
確かに彼女の演説?からの逆転には驚きましたが、だからといって人外のような印象は受けませんでした。
悪魔の血で魔法が使えるアレンデールの方が私は余程怖いのですが……。
「彼女、恐ろしい方ですよぉ。最後に聖女ちゃんのお話をしましょう。彼女こそが僕の計画の1番の障害にして1番のキーポイントなのですから――」
クラリス=フリージア。聖女と呼ばれる可憐な美少女。
それを恐ろしい方と評するアレンデールはゆっくりと話し始めました。
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