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第四話
「はぁ……、殿下も困ったものだ。薄々こうなるのかもしれないと思っていたが、まさか我が家に直接来られるとは……」
レイヴン殿下が帰られて、ようやく朝食が取れると食卓につくと……父がため息をつきました。
待ってください。彼が復縁を求めてくることを予測していたということですか? 一体なぜ……。
「オリビア、お前は気付いておらんかもしれぬが……殿下が縁談を持ちかけたとき、他の縁談話も数多くあったのだよ。もちろん、殿下からの求婚を無碍に出きるべくもないから、他の話は理由を添えて断ったがね……」
「それは存じませんでしたが、その話が何か……」
「殿下は数多くのライバルからお前を勝ち取ったと思われた。社交界でも、お前を射止めたと持て囃されたらしい。我が家の格式は高くないが、それでもあの頃のお前はそれほど人気があったからね」
人気があった……? 下流貴族の田舎者だと思われて好奇の目でよく見られていたとは思っていましたが……。
「レイヴン殿下はそれまで奥手で大人しいタイプだったのだが、それから自信を持たれたとのことだ」
確かに出会ったばかりの彼と比べて、日を追うごとに自信のあるような顔つきになっていったような気もします。
しかし、それが悪いことだとは思えないのですが……。
「――周りが彼を持ち上げたことも原因らしいが、いつしか彼は……もしかしたら、オリビアよりも素晴らしい女性も射止めることが出来るかもしれないと考えられた。そして、王子という身分を利用して……何度も浮気をされたようだ」
「それならば、婚約破棄をされた後に他の方とご結婚されればよろしいのでは?」
父の話で殿下が浮気に走られた理由は分かりましたが、それで二年後に復縁しようとされている理由が分かりません。
彼は「真実の愛を見つけた」と仰って一方的に婚約破棄をされたのですから……。
「浮気とは隠れてするから燃え上がるものらしい。オリビア、お前と婚約破棄をして間もなく……殿下はその浮気相手の令嬢と婚約もせずに別れている。さらに、オリビアとの婚約を解消したことを勿体ないと周りに言われたりもしたそうだ。――彼は友人たちにまだお前とは別れていない……“オリビアが泣いて縋って来るから待っていろ”というようなことを言っており、実際にまだお前が彼のことを愛していると思い込んでいたらしい」
殿下が見つけられたのは真実の愛ではなかったみたいです。
それにしても私が彼のことを愛しているなんてどうして考えられるのでしょう。
あれだけのことをしたら、普通は嫌われても仕方ないと考えそうなものですが……。
「時々いるのだよ。特に男に多いが好意というモノは不変であると考えている者が……。程度の差こそあるが、自分が心変わりしようと何をしようと……過去に好意を持たれれば、今も同じだと思い込んでいるのだ。殿下は特にその気質が強いと見受けられる」
「そ、そんなことって。それでは、殿下の中で私はあのときのまま……」
「お前の考えているとおりだよ。殿下は本気で自分のしたことでお前から嫌悪感を持たれているとは一切考えていない。本気でお前から復縁したいと頼み込んでくると信じていたのだろう」
――しかし、現実はそうはなりませんでした。
ですから、あのときの殿下はあんなに激怒されたということでしょうか……。自分の信じていた世界が壊されたから……。
こうなると、本当に怖いです。王族であるレイヴン殿下の怒りを買っているのなら……我が家は大変なことになるかとしれません。
「私から陛下に何とかしてもらえるように話をさせてもらおう。……それよりもオリビア。ルーク殿との縁談は進めさせてもらっても良いのか? レイヴン殿下との話もあるから、早めに婚約まで漕ぎ付ければ守って貰うことも出来ると思うが」
父は国王陛下に話をしてくださると約束をして下さり、ルークとの縁談についての話に話題を変えられました。
ルークは理想的な方だと思います。優しくて思いやりがあって、教養も豊富で……。
しかしながらレイヴン殿下と出会ったとき、私は彼の本質を見抜けませんでした。
今日のことがあって、私は男性と深く関わることがまた怖くなってしまったのです。
ですが、レイヴン殿下によってこんな気持ちにさせられるのも嫌でたまりません。
もっと強くならなくては――。
新しいスタートを歩むと決めたのですから――。
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