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第二十話
「エミリア・ネルシュタイン様、ボルメルン王室が正式に貴女を国賓として招待したいと申し出ております」
イリーナがボルメルンに向かって二週間ほど経ったある日、私はメーリンガム宮殿の応接室でボルメルンから使者と会いました。
私を国賓にする……ということは、イリーナさんが――。
「はい。エミリア様は無実の罪で国家を追放されたと……冤罪をかけられたと、ボルメルン国王が直々に認められました。そのためエミリア様の名誉を著しく傷付け、命を危険に晒したことを深くお詫び申し上げたいと謝罪の機会を所望しております」
クラリス様のことですから、根回しも完璧だと思っていたのですが……。
イリーナはどうやって私の冤罪を晴らしたのでしょう……。
それにしても、国王陛下が直々に私に謝罪とは……。確かに息子であるニック殿下の不祥事とも取れますからあの義理堅い陛下ならそういう行動に出てもおかしくありません……。
クラリス様はどうしているのでしょう……。この一連の流れでネルシュタイン家に何か変なことが起こらなければ良いのですが……。
「エミリア様、イリーナはあれで軽薄ではありません。あれを信じて上げてください」
私の護衛として仁王立ちしているクラウドはイリーナを信じてほしいと口にされました。
そうですね。無実だということを認めさせたイリーナのことです。冷静に立ち回ってくれていると信じましょう。
「私からも頼みます。陛下にお会いになってください。既に聖女クラリスは偽の証人を作り、エミリア様に不利な証言をさせたとして捕らえておりますし、雑な調査でエミリア様を罪人にしたニック殿下は勘当されて追放処分が下る予定になっています。もちろん、二人にも直接エミリア様に謝罪をさせますので、厚かましい願いですが……是非ボルメルンへ……」
ボルメルンからの使者はよほど陛下に言われているのか、頭を地面に擦りつけるようにして下げられています。
彼が悪いわけではないですから、申し訳なくなってきました。
「顔を上げてください。元よりボルメルンには行くつもりでした。結界もきちんと張りますから、ご安心を」
私は使者の方に故郷に行くという意志を示しました。
そもそも冤罪を晴らす目的がそれでしたので、何の迷いもありません。
「私が護衛として同行しましょう。今のこちらの治安ならノエル様の護衛は残りの者で何とか務まりますから」
クラウドが私の護衛として付いてくることになりました。
信じられません。もう二度と故郷の土を踏めないと思っていましたのに、こうして戻ることが出来るなんて……。
「クラウドさんが一緒なら心強いです。お願いします」
「お任せください」
こうして、私とクラウドは共にデルナストロ山脈を超えてボルメルン王国に向かいました。
道中、魔物たちの襲撃が幾度となくありましたが……私たちの相手ではなく――私は無事に故郷の土を踏みしめることが出来たのです。
「ボルメルン王国です。ああ、クラウドさん。私は帰ってきました」
「おめでとうございます。エミリア様、短い間でしたが……貴女という巫女を護衛出来たことを誇りに思います」
えっ……? クラウドは何を言ってるのでしょう。帰ってきた歓びを口にしてるだけなのですが、今生の別れのような口ぶりです。
まさか――。
「あの、クラウドさん。私はメーリンガムの巫女を辞めるつもりはないんですけど」
「えっ? そ、そうなのですか? しかし、せっかくの故郷に……」
「こっちの結界を貼り終えたら戻ります。時々、里帰りは許して欲しいですけどね」
私は自分を助けてくれたメーリンガム王国への恩返しを忘れていません。
ですから、この国を救ったあとは故郷から出るつもりでいました。
私たちは使者の方の案内に従ってボルメルンの王宮に向かいます。
そして、久しぶりに再会しました。あのときと比べて見る影もないくらい病的にやつれて、目つきが悪くなっている元ご主人様に――。
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