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苦手な科目
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いっちゃんとひーちゃんは今日もお茶会をしながら宿題をしていた。
「ひーちゃんって苦手な科目無さそうだよね」
「あるよ」
「え、なんだろ?」
「当ててみて」
いっちゃんはひーちゃんの苦手科目を当てるために行動に移すが、なかなかうまくいかない…。
「ここの問題わからないんだけど、わかる?」
今日もお茶会をしながら、数学の宿題に取り組む。
今日のお茶会は私が昆布茶とローマ字チョコ、ひーちゃんが桃の紅茶とブロッククッキーを持ちよった。
「ここは、y= ~の形を作るから、2つの式を利用する。その前に、これにこれを「あっ、ここにこれを代入して、1-x+y=2になるね」」
「そう、あってる」
私のノートにひーちゃんが矢印や代入という文字を書き足していく。
「これをy =~にしたいから、= の隣に移行して、整理すると「y=x+1」となる」
彼の説明を聞きながら私は頷きつつ、さらさらとシャープペンをノートの上で走らせる。
夢中で解いていく。時々口にだして確認をしながら。
「そう。そのyをこれに代入して、xを先に解いていく」
「代入… こう?」
「そう、あってる」
「じゃあ、これをこうして…、これは移行して…」
「そう、それで?」
さらさらと私のシャープペンは止まらない。
「あ、ここの計算はわかる!こうでしょ」
「あってる。これでxは解けた。最後にyにxの答えを代入していって」
彼のシャープペンの先端が先に作ったy=x+1を指し示す。
それの式をxを代入した形で書いていく。
「あ!解けた!」
「そう、あってる。良くできました」
答えが解けたときの爽快感とやりきったという感覚が一気に来た。
ひーちゃんの方を見ると少しだけ笑って頭を優しく撫でてくる。
「ひーちゃんくすぐったいよ」
「いっちゃん頑張ったからね、ご褒美」
「……ひーちゃんの説明がわかりやすかったからできたからで… ひーちゃん、教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
彼の笑顔は貴重だ。小さい頃はよく笑っていたが、小学校くらいから表情筋があまり動かなくなった。なんというか、無表情になった。どうしてそうなったのかわからず心配していたけど、高校生になって少しだけど表情筋が働くようになって少しだけど笑うようになったから安心した。
「ひーちゃんって苦手な科目無さそうだよね」
「あるよ」
「え、なんだろ?」
「当ててみて」
「うーん…」
当ててみてって言われても、本当にわからない。クラス違うし、普段の様子が観察できないから当てようもない。
「わからん」
「次までの宿題だね」
「えー、教えてくれないの?」
「俺のこと、当ててみて」
「よし、わかった。絶対当ててみせる!」
「ん、頑張って」
そう言った彼の周りに花が飛んでるように見えるのは気のせいだろうか。
昆布茶を飲んで ふぅ ため息をつく彼。
「ひーちゃんは、なんでそんなに勉強できるの?」
「…将来身を固めておきたいから」
「身、を?」
「そう、身を」
「将来ボディビルマーになりたい…のか?」
ムキムキのひーちゃんを妄想する。
ひーちゃんは、ムキムキというよりかは細マッチョの方がよく似合う気がする。むしろかっこいいから目指した方がいいと思うな。
「なんでそうなる」
「だって身を固めるって」
「体じゃなくて、就職とかの方」
「あ、そっちね」やっぱり?
「うん」
「ひーちゃん偉いな、ちゃんと将来のこと考えているんだね。私はまだふわふわしてる状態だよ」
「これから見つかるよ。時間は無限だからね」
「ん、焦らず探してみる」
「いっちゃんのペースでね」
「うん。さて、やりますかぁ」
おかしを食べながらまた問題にとりかかる。まだまだ宿題の問題は残っている。
教室が違うため、観察するなら休み時間と昼休み、あとは放課後くらい。
ひょこっとひーちゃんのいる教室を覗いてみる。
1限目の10分休み。
彼は友達と話をしている様子。何が苦手って、これじゃあわからないな。
「誰かに何か用事?呼ぼうか?」
覗いてるところに気づかれたのか男子が声をかけてきた。
「あ、あの、ひー…羽嶋くんを呼んでほしいんだけど…」
「羽嶋?いいよ。羽嶋ー!」
あ、こっちに気づいた。私の方に歩いてくる。
「なに?」
「なんかこの子が羽嶋に用があるんだって」
「…そう。教えてくれてありがとう、秋目」
「どういたしまして」
そう言って男子こと秋目くんはひーちゃんのいた席に行ってしまった。
「どうしたの?」
彼は私と目を合わせようとしゃがんで聞く姿勢をとる。
「あの…えっと、ね?」
「うん」
なんかひーちゃんの周りに花飛んでない?
「……な、なんでもない、かなー」
「ん?」
彼が小首を傾げて不思議そうな顔をしてくる。
「失礼しましたっ!」
私は彼から逃げるように少し走ってその場から離れた。
密かに観察しに来てるのに、バレてどうすんの💧
次こそはと2限目の10分休み。
ひょこっとひーちゃんの様子を覗き見る。
彼のクラスは次は移動教室みたいで、各々準備をしつつ賑やかな話し声が教室中を満たしている。
………あれ?ひーちゃんいない?
「陽向さん、どうしたの?」
「ひっ!」
後ろから聞こえたひーちゃんの低くてかっこいい声優さんような声が至近距離から…
「あ、あはは…、次って移動教室なの?」
「うん、理科室」
「そ、そうなんだ…えっと、気を付けてね(?)」
「ありがとう、陽向さんもね」
「うん…じゃあね!」
また逃げるように少し走ってしまった。
なんでこうもたて続けにバレるかなぁ!
3限目4限目と10分休みの度に彼の観察に行くが、何故か全部バレてしまい、誤魔化して逃げ帰るを繰り返している。情けなさ過ぎる!
お昼休み。は、流石に観察には行かない。休みたいもん。
「樹、今日変だよ」
「変じゃないよぅ」
友達に心配されてしまった。
お弁当を食べながらうーんと唸る。
友達と向い合わせでご飯を食べているが、どうやら悩んでいることが顔に出ていたらしい。
「10分休みの度に3組に行ってるからさ、なんかあるのかなって思うでしょ普通」
「まぁ…あるけど………。ねぇ」
「ん?」
「相手の苦手な科目を知るにはどうしたらいいのかなぁ」
「そりゃあ、相手に聞くのが早いと思うけど」
「教えないって言われたら?」
「諦める」
「それじゃダメなんだよー」
「マジでなしたのよ?」
「実はさー」
私の幼馴染みが、苦手な科目何か当ててみ?っていう話題になってねという話をした。もちろんひーちゃんのことは伏せて。
「なるほどねぇ。で?それを探るために3組に通っていると」
「うん」
「ということは、樹の幼馴染みがこの学校に通ってて、3組に所属しているということがわかった訳だが!(わくわく)」
「やっぱり今の話題忘れてください!」
「だめー、もう覚えちゃったもんねー」
「今から忘れさせてやるぅ!」
「んな!?お弁当に入ってたバランと卵焼きでなにする気だ!?」
わちゃわちゃと騒いでお昼休みが終わってしまった。なんたる不覚!!
めげずに5限目の10分休み。
次は私が移動教室のためあまり居られないけど、一応覗く。
「羽嶋ならトイレだよー」
1限目の10分休みの時に声をかけてきた秋目くんが、扉近くの席に座ったまままた声をかけてきた。
「そうなんだ」
「なんか休み時間の度に来てるけど、もしかして告白とか?」
「違うよ」
「本当に?」
「うん」
「ならいいけど、あいつモテるし、告白とか日常茶飯事よ?」
「そうなの?」
「そう!んで、その度に断ってるんだ。俺、好きな人がいて、その人のこと一生傍で支えて「何の話してるの?」」
秋目くんの言葉を遮るようにひーちゃんがいつの間にか私の後ろに立って私の両耳を塞いでいた。
「何って、彼女に羽嶋ならトイレに行ってていないよって教えてあげてたところだよ。あとは世間話?」
「そう… ならいいんだけど」
「そんで羽嶋はそれ何してんの?」
まだ私の両耳を塞いだままの状態で話をしていた。
「……いや。なんとなく」
「なんとなくでいたずらするなよな」
「陽向さん、ごめんね」
「ん、うん、大丈夫」
思考停止してるけど、私の顔、赤くなって、ないよね(?)
思考停止したので、とりあえず自分の教室に戻って移動教室の場所に向かった。
なんか耳が痺れてるような感覚になんとなくこしょばゆいようななんなのかわからなくなって、授業中「ふえぇぇぇ……(困惑)」って口から変な声が漏れて、隣にいた友達がふいた後、笑いをこらえてたのは覚えてる。
月曜日から金曜日までほぼ毎日教室の中を覗いたり、ひーちゃんに見つかっては言い訳して逃げるように去っていったりと悪戦苦闘してたけど、とうとう恐れていたことが起きた。
「あんた、灯野くんのこと好きなの?」
学校でひーちゃんの側にいつもいて、彼に一所懸命話しかけている女子、佐中(さなか)さんがイライラしながら私を睨み怒り口調で教室の近くで話しかけてきた。
「ももんちゃん…」
「ももんって呼ばないで!!💢」
本名 佐中百々(もも)。ももんは何故か佐中さんのあだ名らしいが、本人は好きではないらしい。可愛いのに ももんちゃん。
「なんであんたにあだ名言われなきゃいけないのよ!ムカつく!💢」
「だってももんちゃん可愛いんだもん」
「可愛いくない!嫌よそんな変な名前。そうじゃなくて、今あんたの話してるの!あんた灯野君の何!?」
「えっと… なんだろ?」
「意味わかんない。二度と私の灯野君に近づかないで!」
「それは、困るよももんちゃん」
「ももんって呼ばないで!!💢」
「何の話してるの?ももんちゃん💕」
「げっ!のぶゆき」
教室のドアからひょっこり顔を出してももんちゃん好き好きオーラ全開で話しかけてきた。
「昔みたいにのんちゃんって呼んでー」
「呼ばない!あんたには関係ないの、引っ込んでなさい」
「あ、秋目君だ」
「やっほー陽向さん、今日も羽嶋探し?」
「うん」
「羽嶋なら今そこにいるよー」
「「え?」」
ももんちゃんと私で同時に振り向くとそこにひーちゃんが立っていた。
「?」
何の話してるの?という顔で小首を傾げて不思議そうな顔をしている。
「灯野君💕」
ももんちゃんはひーちゃんの腕を掴もうとしたが、ぐいっと後ろから秋目君に腰を引かれて抱き寄せられて後ろにさがってしまった。
「ちょっ、何すんのよ!放してよ!」
「ももんちゃんは俺のだもん!浮気はダメだもん!」
「はぁ!?誰があんたなんか、浮気じゃないわよ!放し…放して!もぅのんちゃんってば!」
「今のんちゃんって呼んでくれたー💕」
「い、言ってない!聞き間違いよ!!」
わちゃわちゃとしている2人を見ながら仲良しだねとひーちゃんと話していた。
「秋目と佐中は幼馴染みで、家が隣だって」
「そうなんだ。ふふ ももんちゃん、可愛い(*´∀`*)」
秋目君に抱き寄せられて顔を赤くして騒いでいる彼女の方を見てほほえましく思う。
「ちょっと!ももんって呼ばないでよ!」
私は彼女に再び怒られてしまった。
きてしまった土曜日。
苦手科目がわからないまま土曜日になってしまった。
いつも通りの日常。2人でベッドに入って即寝。
いやいやいやこれじゃダメでしょおおぉぉぉ!⤵️Ⅲ orz Ⅲ
とうとうやってきてしまった日曜日。
私たちはお茶会をしながら宿題をしていた。
「宿題、わかった?」
「…………ぜんぜんわからなかった。ひーちゃんわかりにくいんだもん」
「そっかぁ、しょうがないね (._.)シュン…」
「ごめんて💦」
「でも、知ろうとして俺のこと考えてくれてたでしょ」
「うん。ひーちゃんのことで頭いっぱいだったよ」
「じゃあ、いいよ。それで」
「何が?いいの?」
「宿題。答え出なくてもそれでいいよって」
「えー!私が気になるよ!答えなんだったの?」
「見つけるまでお預け」
「そんなぁ」
ひーちゃんの嬉しそうに少し笑う顔を見て、私もつられて笑ってしまった。
☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕
「ここの問題わからないんだけど、わかる?」
お茶会をしながら、いっちゃんと数学の宿題に取り組む。
いっちゃんが昆布茶飲みながらとブロッククッキーを食べてる。今回頑張ってクッキー作ってよかった。
今週の金曜日に連立方程式のおさらいが宿題に出た。
覚えているかの小テストをするらしい。先生は少し変わっていて、時々中学校の問題を毎週金曜日に小テストにしたりする。高校の問題ももちろん小テストするが、毎週金曜日に行うため、気が抜けられない。成績に加味するとか言ってたし。
「ここは、y= ~の形を作るから、2つの式を利用する。その前に、これにこれを「あっ、ここにこれを代入して、1-x+y=2になるね」」
「そう、あってる」
彼女のノートに矢印や代入という文字を書き足していく。
「これをy =~にしたいから、= の隣に移行して、整理すると「y=x+1」となる」
彼女が夢中で解いている横顔を見つめる。
真剣な顔。頑張ってる。
「そう。そのyをこれに代入して、xを先に解いていく」
「代入… こう?」
「そう、あってる」
「じゃあ、これをこうして…、これは移行して…」
「そう、それで?」
とんとん拍子に解いていく。
「あ、ここの計算はわかる!こうでしょ」
「あってる。これでxは解けた。最後にyにxの答えを代入していって」
シャープペンの先端で先に作ったy=x+1を指し示す。
それの式をxを代入した形で書き足す。
ここ、いっちゃんがつまずいてたところ。
「あ!解けた!」
「そう、あってる。良くできました」
ムフー✨️とやりきった顔をこちらに向けている。
うん、かわいい。
思わずいっちゃんの頭を撫でる。
「ひーちゃんくすぐったいよ」
「いっちゃん頑張ったからね、ご褒美」
「……ひーちゃんの説明がわかりやすかったからできたからで… ひーちゃん、教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
まぁ、まだ問題は残ってるけどね。
「ひーちゃんって苦手な科目無さそうだよね」
唐突に言われて、ん? ってなった。
「あるよ」
「え、なんだろ?」
「当ててみて」
「うーん…」
あごに手を当てて目を閉じて考える素振りをする。
今俺のこと考えてくれてる。嬉しい(*´-`)
「わからん」
「次までの宿題だね」
「えー、教えてくれないの?」
「俺のこと、当ててみて」
「よし、わかった。絶対当ててみせる!」
「ん、頑張って」
その間俺のこと考えてくれるんだなと思うとすごく嬉しい。頬が緩む。
昆布茶を飲んでため息をつき、心を落ち着かせる。
「ひーちゃんは、なんでそんなに勉強できるの?」
「…将来身を固めておきたいから」
「身、を?」
「そう、身を」
「将来ボディビルマーになりたい…のか?」
ボディビルマー?
「なんでそうなる」
「だって身を固めるって」
「体じゃなくて、就職とかの方」
固め違いだよ、いっちゃん。
「あ、そっちね」
「うん」
「ひーちゃん偉いな、ちゃんと将来のこと考えているんだね。私はまだふわふわしてる状態だよ」
「これから見つかるよ。時間は無限だからね」
「ん、焦らず探してみる」
「いっちゃんのペースでね」
焦っちゃダメだからね。
「うん。さて、やりますかぁ」
いっちゃんが再び問題にとりかかり始めた。
1限目の10分休み。
友達と話をしていると「羽嶋ー!」と秋目に呼ばれた。
あれ?いっちゃんだ。どうしたんだろ。
「なに?」
「なんかこの子が羽嶋に用があるんだって」
「…そう。教えてくれてありがとう、秋目」
「どういたしまして」
そう言って秋目は俺の席に行ってしまった。
「どうしたの?」
いっちゃんと目を合わせようとしゃがんで聞く姿勢をとる。
「あの…えっと、ね?」
「うん」
俺に会いに来てくれたの、嬉しい(*´-`)
「……な、なんでもない、かなー」
「ん?」
いっちゃんの目が泳いでいる。嘘ついてるのはわかるけど、何か用事があって来たんじゃないの??
「失礼しましたっ!」
走っていなくなってしまった。
いっちゃん…。
話しかけてくれたのは嬉しかったけど、もうちょっと話していたかった。
2限目の10分休み。
あれ?いっちゃんまた来てる。教室覗いてる。
次は移動教室のため、準備を終えた俺はトイレに行って、今帰ってきたところだった。
キョロキョロと小さい頭を動かしてドアのところから覗き見ている状態で誰かを探している様子だった。
「陽向さん、どうしたの?」
「ひっ!」
後ろから声をかける。彼女からは仄かに香る彼女の家の香り。俺の好きな匂い。
「あ、あはは…、次って移動教室なの?」
「うん、理科室」
「そ、そうなんだ…えっと、気を付けてね(?)」
「ありがとう、陽向さんもね」
「うん…じゃあね!」
そう言ってまた少し走って行ってしまった。
面白いけど、少し寂しい気もする。もっと話せたらいいのに。
3限目4限目と10分休みの度にいっちゃんが俺のことを見に来ていた。俺は嬉しいけど、いっちゃんの目的がわからない。用事はなんだろう?
休み時間の度にチラリとドアの方を見るようになった。
いっちゃん来てないかなって。
お昼休み。
いっちゃん来ない…。お昼一緒に食べれたらなと思ったけど、来ない…。
「陽向さん来ないね」
秋目に言われてハッとする。まさか秋目もいっちゃん来るの楽しみにしてたのかな。
「………そうだね」
いつの間に仲良くなったんだろうか。俺の知らないところでいっちゃんと…。
悶々としてたら、お弁当の卵焼きをひょいと友達の伊野に盗られてしまった。
今日はいっちゃん特製お弁当。俺の楽しみをこいつは盗った。
「なーに悩んでるの?」
「今ので悩みから怒りに変わった」
「なんで?」
「俺の卵焼き…」
「ごめんて。美味しそうだったから、つい。でも本当に美味しいね」
「ん、そうでしょ」
いっちゃん特製お弁当を褒められて悪い気はしない。
イラッとはしたが、許す。
「お詫びに今度卵焼き作ってくるよ」
え。いらない。
「あ、じゃあ、俺も作ってくるよ」
え。いらないんだけど。
「羽嶋も作ってきて」
うわ…厄介なことに巻き込まれた。ってか、お詫びどこいった。
「………今度ね」
渋々了承したが、断れなかった。2人の目がキラキラしてお願い✨️って目向けてくるし。はぁ、断りにくいわ。
お昼が終わって、少し微睡む5限目。
よりによって聞いてて心地よい声の政治の先生の授業だった。聞き取りやすくて子守唄のように聞こえてくる先生の声にうとうとし始める生徒多発生。
負けじと粘っていると、数学の先生が「ちょっといいですか?」と政治の先生のもとを訪ねてきた。
「はい、なんでしょうか」
「お知らせがありまして「先生」」
「はい、どうしましたか羽嶋くん」
先生たちの話をしてるところまで歩いていって話に割り込む。
「その用事、俺が行きます」
「……は?なんて?」
数学の先生が不思議そうな顔をしている。
「会議ですよね?俺が行くので、先生は授業進めててください」(訳: 廊下の空気吸って、眠気覚まししてきます。)
「お前…」
数学の先生は俺の言葉にピンときたのか、俺の頭を撫でて、「ただのプリント配布のお知らせだから、出なくていーの。あとお前が持ってるの政治の教科書じゃなくて地理の教科書だから。教科書変えとけよ」
「はい」
俺はキリッとした顔で席に戻る。
席に戻ると政治の先生の声でやられつつあった周りが今度は震えだした。
数学の先生に、周り震えてる。もしかして寒気ですかね?と目で訴えると先生は頭をふるふると横に振った。
なんだ違うのか。じゃあ皆眠くて震えてるのかな。
5限目の10分休み。
トイレに行って、戻ってくるとまた秋目といっちゃんが話をしていた。
何話して…
「~つモテるし、告白とか日常茶飯事よ?」
「そうなの?」
「そう!んで、その度に断ってるんだ。俺、好きな人がいて、その人のこと一生傍で支えて「何の話してるの?」」
秋目が余計なことを話していることに気がついて急いでいっちゃんの両耳を手で塞いだ。
「何って、彼女に羽嶋ならトイレに行ってていないよって教えてあげてたところだよ。あとは世間話?」
「そう… ならいいんだけど」
「そんで羽嶋はそれ何してんの?」
彼女の両耳を塞いだままだったの忘れてた。
「……いや。なんとなく」
小さくて柔らかくていい匂い。かわいい。
「なんとなくでいたずらするなよな」
「陽向さん、ごめんね」
痛くなかった?
「ん、うん、大丈夫」
そう、よかった。
少し顔赤いけど大丈夫かな💦
6限目、数学。
先生に当てられて黒板に答えを書いた。ついでに簡単な耳の絵も書いた。
「絵うまいのはわかったが、今は生物の授業じゃないぞ💧」
先生はそう言って困った顔をしつつ携帯で写真を撮ってから、とりあえずうめぇからこれは生物の先生に見せる。任せとけって言ってた。
席に着くとまた周りが少し震えてたから、今度こそ寒気ですかね?と目で訴えると先生はまた頭を横に振る。
じゃあなんで震えてるんだろうか。今度聞いてみようと思った。
いっちゃんは、月曜日から金曜日までほぼ毎日教室の中を覗きにきたり、俺と向き合うと言い訳して走って去っていったりと不可解な行動が多かった。
金曜日の6限目。
数学の先生に呼び出されて、悩みなら聞くぞ?って言われてしまった。
「悩みですか…。じゃあ、意中の女性と結婚するならどうプロポーズしたらいいと思いますか」
「お前…、この俺と恋バナしようってのか」
「悩み聞いてくれるって先生が」
「言ったけど、それが結構濃いめの恋バナだとは思わんだろうよ」
「そうですかね」
「よし!こうなったらとことん付き合うぞ!今日は難しいが、今度の休み、俺と恋バナしような」
「え、丁重にお断りさせていただきます」
「あ?こら、丁重にお断りするな!決まりな、来週予定合わせするから」
「丁重にお断…」
「断るな」
相談する相手を間違ってしまったかもしれない。選択のミスに後悔をした。
解放されて教室に向かうと廊下の方でわちゃわちゃとと声が聞こえてきた。
「昔みたいにのんちゃんって呼んでー」
「呼ばない!あんたには関係ないの、引っ込んでなさい」
「あ、秋目君だ」
「やっほー陽向さん、今日も羽嶋探し?」
いっちゃん、俺を探してくれてたの?
「うん」
「羽嶋なら今そこにいるよー」
「「え?」」
佐中といっちゃんが同時に俺の方に振り向く。
「?」
何の話かな?
「灯野君💕」
佐中は俺の腕を掴もうとしてきたが、ぐいっと後ろから秋目に抱き寄せられて後ろにさがる。
「ちょっ、何すんのよ!放してよ!」
「ももんちゃんは俺のだもん!浮気はダメだもん!」
今日も好きだって言ってる。諦めないのが秋目のいいところだと俺は思う。
「はぁ!?誰があんたなんか、浮気じゃないわよ!放し…放して!もぅのんちゃんってば!」
「今のんちゃんって呼んでくれたー💕」
「い、言ってない!聞き間違いよ!!」
赤くなる佐中と嬉しさ全開の秋目を見ていると、いっちゃんが、あの2人仲良しだねと俺にこそっと言ってきた。
「秋目と佐中は幼馴染みで、家が隣だって」
「そうなんだ。ふふ ももんちゃん、可愛い(*´∀`*)」
ももん呼び、佐中と仲良くなったのかな??
「ちょっと!ももんって呼ばないでよ!」
俺は、秋目とわちゃわちゃしつついっちゃんに怒る佐中はかなり器用だと思った。
怒られてもにこにこしてる彼女の横顔を見て、かわいいと思った。
土曜日。
いつも通りの日常。2人でベッドに入って即寝。
朝起きたら、ベッドの上で小さい声で奇声(?)あげながらこんなポーズ(→ Ⅲ orz Ⅲ )とってた。
いっちゃんやっぱり面白い。
お茶会する日曜日。
学校で出された宿題をしていた。
ついでに俺の苦手科目は何かについての宿題のことを聞いてみた。
「宿題、わかった?」
「…………ぜんぜんわからなかった。ひーちゃんわかりにくいんだもん」
「そっかぁ、しょうがないね (._.)シュン…」
「ごめんて💦」
「でも、知ろうとして俺のこと考えてくれてたでしょ」
「うん。ひーちゃんのことで頭いっぱいだったよ」
俺のことで頭いっぱい(*´-`) 嬉しい。
「じゃあ、いいよ。それで」
「何が?いいの?」
「宿題。答え出なくてもそれでいいよって」
俺のことで頭いっぱいにしてくれただけでも充分。
「えー!私が気になるよ!答えなんだったの?」
「見つけるまでお預け」
「そんなぁ」
いっちゃんが俺を見てふにゃりと笑っているから、俺の幸せがいっちゃんに伝わっていたらいいいなと思った。
「ひーちゃんって苦手な科目無さそうだよね」
「あるよ」
「え、なんだろ?」
「当ててみて」
いっちゃんはひーちゃんの苦手科目を当てるために行動に移すが、なかなかうまくいかない…。
「ここの問題わからないんだけど、わかる?」
今日もお茶会をしながら、数学の宿題に取り組む。
今日のお茶会は私が昆布茶とローマ字チョコ、ひーちゃんが桃の紅茶とブロッククッキーを持ちよった。
「ここは、y= ~の形を作るから、2つの式を利用する。その前に、これにこれを「あっ、ここにこれを代入して、1-x+y=2になるね」」
「そう、あってる」
私のノートにひーちゃんが矢印や代入という文字を書き足していく。
「これをy =~にしたいから、= の隣に移行して、整理すると「y=x+1」となる」
彼の説明を聞きながら私は頷きつつ、さらさらとシャープペンをノートの上で走らせる。
夢中で解いていく。時々口にだして確認をしながら。
「そう。そのyをこれに代入して、xを先に解いていく」
「代入… こう?」
「そう、あってる」
「じゃあ、これをこうして…、これは移行して…」
「そう、それで?」
さらさらと私のシャープペンは止まらない。
「あ、ここの計算はわかる!こうでしょ」
「あってる。これでxは解けた。最後にyにxの答えを代入していって」
彼のシャープペンの先端が先に作ったy=x+1を指し示す。
それの式をxを代入した形で書いていく。
「あ!解けた!」
「そう、あってる。良くできました」
答えが解けたときの爽快感とやりきったという感覚が一気に来た。
ひーちゃんの方を見ると少しだけ笑って頭を優しく撫でてくる。
「ひーちゃんくすぐったいよ」
「いっちゃん頑張ったからね、ご褒美」
「……ひーちゃんの説明がわかりやすかったからできたからで… ひーちゃん、教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
彼の笑顔は貴重だ。小さい頃はよく笑っていたが、小学校くらいから表情筋があまり動かなくなった。なんというか、無表情になった。どうしてそうなったのかわからず心配していたけど、高校生になって少しだけど表情筋が働くようになって少しだけど笑うようになったから安心した。
「ひーちゃんって苦手な科目無さそうだよね」
「あるよ」
「え、なんだろ?」
「当ててみて」
「うーん…」
当ててみてって言われても、本当にわからない。クラス違うし、普段の様子が観察できないから当てようもない。
「わからん」
「次までの宿題だね」
「えー、教えてくれないの?」
「俺のこと、当ててみて」
「よし、わかった。絶対当ててみせる!」
「ん、頑張って」
そう言った彼の周りに花が飛んでるように見えるのは気のせいだろうか。
昆布茶を飲んで ふぅ ため息をつく彼。
「ひーちゃんは、なんでそんなに勉強できるの?」
「…将来身を固めておきたいから」
「身、を?」
「そう、身を」
「将来ボディビルマーになりたい…のか?」
ムキムキのひーちゃんを妄想する。
ひーちゃんは、ムキムキというよりかは細マッチョの方がよく似合う気がする。むしろかっこいいから目指した方がいいと思うな。
「なんでそうなる」
「だって身を固めるって」
「体じゃなくて、就職とかの方」
「あ、そっちね」やっぱり?
「うん」
「ひーちゃん偉いな、ちゃんと将来のこと考えているんだね。私はまだふわふわしてる状態だよ」
「これから見つかるよ。時間は無限だからね」
「ん、焦らず探してみる」
「いっちゃんのペースでね」
「うん。さて、やりますかぁ」
おかしを食べながらまた問題にとりかかる。まだまだ宿題の問題は残っている。
教室が違うため、観察するなら休み時間と昼休み、あとは放課後くらい。
ひょこっとひーちゃんのいる教室を覗いてみる。
1限目の10分休み。
彼は友達と話をしている様子。何が苦手って、これじゃあわからないな。
「誰かに何か用事?呼ぼうか?」
覗いてるところに気づかれたのか男子が声をかけてきた。
「あ、あの、ひー…羽嶋くんを呼んでほしいんだけど…」
「羽嶋?いいよ。羽嶋ー!」
あ、こっちに気づいた。私の方に歩いてくる。
「なに?」
「なんかこの子が羽嶋に用があるんだって」
「…そう。教えてくれてありがとう、秋目」
「どういたしまして」
そう言って男子こと秋目くんはひーちゃんのいた席に行ってしまった。
「どうしたの?」
彼は私と目を合わせようとしゃがんで聞く姿勢をとる。
「あの…えっと、ね?」
「うん」
なんかひーちゃんの周りに花飛んでない?
「……な、なんでもない、かなー」
「ん?」
彼が小首を傾げて不思議そうな顔をしてくる。
「失礼しましたっ!」
私は彼から逃げるように少し走ってその場から離れた。
密かに観察しに来てるのに、バレてどうすんの💧
次こそはと2限目の10分休み。
ひょこっとひーちゃんの様子を覗き見る。
彼のクラスは次は移動教室みたいで、各々準備をしつつ賑やかな話し声が教室中を満たしている。
………あれ?ひーちゃんいない?
「陽向さん、どうしたの?」
「ひっ!」
後ろから聞こえたひーちゃんの低くてかっこいい声優さんような声が至近距離から…
「あ、あはは…、次って移動教室なの?」
「うん、理科室」
「そ、そうなんだ…えっと、気を付けてね(?)」
「ありがとう、陽向さんもね」
「うん…じゃあね!」
また逃げるように少し走ってしまった。
なんでこうもたて続けにバレるかなぁ!
3限目4限目と10分休みの度に彼の観察に行くが、何故か全部バレてしまい、誤魔化して逃げ帰るを繰り返している。情けなさ過ぎる!
お昼休み。は、流石に観察には行かない。休みたいもん。
「樹、今日変だよ」
「変じゃないよぅ」
友達に心配されてしまった。
お弁当を食べながらうーんと唸る。
友達と向い合わせでご飯を食べているが、どうやら悩んでいることが顔に出ていたらしい。
「10分休みの度に3組に行ってるからさ、なんかあるのかなって思うでしょ普通」
「まぁ…あるけど………。ねぇ」
「ん?」
「相手の苦手な科目を知るにはどうしたらいいのかなぁ」
「そりゃあ、相手に聞くのが早いと思うけど」
「教えないって言われたら?」
「諦める」
「それじゃダメなんだよー」
「マジでなしたのよ?」
「実はさー」
私の幼馴染みが、苦手な科目何か当ててみ?っていう話題になってねという話をした。もちろんひーちゃんのことは伏せて。
「なるほどねぇ。で?それを探るために3組に通っていると」
「うん」
「ということは、樹の幼馴染みがこの学校に通ってて、3組に所属しているということがわかった訳だが!(わくわく)」
「やっぱり今の話題忘れてください!」
「だめー、もう覚えちゃったもんねー」
「今から忘れさせてやるぅ!」
「んな!?お弁当に入ってたバランと卵焼きでなにする気だ!?」
わちゃわちゃと騒いでお昼休みが終わってしまった。なんたる不覚!!
めげずに5限目の10分休み。
次は私が移動教室のためあまり居られないけど、一応覗く。
「羽嶋ならトイレだよー」
1限目の10分休みの時に声をかけてきた秋目くんが、扉近くの席に座ったまままた声をかけてきた。
「そうなんだ」
「なんか休み時間の度に来てるけど、もしかして告白とか?」
「違うよ」
「本当に?」
「うん」
「ならいいけど、あいつモテるし、告白とか日常茶飯事よ?」
「そうなの?」
「そう!んで、その度に断ってるんだ。俺、好きな人がいて、その人のこと一生傍で支えて「何の話してるの?」」
秋目くんの言葉を遮るようにひーちゃんがいつの間にか私の後ろに立って私の両耳を塞いでいた。
「何って、彼女に羽嶋ならトイレに行ってていないよって教えてあげてたところだよ。あとは世間話?」
「そう… ならいいんだけど」
「そんで羽嶋はそれ何してんの?」
まだ私の両耳を塞いだままの状態で話をしていた。
「……いや。なんとなく」
「なんとなくでいたずらするなよな」
「陽向さん、ごめんね」
「ん、うん、大丈夫」
思考停止してるけど、私の顔、赤くなって、ないよね(?)
思考停止したので、とりあえず自分の教室に戻って移動教室の場所に向かった。
なんか耳が痺れてるような感覚になんとなくこしょばゆいようななんなのかわからなくなって、授業中「ふえぇぇぇ……(困惑)」って口から変な声が漏れて、隣にいた友達がふいた後、笑いをこらえてたのは覚えてる。
月曜日から金曜日までほぼ毎日教室の中を覗いたり、ひーちゃんに見つかっては言い訳して逃げるように去っていったりと悪戦苦闘してたけど、とうとう恐れていたことが起きた。
「あんた、灯野くんのこと好きなの?」
学校でひーちゃんの側にいつもいて、彼に一所懸命話しかけている女子、佐中(さなか)さんがイライラしながら私を睨み怒り口調で教室の近くで話しかけてきた。
「ももんちゃん…」
「ももんって呼ばないで!!💢」
本名 佐中百々(もも)。ももんは何故か佐中さんのあだ名らしいが、本人は好きではないらしい。可愛いのに ももんちゃん。
「なんであんたにあだ名言われなきゃいけないのよ!ムカつく!💢」
「だってももんちゃん可愛いんだもん」
「可愛いくない!嫌よそんな変な名前。そうじゃなくて、今あんたの話してるの!あんた灯野君の何!?」
「えっと… なんだろ?」
「意味わかんない。二度と私の灯野君に近づかないで!」
「それは、困るよももんちゃん」
「ももんって呼ばないで!!💢」
「何の話してるの?ももんちゃん💕」
「げっ!のぶゆき」
教室のドアからひょっこり顔を出してももんちゃん好き好きオーラ全開で話しかけてきた。
「昔みたいにのんちゃんって呼んでー」
「呼ばない!あんたには関係ないの、引っ込んでなさい」
「あ、秋目君だ」
「やっほー陽向さん、今日も羽嶋探し?」
「うん」
「羽嶋なら今そこにいるよー」
「「え?」」
ももんちゃんと私で同時に振り向くとそこにひーちゃんが立っていた。
「?」
何の話してるの?という顔で小首を傾げて不思議そうな顔をしている。
「灯野君💕」
ももんちゃんはひーちゃんの腕を掴もうとしたが、ぐいっと後ろから秋目君に腰を引かれて抱き寄せられて後ろにさがってしまった。
「ちょっ、何すんのよ!放してよ!」
「ももんちゃんは俺のだもん!浮気はダメだもん!」
「はぁ!?誰があんたなんか、浮気じゃないわよ!放し…放して!もぅのんちゃんってば!」
「今のんちゃんって呼んでくれたー💕」
「い、言ってない!聞き間違いよ!!」
わちゃわちゃとしている2人を見ながら仲良しだねとひーちゃんと話していた。
「秋目と佐中は幼馴染みで、家が隣だって」
「そうなんだ。ふふ ももんちゃん、可愛い(*´∀`*)」
秋目君に抱き寄せられて顔を赤くして騒いでいる彼女の方を見てほほえましく思う。
「ちょっと!ももんって呼ばないでよ!」
私は彼女に再び怒られてしまった。
きてしまった土曜日。
苦手科目がわからないまま土曜日になってしまった。
いつも通りの日常。2人でベッドに入って即寝。
いやいやいやこれじゃダメでしょおおぉぉぉ!⤵️Ⅲ orz Ⅲ
とうとうやってきてしまった日曜日。
私たちはお茶会をしながら宿題をしていた。
「宿題、わかった?」
「…………ぜんぜんわからなかった。ひーちゃんわかりにくいんだもん」
「そっかぁ、しょうがないね (._.)シュン…」
「ごめんて💦」
「でも、知ろうとして俺のこと考えてくれてたでしょ」
「うん。ひーちゃんのことで頭いっぱいだったよ」
「じゃあ、いいよ。それで」
「何が?いいの?」
「宿題。答え出なくてもそれでいいよって」
「えー!私が気になるよ!答えなんだったの?」
「見つけるまでお預け」
「そんなぁ」
ひーちゃんの嬉しそうに少し笑う顔を見て、私もつられて笑ってしまった。
☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕☕
「ここの問題わからないんだけど、わかる?」
お茶会をしながら、いっちゃんと数学の宿題に取り組む。
いっちゃんが昆布茶飲みながらとブロッククッキーを食べてる。今回頑張ってクッキー作ってよかった。
今週の金曜日に連立方程式のおさらいが宿題に出た。
覚えているかの小テストをするらしい。先生は少し変わっていて、時々中学校の問題を毎週金曜日に小テストにしたりする。高校の問題ももちろん小テストするが、毎週金曜日に行うため、気が抜けられない。成績に加味するとか言ってたし。
「ここは、y= ~の形を作るから、2つの式を利用する。その前に、これにこれを「あっ、ここにこれを代入して、1-x+y=2になるね」」
「そう、あってる」
彼女のノートに矢印や代入という文字を書き足していく。
「これをy =~にしたいから、= の隣に移行して、整理すると「y=x+1」となる」
彼女が夢中で解いている横顔を見つめる。
真剣な顔。頑張ってる。
「そう。そのyをこれに代入して、xを先に解いていく」
「代入… こう?」
「そう、あってる」
「じゃあ、これをこうして…、これは移行して…」
「そう、それで?」
とんとん拍子に解いていく。
「あ、ここの計算はわかる!こうでしょ」
「あってる。これでxは解けた。最後にyにxの答えを代入していって」
シャープペンの先端で先に作ったy=x+1を指し示す。
それの式をxを代入した形で書き足す。
ここ、いっちゃんがつまずいてたところ。
「あ!解けた!」
「そう、あってる。良くできました」
ムフー✨️とやりきった顔をこちらに向けている。
うん、かわいい。
思わずいっちゃんの頭を撫でる。
「ひーちゃんくすぐったいよ」
「いっちゃん頑張ったからね、ご褒美」
「……ひーちゃんの説明がわかりやすかったからできたからで… ひーちゃん、教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
まぁ、まだ問題は残ってるけどね。
「ひーちゃんって苦手な科目無さそうだよね」
唐突に言われて、ん? ってなった。
「あるよ」
「え、なんだろ?」
「当ててみて」
「うーん…」
あごに手を当てて目を閉じて考える素振りをする。
今俺のこと考えてくれてる。嬉しい(*´-`)
「わからん」
「次までの宿題だね」
「えー、教えてくれないの?」
「俺のこと、当ててみて」
「よし、わかった。絶対当ててみせる!」
「ん、頑張って」
その間俺のこと考えてくれるんだなと思うとすごく嬉しい。頬が緩む。
昆布茶を飲んでため息をつき、心を落ち着かせる。
「ひーちゃんは、なんでそんなに勉強できるの?」
「…将来身を固めておきたいから」
「身、を?」
「そう、身を」
「将来ボディビルマーになりたい…のか?」
ボディビルマー?
「なんでそうなる」
「だって身を固めるって」
「体じゃなくて、就職とかの方」
固め違いだよ、いっちゃん。
「あ、そっちね」
「うん」
「ひーちゃん偉いな、ちゃんと将来のこと考えているんだね。私はまだふわふわしてる状態だよ」
「これから見つかるよ。時間は無限だからね」
「ん、焦らず探してみる」
「いっちゃんのペースでね」
焦っちゃダメだからね。
「うん。さて、やりますかぁ」
いっちゃんが再び問題にとりかかり始めた。
1限目の10分休み。
友達と話をしていると「羽嶋ー!」と秋目に呼ばれた。
あれ?いっちゃんだ。どうしたんだろ。
「なに?」
「なんかこの子が羽嶋に用があるんだって」
「…そう。教えてくれてありがとう、秋目」
「どういたしまして」
そう言って秋目は俺の席に行ってしまった。
「どうしたの?」
いっちゃんと目を合わせようとしゃがんで聞く姿勢をとる。
「あの…えっと、ね?」
「うん」
俺に会いに来てくれたの、嬉しい(*´-`)
「……な、なんでもない、かなー」
「ん?」
いっちゃんの目が泳いでいる。嘘ついてるのはわかるけど、何か用事があって来たんじゃないの??
「失礼しましたっ!」
走っていなくなってしまった。
いっちゃん…。
話しかけてくれたのは嬉しかったけど、もうちょっと話していたかった。
2限目の10分休み。
あれ?いっちゃんまた来てる。教室覗いてる。
次は移動教室のため、準備を終えた俺はトイレに行って、今帰ってきたところだった。
キョロキョロと小さい頭を動かしてドアのところから覗き見ている状態で誰かを探している様子だった。
「陽向さん、どうしたの?」
「ひっ!」
後ろから声をかける。彼女からは仄かに香る彼女の家の香り。俺の好きな匂い。
「あ、あはは…、次って移動教室なの?」
「うん、理科室」
「そ、そうなんだ…えっと、気を付けてね(?)」
「ありがとう、陽向さんもね」
「うん…じゃあね!」
そう言ってまた少し走って行ってしまった。
面白いけど、少し寂しい気もする。もっと話せたらいいのに。
3限目4限目と10分休みの度にいっちゃんが俺のことを見に来ていた。俺は嬉しいけど、いっちゃんの目的がわからない。用事はなんだろう?
休み時間の度にチラリとドアの方を見るようになった。
いっちゃん来てないかなって。
お昼休み。
いっちゃん来ない…。お昼一緒に食べれたらなと思ったけど、来ない…。
「陽向さん来ないね」
秋目に言われてハッとする。まさか秋目もいっちゃん来るの楽しみにしてたのかな。
「………そうだね」
いつの間に仲良くなったんだろうか。俺の知らないところでいっちゃんと…。
悶々としてたら、お弁当の卵焼きをひょいと友達の伊野に盗られてしまった。
今日はいっちゃん特製お弁当。俺の楽しみをこいつは盗った。
「なーに悩んでるの?」
「今ので悩みから怒りに変わった」
「なんで?」
「俺の卵焼き…」
「ごめんて。美味しそうだったから、つい。でも本当に美味しいね」
「ん、そうでしょ」
いっちゃん特製お弁当を褒められて悪い気はしない。
イラッとはしたが、許す。
「お詫びに今度卵焼き作ってくるよ」
え。いらない。
「あ、じゃあ、俺も作ってくるよ」
え。いらないんだけど。
「羽嶋も作ってきて」
うわ…厄介なことに巻き込まれた。ってか、お詫びどこいった。
「………今度ね」
渋々了承したが、断れなかった。2人の目がキラキラしてお願い✨️って目向けてくるし。はぁ、断りにくいわ。
お昼が終わって、少し微睡む5限目。
よりによって聞いてて心地よい声の政治の先生の授業だった。聞き取りやすくて子守唄のように聞こえてくる先生の声にうとうとし始める生徒多発生。
負けじと粘っていると、数学の先生が「ちょっといいですか?」と政治の先生のもとを訪ねてきた。
「はい、なんでしょうか」
「お知らせがありまして「先生」」
「はい、どうしましたか羽嶋くん」
先生たちの話をしてるところまで歩いていって話に割り込む。
「その用事、俺が行きます」
「……は?なんて?」
数学の先生が不思議そうな顔をしている。
「会議ですよね?俺が行くので、先生は授業進めててください」(訳: 廊下の空気吸って、眠気覚まししてきます。)
「お前…」
数学の先生は俺の言葉にピンときたのか、俺の頭を撫でて、「ただのプリント配布のお知らせだから、出なくていーの。あとお前が持ってるの政治の教科書じゃなくて地理の教科書だから。教科書変えとけよ」
「はい」
俺はキリッとした顔で席に戻る。
席に戻ると政治の先生の声でやられつつあった周りが今度は震えだした。
数学の先生に、周り震えてる。もしかして寒気ですかね?と目で訴えると先生は頭をふるふると横に振った。
なんだ違うのか。じゃあ皆眠くて震えてるのかな。
5限目の10分休み。
トイレに行って、戻ってくるとまた秋目といっちゃんが話をしていた。
何話して…
「~つモテるし、告白とか日常茶飯事よ?」
「そうなの?」
「そう!んで、その度に断ってるんだ。俺、好きな人がいて、その人のこと一生傍で支えて「何の話してるの?」」
秋目が余計なことを話していることに気がついて急いでいっちゃんの両耳を手で塞いだ。
「何って、彼女に羽嶋ならトイレに行ってていないよって教えてあげてたところだよ。あとは世間話?」
「そう… ならいいんだけど」
「そんで羽嶋はそれ何してんの?」
彼女の両耳を塞いだままだったの忘れてた。
「……いや。なんとなく」
小さくて柔らかくていい匂い。かわいい。
「なんとなくでいたずらするなよな」
「陽向さん、ごめんね」
痛くなかった?
「ん、うん、大丈夫」
そう、よかった。
少し顔赤いけど大丈夫かな💦
6限目、数学。
先生に当てられて黒板に答えを書いた。ついでに簡単な耳の絵も書いた。
「絵うまいのはわかったが、今は生物の授業じゃないぞ💧」
先生はそう言って困った顔をしつつ携帯で写真を撮ってから、とりあえずうめぇからこれは生物の先生に見せる。任せとけって言ってた。
席に着くとまた周りが少し震えてたから、今度こそ寒気ですかね?と目で訴えると先生はまた頭を横に振る。
じゃあなんで震えてるんだろうか。今度聞いてみようと思った。
いっちゃんは、月曜日から金曜日までほぼ毎日教室の中を覗きにきたり、俺と向き合うと言い訳して走って去っていったりと不可解な行動が多かった。
金曜日の6限目。
数学の先生に呼び出されて、悩みなら聞くぞ?って言われてしまった。
「悩みですか…。じゃあ、意中の女性と結婚するならどうプロポーズしたらいいと思いますか」
「お前…、この俺と恋バナしようってのか」
「悩み聞いてくれるって先生が」
「言ったけど、それが結構濃いめの恋バナだとは思わんだろうよ」
「そうですかね」
「よし!こうなったらとことん付き合うぞ!今日は難しいが、今度の休み、俺と恋バナしような」
「え、丁重にお断りさせていただきます」
「あ?こら、丁重にお断りするな!決まりな、来週予定合わせするから」
「丁重にお断…」
「断るな」
相談する相手を間違ってしまったかもしれない。選択のミスに後悔をした。
解放されて教室に向かうと廊下の方でわちゃわちゃとと声が聞こえてきた。
「昔みたいにのんちゃんって呼んでー」
「呼ばない!あんたには関係ないの、引っ込んでなさい」
「あ、秋目君だ」
「やっほー陽向さん、今日も羽嶋探し?」
いっちゃん、俺を探してくれてたの?
「うん」
「羽嶋なら今そこにいるよー」
「「え?」」
佐中といっちゃんが同時に俺の方に振り向く。
「?」
何の話かな?
「灯野君💕」
佐中は俺の腕を掴もうとしてきたが、ぐいっと後ろから秋目に抱き寄せられて後ろにさがる。
「ちょっ、何すんのよ!放してよ!」
「ももんちゃんは俺のだもん!浮気はダメだもん!」
今日も好きだって言ってる。諦めないのが秋目のいいところだと俺は思う。
「はぁ!?誰があんたなんか、浮気じゃないわよ!放し…放して!もぅのんちゃんってば!」
「今のんちゃんって呼んでくれたー💕」
「い、言ってない!聞き間違いよ!!」
赤くなる佐中と嬉しさ全開の秋目を見ていると、いっちゃんが、あの2人仲良しだねと俺にこそっと言ってきた。
「秋目と佐中は幼馴染みで、家が隣だって」
「そうなんだ。ふふ ももんちゃん、可愛い(*´∀`*)」
ももん呼び、佐中と仲良くなったのかな??
「ちょっと!ももんって呼ばないでよ!」
俺は、秋目とわちゃわちゃしつついっちゃんに怒る佐中はかなり器用だと思った。
怒られてもにこにこしてる彼女の横顔を見て、かわいいと思った。
土曜日。
いつも通りの日常。2人でベッドに入って即寝。
朝起きたら、ベッドの上で小さい声で奇声(?)あげながらこんなポーズ(→ Ⅲ orz Ⅲ )とってた。
いっちゃんやっぱり面白い。
お茶会する日曜日。
学校で出された宿題をしていた。
ついでに俺の苦手科目は何かについての宿題のことを聞いてみた。
「宿題、わかった?」
「…………ぜんぜんわからなかった。ひーちゃんわかりにくいんだもん」
「そっかぁ、しょうがないね (._.)シュン…」
「ごめんて💦」
「でも、知ろうとして俺のこと考えてくれてたでしょ」
「うん。ひーちゃんのことで頭いっぱいだったよ」
俺のことで頭いっぱい(*´-`) 嬉しい。
「じゃあ、いいよ。それで」
「何が?いいの?」
「宿題。答え出なくてもそれでいいよって」
俺のことで頭いっぱいにしてくれただけでも充分。
「えー!私が気になるよ!答えなんだったの?」
「見つけるまでお預け」
「そんなぁ」
いっちゃんが俺を見てふにゃりと笑っているから、俺の幸せがいっちゃんに伝わっていたらいいいなと思った。
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