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キャラメルラテと帰り道
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部活の帰りの悠哉は、タピオカ屋で結(ゆい)が何かを頼んでいる所に出くわした。
天然な結とそれに振り回される悠哉。
彼らは一緒の帰り道によく寄り道をする。
「キャラメルラテ、一つ下さい」
部活の帰り、タピオカ屋で結(ゆい)が何かを頼んでいる所に出くわした。
何を頼んでいるのか気になって、彼のところに近づいた。
「結、それ飲んだことあるの?」
「お?なんだ悠哉か。ない。だから、興味があってさ」
「ふぅん、全部飲めんの?」
「あー…それもそうかぁ。すみません店員さん。もう一つ注文良いですか?」
「はい、なんでしょう?」
カップにタピオカを入れている手を止めて、俺たちの方に振り向いた。
「タピオカを5つだけにしてもらうことってできますか?」
「え?」
「こら、店員さん困らすな!すみません何でもないです」
「いえいえ。すみませんそれはできないですけど…量を減らすことは可能ですよ。減らしますか?」
店員さんがニコッと笑って受け答えをしてくれた。
「5つがいい!」
ったく、こいつは!
「駄々こねんな!量を減らしたいです。お願いします」
「ちぇー」
「ふふ、かしこまりました。減らしますね」
「ありがとうございます」
優しい店員さんに感謝だ。
「ありがとうございました」
「ありがとうございます。ほら、行くぞ」
「へいへい」
渋々キャラメルラテを受け取った彼は、公園のベンチに座って、大きなストローをガジガジとかじり出した。いい具合の大きさに潰れたストローを口に加えて飲む。
「おいおい、それじゃあタピオカ通れないだろ」
ストローを噛むのは、こいつの癖だ。
「おっと、つい」
口の中で器用に元の大きさに戻したようだが、ストローは既にボコボコになっている。
「よし!」
「よし!じゃないよ、ボコボコ笑」
「黒粒が通れば問題ないさ。そういえば、悠哉は何で頼まなかったんだ?」
「黒粒て笑 俺はいいや。飲み物あるし」
俺は鞄からコンビニで買ったばかりの「飲むプリン」を出した。
「あ!ずりぃ!俺のは!?」
「あるわけないだろ」
「ケチか!」
「何でだよ笑 お前にはタピオカあるだろ」
「いいよ、後で買いに行くから」
そういって彼はタピオカを口に入れた。
ヂュッ シュポッ!
「っ!!!??」
「ん?」
彼はもきゅもきゅタピオカを噛み始めた。
「……………」
「ど?うまいか?」
「んー…黒いの要らないかなー」
「タピオカな」
「キャラメルラテはうまいよ」
「うん」
「黒粒はいらない」
「じゃあ、残しなよ」
「頑張って最後まで噛む…」
「おー、その意気だ。頑張れー」
俺は飲むプリンを一口飲んだ。
うん、うまい。文句無しのうまさだ。そんなに甘くないし、カラメルも美味しい。
もきゅもきゅ… もきゅもきゅ… もきゅもきゅ…
「いや、音!笑」
思わず笑ってしまった。
口の中で噛む音がもきゅもきゅて笑笑
「なに?」
「タピオカ食べてるときってそんな音鳴る?聞いたことないんだけど笑笑」
「だって、噛みきれないし、小さくならないから呑み込めないし、飲むタイミングも分かんないし…とりあえず小さくなるまで噛もうかと思って」
「タピオカ無くなる頃には夜になってるかもな。いや、次の日か?笑」
笑いが止まらない俺は、口許を手で押さえて笑いをこらえた。面白いのと可愛いのとでダブルできた。
「悠哉はタピオカ飲んだことあるのか?」
「あるよ。一回で満足したから、もういいや」
「なに頼んだ?」
「キャラメルラテ」
「だよな!美味しいもんな!キャラメルラテ」
「だな」
本当は、結が学校でよく飲んでいるからどんな味がするのか気になって、飲んでみた。とは、言えないなぁ。
俺は普段、甘いものをあまり食べない。苦手とか嫌いとかではなく、結が俺の傍で甘いものをよく食べているからだ。その食べてる顔を見ただけで、もう充分俺は糖分を摂取していると言っても過言ではないと思っている。
「小さくならない…」
「弾力あるからな」
「あ、少し千切れた」
「それは呑めるな」
「むぅ…むむ……」
ベンチで口の中のタピオカと葛藤しながら実況報告する結とそれに答える俺。
学校帰りのこの時間が楽しみであり、結と二人きりで過ごせる唯一の時間。
俺はこいつが好きだ。もちろん恋愛として。
結は俺のこと友達としての好きだろうけど、距離感がすごく近い。すぐにくっついてくる。
俺はその度に毎回心臓が早くなるから、俺の寿命短くなっていっているんじゃないかと多少心配してる。
「あご疲れた…もうギブアップ」
「残り俺呑む?」
「悠哉…、ごめんありがとう」
「ん」(カップを受け取る)
「ん」(結が俺にカップを渡し、空の手を出してきた)
「ん?」なんだその手は?
「飲むプリンちょうだい」
「ダメ」
「何でだよぉ」
「キャラメルラテ飲んだだろ。もう良いじゃん」
「ちょっとだけしか飲んでないよ。見て!このカップに入ったキャラメルラテの量を!もらった時より数センチしか減ってないだろ!ほら!」
人差し指と親指をカップに当てて、減った数センチの量をこのくらい!と指の間で示す。
いやどんだけ飲みたいの笑
「分かった分かった、これからコンビニ行くか」
「いやこれでいいから、頂戴よ。今すぐ飲みたい」
こいつ、俺の飲むプリンどうあっても狙ってやがる!
「ダメだ!」か間接キスになるから!現にキャラメルラテだって、間接キスになるってのに…!
「いいじゃんかぁ!ケチ!」
「ダメなものはダメ!」なんとしても死守!死守!
「ちぇー」
「ったく…」
「…と見せかけて、いただきぃ!」
もう来ないと思って、少し気を抜いたのがいけなかった。
キャラメルラテに口をつけようとした瞬間、結が俺の両膝に片方ずつ手を置いて身をのりだし、左手に持っていた飲むプリンの方に口を近づけてきた。
「あ!?わわわ!」
「あっ!」
驚いた俺は膝を動かしてしまった。結はバランスを崩し、俺からもベンチからも落ちそうになったのを咄嗟に腕と肘で結の脇腹を抱え、落ちるのを防いだ。間一髪!
「はは…流石空手部の主将なだけある。反射神経に感謝だな。はぁー、驚いたなぁ」
気が抜けたのか、俺の膝の上でへにゃりと力が抜けて、俺の膝に頬を乗せている。
「馬鹿!危ないだろが!気を付けろよな!!」
「ごめん」
「寿命縮んだぞ!」
「ごめんて」
「怪我無いか?」
「うん、ない。あと苦しい…避けてくれるとありがたいです」
「あぁ、わりぃ。ほら、起きれ」
「ん……ん?」
「どうした?」
「今ので腰…抜け、た?」
「はぁ?」
「ごめん、起こして」
「なにやってんだお前…」
はぁ、とため息をついて、二つのカップを左横に置いた。
「起こすぞ、せーのっ」
「ジュゴゴゴゴゴゴゴォー」
「は!?」
掛け声と共に結からおかしな音が鳴り出して思わず力が抜けた。結の顔の方を見ると、さっき置いたはずの飲むプリンを全部飲み干していた。
「あー!!」何してんのこいつ!!?
「うまい!病みちゅきだ!ね、こういうLAWSONのCMなかった?」
「あったけど、お前なにしてんの!?こっちはお前起こそうとしてのに!」
「いやぁ、丁度目に入ったからつい飲んじゃった☆」
「飲んじゃったって…お前なぁ」
「よし、起こし…ん?何だ??胸の辺りになんか固いものが当たってるな??」
「え…」
まさかこの状況が嬉しすぎて、無意識に勃…(汗)
確認しようにもできないこの状況に焦っていると、あ!思い出した!と結がモゾモゾと腕を動かし出した。
「そういえば制服の内ポッケに携帯入れてたんだった。忘れてた」
「あっそう…。てか、ポッケって…子供じゃあるまいし、まだそんな呼び方してんの?」
「弟に言ってたら、なんか癖みたいになっちゃって、たまに出る」
「弟まだ3才だもんな」
「可愛いんだ、これが!ぐふふふふふふふふ」
「俺の膝の上でおかしな笑い方すんのやめてくださーい」
「よし!起きる。腰も治ったし?」
「そうしてくれ」なんだその疑問系は。
「よっこいせっ」
結の手が俺の膝を支えに起き上がろうと力を込めた。
俺も起こすのを手伝う。
「買って返せよ、俺のプリン」
「任せとけって。小一時間悩みに悩んで買ってきてやるからさΣb( `・ω・´)グッ」
「1種類しかないのに何を悩むことあんの?」
「誰もまだ触れてないプリンを選んできてやるわ」
「既に店員が全部触れてるのにか?」
「くっ!ならば工場に直接行って出来立てホヤホヤのを仕入れてくるしか他に手はないな…ふむ、それがいい」
「なんか話大きくなってきてない?」
「一度でいいから見学してみたかったんだよね」
「反省より欲が前に出たって感じだな」
呆れた奴だ。
やっと起き上がり、結は椅子に座った。
「ふぅ、やっと起きれた。悠哉、ありがとう」
「ん」
結の天然は今に始まったことではないが、それに振り回される俺の身にもなって欲しいものだ。
「これ飲んでしまわないと…」
もらったキャラメルラテを飲んでいると、結が急に立ち上がった。
「!」
「オーライオーライ」
上からボールが降ってきたのを結が気付き、受け止めようとしていた。
俺の前に結が来て、ボールを受け取ろうと手を伸ばして身構えた。
「ほっ!あ、やべ」
ドサッ
ちょっと後ろに跳んだ結がバランスを崩し、また俺の膝の上に着地したのだ。
「……………」
「お前今日、なんなの?」流石に分かんないわ。
「事故です!ごめんて!」
遠くから野球少年が走ってきた。
「すみません!取っていただき、ありがとうございます」
「いえいえ、どうぞ。今度から周りに気をつけてキャッチボールしなね」
「はい、すみませんでした」
少年はボールを受け取り、頭を下げて去っていった。
「ばいばーい」
結はその後ろ姿に手を振って見送った。
「いやばいばーいじゃねんだわ。降りてくれません?」
「悠哉膝あったかいな。俺、冷え性だから羨ましいぞ。ね、…もう少しこのままでい?」
温まろうとよじよじお尻が上ってきて、俺の股間の上にちょこんと座ってきた。お腹にも背中が寄りかかり、完全に密着する形になった。
んー!!??!!??(混乱)
ぞくぞくと体が疼く。少し反応してしまっ
「煽ーー!!」(訳:煽んなやーー!!)
「!!?え?青?ん??」
俺の声に驚いたのとよく分からないと言う顔で、あおの言葉で空を見る。
そっちの青じゃねぇよ!!
「降りろ!」
「何で?」何で?って…
「俺のが…その……当た、ってるから…」ゴニョゴニョと言葉を濁す。
恥ずかしくて言えるか!
「なんて?」
「だから!俺のが…その……ゴニョゴニョ…」
「後半聞こえないんだけど、何て?」
俺の言葉を聞こうと体をこちらに向けて、完全に体に寄りかかるように俺の口に耳を近づけてきた。
この体勢、まずいって!
「馬鹿っ!やめ…、降りろ!」
動くなって!
さらにぞくぞくとして、体が反応を始める。
下半身も反応をし始める。
完全にバレる前に何とかしないと!
「~~~!」
カプッ
「!!ふぁ!?え!?え??」
形のいい柔らかそうな耳を軽くかじる。
っ…、お前が悪い!
「何で今、かじ…」
「お前がわr……お腹、空いた…から?」
ぅわー!何て苦しい言い訳!咄嗟に出たとはいえ、こんなんで騙されるわけがない!
「そういえばそうだ。お腹空いたわ」
「え?」騙されてる?のか??
「よし!寒くなってきたし、帰ろっか」
「お、おぅ」
寒いか?
今日は暖かい風が吹いている。
結は立ち上がり、鞄を肩に背負った。
俺も立ち上がり、鞄を肩に背負い、飲んだゴミをくずかごに捨てて、結の方に振るかえると、結の耳は真っ赤になっていた。
もじもじとして、落ち着かない様子で顔を両手で覆っている。
「何してんだ?」
「な、何でもない!ほら、行こ!」
結が俺の手を掴んで隣を歩く。
ふわりと彼からはキャラメルの香りが仄かにした。さっき飲んだキャラメルラテの匂い。思わず顔が綻ぶ。
ふと気づいた握る結の指先が冷たいことに。
俺、知ってるよ。
結が緊張したとき、よく指先が冷たくなるの。
気づいてるのかな。話をしながら笑ってるけど、耳も顔も真っ赤になっていること。
夕日の色でも誤魔化しきれてないからな、それ笑
少しは脈ありってことで、いいのかな?
結の握る手に、好きだよと思いを込めて俺は優しく握り返した。
結が隣にいる、一緒の帰り道。
今はこの幸せを噛み締めるだけでも、よしとしますか。
天然な結とそれに振り回される悠哉。
彼らは一緒の帰り道によく寄り道をする。
「キャラメルラテ、一つ下さい」
部活の帰り、タピオカ屋で結(ゆい)が何かを頼んでいる所に出くわした。
何を頼んでいるのか気になって、彼のところに近づいた。
「結、それ飲んだことあるの?」
「お?なんだ悠哉か。ない。だから、興味があってさ」
「ふぅん、全部飲めんの?」
「あー…それもそうかぁ。すみません店員さん。もう一つ注文良いですか?」
「はい、なんでしょう?」
カップにタピオカを入れている手を止めて、俺たちの方に振り向いた。
「タピオカを5つだけにしてもらうことってできますか?」
「え?」
「こら、店員さん困らすな!すみません何でもないです」
「いえいえ。すみませんそれはできないですけど…量を減らすことは可能ですよ。減らしますか?」
店員さんがニコッと笑って受け答えをしてくれた。
「5つがいい!」
ったく、こいつは!
「駄々こねんな!量を減らしたいです。お願いします」
「ちぇー」
「ふふ、かしこまりました。減らしますね」
「ありがとうございます」
優しい店員さんに感謝だ。
「ありがとうございました」
「ありがとうございます。ほら、行くぞ」
「へいへい」
渋々キャラメルラテを受け取った彼は、公園のベンチに座って、大きなストローをガジガジとかじり出した。いい具合の大きさに潰れたストローを口に加えて飲む。
「おいおい、それじゃあタピオカ通れないだろ」
ストローを噛むのは、こいつの癖だ。
「おっと、つい」
口の中で器用に元の大きさに戻したようだが、ストローは既にボコボコになっている。
「よし!」
「よし!じゃないよ、ボコボコ笑」
「黒粒が通れば問題ないさ。そういえば、悠哉は何で頼まなかったんだ?」
「黒粒て笑 俺はいいや。飲み物あるし」
俺は鞄からコンビニで買ったばかりの「飲むプリン」を出した。
「あ!ずりぃ!俺のは!?」
「あるわけないだろ」
「ケチか!」
「何でだよ笑 お前にはタピオカあるだろ」
「いいよ、後で買いに行くから」
そういって彼はタピオカを口に入れた。
ヂュッ シュポッ!
「っ!!!??」
「ん?」
彼はもきゅもきゅタピオカを噛み始めた。
「……………」
「ど?うまいか?」
「んー…黒いの要らないかなー」
「タピオカな」
「キャラメルラテはうまいよ」
「うん」
「黒粒はいらない」
「じゃあ、残しなよ」
「頑張って最後まで噛む…」
「おー、その意気だ。頑張れー」
俺は飲むプリンを一口飲んだ。
うん、うまい。文句無しのうまさだ。そんなに甘くないし、カラメルも美味しい。
もきゅもきゅ… もきゅもきゅ… もきゅもきゅ…
「いや、音!笑」
思わず笑ってしまった。
口の中で噛む音がもきゅもきゅて笑笑
「なに?」
「タピオカ食べてるときってそんな音鳴る?聞いたことないんだけど笑笑」
「だって、噛みきれないし、小さくならないから呑み込めないし、飲むタイミングも分かんないし…とりあえず小さくなるまで噛もうかと思って」
「タピオカ無くなる頃には夜になってるかもな。いや、次の日か?笑」
笑いが止まらない俺は、口許を手で押さえて笑いをこらえた。面白いのと可愛いのとでダブルできた。
「悠哉はタピオカ飲んだことあるのか?」
「あるよ。一回で満足したから、もういいや」
「なに頼んだ?」
「キャラメルラテ」
「だよな!美味しいもんな!キャラメルラテ」
「だな」
本当は、結が学校でよく飲んでいるからどんな味がするのか気になって、飲んでみた。とは、言えないなぁ。
俺は普段、甘いものをあまり食べない。苦手とか嫌いとかではなく、結が俺の傍で甘いものをよく食べているからだ。その食べてる顔を見ただけで、もう充分俺は糖分を摂取していると言っても過言ではないと思っている。
「小さくならない…」
「弾力あるからな」
「あ、少し千切れた」
「それは呑めるな」
「むぅ…むむ……」
ベンチで口の中のタピオカと葛藤しながら実況報告する結とそれに答える俺。
学校帰りのこの時間が楽しみであり、結と二人きりで過ごせる唯一の時間。
俺はこいつが好きだ。もちろん恋愛として。
結は俺のこと友達としての好きだろうけど、距離感がすごく近い。すぐにくっついてくる。
俺はその度に毎回心臓が早くなるから、俺の寿命短くなっていっているんじゃないかと多少心配してる。
「あご疲れた…もうギブアップ」
「残り俺呑む?」
「悠哉…、ごめんありがとう」
「ん」(カップを受け取る)
「ん」(結が俺にカップを渡し、空の手を出してきた)
「ん?」なんだその手は?
「飲むプリンちょうだい」
「ダメ」
「何でだよぉ」
「キャラメルラテ飲んだだろ。もう良いじゃん」
「ちょっとだけしか飲んでないよ。見て!このカップに入ったキャラメルラテの量を!もらった時より数センチしか減ってないだろ!ほら!」
人差し指と親指をカップに当てて、減った数センチの量をこのくらい!と指の間で示す。
いやどんだけ飲みたいの笑
「分かった分かった、これからコンビニ行くか」
「いやこれでいいから、頂戴よ。今すぐ飲みたい」
こいつ、俺の飲むプリンどうあっても狙ってやがる!
「ダメだ!」か間接キスになるから!現にキャラメルラテだって、間接キスになるってのに…!
「いいじゃんかぁ!ケチ!」
「ダメなものはダメ!」なんとしても死守!死守!
「ちぇー」
「ったく…」
「…と見せかけて、いただきぃ!」
もう来ないと思って、少し気を抜いたのがいけなかった。
キャラメルラテに口をつけようとした瞬間、結が俺の両膝に片方ずつ手を置いて身をのりだし、左手に持っていた飲むプリンの方に口を近づけてきた。
「あ!?わわわ!」
「あっ!」
驚いた俺は膝を動かしてしまった。結はバランスを崩し、俺からもベンチからも落ちそうになったのを咄嗟に腕と肘で結の脇腹を抱え、落ちるのを防いだ。間一髪!
「はは…流石空手部の主将なだけある。反射神経に感謝だな。はぁー、驚いたなぁ」
気が抜けたのか、俺の膝の上でへにゃりと力が抜けて、俺の膝に頬を乗せている。
「馬鹿!危ないだろが!気を付けろよな!!」
「ごめん」
「寿命縮んだぞ!」
「ごめんて」
「怪我無いか?」
「うん、ない。あと苦しい…避けてくれるとありがたいです」
「あぁ、わりぃ。ほら、起きれ」
「ん……ん?」
「どうした?」
「今ので腰…抜け、た?」
「はぁ?」
「ごめん、起こして」
「なにやってんだお前…」
はぁ、とため息をついて、二つのカップを左横に置いた。
「起こすぞ、せーのっ」
「ジュゴゴゴゴゴゴゴォー」
「は!?」
掛け声と共に結からおかしな音が鳴り出して思わず力が抜けた。結の顔の方を見ると、さっき置いたはずの飲むプリンを全部飲み干していた。
「あー!!」何してんのこいつ!!?
「うまい!病みちゅきだ!ね、こういうLAWSONのCMなかった?」
「あったけど、お前なにしてんの!?こっちはお前起こそうとしてのに!」
「いやぁ、丁度目に入ったからつい飲んじゃった☆」
「飲んじゃったって…お前なぁ」
「よし、起こし…ん?何だ??胸の辺りになんか固いものが当たってるな??」
「え…」
まさかこの状況が嬉しすぎて、無意識に勃…(汗)
確認しようにもできないこの状況に焦っていると、あ!思い出した!と結がモゾモゾと腕を動かし出した。
「そういえば制服の内ポッケに携帯入れてたんだった。忘れてた」
「あっそう…。てか、ポッケって…子供じゃあるまいし、まだそんな呼び方してんの?」
「弟に言ってたら、なんか癖みたいになっちゃって、たまに出る」
「弟まだ3才だもんな」
「可愛いんだ、これが!ぐふふふふふふふふ」
「俺の膝の上でおかしな笑い方すんのやめてくださーい」
「よし!起きる。腰も治ったし?」
「そうしてくれ」なんだその疑問系は。
「よっこいせっ」
結の手が俺の膝を支えに起き上がろうと力を込めた。
俺も起こすのを手伝う。
「買って返せよ、俺のプリン」
「任せとけって。小一時間悩みに悩んで買ってきてやるからさΣb( `・ω・´)グッ」
「1種類しかないのに何を悩むことあんの?」
「誰もまだ触れてないプリンを選んできてやるわ」
「既に店員が全部触れてるのにか?」
「くっ!ならば工場に直接行って出来立てホヤホヤのを仕入れてくるしか他に手はないな…ふむ、それがいい」
「なんか話大きくなってきてない?」
「一度でいいから見学してみたかったんだよね」
「反省より欲が前に出たって感じだな」
呆れた奴だ。
やっと起き上がり、結は椅子に座った。
「ふぅ、やっと起きれた。悠哉、ありがとう」
「ん」
結の天然は今に始まったことではないが、それに振り回される俺の身にもなって欲しいものだ。
「これ飲んでしまわないと…」
もらったキャラメルラテを飲んでいると、結が急に立ち上がった。
「!」
「オーライオーライ」
上からボールが降ってきたのを結が気付き、受け止めようとしていた。
俺の前に結が来て、ボールを受け取ろうと手を伸ばして身構えた。
「ほっ!あ、やべ」
ドサッ
ちょっと後ろに跳んだ結がバランスを崩し、また俺の膝の上に着地したのだ。
「……………」
「お前今日、なんなの?」流石に分かんないわ。
「事故です!ごめんて!」
遠くから野球少年が走ってきた。
「すみません!取っていただき、ありがとうございます」
「いえいえ、どうぞ。今度から周りに気をつけてキャッチボールしなね」
「はい、すみませんでした」
少年はボールを受け取り、頭を下げて去っていった。
「ばいばーい」
結はその後ろ姿に手を振って見送った。
「いやばいばーいじゃねんだわ。降りてくれません?」
「悠哉膝あったかいな。俺、冷え性だから羨ましいぞ。ね、…もう少しこのままでい?」
温まろうとよじよじお尻が上ってきて、俺の股間の上にちょこんと座ってきた。お腹にも背中が寄りかかり、完全に密着する形になった。
んー!!??!!??(混乱)
ぞくぞくと体が疼く。少し反応してしまっ
「煽ーー!!」(訳:煽んなやーー!!)
「!!?え?青?ん??」
俺の声に驚いたのとよく分からないと言う顔で、あおの言葉で空を見る。
そっちの青じゃねぇよ!!
「降りろ!」
「何で?」何で?って…
「俺のが…その……当た、ってるから…」ゴニョゴニョと言葉を濁す。
恥ずかしくて言えるか!
「なんて?」
「だから!俺のが…その……ゴニョゴニョ…」
「後半聞こえないんだけど、何て?」
俺の言葉を聞こうと体をこちらに向けて、完全に体に寄りかかるように俺の口に耳を近づけてきた。
この体勢、まずいって!
「馬鹿っ!やめ…、降りろ!」
動くなって!
さらにぞくぞくとして、体が反応を始める。
下半身も反応をし始める。
完全にバレる前に何とかしないと!
「~~~!」
カプッ
「!!ふぁ!?え!?え??」
形のいい柔らかそうな耳を軽くかじる。
っ…、お前が悪い!
「何で今、かじ…」
「お前がわr……お腹、空いた…から?」
ぅわー!何て苦しい言い訳!咄嗟に出たとはいえ、こんなんで騙されるわけがない!
「そういえばそうだ。お腹空いたわ」
「え?」騙されてる?のか??
「よし!寒くなってきたし、帰ろっか」
「お、おぅ」
寒いか?
今日は暖かい風が吹いている。
結は立ち上がり、鞄を肩に背負った。
俺も立ち上がり、鞄を肩に背負い、飲んだゴミをくずかごに捨てて、結の方に振るかえると、結の耳は真っ赤になっていた。
もじもじとして、落ち着かない様子で顔を両手で覆っている。
「何してんだ?」
「な、何でもない!ほら、行こ!」
結が俺の手を掴んで隣を歩く。
ふわりと彼からはキャラメルの香りが仄かにした。さっき飲んだキャラメルラテの匂い。思わず顔が綻ぶ。
ふと気づいた握る結の指先が冷たいことに。
俺、知ってるよ。
結が緊張したとき、よく指先が冷たくなるの。
気づいてるのかな。話をしながら笑ってるけど、耳も顔も真っ赤になっていること。
夕日の色でも誤魔化しきれてないからな、それ笑
少しは脈ありってことで、いいのかな?
結の握る手に、好きだよと思いを込めて俺は優しく握り返した。
結が隣にいる、一緒の帰り道。
今はこの幸せを噛み締めるだけでも、よしとしますか。
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