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見えないところで
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ちょっとした朝の出来事。
「縁の下の力持ち、ってなんかいいよね」
友人がポツリと言う。
「急にどした」
「見えないところで頑張る姿は、素敵で格好いいのだよ」
「見えないところで頑張る姿を誰にも見てもらえなかったら、悲しくないか?そもそも気づかないだろ」
「そんなことはない。絶対どこかで気づいてくれてるものだよ」
なんじゃそりゃと言いながら友人のはねた寝癖を直すように頭をそっと撫でる。
「ふふ、そういうところとかね」
くすぐったそうに笑う友人を見てふと思う。
もしかして友人は気づいているのだろうか。
毎朝している俺の日課を。
毎朝、必ず花瓶の水を取り替えたり、花を入れ換えたり、日直の名前を黒板に書いたりと朝からやることは地味に多々ある。少し掃除したり空気入れ換えたりね。
毎朝するのは、家が近いからというのもあるが、教室の中が少しでも綺麗だと過ごしやすいからというのが主な理由だったりする。
「あれ?これ誰やってくれたんだろ、すごい助かるー」
という声が聞こえたら、俺はその言葉だけで嬉しい。
友人からそんな話をされて、数日が経ったある日、毎朝の日課をしていると、珍しく先生が教室に入ってきた。
「おはようございます」
「おはよう、ございます」
驚いて変なところで言葉を切ってしまった。
「我が教室の座敷童子は君だったんですね」
「え?」
「いつも不思議だったんですよ、教室に入ったら、廊下とはまた違う、空気が良くて過ごしやすいんです。朝のホームルーム、実は少し楽しみだったりするんですよ」
にこにこと笑顔で話す先生の目は優しい。
「そうなんですね。良かったです」
「毎朝いつも誰がやってくれているのかなと思い、今日こうして覗きに来ました。まぁ、我慢できずに入ってしまいましたが(笑)」
先生は笑顔で目を伏せて、俺に小さく会釈をした。
「えっと、いつも勝手にしてしまいすみません💦」
俺も先生に小さく会釈をする。
「いいんですよ。私もクラスのみんなも毎日気持ちよく過ごさせてもらってますから。実は皆でここの教室には座敷童子がいるって噂になってるくらいです」
「知らなかったです💧」
面談以外でしかも一対一で先生と進路以外で話すのは初めてだ。
なんとも不思議な数分間を過ごしている感覚だった。
世間話?とも言い難いむずむずした数分間。
それを打ち破るように朝のチャイムが誰もいない教室と廊下に鳴り響いた。
「すまない、邪魔をしてしまいましたか」
「いえ、もうほぼ終わっているので、窓を閉めて終わりです」
「そうですか、それなら安心です。いつも教室を綺麗にしてくれてありがとう。君の小さな気配りに私はいつも支えられています。本当にありがとう( ´-`)」
「あ、あの、えっと、はい、ありがとうございます」
改めてお礼を言われると照れる。何て答えていいのかわからず、おかしな受け答えをしてしまった。恥ずかしい…。
「そうそう、廊下にもう一人いるんですよ。今宿題解いてるみたいですよ」
「もう一人ですか」
「入っていいと伝えてあげてください。私は朝のミーティングに出席してきます」
「はい、お疲れさまです」
「では後程、ホームルームでね」
「はい」
先生は片手を小さく挙げて俺に後程と言って、教室を静かに出ていった。
先生が出ていった後、廊下を覗くと、友人が廊下に座ってノートと教科書、プリントを広げてカリカリと問題を解いている姿が目に入った。パンを食べながら、ペンは忙しなく動く。
「何してんの?」
「うお!?ビックリしたぁ。お前の声掛けでパン喉につまらせて窒息したら、ここは一気に殺人現場になるところだったな」
「縁起でもないこと言うなよ、恐ろしいな💧 それより何してんの?」
「宿題してんの」
「ここで?」
「ここで」
「いつからいた?」
「朝7時30分くらいから」
「俺も7時30分からいるわ。じゃあ、ずっと廊下にいたってことか?なんだ、声かけてくれたら良かったのに」
「うん、なんか、いいかなって思って。そう、ずっと。ずっといたわ」
「今度から声かけろよな」
「気が向いたらな」
「なんじゃそりゃ(笑)」
廊下に座っている友人を教室に招く。
教室に入った友人はポツリと言う。
「お前は格好いいよ。いつもありがとな」
「ん?なんか言ったか?」
「んーん、なんでもない。空気いいな、ここ」
「おう、換気したからな。今静かだから宿題捗るぞ」
「じゃあ、ここ教えてよ、わからなくてさ」
「どれ?」
「ここの問い」
「あぁ、これはさ…」
静かな教室の中、問題のヒントを話す声と友人が書くペンの音が響く。穏やかな時間。
廊下も徐々に賑やかになっていく。
その頃には問題も解き終わっていた。
教室をいつも掃除したり、なんだかんだやっている気配りのできる僕の友人。
よく寝癖を直してくれたり、僕の気づかないところによく気づいて声をかけてくれたりといろいろ助けてくれる。気配り上手。
あれは初めて早く行く朝だったんだけど、初めは教室に入ろうかどうしようか迷って(もう既に人がいたから人見知りしちゃって💦)廊下でうろうろしてると、「~♪」微かに鼻唄だったり歌だったりが混じる声が聞こえてきて、探したら教室からだった。
この歌知ってるだったり、いやなんの歌だそれ(笑)だったり。
それが今では友人として僕の隣にいるんだけどね(笑)
彼の声が
子守唄みたいな
オルゴールみたいな(?)
そんな感じで聞きながら廊下に座って教室から聞こえてくる声が心地よくてドアを少し開けて聞くことがもはや僕には欠かせない日課みたいなものになった。
朝のチャイムが鳴り響いた後、少ししてから教室に入る。
「おはようー!」
「おはよう、今日も早いな(笑)」
「まぁね(*´ω`*)」
君が頑張ってるのを僕は知ってる。
見えないところで頑張る姿は、素敵で格好いいのだよ。
絶対どこかで気づいてくれてる人もいるんだよ。
例えば、僕とかね (*´∀`*)♪
「縁の下の力持ち、ってなんかいいよね」
友人がポツリと言う。
「急にどした」
「見えないところで頑張る姿は、素敵で格好いいのだよ」
「見えないところで頑張る姿を誰にも見てもらえなかったら、悲しくないか?そもそも気づかないだろ」
「そんなことはない。絶対どこかで気づいてくれてるものだよ」
なんじゃそりゃと言いながら友人のはねた寝癖を直すように頭をそっと撫でる。
「ふふ、そういうところとかね」
くすぐったそうに笑う友人を見てふと思う。
もしかして友人は気づいているのだろうか。
毎朝している俺の日課を。
毎朝、必ず花瓶の水を取り替えたり、花を入れ換えたり、日直の名前を黒板に書いたりと朝からやることは地味に多々ある。少し掃除したり空気入れ換えたりね。
毎朝するのは、家が近いからというのもあるが、教室の中が少しでも綺麗だと過ごしやすいからというのが主な理由だったりする。
「あれ?これ誰やってくれたんだろ、すごい助かるー」
という声が聞こえたら、俺はその言葉だけで嬉しい。
友人からそんな話をされて、数日が経ったある日、毎朝の日課をしていると、珍しく先生が教室に入ってきた。
「おはようございます」
「おはよう、ございます」
驚いて変なところで言葉を切ってしまった。
「我が教室の座敷童子は君だったんですね」
「え?」
「いつも不思議だったんですよ、教室に入ったら、廊下とはまた違う、空気が良くて過ごしやすいんです。朝のホームルーム、実は少し楽しみだったりするんですよ」
にこにこと笑顔で話す先生の目は優しい。
「そうなんですね。良かったです」
「毎朝いつも誰がやってくれているのかなと思い、今日こうして覗きに来ました。まぁ、我慢できずに入ってしまいましたが(笑)」
先生は笑顔で目を伏せて、俺に小さく会釈をした。
「えっと、いつも勝手にしてしまいすみません💦」
俺も先生に小さく会釈をする。
「いいんですよ。私もクラスのみんなも毎日気持ちよく過ごさせてもらってますから。実は皆でここの教室には座敷童子がいるって噂になってるくらいです」
「知らなかったです💧」
面談以外でしかも一対一で先生と進路以外で話すのは初めてだ。
なんとも不思議な数分間を過ごしている感覚だった。
世間話?とも言い難いむずむずした数分間。
それを打ち破るように朝のチャイムが誰もいない教室と廊下に鳴り響いた。
「すまない、邪魔をしてしまいましたか」
「いえ、もうほぼ終わっているので、窓を閉めて終わりです」
「そうですか、それなら安心です。いつも教室を綺麗にしてくれてありがとう。君の小さな気配りに私はいつも支えられています。本当にありがとう( ´-`)」
「あ、あの、えっと、はい、ありがとうございます」
改めてお礼を言われると照れる。何て答えていいのかわからず、おかしな受け答えをしてしまった。恥ずかしい…。
「そうそう、廊下にもう一人いるんですよ。今宿題解いてるみたいですよ」
「もう一人ですか」
「入っていいと伝えてあげてください。私は朝のミーティングに出席してきます」
「はい、お疲れさまです」
「では後程、ホームルームでね」
「はい」
先生は片手を小さく挙げて俺に後程と言って、教室を静かに出ていった。
先生が出ていった後、廊下を覗くと、友人が廊下に座ってノートと教科書、プリントを広げてカリカリと問題を解いている姿が目に入った。パンを食べながら、ペンは忙しなく動く。
「何してんの?」
「うお!?ビックリしたぁ。お前の声掛けでパン喉につまらせて窒息したら、ここは一気に殺人現場になるところだったな」
「縁起でもないこと言うなよ、恐ろしいな💧 それより何してんの?」
「宿題してんの」
「ここで?」
「ここで」
「いつからいた?」
「朝7時30分くらいから」
「俺も7時30分からいるわ。じゃあ、ずっと廊下にいたってことか?なんだ、声かけてくれたら良かったのに」
「うん、なんか、いいかなって思って。そう、ずっと。ずっといたわ」
「今度から声かけろよな」
「気が向いたらな」
「なんじゃそりゃ(笑)」
廊下に座っている友人を教室に招く。
教室に入った友人はポツリと言う。
「お前は格好いいよ。いつもありがとな」
「ん?なんか言ったか?」
「んーん、なんでもない。空気いいな、ここ」
「おう、換気したからな。今静かだから宿題捗るぞ」
「じゃあ、ここ教えてよ、わからなくてさ」
「どれ?」
「ここの問い」
「あぁ、これはさ…」
静かな教室の中、問題のヒントを話す声と友人が書くペンの音が響く。穏やかな時間。
廊下も徐々に賑やかになっていく。
その頃には問題も解き終わっていた。
教室をいつも掃除したり、なんだかんだやっている気配りのできる僕の友人。
よく寝癖を直してくれたり、僕の気づかないところによく気づいて声をかけてくれたりといろいろ助けてくれる。気配り上手。
あれは初めて早く行く朝だったんだけど、初めは教室に入ろうかどうしようか迷って(もう既に人がいたから人見知りしちゃって💦)廊下でうろうろしてると、「~♪」微かに鼻唄だったり歌だったりが混じる声が聞こえてきて、探したら教室からだった。
この歌知ってるだったり、いやなんの歌だそれ(笑)だったり。
それが今では友人として僕の隣にいるんだけどね(笑)
彼の声が
子守唄みたいな
オルゴールみたいな(?)
そんな感じで聞きながら廊下に座って教室から聞こえてくる声が心地よくてドアを少し開けて聞くことがもはや僕には欠かせない日課みたいなものになった。
朝のチャイムが鳴り響いた後、少ししてから教室に入る。
「おはようー!」
「おはよう、今日も早いな(笑)」
「まぁね(*´ω`*)」
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