16 / 38
なにしようか
しおりを挟む
ユキには風邪が酷いので今日1日そっとしておいてほしいと団長に伝えてくれと頼んでおいた。
あの無口に近いユキには大役かもしれんが、まあそれとなく伝えてくれるだろうと信じている。
これからどうしたものかとユキの持ってきたご飯を食べながら考える。
「今日は読書して過ごすかな…」
手持ちの本を読み漁るのもいいし、図書室に借りに行っても、あ。行けないんだった…。
「うーん」
何もできないのは歯痒いが、とりあえず手持ちの本を読み漁る。
「こっちに書き換えると調整、この文字を書き加えると大量になるっと」
「んー…量産もアリか?」
ベッドに座り、積み重ねた本を机代わりにして紙に魔方陣を描いていく。
「……魔力の流れが変だって言ってたな」
ユキの魔力感知には驚かされる。まさかそこまで見抜くなんてな。
「魔方陣描いたし、少量の魔力だけでいけるのでは?」
試しにやってみた。痛みより好奇心が勝ってしまった。紙に描いた魔方陣に手をかざし、少量の魔力を流す。
一瞬光った!よし、いける!
結果
「っ……」
体に激痛が走り、その場にうずくまる。
うずくまる拍子に机にしていた本がぶつかり、いくつかの本がドサドサと床に落ちていく。
一部、失敗。
魔力が足りず、魔方陣が焼けて紙が焦げた。ついでにベッドにも火が付いている。プチ火事がおきているが今はそれどころではない。
一部、成功。
ひらひらと4枚羽をゆっくり羽ばたかせた蝶々が本に止まった。
「やぁ…初めまして」
蝶々は触覚を左右上下に動かしている。羽は一見綺麗な青色だが、光の加減や見る角度で色が変化していく。定まらない色の羽。虫特有の体と姿。変わっていると言えば羽の大きさと不思議な模様くらいか。
「俺の言葉、わかる?」
『はい』
「じゃあさ、出てきて早々申し訳ないんだけど。火、消してほしいんだ」
『火? 火なんてどこに いやあああぁぁぁあぁ!』
蝶々が俺の言われた方向を振り向くとゴォォォ…と音を立ててベッドが燃えていることに驚き、叫びながら消火をしていた。
『はぁはぁ… あービックリしたぁ!ちょっと!部屋燃やすなんて何考えるの!?あり得ないんだけど!』
「ごめんて。というか俺じゃないし」
『じゃあ誰よ!』
「君が出てきた時に紙が燃えちゃってそのままベッドも」
『なによ!わたしのせいにしないでくれる!?人間って何でも他人のせいにしちゃってまぁ図々しいったらありゃしないわ!』
「事実なんだけどな…」
プリプリ怒る蝶々は腕くみするように細い足を交差して文句を言ってくる。
何というか、声のトーンを高く喋ってはいるが、聞いてもわかるほどの男の人の声だ。
「元気だね」
『あなたは…死にそうね、いったいどうしたのよ』
「ははは…」
横になったまま話をする。
少しずつ痛みがいつもの痛みになってきている。でもまだ起き上がれずにいる。
蝶々は気にする様子もなく、話を続けてくれている。
俺はさっき使った本と魔方陣、書き加えた後の魔方陣に魔力を流したことを短く説明した。
『あなたが書いた魔方陣は特殊なもので、召還の印となっているわ。これは偶然の産物ってところかしら。いやでも偶然にしてはちょっとできすぎてるし…』
蝶々はぶつぶつと考えてることを口にする。
「君は誰?」
『え。まさか、私を知らないの!?私は水の大精霊と恐れられている存在よ。他の書物にも載っているはず。ドヤァ✨️』
顔は虫の顔でドヤ顔なのかどうかはわからないが、わざわざ口で言うくらいなのだからドヤ顔なのだろう。
「水の大精霊様は知っているが、蝶々の姿ではなかった」
俺は指で蝶々の足をちょいちょいと軽くつつくと、なによ!とペシペシと2本の足で抵抗してくる。まったく痛くない。かわいい。
『これは姿を変えているのよ。わたしの神々しさで目が潰れないようにわたしなりの配慮よ!』
「そうなんだ」
神々しさとかどうでもいいかな。言葉がちょっと棒読みになる。
『あんた信じてないわね。というか興味なくすんじゃないわよ、何よその目は😡』
「本当の姿見てないからね」
『本当の姿は……わたしのこの姿に慣れてからにしてちょうだい』
蝶々は、羽を羽ばたかせながら全部の足をブンブンと上下に振っている。
「はいはい」
俺は軽くあしらいながらそっぽを向いてからだの向きを反対にして寝直した。
『きぃー!態度がなってないわ!わたしを呼び出しておいて何よその態度、失礼よ!1から指導し直しよ!』
「先生かよ(笑)」
『何笑ってるのよ!言っとくけどわたしは厳しいわよ!そりゃあもう やめてー!( >Д<;) って言うくらい厳しいんだから!』
「そっか、それはまた今度聞くわ」
『いま!いま聞きなさいよぉぉぉ!!』
「ふっ…く、くく (堪え笑い)」
掛け布団に少し顔を埋めて笑いを堪える。
これはしばらく退屈しなさそうだ。
あの無口に近いユキには大役かもしれんが、まあそれとなく伝えてくれるだろうと信じている。
これからどうしたものかとユキの持ってきたご飯を食べながら考える。
「今日は読書して過ごすかな…」
手持ちの本を読み漁るのもいいし、図書室に借りに行っても、あ。行けないんだった…。
「うーん」
何もできないのは歯痒いが、とりあえず手持ちの本を読み漁る。
「こっちに書き換えると調整、この文字を書き加えると大量になるっと」
「んー…量産もアリか?」
ベッドに座り、積み重ねた本を机代わりにして紙に魔方陣を描いていく。
「……魔力の流れが変だって言ってたな」
ユキの魔力感知には驚かされる。まさかそこまで見抜くなんてな。
「魔方陣描いたし、少量の魔力だけでいけるのでは?」
試しにやってみた。痛みより好奇心が勝ってしまった。紙に描いた魔方陣に手をかざし、少量の魔力を流す。
一瞬光った!よし、いける!
結果
「っ……」
体に激痛が走り、その場にうずくまる。
うずくまる拍子に机にしていた本がぶつかり、いくつかの本がドサドサと床に落ちていく。
一部、失敗。
魔力が足りず、魔方陣が焼けて紙が焦げた。ついでにベッドにも火が付いている。プチ火事がおきているが今はそれどころではない。
一部、成功。
ひらひらと4枚羽をゆっくり羽ばたかせた蝶々が本に止まった。
「やぁ…初めまして」
蝶々は触覚を左右上下に動かしている。羽は一見綺麗な青色だが、光の加減や見る角度で色が変化していく。定まらない色の羽。虫特有の体と姿。変わっていると言えば羽の大きさと不思議な模様くらいか。
「俺の言葉、わかる?」
『はい』
「じゃあさ、出てきて早々申し訳ないんだけど。火、消してほしいんだ」
『火? 火なんてどこに いやあああぁぁぁあぁ!』
蝶々が俺の言われた方向を振り向くとゴォォォ…と音を立ててベッドが燃えていることに驚き、叫びながら消火をしていた。
『はぁはぁ… あービックリしたぁ!ちょっと!部屋燃やすなんて何考えるの!?あり得ないんだけど!』
「ごめんて。というか俺じゃないし」
『じゃあ誰よ!』
「君が出てきた時に紙が燃えちゃってそのままベッドも」
『なによ!わたしのせいにしないでくれる!?人間って何でも他人のせいにしちゃってまぁ図々しいったらありゃしないわ!』
「事実なんだけどな…」
プリプリ怒る蝶々は腕くみするように細い足を交差して文句を言ってくる。
何というか、声のトーンを高く喋ってはいるが、聞いてもわかるほどの男の人の声だ。
「元気だね」
『あなたは…死にそうね、いったいどうしたのよ』
「ははは…」
横になったまま話をする。
少しずつ痛みがいつもの痛みになってきている。でもまだ起き上がれずにいる。
蝶々は気にする様子もなく、話を続けてくれている。
俺はさっき使った本と魔方陣、書き加えた後の魔方陣に魔力を流したことを短く説明した。
『あなたが書いた魔方陣は特殊なもので、召還の印となっているわ。これは偶然の産物ってところかしら。いやでも偶然にしてはちょっとできすぎてるし…』
蝶々はぶつぶつと考えてることを口にする。
「君は誰?」
『え。まさか、私を知らないの!?私は水の大精霊と恐れられている存在よ。他の書物にも載っているはず。ドヤァ✨️』
顔は虫の顔でドヤ顔なのかどうかはわからないが、わざわざ口で言うくらいなのだからドヤ顔なのだろう。
「水の大精霊様は知っているが、蝶々の姿ではなかった」
俺は指で蝶々の足をちょいちょいと軽くつつくと、なによ!とペシペシと2本の足で抵抗してくる。まったく痛くない。かわいい。
『これは姿を変えているのよ。わたしの神々しさで目が潰れないようにわたしなりの配慮よ!』
「そうなんだ」
神々しさとかどうでもいいかな。言葉がちょっと棒読みになる。
『あんた信じてないわね。というか興味なくすんじゃないわよ、何よその目は😡』
「本当の姿見てないからね」
『本当の姿は……わたしのこの姿に慣れてからにしてちょうだい』
蝶々は、羽を羽ばたかせながら全部の足をブンブンと上下に振っている。
「はいはい」
俺は軽くあしらいながらそっぽを向いてからだの向きを反対にして寝直した。
『きぃー!態度がなってないわ!わたしを呼び出しておいて何よその態度、失礼よ!1から指導し直しよ!』
「先生かよ(笑)」
『何笑ってるのよ!言っとくけどわたしは厳しいわよ!そりゃあもう やめてー!( >Д<;) って言うくらい厳しいんだから!』
「そっか、それはまた今度聞くわ」
『いま!いま聞きなさいよぉぉぉ!!』
「ふっ…く、くく (堪え笑い)」
掛け布団に少し顔を埋めて笑いを堪える。
これはしばらく退屈しなさそうだ。
9
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる