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先代の王の末路
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「へぇー、クロードいいとこ住んでるね」
「はい」
俺の部屋に着いた時のお師匠様の第一声が部屋に響く。
「降ろすよー」
俺をベッドの上に優しく降ろし、寝かせてくれた。
「あと少しで動けると思うのですが、まだちょっと…」
俺を降ろした後、彼はベッドに座る。ギシッと音が鳴り、彼が座ったところが少し沈む。
「いいよいいよ、無理に動くことじゃないし」
お水もらうねー、と彼は俺がお昼に飲んでいたあまりの水を汲んで飲んでいる。
「お師匠様」
「んー?」
俺は仰向けのまま彼に手を伸ばし、お師匠様が帰ってきたら絶対言おうと思っていた言葉を彼に言った。
「おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
彼に ふふ と優しい笑顔を向けられ、俺もつられて笑う。
「昨日までどこにいたんですか?」
「ユーメルという国だよ」
「北の方ですね」
彼は話しながら握った俺の小さい手を指で弄ぶ。
「この国とは対立しているけど、これ以上領地なんて要らないんじゃないかと思うくらいには広くて豊かな町並みだったよ。なんだろね、王様が欲深いんかね」
「民と王様以外のその周り、大臣達が欲深いんですよ、あそこは」
「そうなの?」
彼はふにふにと俺の手の平を揉む。
「はい。よく刺客送ってきますし」
「律儀だねぇ」
よく飽きないねぇと感心した声をしつつ、ふにふにと俺の手の平を揉み続けている。
「やむ終えない以外は、殺さずして返すのがこの国の決まりですから」
「彼優しいもんね」
お師匠様の言う"彼"は王様のことだ。
だいぶ親しかったが、どのような交流があったのかは知らない。不敬をあれだけ働いてもお咎めなし。
お師匠様はすごい人だが、たまに怖いときがある。
さっきもユース卿の大賢者様という言葉にお師匠様の雰囲気が一瞬変わった時も周りに緊張が走るほどだ。
そもそもなりたくてなったわけではない大賢者の称号は、お師匠様は相当嫌みたいだ。呼ばれるのも嫌うくらいに。
だが、名前が残ってしまっている以上国はお師匠様を放っておいてはくれず、敵が攻めてきた時には呼び寄せることもある。
幼少の頃一度だけあった。
愚かな王の頃の時代だった時の話。俺もお師匠様も強制で呼び寄せられ、国を丸ごと1つ消した。人も物も残さずごっそり、そこには何もなかったかのようにえぐった後だけが残るだけだった。
恐怖。この出来事から一時期この国に喧嘩を売る国はなくなった。脅威の国として恐れられ栄えた時代となったが、ある夜、事件が起きた。
「お前、俺たちを呼んだろ?」とお師匠様が寝ている俺を部屋に置いて、転移魔法で突如謁見の間で臣下達と話し合いをしていた王の前に現れた。
「ひぃ!来るな!!」
王が怯えながら尻餅をついてずりずりと後ずさりして目の前に立つお師匠様から逃げようとしていた。
お師匠様はにこにこ笑顔でその愚かな王に「俺、言ったよなぁ」と低い声と少し強めの口調で王に言う。
「呼んだらどうなるかわかってるよな?と言ったはずだ。そうだ、前の言葉を一部撤回しよう。首だけでは足りないな、魂ごと消滅させるのが今のお前に相応しい」
王の眉間に人差し指をトンと置くと小さな魔方陣が展開され、ジュッという音と共にあっという間に姿が消えた。
「罪の対価はお前の魂をもって償ってもらうとして。あぁ、こんな腐った魂ではお釣りも出ぬわ。足りぬ罪の借金は他の者が代償して払もらわないとなぁ」
くるりと10人以上いる臣下の方を向いたお師匠様は、臣下達の方に手をかざして魔方陣を展開し始めた。
「「「うわあああああああぁあぁぁぁぁ!!!」」」
四方八方に逃げ出す臣下達。
「王の愚行を止めるのも臣下の役目、君たちは…おやおやぁ?職務怠慢かなぁ?」
お師匠様は臣下達の頭からシャボン玉のように浮かび上がってくる彼らが行ってきた過去の記憶を見て、「残念だよ。」と真顔で言った後、すぐにまた笑顔に戻った。
魔方陣が臣下達を捉え、彼の方に引き寄せられていく。
「やめろぉぉぉ!!やめてくれぇぇぇぇ!!」
「悪かった!もうしない!だから命だけはぁぁぁあああ!」
ジュッ
王様と臣下10名以上。そして宰相と側近数名が姿を消した。
その事件があった後、王に強く反対していた側妃は軟禁から解放され、その息子が次の王となった。
それが今の王様だ。
急遽決まった新王。最初の仕事が裁判となった。
話し合いの結果、死刑はなし。本人の一番嫌がる事をすることで罪を償うこととなった。
「大賢者のままでいること」
「…………」
すごくすごく嫌そうな顔をしていたらしい。
俺の大賢者の称号もそのままとなったのだ。
事の発端を新王とお師匠様から聞かされたときは、頭の処理が追い付かずショート。話の途中で気絶した。
俺たちが転移で自分の家に帰った後、夜寝る間際、急に「いやー、ごめんごめん、ついやっちゃった☆」と頭をポリポリかきながら、軽く謝られたが、「やっちゃった☆じゃないですよ!!なにやってんですか!!!」と小さくなった姿でがっつり怒ったことはまだ覚えている。
そういうことがあってから、彼を怒らすなという(ほぼ暗黙の)ルールがこの城に勤めるときに最初に習うことだ。(騎士団の基本事項の本にも大きく書かれている。多分、他の本にも。)
「お師匠様、お腹すきませんか?」
俺の横でごろごろと寝転びながら枕の横に置いてあった俺の読みかけの本をパラパラと読んでいた彼に声をかける。
「はい」
俺の部屋に着いた時のお師匠様の第一声が部屋に響く。
「降ろすよー」
俺をベッドの上に優しく降ろし、寝かせてくれた。
「あと少しで動けると思うのですが、まだちょっと…」
俺を降ろした後、彼はベッドに座る。ギシッと音が鳴り、彼が座ったところが少し沈む。
「いいよいいよ、無理に動くことじゃないし」
お水もらうねー、と彼は俺がお昼に飲んでいたあまりの水を汲んで飲んでいる。
「お師匠様」
「んー?」
俺は仰向けのまま彼に手を伸ばし、お師匠様が帰ってきたら絶対言おうと思っていた言葉を彼に言った。
「おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
彼に ふふ と優しい笑顔を向けられ、俺もつられて笑う。
「昨日までどこにいたんですか?」
「ユーメルという国だよ」
「北の方ですね」
彼は話しながら握った俺の小さい手を指で弄ぶ。
「この国とは対立しているけど、これ以上領地なんて要らないんじゃないかと思うくらいには広くて豊かな町並みだったよ。なんだろね、王様が欲深いんかね」
「民と王様以外のその周り、大臣達が欲深いんですよ、あそこは」
「そうなの?」
彼はふにふにと俺の手の平を揉む。
「はい。よく刺客送ってきますし」
「律儀だねぇ」
よく飽きないねぇと感心した声をしつつ、ふにふにと俺の手の平を揉み続けている。
「やむ終えない以外は、殺さずして返すのがこの国の決まりですから」
「彼優しいもんね」
お師匠様の言う"彼"は王様のことだ。
だいぶ親しかったが、どのような交流があったのかは知らない。不敬をあれだけ働いてもお咎めなし。
お師匠様はすごい人だが、たまに怖いときがある。
さっきもユース卿の大賢者様という言葉にお師匠様の雰囲気が一瞬変わった時も周りに緊張が走るほどだ。
そもそもなりたくてなったわけではない大賢者の称号は、お師匠様は相当嫌みたいだ。呼ばれるのも嫌うくらいに。
だが、名前が残ってしまっている以上国はお師匠様を放っておいてはくれず、敵が攻めてきた時には呼び寄せることもある。
幼少の頃一度だけあった。
愚かな王の頃の時代だった時の話。俺もお師匠様も強制で呼び寄せられ、国を丸ごと1つ消した。人も物も残さずごっそり、そこには何もなかったかのようにえぐった後だけが残るだけだった。
恐怖。この出来事から一時期この国に喧嘩を売る国はなくなった。脅威の国として恐れられ栄えた時代となったが、ある夜、事件が起きた。
「お前、俺たちを呼んだろ?」とお師匠様が寝ている俺を部屋に置いて、転移魔法で突如謁見の間で臣下達と話し合いをしていた王の前に現れた。
「ひぃ!来るな!!」
王が怯えながら尻餅をついてずりずりと後ずさりして目の前に立つお師匠様から逃げようとしていた。
お師匠様はにこにこ笑顔でその愚かな王に「俺、言ったよなぁ」と低い声と少し強めの口調で王に言う。
「呼んだらどうなるかわかってるよな?と言ったはずだ。そうだ、前の言葉を一部撤回しよう。首だけでは足りないな、魂ごと消滅させるのが今のお前に相応しい」
王の眉間に人差し指をトンと置くと小さな魔方陣が展開され、ジュッという音と共にあっという間に姿が消えた。
「罪の対価はお前の魂をもって償ってもらうとして。あぁ、こんな腐った魂ではお釣りも出ぬわ。足りぬ罪の借金は他の者が代償して払もらわないとなぁ」
くるりと10人以上いる臣下の方を向いたお師匠様は、臣下達の方に手をかざして魔方陣を展開し始めた。
「「「うわあああああああぁあぁぁぁぁ!!!」」」
四方八方に逃げ出す臣下達。
「王の愚行を止めるのも臣下の役目、君たちは…おやおやぁ?職務怠慢かなぁ?」
お師匠様は臣下達の頭からシャボン玉のように浮かび上がってくる彼らが行ってきた過去の記憶を見て、「残念だよ。」と真顔で言った後、すぐにまた笑顔に戻った。
魔方陣が臣下達を捉え、彼の方に引き寄せられていく。
「やめろぉぉぉ!!やめてくれぇぇぇぇ!!」
「悪かった!もうしない!だから命だけはぁぁぁあああ!」
ジュッ
王様と臣下10名以上。そして宰相と側近数名が姿を消した。
その事件があった後、王に強く反対していた側妃は軟禁から解放され、その息子が次の王となった。
それが今の王様だ。
急遽決まった新王。最初の仕事が裁判となった。
話し合いの結果、死刑はなし。本人の一番嫌がる事をすることで罪を償うこととなった。
「大賢者のままでいること」
「…………」
すごくすごく嫌そうな顔をしていたらしい。
俺の大賢者の称号もそのままとなったのだ。
事の発端を新王とお師匠様から聞かされたときは、頭の処理が追い付かずショート。話の途中で気絶した。
俺たちが転移で自分の家に帰った後、夜寝る間際、急に「いやー、ごめんごめん、ついやっちゃった☆」と頭をポリポリかきながら、軽く謝られたが、「やっちゃった☆じゃないですよ!!なにやってんですか!!!」と小さくなった姿でがっつり怒ったことはまだ覚えている。
そういうことがあってから、彼を怒らすなという(ほぼ暗黙の)ルールがこの城に勤めるときに最初に習うことだ。(騎士団の基本事項の本にも大きく書かれている。多分、他の本にも。)
「お師匠様、お腹すきませんか?」
俺の横でごろごろと寝転びながら枕の横に置いてあった俺の読みかけの本をパラパラと読んでいた彼に声をかける。
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