夜間勤務のメイド

灯埜

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いつもの

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「あ、そういえばクロードにお土産買ってきたんだった」
小さい肩下げバッグから串焼きとシュークリームの乗った皿を出してきた。

「お師匠様、そのまま入れたらだめですよ。衛生的に良くないので何かに入れてからバッグに入れてください」
「大丈夫!これは私が作った特製マジックバッグだからねっ」
ドヤ顔で説明し始める。
「衛生面、新鮮度抜群、保冷保温、食品や物の保存性は高く、長持ち。腐りにくいことから1年ずっと入れてても腐らず入れたままの状態を保ち続けられる優れもの。そして、どんなことにも耐えられる耐久性MAX、外皮内皮の丈夫さMAX、その他諸々の付与に加え、大容量の無限収納機能付き。すごいでしょ(ドヤァァ)」
「す、すごいですね」
そんな小さなバッグに高度魔法と付与つけすぎな気がする。
「この鞄の中で寝泊まりしても大丈夫なように家とかも入ってるよ」
「家」
「そ。簡素な家だけど、今度招待するね」
「あ、ありがとうございます(?)」

(だめだ混乱してきた)
家って何。家ってマジックバッグの中に入ったっけ??
野宿する時とか宿代かからないからとても便利だよ、とけろりとした顔で言ってる。
なんというか、常識が違いすぎる。

「これ、美味しかったから、お土産」
「ありがとうございます」
彼の言った通り、バッグから出した串焼きはできたてホカホカのままだ。
俺はゆっくり起き上がり、彼から串焼きを受け取ってひとくち食べた。
「はっ、はふっ、おいふぃれひゅ」
あまりの熱さに口が閉まりきらず、彼からお水をもらって飲んだ。
「ね、おいしいでしょ。城下町で買ったんだ。焼きたてだよ!って言われたから3つ買って1つ食べたらおいしかったからクロードにもと思ってさ」
「ふぅ、熱かったぁ。ありがとうございます。久々に串焼き食べました」
「そうなの?じゃあ、今度家でお肉パーティーしよう。ここに来るまでにたくさんのお肉狩ってきたから食べ放題だよ」
「いいですね、楽しみです」
残りの肉は俺の手と口では食べづらいため苦戦していると、それを見た彼が串から肉を取って、魔法でひとくちサイズに切ってくれた。
バッグから出してくれたフォークで食べ進める。
チラリと前を見ると串焼きを食べているように見えないほど、綺麗な所作で彼も肉を食べ進めていく。

子供の姿だと食べる量も普段食べている量よりだいぶ減る。
ここに来る前に何かしら食べているためお腹は半分くらいだったが、串焼きでとどめといったところか。

シュークリームも美味しかったからもらってきた、と皿を差し出してきたので1つ受け取り一口食べる。デザートは別腹。

俺はお腹がいっぱいになり、「もう食べられない」ところりとベッドに横になった。
「こらこら、デブりますよ」と彼は俺を抱き起こし、膝に乗せる。

あ、これ知ってる。
お師匠様のいつもの癖。帰ってきた時やふとした時にやってくる通称甘々、いや甘えたモード。小さい頃から俺にしかやらない行動だ。(他では見たことがないから)

「何するんですか」
俺をぎゅっと後ろから抱き締めて頭に顔を埋めてくる。
「クロード充電中」
「なんですかそれ(笑)」
「んふふ」
薬草のお風呂入ったの?と聞かれ、はい。と答える。
そっかぁいい匂いだね、すんすん すぅー。 いや嗅ぐなよ。
「変なお師匠様で、す、ねぇ」
少し抵抗したが、びくともしないため諦めて嗅がれることにした。
「クロード、ただいまー」
ゆるい声が後頭部から聞こえる。
「おかえりなさいお師匠様」
俺はその声に思わず笑ってしまった。

その後何の勉強してるの?という話になり、説明しようとしたところで廊下に彼女の歌声が響いてきた。
(あ、もう21時なのか。ということは皆寝る時間なんだな。あ、お師匠様ももしかしたらこの歌を聞いて寝てしまうかもしれない)
抱き締める彼を見ようと振り替えると、ぐぅーと寝息をたてて眠っていた。
「お疲れさま」
俺は後ろに全体重をかけて押して彼をベッドに押し倒した。ちょっと強めにベッドに倒れ込んだけど、大丈夫だよな?柔らかいから怪我はしないと思うけど、衝撃がすごかった。
俺もその衝撃で跳ねてというかちょっと飛んで、彼の膝から落ち、腰をぶつけて悶絶。涙目で腰をさすりながら彼の怪我の有無を見て、無いことに一安心した。

彼に掛け布団をかけ、俺はベッドを降りて部屋を出た。

目指すは台所。

ペタペタと裸足の音を廊下に響かせながら長く薄明かりな廊下を歩いていく。

ひょこっと台所を覗くと、やっぱり彼女はいた。ラナンも一緒だ。

『あら、やっときたわね』
机の上にころりと寝転んでいたラナン。
「ごめんラナン、置いていって」
『いいのよ、私は私でたのしんできたから』
よく見るとラナンのお腹が丸くぽっこりと膨らんでいる。いったい何を食べたんだろう。
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