夜間勤務のメイド

灯埜

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大人に戻ったのに、また…

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俺がいなくなってどうやら一騒動があったようだ。

反省として書類の山を片付けることに。


なんとか終わらせて自室に戻る際、黒装束の男が窓ガラスを割って入ってきて対処するも、予期せぬことが起こる。

意図せずまた子どもの姿に戻ってしまった彼は、空腹と疲れと黒装束の男を何とかしてもらおうと彼女の元に向かう。







 ──────────────────────







落ち着け、俺。

まず自分の身体を見る。よし、元に戻っている。
たまに戻らないときがあるため、毎回確認する。

捲った両手足の裾を元に戻し、ベッドから降りて周りを改めて見る。
やはり見慣れない部屋だ。

この部屋にはベッドと一つの椅子、ベッドサイドテーブルが一つだけの簡素な寝室。

扉を開けると廊下と思いきやもう一つの部屋があった。

ハーブの葉や紅茶の瓶、クッキーの入った瓶などいろいろ入った瓶が棚に綺麗に並べられている。

作業部屋、というのが相応しい部屋だ。
机には本や何かのメモ書きなどが置いてあり、綺麗に置かれている。

少し見て扉を閉めた。
もう一つ扉はあったが、廊下かもしくは別の部屋か。なんか覗いては行けない気がしてやめた。

寝室に戻り、転移魔法で自室に戻ろうと足元を見ながらかかとをとんとんと軽く叩く。
魔方陣が足元に展開、無事に魔力が安定していることにほっとする。
顔を上げるとふとサイドテーブルに紙が一枚置いてあることに気がつき、手に取って見ると、

"よく眠れましたか?お昼には戻ります" 

と書かれていた。


俺はその紙の端を破り、ペンで

"ごちそうさまでした。おいしかったです。ありがとうございました。"

と書き、サイドテーブルに置いてきた。


パシュッ


自室に戻るとなにやら廊下が騒がしい。

「どうかしたのか?」
扉を開けて廊下を覗くと、団長とちょうど目が合う。「あ!副団長がいました!!」

「え!?本当ですか!あ、いた!」
他の団員も俺の自室前に、わっ! と集まり、

アキュール:「どこに行っていたんですか!?」

リオン:「追跡魔法にも捕まりませんでしたし、他の魔法にも引っ掛かりませんでしたし!」

リック:「心配したんですよ!!」

ユキ:「よかった」

ひしっとみんなに抱きつかれ、どうしていいかわからずユース卿の方に助けをた求めるように見ると、後ろを向いて俯いたユース卿がボソリと言ったのが聞こえた。
「迷子とか、やめてくださいよぉ」

あれ…💧 ユース卿、泣いてる? なんで??💧


「えっと、すみません、でした?」


「ほんとですよ。二度としないでくださいよ」
アキュールが一番号泣してた気がする。
いやほんとごめんて。


一騒動があった後、何故か騒動の始末書を書かされることに。あと反省文も。

カリカリと書いている最中、考える。

あの部屋は、魔法を弾くのか?
部屋で使ったときは魔方陣が出た。では、外部からの魔法は弾く仕組みなのか?魔力の痕跡は感じられなかった気がするが……

うーん、と考えていると、団長から「書けたんですか?」とじろりと睨まれ、手が止まっていたことに気が付き急いでペンを進める。


「ふぅ、書き終えた…」
(つかれた…)
知らない部屋にいたとは書けないため、なんとなく濁して書いたつもりだが、通用するだろうか。

「反省として、今日1日書類仕事ですからね」
「はい」
(反省て。なにもしてないんだけども)


「ユース卿」
「はい」
「俺は、皆に信頼されていたんですね」

代理で就任してからそんなに経っておらず、精一杯やれるだけのことはしてきた。(グウェンに聞きながらだが)
しかし、あんなに大騒ぎするほど心配されたのは初めてだった。

「そうですよ。皆があんなに大騒ぎして心配するほどですから、信頼関係は築けていると私は思っています」

「そうか ありがとな」
「こちらこそ、ありがとうございます。それを皆さんにも言ってあげてください。喜ぶと思いますよ」

ユース卿は、笑顔で軽くお辞儀をし、部屋を出た。


「……さて、書類仕事頑張りますか」
机に山のように積まれた書類を今日中に片付けることが今回のノルマとなっている。
何とかして終わらせなければ。




「お………おわっ、た…」

山のように積まれた書類を今日中に終わらせた俺は、時計を見る。

20:00を過ぎている。

嘘だろ、夕飯また食べ損ねた。
転移で自室に……そう何度も使ってはいられない。歩いて自室に戻る。
重い足取りで自室に向かう。

廊下を歩いているとガシャン!と窓ガラスが割れる音が後ろから聞こえたので振り向くと黒装束を着た俺と同じ背丈の人が短剣を持ってこちらに襲いかかってきていた。

ドス!
「ぅっ!」
俺は咄嗟に体を低くし、男のみぞおちに肘を力一杯入れる。
肩幅や手の大きさ、微かに聞こえた声からして、奴は男だ。

「ゲホ、ゲホ!くそ!」
咳き込みながら立ち上がった男は、再び襲いかかってきたが返り討ちにした。全部素手で事足りた。
「何が目的で侵入したんだ?」
「捕らえられた仲間を、……もう、終わりだ…」

ぐったりしている男は懐から何かを取り出し平たい楕円形のモノに急激に魔力を込め始める。
「それは、爆破装置か。また厄介なものを!」
こんなところで自爆されては廊下がめちゃくちゃになるうえに面倒なことになる。

「させるか」
俺は握って離さない男の手首に手をかざし、自身の魔力を発動させる。
手首に自身の魔方陣を展開させ、男の魔力を吸い取る方法をとった。
(この方法はあまり好きではないのだがっ……!)

急速に魔力をほぼ吸い取ることに成功。
装置も発動せず、男も無事だ。

無事じゃないのは俺一人だけ。
「はぁ…… つかれたー!」
また体が縮み、子どもの姿になってしまったのだ。

鍵付き魔法の条件に引っ掛かったのだろう。
吸い取っているときに、俺の体からお師匠様の見慣れた魔方陣が見えたのだ。発動した証拠にこの有りさま…。

パタリと廊下に寝転がり、ことが大きくならなかったとに、安堵のため息をつく。

「こいつ、どうしようか…」
子どもの姿では、重くて運べない。
この姿の時は、なるべく魔法は使わないようにしている。

「とりあえず、縛っておくか」
両手足の裾を捲り上げ、動けるようになってから、どこかの部屋にあった縄で男を柱に(重くて苦労した)縛り付けて放置することにした。
身体検査もして暗器も取り除いたし、抵抗はしないと思うのだが、念のためあのメイドには知らせておこうと思った。


縛り終えた頃、21時になったのか彼女の歌声が城中に響き渡りだした。


「これを持って帰るのか…」
さっきまで着ていた上着とマントを引きずって自室に何とか戻ってきた。

「こんなに疲れているのに、眠れないなんてな……」


ソファーに引きずってきた服類を放り投げて、椅子をベッドの近くに持っていき、椅子によじ登ってベッドに乗り移った。

コロリと寝転がり、目を瞑る。

やっぱり、眠れない。


起き上がりベッドから降りて裸足で部屋を出た。昨日も裸足だったが、廊下はひんやりしていて気持ちがいい。

俺はのろのろと台所を目指した。
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