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第1章 幼・少年期 新たな人生編
第十七話「妹、’’アリス’’の誕生」
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翌朝。
速達で、グレイス王宮に手紙が届いた。
宛先は、俺だった。
誰からだろうか。
「父さんからだ」
差出人は、ルドルフだった。
速達で送ってくるということは、何かイレギュラーがあったのか。
封を開けて、中身を見てみる。
「どうしたのよ」
「父さんからの速達の手紙です」
「速達って、地竜で配達するあれよね?」
「そうなんですか?」
知らなかった。そうだったのか。
いやそんなことはどうでもいい。
早く手紙を読まなければ。
『ロトアの妊娠が分かった!
ベル、お前はお兄ちゃんになるんだ!』
「えっ……?」
「良かったじゃないベル!
弟か妹が生まれるって!」
そんなに急に?
全然、そんな感じはなかったような……。
……あ、見せてたわ。
エリーゼが寝た後、二人は何度も行為に及んでいた。
俺が幼児だった頃にできていないのが不思議なくらいだ。
でも、特に体調が悪そうな様子とかはなかった。
ルドルフはロトアが大好きだから、俺とエリーゼが出た後に体調が悪くなったロトアを急いで医者に連れて行ったのかもしれない。
そこでたまたま妊娠が発覚したとか、そんな感じだろう。
にしても、めでてえな。
俺もついにお兄ちゃんか。
男の子でも女の子でも、大切にしよう。
「手紙、まだ続きがあるわよ。
『なるべく急ぎ目で帰ってきてくれると助かる』だって」
「本当ですね……。
まあ目的は達成しましたし、早めに出発しましょう」
本来俺がここまで来た目的は、本を借りるためだった。
多少誤差はあったが、アヴァンをかなり回れたし満足だ。
コーネルに事情を説明して、早めに馬車を手配してもらおう。
---
「お父様! 元気でね!」
コーネルに伝えると、すぐに動いてくれた。
それも、馬車ではなく「地竜」。
聞いたところによると、地竜は馬とは違い、長い時間走り続けることができるらしい。
馬車が時速15キロから20キロで移動できるのに対し、
竜車は時速40から60キロほどで数時間走り続けることが可能である。
そのため、150キロほど離れているラニカまでは三時間もかからずに行ける。
ただ、馬に比べてかなり高い。
だから、あまり気軽には借りられないのだ。
だが、コーネルはわざわざお金を出してくれた。
やっぱりこの人、優しいんじゃないか。
「またいつでもおいで、ベル君」
「はい! お元気で!」
コーネルをはじめとする王族は庭まで見送ってくれた。
一日しかいなかったが、ちょっと名残惜しいな。
風呂もでかくて、ベッドも柔らかくて気持ちよかった。
夜の食事会もすごく楽しかったし、絶対また来よう。
ちなみに、今度もリベラが同伴してくれる。
わざわざすまんねぇ。
リベラは器用だな。馬も地竜も乗りこなすとは。
俺達はグレイス家に別れを告げ、アヴァンを出て急いでラニカへ向かった。
---
「おかえり、二人とも」
「ただいま」
「ただいま! ねえ、妊娠したってほんとなの?!」
「ええ。待望の一人目……ゴホン、二人目ね」
ポロッと言いかけよったぞこいつ。
別に俺が実の息子じゃないって知られたところで何もないんだけど。
「それで、男の子なの? 女の子なの?」
「女の子よ」
「わぁっ! 嬉しいわね、ベル!」
「そうですね! 今から出産が待ちきれません!」
エリーゼに負けないくらいに、俺もかなり興奮している。
前世でも俺は一人っ子だったし、兄弟ができるというのは初めての経験だ。
妹か。可愛いんだろうなぁ。
マジで待ちきれないな。
「父さんは?」
「おかえり、ベル、エリーゼ!
妹ができたぞぉぉぉぉ!」
「わぁっ!?」
「ちょっ!?」
ルドルフは俺とエリーゼを軽々持ち上げ、グルグルと回転しだした。
エリーゼはキャハキャハと笑っているが、俺は……。
「うっ……!」
「ベル?」
「オロオロオロオロ!」
「ベル!?」
俺は盛大にゲロをぶちまけた。
---
約七か月後。
妹が生まれた。
ロトアは、早産だった。
村の産婆さんによると、生まれた子供は逆子だったらしい。
出産はかなり難航し、産婆には「出産を諦めないと母子共に危ない」と言われた。
ロトアはそれでも産みたいと必死に出産を続けたため、俺も治癒魔法で微力ながら手助けをした。
そして約10時間にもわたる分娩は、無事に終わった。
エリーゼは泣いて喜び、手を握っていたルドルフも子供のように涙を流した。
そうして生まれた女の子は、「アリス」と名付けられた。
俺によく似た金髪で、ルドルフと同じエメラルドグリーンの瞳。
ほんとに俺にそっくりだな。
ロトアから産まれた時点で、俺と血縁はない。
でも、そんなことは関係ない。
俺は、誰が何と言おうと二人の子供だ。
だから、俺はこの子の兄である。
「あー!」
「可愛いわねぇ、アリス!」
俺も六年前まであんなだったのか。
頭に喋りたい言葉は浮かんでいるのに、「あー」とか「うー」とかしか言えないあのつらさと言ったら。
……まさか、アリスも俺と同じ転生者だったりする?
いや、この子はちゃんとルドルフとロトアの子だから、そんなことはありえない。
いやぁ、それにしても可愛いなぁ。
妹ができたっていう実感がまだ湧かないから、どう接していいかわからない。
なんか、違う生命体を相手にしている気分だ。
「ベルもいらっしゃい」
「……はい」
触るのが嫌だとか、そんなんじゃない。
なんか、怖いんだよな。
赤ん坊を触るのは初めてだから、どうしていいかわからないというか。
「そんなに怖がらなくてもいいのよ?」
「意外と年相応なところもあるじゃないか。
お前も可愛いなぁ」
「ほら、怖くないわよ。
アリス、お兄ちゃんでちゅよー」
「あーい」
ロトアに手を掴まれるが、抵抗はしない。
そのままゆっくりアリスに手を伸ばすと、アリスは俺の指を握った。
「かっ、可愛い……!」
「怖くないでしょ?」
「ベルはビビりなのね!」
「う、うるさいです」
ああ、やばい。
ずっと触っていられる。
大きくなったら、きっと美人になるだろう。
そもそもロトアとルドルフがどちらも美形だから、その娘が可愛くないわけがない。
エリーゼが近くにいるということで、アリスまでツンデレキャラになってしまったらどうしよう。
あまり甘やかさないようにしないと、家にエリーゼが二人いるなんてことになってしまう。
それはそれで悪くはないが、二人のエリーゼを相手するなんて、考えただけで頭が痛くなる。
大きくなるのが楽しみだな。
---
そういえば、七歳になった。
エリーゼも十歳になったということで、去年の12月、グレイス王宮に招かれて盛大な誕生日会を行った。
総勢200人以上の貴族が集まり、とても賑やかなものになった。
アリスは、すくすくと育っている。
赤ん坊は泣くのが仕事だと言われるように、それはもうよく泣いた。
それでいうと、俺は赤ん坊の頃から一切泣かなかった。
それを指摘されてギクッとしたが、結局俺は「ちょっとしたことで泣かない強い赤ちゃんだった」という結論に至った。
そんな赤ん坊存在するのかよ。
最近、ルドルフと一緒に付近の魔物を倒すのが日課となりつつある。
エリーゼもそれに参加し、今は三人でそれを毎日のように行っている。
ルドルフは、とても強い。
あいつが目をつぶりながら戦っても、敵が一瞬で消えていく。
ルドルフばかり魔物を討伐してもつまらないので、時々俺達にも手伝わせてくれた。
そのおかげもあってか、魔術が格段に上達した。
一人で黙々と練習するよりも、実戦経験を積む方が効果的なのかもしれない。
俺はついに、火上級魔術師になってしまった。
上級は、普通の魔術師が十年近く頑張らなければ習得できないレベルの階級らしい。
それをたった五年で、しかもこんな子供が習得してしまうとは。
我ながら天才だと思うんだ。
あまり天狗になりすぎるのもよくないか。
ここまで来たら、火魔術を極めようと思う。
次点で水、雷くらいの感じで。
上級にもなると、普通の魔物じゃ相手にならなくなってしまった。
この付近にいる魔物といえば、猪のような魔物『ブラックボア』と、狼のような魔物『ヴァンガードウルフ』、それと猿の魔物『マスモンキー』くらい。
上級火魔術『炎龍』で一網打尽にできる。
このフレイムドラゴンは、そこまで規模の大きい魔法ではない。
三体の炎の龍を作り出し、それを操って魔物にぶつける。
それだけ聞くと、あまり強いと感じないかもしれない。
だが、本番はここからだ。
なんとこの魔法、自分でいつでも起爆することができるのだ。
敵に触れた瞬間でも、目くらましとして使いたい場合でも、自分の好きなタイミングで爆発させることができる。
唯一の欠点は、消費魔力がかなり高いこと。
三体の龍を操るときは、常時魔力を使い続けなければならない。
故に、長時間使うことはできない。
一気にケリをつけたい時とかは、この魔法がかなり便利だ。
他にも三つの上級火魔術の技があるが、割愛させてもらう。
エリーゼの剣術の方も順調である。
エリーゼも極める剣術を火属性に限定したらしく、最近はずっと火属性剣術しか使っていない。
剣術の属性は、四種類。
火、水、雷、そして風。
ルドルフは火特級、リベラは水聖級。
そう、魔術にはある土属性の技はないのだ。
剣からどうやって土を出すんやっちゅう話なんですけどね。
エリーゼはアヴァンに行った時にテペウスに買ってもらった剣で、魔物を討伐している。
エリーゼにとってかなり使いやすいようで、楽しそうに魔物を倒している。
ルドルフが言うには、普通に大人が使うものと同じサイズらしい。
やっぱ剣才はピカイチなんだろうな。
そんなエリーゼは、火属性剣術が上級になった。
動きも以前と比べて格段に速くなり、技の精度、威力共に著しい成長が見られた。
ルドルフから上級剣士になったことを認められたと言いながら、エリーゼは俺を抱きしめてきた。
普通に力が強すぎて絞め殺されそうになった。
この一年くらいで、俺もエリーゼも飛躍的な成長を遂げた。
特に「世界を冒険したい」という願望とかはないが、もう少し大きくなったら冒険者になってみるのもありかもしれない。
もちろん、エリーゼと一緒に。
「お父さん! 遊びに行ってくるわ!」
「おう。気をつけろよ」
今日は、二人で平原の方へ遊びに行く。
……という体で、二人きりで魔物を討伐しに行く。
ルドルフ抜きでどれだけやれるかを試してみたいと思ったのだ。
俺とエリーゼは、それぞれ上級魔術師と上級剣士。
ルドルフの監視下でも全く問題なかったため、二人きりで行っても大丈夫だろう。
「さあ! たくさん倒すわよ!」
「ちょっとエリーゼ! 声が大きいです!」
俺達は、当然両親に無許可で森の方へ行く。
だって絶対許してもらえないし。
そんなに酷い傷を負わなければ俺の初級治癒魔法でも治せるし、バレないだろう。
あんな雑魚魔獣を相手に、手傷を負うわけがない。
森までは歩いて一時間弱。
森を越えると隣村であるヘコネ村があるが、そんなに深いところまでは潜らないようにしよう。
深いところほど魔物が強くなる、みたいなことはない。
程よく深いところで、何体か魔物を倒して帰ろう。
あまり遅くなりすぎても怒られるし。
速達で、グレイス王宮に手紙が届いた。
宛先は、俺だった。
誰からだろうか。
「父さんからだ」
差出人は、ルドルフだった。
速達で送ってくるということは、何かイレギュラーがあったのか。
封を開けて、中身を見てみる。
「どうしたのよ」
「父さんからの速達の手紙です」
「速達って、地竜で配達するあれよね?」
「そうなんですか?」
知らなかった。そうだったのか。
いやそんなことはどうでもいい。
早く手紙を読まなければ。
『ロトアの妊娠が分かった!
ベル、お前はお兄ちゃんになるんだ!』
「えっ……?」
「良かったじゃないベル!
弟か妹が生まれるって!」
そんなに急に?
全然、そんな感じはなかったような……。
……あ、見せてたわ。
エリーゼが寝た後、二人は何度も行為に及んでいた。
俺が幼児だった頃にできていないのが不思議なくらいだ。
でも、特に体調が悪そうな様子とかはなかった。
ルドルフはロトアが大好きだから、俺とエリーゼが出た後に体調が悪くなったロトアを急いで医者に連れて行ったのかもしれない。
そこでたまたま妊娠が発覚したとか、そんな感じだろう。
にしても、めでてえな。
俺もついにお兄ちゃんか。
男の子でも女の子でも、大切にしよう。
「手紙、まだ続きがあるわよ。
『なるべく急ぎ目で帰ってきてくれると助かる』だって」
「本当ですね……。
まあ目的は達成しましたし、早めに出発しましょう」
本来俺がここまで来た目的は、本を借りるためだった。
多少誤差はあったが、アヴァンをかなり回れたし満足だ。
コーネルに事情を説明して、早めに馬車を手配してもらおう。
---
「お父様! 元気でね!」
コーネルに伝えると、すぐに動いてくれた。
それも、馬車ではなく「地竜」。
聞いたところによると、地竜は馬とは違い、長い時間走り続けることができるらしい。
馬車が時速15キロから20キロで移動できるのに対し、
竜車は時速40から60キロほどで数時間走り続けることが可能である。
そのため、150キロほど離れているラニカまでは三時間もかからずに行ける。
ただ、馬に比べてかなり高い。
だから、あまり気軽には借りられないのだ。
だが、コーネルはわざわざお金を出してくれた。
やっぱりこの人、優しいんじゃないか。
「またいつでもおいで、ベル君」
「はい! お元気で!」
コーネルをはじめとする王族は庭まで見送ってくれた。
一日しかいなかったが、ちょっと名残惜しいな。
風呂もでかくて、ベッドも柔らかくて気持ちよかった。
夜の食事会もすごく楽しかったし、絶対また来よう。
ちなみに、今度もリベラが同伴してくれる。
わざわざすまんねぇ。
リベラは器用だな。馬も地竜も乗りこなすとは。
俺達はグレイス家に別れを告げ、アヴァンを出て急いでラニカへ向かった。
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「おかえり、二人とも」
「ただいま」
「ただいま! ねえ、妊娠したってほんとなの?!」
「ええ。待望の一人目……ゴホン、二人目ね」
ポロッと言いかけよったぞこいつ。
別に俺が実の息子じゃないって知られたところで何もないんだけど。
「それで、男の子なの? 女の子なの?」
「女の子よ」
「わぁっ! 嬉しいわね、ベル!」
「そうですね! 今から出産が待ちきれません!」
エリーゼに負けないくらいに、俺もかなり興奮している。
前世でも俺は一人っ子だったし、兄弟ができるというのは初めての経験だ。
妹か。可愛いんだろうなぁ。
マジで待ちきれないな。
「父さんは?」
「おかえり、ベル、エリーゼ!
妹ができたぞぉぉぉぉ!」
「わぁっ!?」
「ちょっ!?」
ルドルフは俺とエリーゼを軽々持ち上げ、グルグルと回転しだした。
エリーゼはキャハキャハと笑っているが、俺は……。
「うっ……!」
「ベル?」
「オロオロオロオロ!」
「ベル!?」
俺は盛大にゲロをぶちまけた。
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約七か月後。
妹が生まれた。
ロトアは、早産だった。
村の産婆さんによると、生まれた子供は逆子だったらしい。
出産はかなり難航し、産婆には「出産を諦めないと母子共に危ない」と言われた。
ロトアはそれでも産みたいと必死に出産を続けたため、俺も治癒魔法で微力ながら手助けをした。
そして約10時間にもわたる分娩は、無事に終わった。
エリーゼは泣いて喜び、手を握っていたルドルフも子供のように涙を流した。
そうして生まれた女の子は、「アリス」と名付けられた。
俺によく似た金髪で、ルドルフと同じエメラルドグリーンの瞳。
ほんとに俺にそっくりだな。
ロトアから産まれた時点で、俺と血縁はない。
でも、そんなことは関係ない。
俺は、誰が何と言おうと二人の子供だ。
だから、俺はこの子の兄である。
「あー!」
「可愛いわねぇ、アリス!」
俺も六年前まであんなだったのか。
頭に喋りたい言葉は浮かんでいるのに、「あー」とか「うー」とかしか言えないあのつらさと言ったら。
……まさか、アリスも俺と同じ転生者だったりする?
いや、この子はちゃんとルドルフとロトアの子だから、そんなことはありえない。
いやぁ、それにしても可愛いなぁ。
妹ができたっていう実感がまだ湧かないから、どう接していいかわからない。
なんか、違う生命体を相手にしている気分だ。
「ベルもいらっしゃい」
「……はい」
触るのが嫌だとか、そんなんじゃない。
なんか、怖いんだよな。
赤ん坊を触るのは初めてだから、どうしていいかわからないというか。
「そんなに怖がらなくてもいいのよ?」
「意外と年相応なところもあるじゃないか。
お前も可愛いなぁ」
「ほら、怖くないわよ。
アリス、お兄ちゃんでちゅよー」
「あーい」
ロトアに手を掴まれるが、抵抗はしない。
そのままゆっくりアリスに手を伸ばすと、アリスは俺の指を握った。
「かっ、可愛い……!」
「怖くないでしょ?」
「ベルはビビりなのね!」
「う、うるさいです」
ああ、やばい。
ずっと触っていられる。
大きくなったら、きっと美人になるだろう。
そもそもロトアとルドルフがどちらも美形だから、その娘が可愛くないわけがない。
エリーゼが近くにいるということで、アリスまでツンデレキャラになってしまったらどうしよう。
あまり甘やかさないようにしないと、家にエリーゼが二人いるなんてことになってしまう。
それはそれで悪くはないが、二人のエリーゼを相手するなんて、考えただけで頭が痛くなる。
大きくなるのが楽しみだな。
---
そういえば、七歳になった。
エリーゼも十歳になったということで、去年の12月、グレイス王宮に招かれて盛大な誕生日会を行った。
総勢200人以上の貴族が集まり、とても賑やかなものになった。
アリスは、すくすくと育っている。
赤ん坊は泣くのが仕事だと言われるように、それはもうよく泣いた。
それでいうと、俺は赤ん坊の頃から一切泣かなかった。
それを指摘されてギクッとしたが、結局俺は「ちょっとしたことで泣かない強い赤ちゃんだった」という結論に至った。
そんな赤ん坊存在するのかよ。
最近、ルドルフと一緒に付近の魔物を倒すのが日課となりつつある。
エリーゼもそれに参加し、今は三人でそれを毎日のように行っている。
ルドルフは、とても強い。
あいつが目をつぶりながら戦っても、敵が一瞬で消えていく。
ルドルフばかり魔物を討伐してもつまらないので、時々俺達にも手伝わせてくれた。
そのおかげもあってか、魔術が格段に上達した。
一人で黙々と練習するよりも、実戦経験を積む方が効果的なのかもしれない。
俺はついに、火上級魔術師になってしまった。
上級は、普通の魔術師が十年近く頑張らなければ習得できないレベルの階級らしい。
それをたった五年で、しかもこんな子供が習得してしまうとは。
我ながら天才だと思うんだ。
あまり天狗になりすぎるのもよくないか。
ここまで来たら、火魔術を極めようと思う。
次点で水、雷くらいの感じで。
上級にもなると、普通の魔物じゃ相手にならなくなってしまった。
この付近にいる魔物といえば、猪のような魔物『ブラックボア』と、狼のような魔物『ヴァンガードウルフ』、それと猿の魔物『マスモンキー』くらい。
上級火魔術『炎龍』で一網打尽にできる。
このフレイムドラゴンは、そこまで規模の大きい魔法ではない。
三体の炎の龍を作り出し、それを操って魔物にぶつける。
それだけ聞くと、あまり強いと感じないかもしれない。
だが、本番はここからだ。
なんとこの魔法、自分でいつでも起爆することができるのだ。
敵に触れた瞬間でも、目くらましとして使いたい場合でも、自分の好きなタイミングで爆発させることができる。
唯一の欠点は、消費魔力がかなり高いこと。
三体の龍を操るときは、常時魔力を使い続けなければならない。
故に、長時間使うことはできない。
一気にケリをつけたい時とかは、この魔法がかなり便利だ。
他にも三つの上級火魔術の技があるが、割愛させてもらう。
エリーゼの剣術の方も順調である。
エリーゼも極める剣術を火属性に限定したらしく、最近はずっと火属性剣術しか使っていない。
剣術の属性は、四種類。
火、水、雷、そして風。
ルドルフは火特級、リベラは水聖級。
そう、魔術にはある土属性の技はないのだ。
剣からどうやって土を出すんやっちゅう話なんですけどね。
エリーゼはアヴァンに行った時にテペウスに買ってもらった剣で、魔物を討伐している。
エリーゼにとってかなり使いやすいようで、楽しそうに魔物を倒している。
ルドルフが言うには、普通に大人が使うものと同じサイズらしい。
やっぱ剣才はピカイチなんだろうな。
そんなエリーゼは、火属性剣術が上級になった。
動きも以前と比べて格段に速くなり、技の精度、威力共に著しい成長が見られた。
ルドルフから上級剣士になったことを認められたと言いながら、エリーゼは俺を抱きしめてきた。
普通に力が強すぎて絞め殺されそうになった。
この一年くらいで、俺もエリーゼも飛躍的な成長を遂げた。
特に「世界を冒険したい」という願望とかはないが、もう少し大きくなったら冒険者になってみるのもありかもしれない。
もちろん、エリーゼと一緒に。
「お父さん! 遊びに行ってくるわ!」
「おう。気をつけろよ」
今日は、二人で平原の方へ遊びに行く。
……という体で、二人きりで魔物を討伐しに行く。
ルドルフ抜きでどれだけやれるかを試してみたいと思ったのだ。
俺とエリーゼは、それぞれ上級魔術師と上級剣士。
ルドルフの監視下でも全く問題なかったため、二人きりで行っても大丈夫だろう。
「さあ! たくさん倒すわよ!」
「ちょっとエリーゼ! 声が大きいです!」
俺達は、当然両親に無許可で森の方へ行く。
だって絶対許してもらえないし。
そんなに酷い傷を負わなければ俺の初級治癒魔法でも治せるし、バレないだろう。
あんな雑魚魔獣を相手に、手傷を負うわけがない。
森までは歩いて一時間弱。
森を越えると隣村であるヘコネ村があるが、そんなに深いところまでは潜らないようにしよう。
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