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甲斐は奴らが亡くなった事を知れば悲しむだろう。
なんであれどうであれ、今生では血の繋がった者達であることは違いないのだから。
だけど、あいつらのせいで甲斐が今まで傷ついてきたのも事実。あいつらのせいで甲斐はいろんな屈辱を味わって、苦しんで、泣いていたと思うとまた怒りが募ってくるのだ。
暴力はあまり受けていなかったとはいえ、暴力以外の虐待をかなり受けていたと聞いている。
家に閉じ込めたり、適切な食事を与えない、不潔なままにする、真冬に放り出す、煙草の先端を背中に押し付ける、トラウマを与えるような言葉の暴力など、オレがいない期間に受けていたと近所の者から情報があがっている。
そんな糞共からオレの愛しい甲斐を守るために、もう苦しませないために、今度こそ幸せになるために、邪魔者を排除するには致し方ない事。
あんなクズ共に慈悲など必要ない。来世でやり直せ。
『本日は甲斐様……いえ、奥様とご両親とで料亭でお食事だそうですが、連絡は控えた方がよろしいですか?』
「ああ。家族といる時くらいトップの立場を忘れたい。緊急でない限りそっちで対応を頼む」
無表情で通信を切って社長椅子から立ち上がる。
経営者のトップといえど、甲斐や両親を前にすると自分はただの一介の青年。
冷酷な男じゃなくて、家族思いで奥さんに優しい旦那サマでいたいのだ。
「直、お仕事お疲れ様」
料亭の一室ではもう甲斐や両親が先に待っていた。
世間でいう超高級な料亭と評判だが、オレからすればよく仕事の会合とかで使われる店なのでどうって事はない。
ちなみにここの店の板前や従業員はオレの部下であり、裏社会にも通じている情報屋でもある。いろんな企業やシンジケートがここで会合をしているのを探ったりするのも部下らの仕事だ。
「こんな高そうな刺身の御造りとか食べた事ないからびっくり」
「たまにはいいだろ。オレのおごりだからどんどん食べていいよ。父さんも母さんも」
年収が数十億単位になってから、ちょっと金銭感覚が狂ってきてしまっているかもしれない。甲斐や両親の前では素朴でいなければと思う。
「いつの間にか実業家兼経営者になっているんだからビックリしたわ」
「いやー結婚式が楽しみだなー。あと緊張しちゃうよ。有名実業家を育てた父親として紹介されるのが。甲斐ちゃんは一躍セレブ奥様だね」
「お、お義父さんったら……なんか恥ずかしいっすよ」
甲斐との結婚が早々に決まり、式まであと数か月。書類上での入籍は済ませている。
可愛い甲斐との幸せな毎日は濃厚でエロすぎて蕩けそうだ。この頃は毎日エッチしまくりだから病みつきになってきている感があって、甲斐に無理をさせてしまっている。
「え、と……直」
甲斐が恥ずかしそうにしている。
「ん、甲斐……どうした?」
「その……今日病院に行ってさ……デキちゃってたんだ」
「できたって……」
「赤ちゃん」
照れたように呟く甲斐がとても可愛らしくて、我慢できずにその場で勢いよく抱きしめた。ああ、もうたまらない。甲斐が可愛くて幸せすぎて困る。
「く、苦しいってバカ」
「嬉しいんだからしょうがないだろ。可愛い甲斐とオレの子供ができるっていうんだから」
もぞもぞ腕の中で動く甲斐をつぶさない程度にぎゅっと抱きしめて、頬にキスを送った。両親の前でももうお構いなしだ。
「もう見せつけちゃって。ビックニュースね。おめでとう!」
「世間様からはでき婚だなんだと言われるかもしれないけど、いやー息子と甲斐ちゃんの子供だなんて嬉しいよ」
「そうね。はやくも孫が見れるなんてこれ以上の嬉しい事はないわ。うふふ、楽しみ」
嬉しそうにはしゃぐ両親と恥ずかしくも喜ぶ甲斐。
これからはうんと幸せにする。前世で幸せになれなかった分までちゃんと。
「この頃は毎日しまくってたからな。たくさんシタ結果だな」
「ばかっ!声がでかいっての!」
真っ赤になる甲斐は最近の痴態を思い出しているようだ。この頃はいじめすぎて甲斐をあんあん鳴かせまくってたからな。
「幸せにする。甲斐も子供も。家族みんなを」
「俺も……あんたと子供を頑張って支える」
幸せな家族になろう……。
END
なんであれどうであれ、今生では血の繋がった者達であることは違いないのだから。
だけど、あいつらのせいで甲斐が今まで傷ついてきたのも事実。あいつらのせいで甲斐はいろんな屈辱を味わって、苦しんで、泣いていたと思うとまた怒りが募ってくるのだ。
暴力はあまり受けていなかったとはいえ、暴力以外の虐待をかなり受けていたと聞いている。
家に閉じ込めたり、適切な食事を与えない、不潔なままにする、真冬に放り出す、煙草の先端を背中に押し付ける、トラウマを与えるような言葉の暴力など、オレがいない期間に受けていたと近所の者から情報があがっている。
そんな糞共からオレの愛しい甲斐を守るために、もう苦しませないために、今度こそ幸せになるために、邪魔者を排除するには致し方ない事。
あんなクズ共に慈悲など必要ない。来世でやり直せ。
『本日は甲斐様……いえ、奥様とご両親とで料亭でお食事だそうですが、連絡は控えた方がよろしいですか?』
「ああ。家族といる時くらいトップの立場を忘れたい。緊急でない限りそっちで対応を頼む」
無表情で通信を切って社長椅子から立ち上がる。
経営者のトップといえど、甲斐や両親を前にすると自分はただの一介の青年。
冷酷な男じゃなくて、家族思いで奥さんに優しい旦那サマでいたいのだ。
「直、お仕事お疲れ様」
料亭の一室ではもう甲斐や両親が先に待っていた。
世間でいう超高級な料亭と評判だが、オレからすればよく仕事の会合とかで使われる店なのでどうって事はない。
ちなみにここの店の板前や従業員はオレの部下であり、裏社会にも通じている情報屋でもある。いろんな企業やシンジケートがここで会合をしているのを探ったりするのも部下らの仕事だ。
「こんな高そうな刺身の御造りとか食べた事ないからびっくり」
「たまにはいいだろ。オレのおごりだからどんどん食べていいよ。父さんも母さんも」
年収が数十億単位になってから、ちょっと金銭感覚が狂ってきてしまっているかもしれない。甲斐や両親の前では素朴でいなければと思う。
「いつの間にか実業家兼経営者になっているんだからビックリしたわ」
「いやー結婚式が楽しみだなー。あと緊張しちゃうよ。有名実業家を育てた父親として紹介されるのが。甲斐ちゃんは一躍セレブ奥様だね」
「お、お義父さんったら……なんか恥ずかしいっすよ」
甲斐との結婚が早々に決まり、式まであと数か月。書類上での入籍は済ませている。
可愛い甲斐との幸せな毎日は濃厚でエロすぎて蕩けそうだ。この頃は毎日エッチしまくりだから病みつきになってきている感があって、甲斐に無理をさせてしまっている。
「え、と……直」
甲斐が恥ずかしそうにしている。
「ん、甲斐……どうした?」
「その……今日病院に行ってさ……デキちゃってたんだ」
「できたって……」
「赤ちゃん」
照れたように呟く甲斐がとても可愛らしくて、我慢できずにその場で勢いよく抱きしめた。ああ、もうたまらない。甲斐が可愛くて幸せすぎて困る。
「く、苦しいってバカ」
「嬉しいんだからしょうがないだろ。可愛い甲斐とオレの子供ができるっていうんだから」
もぞもぞ腕の中で動く甲斐をつぶさない程度にぎゅっと抱きしめて、頬にキスを送った。両親の前でももうお構いなしだ。
「もう見せつけちゃって。ビックニュースね。おめでとう!」
「世間様からはでき婚だなんだと言われるかもしれないけど、いやー息子と甲斐ちゃんの子供だなんて嬉しいよ」
「そうね。はやくも孫が見れるなんてこれ以上の嬉しい事はないわ。うふふ、楽しみ」
嬉しそうにはしゃぐ両親と恥ずかしくも喜ぶ甲斐。
これからはうんと幸せにする。前世で幸せになれなかった分までちゃんと。
「この頃は毎日しまくってたからな。たくさんシタ結果だな」
「ばかっ!声がでかいっての!」
真っ赤になる甲斐は最近の痴態を思い出しているようだ。この頃はいじめすぎて甲斐をあんあん鳴かせまくってたからな。
「幸せにする。甲斐も子供も。家族みんなを」
「俺も……あんたと子供を頑張って支える」
幸せな家族になろう……。
END
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